「アンカーの中の人」にRL9のこと聞いちゃいました(後編)
ハマダ
- 2017年03月13日
アンカー試乗会レポート(前編)に引き続き、今回は後編です。今回の「アンカーの中の人」はブリヂストンサイクルの植田充俊さんです。
アンカーRL9とRL6の「生みの親」
「だれ?」と思うかもしれませんが、RL9とRL6の「生みの親」というとわかりやすいでしょう。ブリヂストンサイクルの設計部に所属し、ある意味だれよりもRL9とRL6を知り尽くす植田さん。両モデルのコンセプトと裏話(?)を話してくれました。
RL9のコンセプトとは?
植田さん(以下U)私がRL9を作るうえで心がけたコンセプトは「軽くてしなやかで、なのによく進むこと」。これを目指しました。
具体的にどの部分を設計するときにそれを意識しましたか?
U 全部は言えませんが、前三角と後ろ三角のバランスの調整がキモです。それに前フォークは快適性を高めるために新設計しました。フレーム形状的には従来よりハンガー下がりを5㎜、リアセンターを5㎜延長しています。これが安定性を生みます。また「フレーム単体」ではなく「自転車の車体全体」でロングライドに向き、速く走れることを意識して作りましたね。25~28Cのタイヤに対応できるようにしたのもそのうちの要素です。
BBまわりの剛性が上がっていると聞きましたが、実際に乗ってみるとむしろ剛性よりもしなりを感じました。
U 「剛性」と「剛性感」の違いでしょうね。剛性は力が加わった際の物体の変形量のことです。RL9の剛性は、数値上(従来のRL8と比較して)約1.2倍にあがっています。しかし人が乗った時に感じる「剛性感」。これはあえてRL8に類似させたしなやかさに設定しています。しなやかな乗り味はそのままに速くする、というコンセプトどおりの正当進化です。
では、アルミモデルであるRL6。こちらのコンセプトは?
U そもそもアルミフレームが生まれた背景には、アルミが前時代のクロモリと比較して、より軽くて剛性をあげることができる素材だったということがあります。アルミは走りのロスを減らすレース機材として進化を繰り返してきました。しかし、昨今はカーボンにその役を譲りつつあります。そこで「現代のアルミに求められるものは、それだけじゃない」と提案する思いで作りました。
「提案型アルミバイク」、面白い考えです。くわしく聞かせてください。
U 「カーボンの前例」としてのアルミは軽く、硬い。それも確かにいいのですけれど。一方で、一般エントリーユーザーが入りやすいようなモデルとして硬すぎない、でもロングライドやイベントなどでも使えるアルミがあってもいいのではないか?と。つまり、RL6は「硬くて軽いだけがアルミの性能なのか?」という質問に対して「いやいや。カーボンに近い乗り味に挑戦することは可能であり、ひとつのテイストとして再現できる」というひとつの回答といえます。
なるほど。これまでの「アルミらしさ」からの脱却といったことですね。
U 前作RFA6でも同様のコンセプトはあったのですが、どこかで「アルミらしさを捨ててしまっていいのか?」という思いは残していました。しかし今回はRL9というカーボンの上位モデルが生まれたことを受けて、RL6はフルモデルチェンジをし、世にいう「アルミらしさ」をガラッと変えるようなテイストにしました。
RL6はロングライドのトップモデルであるRL9の弟分であると言っていい?
U はい。まさにそのとおりです。アンカーには(RL6の)対抗モデルとしてRS6も存在していますので、正当のアルミらしさを求める人はそちらを選んでいただければいいですね。「アルミのあるべき姿はひとつではない」という事例として作ったのがRL6です。
興味深い話でした。最後の質問にして、RS9の「S」や、RL9の「L」はどういった意味なのでしょうか? Lはやはりロングの意味ですか?
U Sはスティフネス(剛性)、Lはラグジェアリー(贅沢な)という解釈です。ですが、たとえばSは「勝利」のSで、Lは「ロングライド」のLと思って頂いても構いませんよ(笑)。
(しばし雑談を交わした後)
U 関係ない話ではあるのですが……。おととしの佐渡ロングライドに、RFX8(2世代前のモデル)のマシンで出たんですよ。もちろん完走はしたんですが、まぁ大変だったんです(笑)。そのときに思ったのが、「やはり少し柔らかいかな?2世代前だしな。これがあともう少し進むバイクだったら、もっとラクに210㎞走れるのかな?」と思いまして…。(RL9を指さしながら)だから私が乗りたいようなテイストにしてみたっていうのはありますね。
え、じゃあ自分好みに作っちゃったんですか? 植田さん用に?
U いやいや(笑)。ちゃんと上層部からのコンセプトがあってそれに沿って作っていますよ。でも自分のようなレーサーではない、ホビーライダーが求めている性能やテイストにしているというのは確かですね。私自身が「ロングライドモデルとしてこうあってほしいな」という思想をちょっとずつ盛り込んで製作していった形がRL9です。すべての人がそれに賛同するわけではないでしょうが、ロングライド好きな多くの人に受ければいいなぁという思いで仕上げました。
なるほど。RL9の意外な出生秘話ですね。
U そうですか? そういえば今の話は他社のメディアさんには言ってないですね(笑)。
では言わないままでお願いします(書きましたけど 笑)。植田さん、ありがとうございました。
インタビュー前に試乗した編集部ハマダのRL6インプレッション
RL6に乗って最初のひと踏みから感じるしなやかな印象は、きわめてカーボンに近い。強く踏み込んで速度を上げていく段階でも、アルミ特有の硬さや反発がほとんど感じられず、これもカーボンに似たしなやかさで加速していくイメージだ。上りに入るとさすがにカーボンと比較して重量を感じる面はあるが、低重心で安定した下りはむしろ好みに感じる。長時間乗れたわけではないが、RL9とは異なるRL6専用設計シートステーの効果か、振動吸収性も普通のアルミフレームよりも優れているように感じる。
「アンカーの中の人」にRL9のこと聞いちゃいました(前編)はコチラから。
問:ブリヂストンサイクル
www.anchor-bikes.com
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