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ARGON18・GALLIUM PRO DISC【ハシケンのロードバイクエクスプローラー】

走れるサイクルジャーナリスト・ハシケンによる100kmインプレッション連載。
気になる最新のフラッグシップモデル1台を徹底的に掘り下げて紹介。
今月は、創業30周年を迎えるアルゴン18の旗艦モデル
「ガリウムプロディスク」の全貌を明らかにする。

当時、カナダのとあるサイクルショップのショップブランドのバイクは、1990年に宇都宮で開催された世界選手権ロードを走っていた。そのバイクこそ、今や世界的なレーシングブランドへと成長したアルゴン18だ。
そして、そのバイクに乗っていたライダーこそ、3度のカナダチャンピオンを獲得するなど通算150勝をあげたプロロードレーサーであり、アルゴン18のCEOを務めるジェルベー・リュー氏だった。
倒産の瀬戸際だったショップを救うため債務ごと経営権を買い取り、現役引退後2カ月で経営者としての歩みを始めた。選手として走ってきたこだわりと、ものづくりへの情熱によってアルゴン18は、世界的なブランドへと成長。
カーボンバイクの開発にもいち早く乗り出し、トライアスロンで3つの世界チャンピオンを獲得。そして、2015年には「ボーラアルゴン18」がツール・ド・フランスに初出場。2017年からは「アスタナプロチーム」をサポートし、区間優勝を果たすなど名実ともにレーシングブランドとしての地位を確立。
現在、カナダのモントリオールを拠点に開発を行っている。そんな同ブランドの顔ともいうべきガリウムのフラッグシップモデルが「ガリウムプロ」。だ。今月は、ディスクブレーキモデルの「ガリウム プロ ディスク」をインプレッションする。

TECHNOLOGY
テクノロジー詳細!
実戦を重視した軽量フレームに独自のテクノロジーを搭載

独自の設計思想によってレーシングバイクの王道を極めた
軽量オールラウンダーのガリウムプロディスク。
独自の3Dヘッドシステムをはじめとするコアテクノロジーに迫っていく。

ヘッド剛性を損なわない
3Dヘッドチューブ

ヘッドチューブエクステンダーが付属。通常、コラムを挟むことでヘッド剛性が損なわれるが、エクステンダー上部にベアリングが挿入されるため、ヘッドとハンドルの距離が近づき剛性を確保できる。一般的なスペーサーと比べて15mmで5%、25mmで11%の剛性アップを実現

ストレートフォークと独自の
クイックシステムを採用

コントロール性を重視し、剛性を確保したストレートフォークを採用。ディスクブレーキ専用設計で、フォーク単体重量は402g。標準的な12mmスルーアクスルを採用し、毎回トルクを管理せずとも適正な締め付けが可能な独自のクイックシステムを特徴とする

3Dヘッドと一体となる
上下異径ヘッドチューブ

上下異径のヘッドチューブベアリングを採用し、ヘッド剛性を高めるプレスフィットヘッドチューブ。上側は3Dシステムの1-1/8インチ、下側に1-1/2インチを採用。フレームサイズによるヘッド剛性のばらつきを解消する

フレーム上下で役割を明確化
HDSテクノロジー

ヘッドチューブの頂点とリアドロップ先端を直線的に結び、上部をコンフォートゾーン、下部をパワーゾーンとして、それぞれの役割を明確にして設計。このホリゾンタル・デュアル・システム(HDS)テクノロジーによって、ペダリングパワーを推進力へと変換しつつ、高い振動吸収性も実現している

快適性能をつかさどる
極細シートステイ

ガリウムプロの特徴でもある極細のシートステイは、シートチューブからリアエンドへとストレートに伸びる。リムブレーキのブリッジを廃して、ホイールクリアランスを拡張。30mmサイズまで対応し、トレンドの太めのタイヤを装着できる

振動吸収性を高める
27.2mmシートポスト採用

27.2mm径のシートポストを採用し、剛性をコントロールし振動吸収性の向上を狙う。アスタナチームカラーモデルを除き、フレームセットにシートボストが付属する

フラットマウント式ディスクブレーキ
ガリウムプロのディスクブレーキ専用フレームには、前後12mmのクイックリリースタイプのスルーアクスルを採用。試乗車には機能美にも優れるカンパニョーロ油圧式ディスクブレーキ「H11」を搭載。フレームとのマッチングも抜群だ。

パワー伝達性を高める
BB86低重心設計のBB下がり

軽量化と剛性アップを両立するBB86規格を採用。また、BB下がりを75mmと低めの設計にするAFS(アルゴン・フィット・システム)を導入し、重心を低く保つことで安定性を追求している

実践を重んじるケーブルルーティング
ケーブルは完全内装とせず、ダウンチューブ上部から挿入され、BB下からディレイラーへとアクセス。プロ機材として、メンテナンス性を重視した実戦的なケーブルルーティングを採用する

