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福島・会津田島の岩場でクライミング講習会|筆とまなざし#395

アプローチ0分。生活圏内にある、古くからこの地に暮らす人々に活用されてきた岩場。

 せっかく福島にクライミングに行くのならと、最初の2日間は講習会をすることにした。しかしずっと雨予報。初日は朝から小雨がぱらつき、白河の岩場では登ることができなかった。天気予報と睨めっこする。内陸に車で1時間ほど走った場所にある会津田島の岩場なら登れる可能性がある。参加者を駅でピックアップし、一路、会津田島へ向かった。峠道は雨だった。辺りはすっかりガスに覆われている。祈るような気持ちで長いトンネルを抜けると徐々に路面も乾いてきて、田島に到着したときには曇り空になっていた。

 会津田島の岩場は道路脇にある。アプローチは0分。街の中心地ではないものの、道の反対側には自動車学校があるという、地元の人々の生活圏内にある。駐車場にあるボックスに一人500円の協力金を支払って利用する仕組みだ。街中にある岩場は日本では珍しいが、ルートの内容もすばらしかった。大きくオーバーハングした岩は5.125.13台が多く、ビギナー向けのしょぼい岩場とは違う。といっても、5.10から5.11台のおもしろいルートもあって講習会でも楽しめる。ひとつの大きな岩に30本弱のルートが築かれている。もっとも難しいルートは5.14a。強傾斜なので多少の雨でも登れるし、風通しがよく雨後の乾きも良さそうだ。

 岩質は凝灰岩だろう。慣れ親しんだ鳳来に近い感じで登りやすい。かつて、大きく抉れた岩の下には建造物があったようで、柱を埋め込む穴が岩の至るところに彫られていた。人工的なホールドではあるが、古くからこの岩がこの地に暮らす人々によって活用されてきたことがわかり、目的は違えども人間と岩との関係が時代のなかで変遷してきたことを垣間見ることができて興味深い。

 結局、白河は雨のため1日も登ることができなかった。講習が終わってから、ひとりで磐梯山に登っていた妻と落ち合い、さらに絵描きの伊藤佳美ちゃんが青森の実家から長野県の自宅へ帰る途中で合流。小雨に降られながらも和気藹々と3日間登ることができた。怪我をした足首はまだ少し痛いものの思いきり登れるようになったことを実感することもできた。

 会津田島の岩場には宿題が残ってしまったし白河も再訪したい。翌日からは雨が続くため、旅の目的を温泉と酒蔵めぐりに切り替えることにした。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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