GIANT・TCR ADVANCED SL 1 DISC【ハシケンのロードバイクエクスプローラー】

走れるサイクルジャーナリスト・ハシケンによる100㎞インプレッション連載。
気になる最新のフラッグシップモデル1台を徹底的に掘り下げて紹介。
今月は、ジャイアントのピュアレーシングの血統を継ぐ最新モデル
「TCR アドバンスドSL1ディスク」を徹底インプレッション。

1972年に台湾で誕生した、自転車のOEM事業を手がけていた小さな会社は、今や世界ナンバーワンのシェアを誇るブランド、「ジャイアント」へと成長を遂げた。ちなみに、社名の由来は、台南にある少年野球チームにあやかったものだったという。

1981年には自社ブランドであるジャイアントを立ち上げ、1998年にはチームオンセをサポートしてツール・ド・フランスに初出場。トップブランドの仲間入りを果たし、サクセスストーリーを築いていく。

なかでもトップチューブを傾斜させたコンパクトロードとして生まれたTCRは、現在同社のレーシングモデルとして不動のポジションを確立している。

2019シーズンからは、UCIワールドチーム「CCCチーム」へのスポンサードを行いトップレースシーンで活躍を続ける。現在、ジャイアントのロードラインナップには、エアロロードのプロペル、エンデュランスロードのディファイ、そしてオールラウンドレーサーとしてのTCRなどがそろう。

TCRは2016モデルでのフルモデルチェンジ以降、ディスクブレーキとの融合を果たし熟成の時を迎えている。

今月は最新のTCRアドバンスドSLのディスクブレーキモデルをインプレションする。

TECHNOLOGY
テクノロジー詳細!
最新設計と伝統を融合し剛性を獲得
史上最高レベルの剛性重量比を実現

近年のロードフレームのベースを築いたとも言えるジャイアントのコンパクトロード「TCR」。
その最新テクノロジーを結集した最上級フレーム
「TCRアドバンスドSL」に搭載されるテクノロジーに迫っていく。

軽量高弾性カーボン
「アドバンスドSL」採用

30年以上培ってきたカーボンファイバー技術を有し、プロスペックの最高峰「アドバンスドSL」とハイパフォーマンスグレードの「アドバンスド」という2グレードのカーボンコンポジットフレームを展開。TCRアドバンスドSL1ディスクはアドバンスドSLカーボンを採用。ジャイアントの自社工場でカーボン原糸からハンドメイドされる

ジャイアントの代名詞
「オーバードライブ2」が
高剛性を実現

実績のある上下異形テーパー形状のステアリングコラム規格「オーバードライブ」。上位モデルには、コラム上側1-1/4インチ、下側1-1/2インチとするオーバードライブ2を導入。ねじれ剛性とステアリング剛性を飛躍的に向上させている

ディスクブレーキ専用設計の
シャープなフロントフォーク

シャープな形状のフロントフォークは、リムブレーキモデルを踏襲するディスクブレーキ専用品。軽量でありながらさらなる高剛性を実現し、レースバイクとしての機敏な運動性能を引き出す

剛性を維持しつつ軽量化も追求する
オプティマイズド・チューブ・シェーピング

チューブ形状を極限まで削ぎ落とした「オプティマイズド・チューブ・シェーピング」設計を採用。全体的にスマートなフォルムにあって、ボリュームを確保するダウンチューブは、ねじれ剛性を高める

パワー伝達性向上に欠かせない
伝統の「パワーコアBB」

ペダリング時のパワー効率を最大化するジャイアント独自のパワーコアBB。幅86㎜の独自規格オーバーサイズBBを採用

シンプルなスタイリングで
快適性も追求するリア三角

ムダを削ぎ落としたシンプルなフレームのリアバック設計。重量剛性比を最大化しつつ、中空構造のモノステーは強度と軽さを両立する

新型TCRで新採用された
バリアントISPシートポスト

インテグレーテッドシートポスト(ISP)を採用し、軽さに加えて振動吸収性を向上。シェイプアップされたシートポストには、被せ式の専用シートマストを採用。凹凸が少なくエアロ性能にも優れる

高精度パワーメーター
標準装備

「POWER FOR ALL」を掲げて独自開発を行った左右独立式パワーメーターを標準搭載。左右パワーをリアルタイムに表示可能。専用アプリ「RideLink」から校正やファームウエアのアップデートを行える

鮮やかで深みのある
特別グラフィックを展開

一部のモデルに独特の世界観を演出する特別なカラーグラフィックを用意。光を反射することで深く豊かな色調を表現し、高級感を引き出す

最高グレードの
SLRシリーズコンポーネント

スポークテンションが均一化される「ダイナミック・バランスド・レーシング(DBL)」テクノロジーを採用の「SLR1 42ディスク」ホイール。ハンドル、サドルも、最高グレードのコンタクトSLRシリーズでアッセンブル

軽いだけのフレームは意味をなさない。新型TCR発表の場でジャイアントの開発担当者はそう語っていた。新型TCRアドバンスドSLは、フレームセット重量で前作比12%(マイナス181g)の軽量化を果たしているが、それは結果であり、開発の軸は常に剛性重量比だ。軽さと剛性を両立することでジャイアントが追求する走りは実現する。具体的には、フレーム形成時のカーボンプリプレグの数を減らすことで軽量化を実現。いっぽうで、フレーム各所の集合部を滑らかにつなぐことで剛性を高めている。また、フロントフォークはスリムなストレート形状に再設計し剛性を向上。これら新設計に加えて、「オーバードライブ2」上下異形のテーパードヘッドチューブやシェル幅86㎜の「パワーコアBB」など伝統的で実績十分のテクノロジーを融合。トータルレースバイクとしてのTCRは、軽量化を果たしながら、史上最高レベルの剛性重量比を実現したレースバイクに仕上がっている。

