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【いつか泊まりたい山小屋#25 北アルプス・朝日小屋】長旅の疲れを癒してくれる手料理とホスピタリティ

「あの山小屋に泊まってみたい」。そんな憧れが、山へ向かうきっかけになることもあるはず。本連載では、立地や食事、山小屋の主人やスタッフの人柄など、その山小屋ならではの魅力にスポットを当てながら、ランドネ編集部おすすめの山小屋をご紹介。25軒目は、北アルプス最北端の花の名所・朝日岳の最寄りの山小屋、朝日小屋をピックアップ!

いつか泊まりたい山小屋
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富山のごちそうが散りばめられたグルメが大人気

▲北アルプスのなかでも豪雪エリアに建つ朝日小屋。雪に押しつぶされないように、屋根は合掌造りを模した形状になっている。

北アルプス北端の稜線上に佇む赤い三角屋根の朝日小屋は、高山植物が豊富な白馬岳や朝日岳の縦走、朝日岳から日本海へ延びる栂海新道の縦走の際に欠かせない山小屋だ。新潟県側の登山口である蓮華温泉からは片道約8時間30分、富山県側の北又小屋からは片道約7時間。どこから歩いても距離があり気軽に行ける場所ではないが、時間をかけて訪れる甲斐が充分にある。

なにより宿泊客を虜にしているのは、山小屋で提供される夕ごはん。管理人の清水ゆかりさんは、昆布〆やホタルイカの沖漬けなど、献立のなかに地元・富山の郷土料理を取り入れて、山の旅人たちに海の幸をふんだんに使ったごちそうを届けている。締めのデザートに、その名も名菓「栂海新道」が添えられているのも、心がくすぐられるポイントだ。

▲朝日小屋の夕ごはん。食前酒のワイン、具だくさんのおでん、紅白そうめん、カジキの昆布〆、ホタルイカの沖漬け、ヒジキの煮物、炊きたての富山米、北アルプスの深い緑を表す抹茶味の皮に包まれたきんつば「栂海新道」がお盆に並ぶ。ホタルイカの沖漬けは、ゆかりさんが漬けたものだそう。
▲夕ごはんには陶板焼きも登場。写真の食材は、豚肩ロースと山芋、ソーセージ、スナップエンドウ。これらをじっくりと焼き、朝日小屋の秘伝のタレを付けていただく。ごはんが確実にすすむ一品。

朝日小屋では、コロナ禍の影響により、夕食とともに好評だった朝食の提供が中止となってしまった。その代わりに、朝食や行動食に丁度よいお弁当メニューが充実していて、毎日夕方に、2種類の混ぜご飯と3種類のお寿司が販売されている。お寿司はゆかりさんが富山の業者に特注した山小屋オリジナル商品で、真四角の酢飯の上にマス・くるみ・的鯛が載り、笹でくるまれた一品。富山名物を手軽にいただけるのがうれしいところだ。

▲混ぜごはんは、五目ごはん(写真)と鶏そぼろごはんの2種類がある。味のおいしさもさることながら、130g300円と、量と価格の手頃さが魅力。翌日の朝食や行動食にぴったり。
▲山小屋では、富山名物のますの寿司を300円で販売中。ほか的鯛の昆布〆、くるみ甘辛煮のお寿司もラインナップ。いずれも酢が効いて、ひと口ほおばるだけで元気になれる。手のひらサイズで長旅のおともに最適だ。

山小屋に足を踏み入れた瞬間から感じられるぬくもりの正体

▲受付で出迎えてくれるのは、管理人の清水ゆかりさん。子育てをしながら、2代目の管理人をつとめていた父親、下澤三郎さんの後を継いだという。思いやりと創意工夫で、山小屋の魅力を磨き続けている。

朝日小屋のホスピタリティは、食事メニューに留まらない。たとえば山小屋に到着したときには「お疲れさまでした」と笑顔で出迎えられ、麓のカフェ「HYGGE(ヒュッゲ)」とコラボした朝日小屋オリジナルブレンドのハーブティーがウェルカムドリンクとして手渡される。また受付まわりには、朝日町の宮崎海岸の海水から作られた天然塩が無料で配布されている。夕飯時には食堂のテレビで高山植物の動画を流して、この山域の楽しみ方を教えてくれる。ひとつひとつは小さなサービスだが、こうした思いやりの積み重ねが、山小屋全体のぬくもりを作り出しているのだ。

▲左)受付にあるこんぺいとうも、宿泊客へのサービス。右)朝日小屋オリジナルブレンドのハーブティーは売店で購入可能。疲労回復におすすめのハーブがブレンドされている。
▲玄関の土間が乾燥室になっている。登山靴やレインウエアの着脱がスムーズに行えるようイスが用意されている点も、管理人ゆかりさんの思いやりのひとつ。

山小屋から目指すおすすめルート【朝日小屋~照葉の池 片道約2時間】

▲盛夏の8月下旬でも写真のように池の半分以上が雪渓に。この山域が豪雪エリアであることがわかる。

山小屋から片道数時間で行ける穴場スポットが、朝日岳から海抜0mへと下る栂海新道のルート上にあるオアシス、照葉の池だ。朝日小屋から朝日岳を経て開放的な稜線を下っていくと、蓮華温泉に繋がる五輪尾根との分岐、吹上のコルにたどり着く。ここからさらに片道20分ほど北へ向かって樹林帯を歩くと、突如視界が開けて湿地と木道が出現。その先に、ふたつの池で構成される照葉の池が広がっているのだ。

照葉の池のおすすめポイントは、登山道が高い位置に延びていること。そのため、ふたつの池を見下ろしながら眺めることが可能に。高山植物も豊富なうえ、行き交う登山者はさほど多くないので、静かに景色を眺めたり写真撮影やスケッチを楽しんだりする場所として最適。山小屋に連泊した際、二日目の午前に訪れてみてはいかが。

▲朝日岳山頂から吹上のコルへの稜線。写真右奥にそびえるのは五輪山で、その左手、つまり西側に照葉の池がある。

やっとの思いでたどり着ける朝日小屋は、その思いやりに満ちたサービスで、疲れ果てた登山者の心と身体を芯から癒してくれる。もちろん、道中に咲き誇る高山植物も見応え充分。この山小屋への旅を通じて、達成感と癒しを存分に味わうことができるだろう。

朝日小屋
https://www.asahigoya.net/
・標高:2,150m
・営業期間:6月下旬~10月上中旬 ※年によって変動あり。要問合せ。
・宿泊料金(税込):1泊夕食12,000円、素泊まり(寝具付き)9,000円
※平日価格。特定日は+1000円。
・電話番号:080-2962-4639 (衛星電話。8:00~11:00、19:00~20:00)
※営業期間外0765-83-2318(朝日小屋連絡所)
・コロナ禍での確認事項:完全予約制(予約金必要)、マスク・インナーシーツを要持参

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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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