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ニューアルバム『Journey』を10/25にリリース|SPECIAL OTHERSが考える、山と音楽のさらなる楽しみ方とは

宇宙的感覚を研ぎすます「山と音楽のさらなる楽しみ方」をテーマに、さまざまなミュージシャンにインタビューしていくシリーズ。音楽フェスをはじめ、アウトドアフィールドで聴きたい音楽を紹介する。

8月27日に開催されたSPECIAL OTHERSのライブとニューアルバム『Journey』

自由に楽しむという、 忘れかけていた感覚を取り戻す——8月27日に開催されたSPECIAL OTHERS(以下、スペアザ)の東京・日比谷野外音楽堂(以下、野音)でのライブはそんな幸福なムードにあふれていた。新作『Journey』に向かって動き出したスペアザのいまを聞いた。

▲2023.8.27「SPECIAL OTHERS TOUR 2023」日比谷野外大音楽堂にて

——8月27日に開催された野音は大盛況でしたね。ステージに立っていていかがでしたか。

宮原:やっぱりにぎやかさが戻ってきた感じがしましたね。みんなも楽しそうだったし、今回の野音は声が出るようになっていたし、自由に楽しむバイブスが生まれていたよね。

芹澤:昨年はまだ制限があって、牽制し合ってる感じはあったから、今回やっと解き放たれたのかな。

——ライブはお客さんと作られるものだと改めて感じましたが、ふたりがMCしている途中で、柳下さんのギター音がちょっと出ちゃって。それだけで次の曲がお客さんにバレちゃうハプニングも。

宮原:0.1秒のイントロドン! 鋭すぎですよね。お客さんにもわかるんだと思って。

芹澤:振り向いただけで「お茶がほしいのね」ってわかる熟年夫婦みたいな、阿吽の呼吸だよね。もちろん新規のお客さんもいたと思うけど、音楽を介した絆が、ああいう形で見えたのがおもしろかったなって。

宮原:今回あまりMCをしなくて、演奏でもっていったのもよかったのかな。

芹澤:しゃべらないでいられる、間を持たせてくれたのも、お客さんの声だったりバイブスだったりもしたんだよ。

——そういうバイブスは新作『Journey』にも現れています。去年一昨年あたりの空気感とも全然違うなと。

宮原:曲を作ってるときから気持ちのもち方が違いましたね。コロナ禍の曲作りって暗い曲をあまり演りたくないから、逆に明るい曲を作っていたんですけど。いまは気にせずとも普通に前向きになるというか。

——2月より9ヶ月間にわたって、毎月25日(ニコニコの日)に新しい音源とライブ収録をした映像作品を発表していき、10月25日リリースのアルバム『Journey』に帰結するわけですが、この企画は、どういうスタートだったんですか。

宮原:Scary Pocketsというアメリカのファンクバンドがライブ音源を1曲ごとにどんどん上げていくんですよ。それ楽しみに待っていて。そういえば、俺たちってライブで魅せられるバンドで、そこが強みでもあり、あとは、ミスったところを見せても平気だし、一発撮りで毎月1曲リリースしていったらおもしろいなと思ったんですよね。

芹澤:ミュージックビデオって一般的に当て振り(映像を音源に合わせて撮る)が多いけど、ニコニコの日に発表している映像シリーズは全部生演奏なんですよ。
宮原:映像と音がリンクしてると伝わるものがあるし、こういうマイクの立て方だと、ドラムの音がこう鳴るのかって、そういう視点で見ても面白いし、得られるものが多いよね。

芹澤:サブスクとかCDの音源とライブ音源でフレーズ自体が違ったりして。それぞれの楽しみ方ができるって意味でもおもしろいよね。それはいわゆるジャムバンド的な楽しみ方だから、自分たちも原点にかえる部分もありました。

——野音では、普段よりもジャムセッションが長くて、より遊んで観えて。ライブにもそういったムードが反映されている?

