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人気作品|旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺 #40

ありがたいことで、今回のお話で連載も40回を迎えた。タイトルで「旬の」と謳っていることもあり、ネタが季節縛りなのだが、この連載を目にしたみなさまはどんな感じで読まれているのか、じつは多少気になったりしている。ライチョウの生活史は基本的には毎年の繰り返しである。それゆえに次第に過去のネタと被ることも出てくると思うが、飽きずにお付き合いいただければ幸いである。

編集◉PEAKS編集部
文・写真◉高橋広平

人気作品

写真を生業しているならばだれしも「代表作品」や「人気作品」があるはずである。少なくとも私が心の中で師事している先人の方々は生前そのように仰っていた。それは作家本人を表現するものでもあり、私の人と成りを知らない方もそれを見て作家性を判断する材料となるだろう。また私が認識している「写真家」と「カメラマン」の違いもこれに関係する。

あくまで私個人の定義だが、「写真家」は己の性分の赴くままに撮りたい作品を撮って表現する人たち。対して「カメラマン」は他者から依頼を受けてその要望に沿った写真を提供する仕事人と規定している。

私がライチョウカメラマンではなく「雷鳥写真家」と名乗っているのはそういう経緯もある(メディアの都合で「雷鳥」が「ライチョウ」表記になる場合もあるが、それは仕方のないことだと承諾している)。実際にカメラマンと称して活動している方々にもそれぞれの認識があると思うのであくまで私の認識だと重ねるが、その都合上「作品」として写真を世に出すのは「写真家」の本分だと思っている。

前置きが長くなったが、代表作品、人気作品の話をしよう。代表作品とは発表した作品のなかで人気を博し、「この人といえばこの作品」という言わば名刺代わりのようなものである。人気作品もおおよそそれに準ずる作品だと思う。

私の場合は「DAIFUKU」が代表作品として君臨しているが、まず順当な評価ではないだろうか。ここでざっくりと自分なりの「DAIFUKU」の魅力の分析をしてみるが……、白くて丸いフォルム、小首を傾げてこちらを見つめるつぶらな瞳。このチャーミングな要素は某有名キャラクターのネコちゃんと同質のものである。さらにはその見た目にそぐわないゴツい足爪を覗かせることによる「ギャップ萌え」のエッセンスを加え、多くの方がご存知の悩殺天使の爆誕とあいなった。

おそらく、カワイイ系の要素を突き詰めると同じようなものが人気になるのは自明の理のようだ。最近では鳥類で白くて丸いフォルムというと、シマエナガを思い浮かべる方も多いだろう。しかしシマエナガはじつは横から見ると白くないので、私としてはメディアのシマエナガは白くて丸い詐欺だと思っている……。と、少し日頃のシマエナガへの私怨(ジェラシー)を吐露してしまったが、鳥類において真に白くて丸いのは冬羽のライチョウ一択であることをここに強く主張したい。

さて、このようなことを加味しつつ、生態も捉えた写真を撮らねばととある撮影ポイントで試行してみた。雪が稜線を染め始めるこのごろ。糧となる植物もその種類を減らし、冬に近づくほどに特定の物を口にするようになる。この山域では、ナナカマドの枝に乗り、実をついばむ個体を見ることができる。つねに機会があれば撮りたいと思っているシーンが食事中のようすだ。野生の生き物を観察するときに私がなんとも魅力を感じるのが、物を食べている場面だったりする。

今回の一枚はまさにその食事のシーンの一部だ。ほぼ冬羽に換羽を終えたメスのライチョウがナナカマドの枝にとまり、その実をついばんでいる途中で私と目が合っちゃった瞬間である。枝を力強く挟む足指、言わずもなが白くて丸いフォルム、そしてこちらにまっすぐ向ける無垢な瞳と、我ながら撮りながら悩殺されていた一枚である(この後、実をついばむようすもしっかり収めた)。まあ、なんだかんだで「カワイイは正義」なのである。

 

今週のアザーカット

つい先日の話ですが、安曇野で地元中学生への企業紹介イベントがあり、私も地元人としてブースを担当しました。私の場合は極めてマイノリティな仕事をしているのであまり仕事としては参考にはならないと思いましたが、ひとりひとりの「好きなこと」を大事に育ててくださいみたいなことを伝えてみました。アザーフォトはその折に学生さんたちからいただいた感想シートですが、未来ある若者のみなさんの一助になれていたら幸いかなと思いました。

▶過去の「旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺」一覧はこちら

 


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PROFILE

高橋広平

PEAKS / 雷鳥写真家・ライチョウ総合作家

高橋広平

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
Instagram : sundays_photo

高橋広平の記事一覧

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
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