このほかにも、新設計のバリアントISPなど洗練さをいっそうと増している点も見逃せない。ディスクブレーキモデルでは、ケーブル内装化のため専用フレームを用意し、TCRは熟成を重ねている。

GEOMETRY

INFO
ジャイアント・TCR アドバンスド SL1ディスク
完成車価格:68万円(税抜)
■フレーム:アドバンスド SLカーボン
■フォーク:アドバンスド SLカーボン
■ハンドルバー:ジャイアント コンタクトSLRカーボン
■ステム:ジャイアント コンタクトSLR OD2カーボン
■サドル:ジャイアント コンタクトSLR FORWARD
■ホイール:ジャイアントSLR1 42ディスクカーボン
■タイヤ:ジャイアント ガヴィア AC 0 TLR(25C)
■コンポーネント:シマノ アルテグラ Di2
■ブレーキ:シマノ アルテグラ 140mmローター
■サイズ:680(XS)、710(S)、740(M)、770(ML)
■カラー:レインボーブラック
■重量:6.9㎏(サイズS・ペダルなし)

IMPRESSION

ダイレクトなパワー伝達性を発揮する
万能型の軽量オールランダー

トータルレースバイクとして誕生したジャイアント不動のピュアレーサーであるTCRシリーズ。
実走派ライター・ハシケンが「TCRアドバンスドSL1ディスク」の100㎞実走インプレッションを行う。

今回のTCRアドバンスドS L1ディスクは、最上級カーボングレード「アドバンスドSL」を採用するジャイアントの最軽量ディスクブレーキフレームだ。ハンドルまわりとホイールは自社開発で、各パーツのハイエンドグレードがアッセンブルされた贅沢な仕様。メインコンポーネントはアルテグラDi2を採用し、バイク重量は6・9㎏に仕上げている。

さっそく、新緑の丘陵地帯へテストライドに出かける。初速から時速30㎞程度の気持ちのよい巡航域への移行は、カッチリとしたフレーム剛性に支えられたロスのない加速が印象的だ。入力に対するフレームの変形量は多くないため、ライダーがウィップとして気持ちよく感じやすいフィーリングは弱いが、ピュアレーサーとしてのパワーロスのないダイレクトで効率的なパワー伝達性に魅力を感じられる。

トルクの大小にかかわらず流れるようなペダリングが可能であり、とくにトルクをかけたときにはフレームの安定性がより高まり、アグレッシブな加速を楽しめた。そのまま緩やかな登り坂で腰をあげてダンシングに切り替えると、積極的に前方への加速を促してくれるバランスのよさが生まれる。ヘッドチューブからフロントフォークにかけての剛性感が高いことが、登坂での進みのいいダンシングを実現してくれる。

勾配6%ほどの本格的なヒルクライムシーンでも、ライドフィーリングはいい意味で変わらない。平地では進みがよくても、登坂に入ったとたんに一気にネガティブな重さを感じ出すディスクブレーキモデルが少なくないなかで、その差が極めて少ない点は高ポイントだ。レースでは平地の巡航性能よりも登坂性能が勝敗を分けることはいうまでもなく、TCRが登坂にも強いトータルレースバイクであることは極めて重要なファクターと言えるはずだ。

登坂があれば下りもある。ひとしきりヒルクライムを終えたら、長い直線とコーナーが連続するシチュエーションでTCRのダウンヒル性能を改めて感じることにした。ステアリング性能はクセがなくニュートラルだ。Gのかかる高速コーナーでもフワフワとした軽さが一切なく、フロントフォークがグッと路面を捉えながら狙ったコーナーのラインをトレースしていく。まさに期待どおりのダウンヒルを堪能できた。

フォーク形状はストレートではあるが、クイックすぎないコントロール性能は、下りを得意としないアマチュアレーサーにも恩恵があるだろう。また、軽量オールラウンダーながら、高速域でも挙動が安定していて安心して攻めの走りができた点は、シビアなコントロールが求められるレースバイクとしては欠かせない要素だろう。

今回、長く乗り続けているなかで印象を強めていった点が耐久性だ。TCRは中身の詰まった軽量カーボンフレームという印象が強く、他ブランドの超軽量フレームとは随分と印象が異なる。最軽量ながらヤワい感じが一切しない耐久性の高さが特長だ。レースでの安心感はもちろん、日頃のトレーニングでもアグレッシブに乗り続けることができるだろう。

あらゆるシーンで高いパフォーマンスを約束してくれるTCRは、細かいコントロール性能を発揮するディスクブレーキを搭載することで、より戦闘力を高めている。そして、しっかり踏み込んでも応えてくれる登坂性能を武器にした万能型の軽量オールラウンダーへと進化していた。

 

IMPRESSION RIDER
ハシケン
ロードバイクをメインにするサイクルジャーナリスト。国内外のレースやロングライドイベントを数多く経験。Mt.富士ヒルクライム一般クラス優勝、UCIグランフォンド世界大会に出場経験あり。身長171㎝、体重62㎏。『ヒルクライム完全攻略』(エイMOOK)著編。

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TEXT:ハシケン PHOTO:小野口健太
問:ジャイアント www.giant.co.jp

(出典:『BiCYCLE CLUB 2019年7月号』 ハシケンのロードバイクエクスプローラー)

「ロードバイクエクスプローラー」の記事はコチラから。

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