ベイトパターンによって変わる攻めを楽しむ―志摩沖×中村豪―【フィールド解説&メモリアル】
SALT WORLD 編集部
- 2021年11月16日
塩分濃度の高い沖の潮と伊勢湾から流れ込む沿岸の潮が交わる志摩沖は、多様なベイトを求めて多くのフィッシュイーターが集まる有数の漁場。キハダも例外ではなく、ベイトに応じて様々なゲームが展開される。そんな志摩沖を20年間にわたり開拓してきた中村豪氏は、魅力とともに環境変化への不安も感じているという。
シーズンを通しての代表的なベイトはイワシ類
2010年ごろから急激に注目されだした、三重県志摩沖のキハダマグロのキャスティングゲーム。最近ではトンボ(ビンナガ)を含めキハダのジギングゲームにも注目が集まりだし、状況によってキャスティングでもジギングでも狙うことができるようになったので、マグロ類を狙うエリアとしてそのシーズンや手法が大幅に広がりを見せている。
またそれによって、マグロ類がこのエリアでかなりバリエーションに富んだベイトを捕食していることも分かってきた。そのベイトの影響で水面に姿を見せたり見せなかったり、釣り方にも大きく影響するので、そこのところを少し考察してみた。
そもそも志摩沖は黒潮の蛇行が大小頻繁にみられ、伊勢湾からの塩分濃度の低い潮流とも複雑に絡み合うため様々なベイトが豊富で、マグロ、カツオ等の回遊魚が足を止めやすいエリアと言える。
ただよく言われるのは、2009年以前の志摩沖ではシイラのキャスティングゲームが盛り上がっていたのにもかかわらず、今のようなキハダの目撃情報や釣果報告がなかったことだ。存在していたのに浮いてこなかったのか、そもそも回遊経路が変って頻繁に見られるようになったのか、よく分かっていない。
キハダがキャスティングで狙える状況でのベイトは、カタクチイワシを代表としたイワシ類がシーズンの長さ的にも出会える頻度的にも一番に挙げられるだろう。小さい群れから大きなものまで様々で、状況によって攻め方が変わってくる。
小さくきゅっと固めたイワシ団子にキハダが突っ込んでいる状況なら、ピンポイントで攻める技術が求められる。逆に広い範囲に散らばったベイトにあっちで出たりこっちで出たりと、なかなかポイントが絞り込めない状況なら、マグロが浮くところ、マグロがウロウロしているところを読んでブラインドで誘っていく。
この時大活躍なのが、志摩のルアー船のほとんどが搭載しているソナーだ。船長がソナーに映るマグロの影を見ながらキャストする方向を指示してくれる。これによりブラインドで魚を出す確率が極めて高くなった。また無駄なキャストも減ったと言える。
イワシベイトの場合、一軒家サイズくらいの巨大イワシ団子にドッカンドッカンとマグロが突っ込むシーンが目の前で見られたり、突然目の前まで滝のようにマグロが押し寄せてきたり、ド迫力なシーンに出会えることもある。この海域のルアー船の船長は、少々大げさながら「ナイアガラ」などと表現するくらいの大ナブラも珍しくない。
ところがこんなナブラでも、大量のイワシのなかからルアーを選ばせるのが逆に難しくなることもあり、目の前にマグロがぼっこぼこに目撃できているのにルアーを見向きもしてくれず、素通りしてしまうことも多い。イワシしか目に入っていないのか、非常にやきもきするのもこのベイトの特徴だろう。
秋~冬はサンマ、トビウオ。他にはフグパターンも
秋から冬場になるとサンマベイトがメインになるのがここ数年のパターンであったが、サンマが減ってきて狙いにくいという声も大きい。
青物でもそうだが、サンマがベイトのときは足が速く、ワンキャストがものをいう。タイミングとコントロール技術が求められる反面、いいところに入ればバイトしてくる可能性が非常に高い。
サンマ同様、キャスティング技術が求められるのがトビウオだ。シーズンを通して目撃できるベイトだが神出鬼没なため、飛び出して落っこちる方向を見極め、素早くキャストする技術が求められる。
ちょくちょく見られるベイトで面白いのがフグの稚魚だ。群れで移動していることもあり、マグロに襲われるとぷっくり膨らんでしばらく浮いていることもあり、白いゴルフボールくらいの球が水面に帯で点在しているのを目撃できることがある。フグの稚魚の群れもキハダに襲われて団子になることがある。足が遅いので、落ちついて団子の際にポチャリとルアーを落とすとバーンと飛び出てくる。
他には潮目でいろんな雑魚やイカ類、甲殻類を捕食しているという状況もある。潮目で釣れたマグロの胃の内容物を確認してみると、同じものが大量に出てくるというより、大小多様なベイトが出てくることも多い。こんな時は確認できる目の前のたんぱく源を辺りかまわず捕食していると考えられるから、ルアーのシルエットやアクションを選ばなくてもヒットする可能性は高いと考察できる。
ただし表面に見える潮目だけではなく、水中の潮目で捕食していることのほうが可能性は高い。そのためトップウォーターではなく、ジギングに適したベイトパターンだといえる。 最後に、20年以上志摩沖で釣りをしてきたが、海の様子はかなり変わってしまったと感じている。
特にベイトとなるイワシやサンマといった小魚が、目に見えて減っているように思う。沖でのゴミ(流れもの)もかなり減っている。環境変化(悪化)で海藻が少なくなってしまったのが大きな原因だろう。また漁具の進化による乱獲も大きな要因だ。ベイトが減れば、当然それを捕食しているフィッシュイーターも減るし、成長も遅くなる。
将来、改善に転じて簡単にいろんな魚が釣りで楽しめるような環境になってほしいと願うばかりだ。
参考タックル
TACKLE 1
ロッド:スミス OLP-S86SH/C4
リール:シマノ ステラSW20000PG
ライン:サンライン PE8 号(プロト)
リーダー:サンライン システムショックリーダー 150lbナイロン
ルアー:フィッシュトリッパーズビレッジ リベルタンゴ・エモシオン180
フック:がまかつ バーチカルヘビー6/0
※50㎏オーバーの可能性が少しでもある時に使用。
TACKLE 2
ロッド:スミス GTK-80SJX
リール:シマノ ステラSW14000XG
ライン:サンライン モンスターバトルPE4 号
リーダー:サンライン システムショックリーダー 100lbナイロン
ルアー:スミス ベビーランブオーEX、A CUP、マグナムサージャー
フック:がまかつ バーチカルヘビー5/0
※タックル2は最大40kg 前後までと確信でき、軽いルアーを強要される時に使用。
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PROFILE
SALT WORLD 編集部
近海から夢の遠征まで、初心者からベテランまで楽しめるソルトルアーフィッシングの専門誌。ジギングやキャスティング、ライトゲームなどを中心に、全国各地の魅力あるソルトゲームを紹介しています。
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