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美酒とクライミングを求めて福島へ|筆とまなざし#394

福島県・白河の岩場を楽しみながら、美酒と温泉を堪能する旅へ。

この1週間は人生でもっともたくさんの日本酒を買った。4合瓶を13本、300㎖の小瓶を4本。飲んだ量はふたりで4合瓶が4本、小瓶が4本なので(お店で利酒したり試飲で酔っぱらったりしたが)それほど多くはないのだが、とにかくこの1週間は日本酒づいていた。その理由は福島県にある。

8月にクライミングの研修で福島県の白河の岩場を訪れた。今春クライミグ雑誌で発表された岩場で、凝灰岩の前傾壁に魅力的なスポートルートが並んでいる。「聖ケ岩ふるさとの森 ビジターセンター」が拠点となっており、アプローチは10分ほど。ビジターセンターにはキャンプ場やコテージがあり、滞在しながらクライミングを楽しむことができる。夏に訪れた際は連日の夕立でほとんど登れなかったので、涼しく天気が安定したころに再訪したいと思っていたのである。研修が終わってからは、車中泊しながらひとりで福島県を回った。そのとき、福島県には美酒がたくさんあることを知ったのだった。

岐阜にいるとほとんど目にしない福島のお酒。しかし、福島県内には63の酒蔵があり、その数は全国4位。米どころとしても知られ、日本酒用に開発された酒米や酵母もある。なかには創業300年を超える酒蔵もあり、東日本大震災を経て現在も美味しいお酒が造り続けられている。8月に飲んだなかで衝撃的だったのが郡山の「仁井田本家 にいだしぜんしゅ」と喜多方の「ほまれ酒造 からはし」。その味わいは実際に飲んでいただくことにして、とにかくすっかり福島県の日本酒の虜になってしまったのだった。ほかにも美味しいお酒があるはずだ。そう思い、ふたつの酒蔵を筆頭に美酒を探し求めながらクライミングを楽しむ旅に出かけることになった。妻のリクエストで温泉も目的地に加わり、さらにご当地ラーメンを食べ歩けば完璧である。

10月2日に福島県へ向かい、まずは仁井田本家へ。酒蔵は田んぼに囲まれた長閑な里山にある。夏に一度訪れたのだがこんなにも早く再訪することになるとは思ってもいなかった。仁井田本家はパタゴニアとコラボしていることでも知られる酒蔵で、創業はなんと1711年。農薬、化学肥料を一切使わずに栽培した酒米100%を使って、昔ながらの製法で丹念に日本酒が造られている。歴史を感じる蔵が立ち並ぶなかに間接照明で落ち着いた雰囲気の売店がある。夏にはなかった秋の新酒が並んでいて、3種類の日本酒を購入。さっそくいただいた微発泡のうすにごり酒が……! 初日からすでに大満足である。自家製のあずきバーが売られていて、その素朴な味わいに感動。ほかのお酒は帰宅してからのお楽しみにして、翌日からのクライミングに備えることにした。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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