
雨中の激走!今村駿介が独走勝利、総合首位に躍り出る大金星!|ツール・ド・熊野 第2ステージ

せいちゃん
- 2025年05月09日
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5月9日、和歌山県と三重県にまたがる紀伊半島を舞台に開催されている「第25回ツール・ド・熊野2025」は大会2日目を迎え、和歌山県古座川町の古座川清流周回コース(126.7km)で第2ステージが行われた。雨が降りしきる悪コンディションの中、今村駿介(ワンティ・NIPPO・リユーズ)が、終盤に果敢なアタックを敢行し、見事な独走勝利を飾った。この勝利により、今村は個人総合時間賞でも首位に立ち、イエロージャージを獲得する大金星を挙げた。
昨年とは異なる展開、序盤から積極的な動き
前日の第1ステージを制したドゥシャン・ラヨビッチ(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ、セルビア)がイエロージャージを着用してスタートした第2ステージ。舞台となった古座川清流周回コースは、昨年も使用されたが、昨年大会は初日となる第1ステージだった。今年は第2ステージとなり、リーダージャージを着るチームの戦略や、タイム差を挽回したいライバルチームの動きが注目された。
レースは、1周42.6kmのテクニカルな周回コースを3周する設定。序盤から増田成幸(JCLチーム右京)らが積極的に仕掛けるなど、活発な展開を見せる。1回目のKOM(キング・オブ・マウンテン)ポイントでは、山岳賞ジャージを着る鎌田晃輝(JCLチーム右京)のチームメイトである小石祐馬が1着通過し山岳ポイントを獲得。その後、アナトリー・ブディアク(トレンガヌサイクリングチーム、ウクライナ)が単独で先行する場面もあったが、集団はこれを容認せず、再び吸収される。
雨がレースを動かす、中盤の逃げとメイン集団の攻防
レース中盤に差し掛かると、コースには雨が降り始め、路面はウェットコンディションに。1回目のスプリントポイントは、小石が1着で通過し、タイムボーナスとポイントを獲得した。

このスプリントポイント通過後、ムハンマド・ヌル・アイマン・ロスリ(トレンガヌサイクリングチーム、マレーシア)と河野翔輝(チームブリヂストンサイクリング)が2名で抜け出し、メイン集団はこれを容認。タイム差は一時1分30秒近くまで開いた。メイン集団は、前日同様ソリューションテック・ヴィーニファンティーニがコントロールするかに見えたが、地元ホストチームのキナンレーシングチームも積極的に集団牽引に加わるなど、主導権争いが繰り広げられた。
今村のアタック炸裂! 山本元喜との連携でリードを広げる
2回目のKOMポイントを前に、メイン集団から今村駿介(ワンティ・NIPPO・リユーズ)、山本元喜(キナンレーシングチーム)、新開隆人(ヴェロリアン松山)の3名がアタック。雨脚が強まる中、この3名は先行していた2名を捉え、5名での逃げ集団を形成するかに見えたが、すぐに3名に絞られる。
この3名は協力してローテーションを回し、メイン集団とのタイム差を再び1分30秒以上に広げる。2回目の中間スプリントポイントは、山本が1着、今村が2着、新開が3着で通過し、それぞれタイムボーナスを獲得した。
独走態勢へ、今村がライバルを振り切りゴール目指す
最終周回に入り、3回目のKOMポイントが近づくと、逃げ集団から新開が脱落。今村と山本の2名での逃げとなる。KOMを山本が先頭で通過するも、その後の下りで今村が山本を突き放し、独走態勢を築く。
メイン集団は、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニが追走のペースを上げるが、雨で滑りやすい路面とテクニカルなコースが追走を困難にさせる。残り10kmを切っても、今村とメイン集団とのタイム差は30秒以上をキープ。
衝撃のフィニッシュ! 今村が逃げ切り、総合リーダーの座も奪取
残り距離が少なくなるにつれ、メイン集団も必死の追撃を見せるが、今村の力強い走りは衰えない。そして、最後まで逃げ切った今村が、両手を高々と突き上げてフィニッシュラインを駆け抜け、劇的なステージ優勝を飾った。
メイン集団は、約10秒遅れてゴール。集団の頭を取ったのは、前日覇者のドゥシャン・ラヨビッチ。3着にはケイエ・ソーレン(ワンティ・NIPPO・リユーズ、オランダ)が入った。
この結果、今村はステージ優勝のボーナスタイム10秒と、中間スプリントでのボーナスタイム2秒を獲得。前日のタイム差を逆転し、個人総合時間賞でトップに立ち、イエロージャージに袖を通すことになった。