宮原:それは、SUGIZOさんと出会ったことが大きいですね。SUGIZOさんはSHAGというジャムバンドもやっていて、その主催ジャムイベントに出演したときに、インプロビゼーションの要素を多く入れてライブをやったら、めちゃくちゃ楽しくて。「俺たちってこれができるんだった」となって。それを思い出させてくれたSUGIZOさんには本当に感謝しています。

芹澤:予定調和だとだんだん自分が飽きちゃうし。自分がエキサイトするような演奏をしないと意味がないなと。SUGIZOさんと出会ってなかったら、今回の野音は、もっと固い違った演奏だった可能性は高くて。野音では自分たちの即興を織り混ぜる手法を発明できたよね。

「Feel So Good」 https://www.youtube.com/watch?v=7Yw6LeGOIQo

「Point Nemo」https://www.youtube.com/watch?v=f1toCkTBB60

――ニコニコの日に公開される映像より8月公開の「Feel So Good」、また9月25日に配信される「Point Nemo」は、自分たちのスタジオで撮ったとか。そのスタジオは今回が初出しだったそうですね。

宮原:そうなんですよ。SPE STUDIO JAPANという名前で、5年くらい前からあるんですけど。毎月映像作品を出しているから、場所のネタがなくなってきて(笑)。レコード会社のディレクターから「あのスタジオ、超かっこいいと自分は思っていて」と提案があって。俺たちは人に見せられるようなものじゃないでしょうと思っていたけど、人によってはかっこよく見えるんだなと。でも、言われてみたら、大人の秘密基地みたいでかっこいいかなって。5年も経って初披露!

芹澤:でも、5年かけて完成されたというのもあるよ。ここだけの話をすると、ヴィンテージのかっこいい機材を、画角に映るように置き直したり、大人の秘密基地感をより強調するというせせこましいことはしているんですけどね(笑)。

宮原:このサウンドシステムは、機材わかる方とか、細かく見てくれるとおもしろがれるし、音楽において重要な、音色の研究を存分にできて、このスタジオで得たことって大きいんですよ。

芹澤:たとえばスタジオを借りるとなると、10時間とかで機材を持って帰らなきゃいけないから、なかなかアンプを複数台並べて、日夜その音を出して、あれこれする時間もないんですよ。

宮原:自分のスタジオなら、搬入搬出がなくて片付けいらず。出しっぱで、続きはまた今度ってできるから。

芹澤:効率がいいし、あれこれ購買意欲にもつながって、いろんなこと試して。なんかもう相乗効果しかない。

宮原:俺のレコーディングエンジニアとしての技術も上がってきて。いつも録ってもらっているエンジニアさんからも、お墨付きをいただいたほど。そういった技術を磨けたのも、このスタジオのおかげなんですよ。

芹澤:個々のレベルアップもすごくあるしね。

宮原:もう、俺ら電源タップから選んでいますからね。

芹澤:オタクって言っていいくらいの領域まで、片足突っ込んでる(笑)。

——タイトルの『Journey』についても教えてください。

宮原:いつも曲を聴きながら、どういうタイトルにしようかなって考えるんですけど、いろんな単語を思い浮かべながら聴いて、いろんな物語があるなと思ったんですよ。荒地を歩いて、見晴らしのいいとこに着いたみたいな。それを言葉にしたら、なんかJourneyだなと。俺らも、音の探求をしてる旅人だしね。

芹澤:リゾート的な旅を想像する人もいるだろうし、それぞれの人にそれぞれの形でそれぞれの色がはまる、Journeyという言葉ってやっぱりいいよなって。それって、俺らがライブに来る人たち一人ひとりが「居場所ないな」って思わないでほしいというのと同じで。万人がみんな笑顔で、端っこでも楽しかったらそのままでいい。踊らない人は踊らなくていい。踊りたい人は踊ればいい。声出したい人は出していいし、静かに聴きたい人は静かに聴けばいい。誰も気遅れしないという意味でも、Journeyという言葉はぴったりでした。

——ようやく旅に出られる2023年、という意味にもハマるなと。

宮原:そういう気分も曲に現れていると思う。抜けるような曲でね。

芹澤:この数年、自分たちもちょうどキャリアの中間地点にきて。10周年を越えて、谷の時期に入ってきて、15周年を前にコロナ禍になったけど。20周年に向かって、ここからまたワクワクするようなことがいっぱいできるんじゃないかなって、期待がすごく膨らんでいるんです。

——スペアザはそういう生きる力が昔からありますよね。

芹澤:谷の時期も楽観的に乗り越えられたことが、今を成功させている秘訣なんじゃないかなと思います(笑)。コロナ禍は、大変な方たちがいるのはもちろんわかっている、それとは別軸で、「楽器が投げ売りされてるぞー」となったし。人と会わない時間があっても不安になることもなく、ハイドロカルチャー(植物の栽培)をやったりして、忙しいし。だからもう瞬間瞬間を、生きていけばいいと思うんですよ。未来は勝手にやってくるというか。