ガリウムプロにかぎらず、アルゴン18のすべてのモデルの開発は、「オプティマルバランス(最適化されたバランス)」というコンセプトをベースに設計されている。これは、乗りやすく速いスポーツバイクの追求にほかならない。
その実現のため、フレームの対角線の上下で役割を分ける「ホリゾンタル・デュアル・システム(HDS)」を採用。コンフォート性能とパワー伝達性の両立を可能にしている。ヘッドチューブ背面やダウンチューブには多角面を採用して剛性を向上させつつ、シェイプアップされたシートステーで快適性を高めている。
また、コラムスペーサーの挿入によってヘッド剛性を損なわない3Dシステムも、同ブランドのアイデンティティだ。
さらに、BBの位置を通常よりも5mm下げたジオメトリーを採用するAFS(アルゴン・フィト・システム)により、低重心で安定した走りを実現する。このほか、独自のクイックリリース機構やワイヤールーティングなどプロ仕様の設計にも注目だ。
カーボンレイアップを工夫して設計されたディスクブレーキ仕様のフレーム重量は814g(ペイント済み・スモールパーツ含まず)に仕上がっている。なお、リムブレーキ仕様は759g(同)だ。

GEOMETRY

INFO
アルゴン エイティーン・ガリウム プロ ディスク
41万円(フレームセット/税抜)
■フレーム:HM7050ナノテックカーボン
■フォーク:フルカーボン
■付属:シートポスト(アスタナカラーには付属なし)、ヘッドパーツ、3Dシステムのスペーサー
■サイズ:XXS(44-46)、XS(47-50)、S(51-53)、M(54-56)
■フレーム単体重量:814g(Mサイズ・スモールパーツ込)
■カラー:アスタナ、ブラック/ホワイトグロス
■試乗車参考実測重量:7.05㎏(Mサイズ・ペダルなし)

 

IMPRESSION

高い戦闘力をスマートに宿し
ライダーの意思に従順なレーシングバイク

ツール・ド・フランスで初のステージ勝利を飾った一昨年に続いて、今年は第14、15ステージを連勝。バイクはいずれもガリウムプロだった。この実績十分のモデルのディスクブレーキモデルとともに、走り慣れた都内有数のサイクリングコースへと走り出した。ペダリングのフィーリングを確快なだけでなく、ヘッドからダウンチューブそしてBBにかけて剛性を感じられることだろう。
結果として、トルクを高めていくほどにバイクの挙動は安定感を増していき、レベルの高いパワー伝達性を発揮してくれる。ライダーはレスポンスのよさだけでなく、時速30km前後の中速域からは伸びかめるように徐々にトルクを高めていく。イメージどおりの素早いレスポンスとともに、小気味よくトラクションがかかりだす。ディスクブレーキモデルでフレーム単体重量814gを達成している軽量フレームだけあり、気持ちのいい機敏さを身体に響かせながら加速していく。ポイントは、ただ軽のよさも実感できる走りに仕上がっている。
フレームの剛性バランスがよくトルクをかけやすいので、時速40km前後の巡航性能もストレスがない。さすがに時速50kmに近づくとエアロロードのようなメリットは感じられないが、ペダリングを加速につなげやすいフレーム特性を実感できた。
高速域からコーナーへ進入していく。コラムスペーサーを積んでもヘッド剛性を損なわない3Dヘッドチューブは、このバイクのアイデンティティだが、ビジュアル自体は目立つ機構ではない。しかし、忠実にライダーの意のままにコントロールできるステアリング性能は、この3Dヘッドチューブの恩恵を授かっていることは事実だろう。鋭角コーナーへの侵入も、ディスクブレーキによるスムーズな制動から、重心の低さを生かして安定したコーナリングへと移行していく。
立ち上がりで踏み込めば、トラクションを発揮してダイナミックに加速する。ロードレースでの激しい加減速にも強く、サバイバルなロードレースで性能を発揮するタイプといえる。
クセがなくライダーの意志に沿ってオールラウンドに性能を発揮してくれるレーシングバイクながら、コンフォート性能も持ち合わせている。よくも悪くも剛性が高まる傾向にあるディスクブレーキモデルのなかでも、快適性をうまく融合できており、長距離ライドでもストレスを感じにくいバランスのよさが印象的だ。極細のシートステイと27.2mm径のシートチューブが快適性に寄与しているのだろう。
ひとしきりインプレッションを終えて、ガリウムプロディスクは2つの特性を持ち合わせていると感じる。トッププロが扱う水準の剛性を備えるアグレッシブなピュアレーサーとしての顔と、アマチュアレーサーにも従順な懐の広さを感じさせるスマートさ。トルクをかけたときにに感じる伸びのよさと素直なライドフィール。ディスクブレーキを搭載しつつ、快適性も期待できる極めて実践的なオールランドレーサーだ。

 

IMPRESSION RIDER
ハシケン
ロードバイクをメインにするサイクルジャーナリスト。国内外のレースやロングライドイベントを数多く経験。Mt.富士ヒルクライム一般クラス総合優勝、ツールド北海道の市民ステージ優勝、国内UCIグランフォンド世界大会に出場経験あり。身長171cm、体重62kg

 

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TEXT:ハシケン PHOTO:小野口健太 ウエア協力:サンボルト
問:日直商会 http://nichinao.jp

 

ハシケンのロードバイクエクスプローラーの記事はコチラから。

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PROFILE

ハシケン

Bicycle Club / スポーツジャーナリスト

ハシケン

ロードバイクに造詣が深いスポーツジャーナリスト。国内外のレースやロングライドイベントを数多く経験。Mt.富士ヒルクライムの一般クラス優勝、ツールド宮古島優勝。UCIグランフォンド世界大会への出場経験あり。

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ロードバイクに造詣が深いスポーツジャーナリスト。国内外のレースやロングライドイベントを数多く経験。Mt.富士ヒルクライムの一般クラス優勝、ツールド宮古島優勝。UCIグランフォンド世界大会への出場経験あり。

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