ポイント賞ジャージは第1ステージで2位となった岡篤志(宇都宮ブリッツェン)が繰り下がりで着用していた。第3ステージではドゥシャン・ラヨビッチ(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ、セルビア)がこのスプリント賞ジャージを着用することになる
各賞ジャージ獲得者(第2ステージ終了時点)

- 個人総合時間賞(イエロージャージ): 今村駿介(ワンティ・NIPPO・リユーズ)
- ポイント賞(グリーンジャージ): ドゥシャン・ラヨビッチ(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ、セルビア)
- 山岳賞(レッドジャージ): 鎌田晃輝(JCLチーム右京)
- 新人賞(ホワイトジャージ):ケイエ・ソーレン(ワンティ・NIPPO・リユーズ、オランダ)
レース後の表彰式で、今村は「まさか勝てるとは思っていなかった。雨が降ってきたので、逃げている自分が有利になるかもしれないと思っていた。チームメイトも強いので、明日からもリーダージャージと新人賞ジャージをしっかり守れるように頑張りたい」と喜びを語った。
また、レース中には集団内で落車も発生し、総合優勝候補の1人だったエリオット・シュルツ(ヴィクトワール広島、オーストラリア)をはじめ、リタイアする選手も相次いだ。108名の出走だったものの完走者は88名となり、サバイバルレースの様相を呈した。
明日はクイーンステージ熊野山岳、総合争いは新たな局面へ

大会3日目となる明日は、大会のクイーンステージとも言える「熊野山岳コース」(107.7km)が舞台となる。千枚田の厳しい登りを4度繰り返すなど、獲得標高も大きい難コースだ。イエロージャージを着用する今村の走りと、それを追うライバルたちの激しいアタック合戦が予想され、総合争いは新たな局面を迎える。雨の影響も懸念される中、選手たちの熱い戦いに注目が集まる。
第2ステージ リザルト
1位 今村駿介(ワンティ・NIPPO・リユーズ) 2h55m44s
2位 ドゥシャン・ラヨビッチ(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ、セルビア) +10s
3位 ケイエ・ソーレン(ワンティ・NIPPO・リユーズ、オランダ)
4位 山本哲央(チームブリヂストンサイクリング)
5位 ジェラルド・レデスマ(VC福岡、スペイン)
6位 トム・セクストン(セントジョージ・コンチネンタル、ニュージーランド)
7位 キム・ユロ(LXサイクリングチーム、韓国)
8位 岡本勝哉(チームブリヂストンサイクリング)
9位 ヴァディム・プロンスキー(トレンガヌサイクリングチーム、カザフスタン)
10位 ジル・ドックス(ワンティ・NIPPO・リユーズ、ベルギー)
個人総合成績(第2ステージ終了時点)
1位 今村駿介(ワンティ・NIPPO・リユーズ) 5h51m31s
2位 ドゥシャン・ラヨビッチ(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ、セルビア) +03s
3位 岡篤志(宇都宮ブリッツェン) +14s
4位 ケイエ・ソーレン(ワンティ・NIPPO・リユーズ、オランダ)+18s
5位 ベンジャミ・プラデス(VC福岡、スペイン)
6位 小石祐馬(JCLチーム右京) +19s
7位 テグシュバヤール・バッサイカン(ルージャイ・インシュランス、モンゴル) +21s
8位 ジェラルド・レデスマ(VC福岡、スペイン) +22s
9位 トム・セクストン(セントジョージ・コンチネンタル、ニュージーランド)
10位 山本哲央(チームブリヂストンサイクリング)
ポイント賞(第2ステージ終了時点)
ドゥシャン・ラヨビッチ(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ、セルビア)
山岳賞(第2ステージ終了時点)
鎌田晃輝(JCLチーム右京)
新人賞(第2ステージ終了時点)
ケイエ・ソーレン(ワンティ・NIPPO・リユーズ、オランダ)
チーム総合成績首位(第2ステージ終了時点)
ワンティ・NIPPO・リユーズ
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PROFILE

稲城FIETSクラスアクト所属のJプロツアーレーサー。レースを走る傍ら、国内外のレースや選手情報などを追っている。愛称は「せいちゃん」のほか「セイペディア」と呼ばれている