宮原:それって、アウトドアマンのそれと似てるよね。自然の怖さも美しさも知っていて。山奥でバックパックひとつで寝泊まりするわけだから、達観しているし、生きるすべをわかってる。なにか起きたときの準備はするけど、ずっと不安に思っていてもしょうがないっていうさ。

芹澤:備えって行動だからね。やっぱり、そうやっていまを生きることで、未来はやってくるんだよ。山へ登りたいけど雨が降ったらどうしよう、だから山に登らないというのは違うから。

——不安より行動、バイブス優先みたいな。

宮原:そうですね。もういまのこの瞬間しかないっていう。

芹澤:過去未来って自分の頭の中にしかないから。

——今年は音楽業界も急に忙しいですが、最近はアウトドアは?

宮原:行けてないんですが、コロナ禍から引き続き、家でのアウトドアは楽しんでいますよ。タープを張ったり、焼き鳥を焼いたり。それで思うのは、純粋に楽しむ瞬間って本当に大事だなということで。こないだの野音もですけど、みんな音楽を聴いて楽しくしてる、未来でもなく、過去でもなく、今、この瞬間にこそ、幸せを感じるから。

芹澤:それをみんなと共有できる幸せって変え難いよね。100億円とか持ったことないけど、多分、あの瞬間の幸福感は絶対に超えないだろうな。

 

——じゃあ、『Journey』を携えて全国ツアーもありますが各地でそういった?

宮原:そうですね。その瞬間瞬間を楽しみに来てもらえたら。自分ではいまがいちばん音楽に集中しているんですよ。若いときって「モテたい」っていう感情が半分くらいあったけど、そういうのが削ぎ落とされていって、音楽しかもう残っていない。超ミュージシャンなんですよ。だから、今のSPECIAL OTHERSをぜひ見に来てほしい!

芹澤:本当に、いまは本質的に盆踊りに近くなってきたっていうか。みんなで踊ったり、ワイワイしたりしたいですね!

Field Like Music
◎アウトドアで聴きたい1枚。

レイ・ハラカミ/『[lust]』

真っ暗なアウトドア環境で、ひとり寝そべって星空とかを見ているときに、レイ・ハラカミの「owari no kisetsu」を聴いたら、異世界に行ったような、不思議な気持ちになりそうじゃない?(宮原)。

アルバム『[lust]』めっちゃ好きだよ。2000年代前半、現代音楽、ポストロック、エレクトロニカのシーンがクロスオーバーするなかで、レイ・ハラカミはポップさがあって衝撃を受けた。ほぼインストの曲だけど、エモーショナルで胸キュンできるんですよ(芹澤)。

SPECIAL OTHERS

写真左から時計回りに、芹澤“REMI”優真(Key.)、宮原“TOYIN”良太(Dr.)、又吉“SEGUN”優也(Ba.)、柳下“DAYO”武史(Gt.)。2006 年メジャーデビュー。2013年日本武道館での単独ライブを成功させる。「FUJI ROCK FESTIVAL ’16」FIELD OF HEAVENのヘッドライナーほか、全国各地のフェスに出演。 2023年2月25日より毎月25日に9ヶ月連続リリース中。
www.specialothers.com

Information

『Journey』
10.25 release
(2CD+DVD)¥6,300+税、(CD)¥3,000+税、(2LP)¥5,500+税/ SPEEDSTAR RECORDS
※(2CD+DVD)の特典CD、DVDは、「2023年 ニコニコの日全集『252510』」10曲の映像と音源
※(2LP)は11.3発売。LP限定、約20分のセッション音源を収録

LIVE

Journey to SPE「 SPECIAL OTHERS Journey Release Tour 2023」
11月3日(金・祝)宮城・darwin
11月5日(日)北海道・cube garden
11月11日(土)富山・MAIRO
11月12日(日)長野・NAGANO CLUB JUNK BOX
11月18日(土)愛知・名古屋クラブクアトロ
11月19日(日)静岡・浜松窓枠
11月23日(木・祝)福岡・BEAT STATION
11月25日(土)岡山・YEBISU YA PRO
11月26日(日)大阪・梅田クラブクアトロ
12月9日(土)沖縄・桜坂セントラル

SPECIAL OTHERS 毎年恒例SPE納め2023
12月16日(土) 神奈川・横浜Bay Hall

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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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