クロモリロードバイク完全ガイド!フレーム素材や特徴からオーダーメイドまで徹底解説

トモヒロ
- 2019年07月13日
クロモリロードバイクの「クロモリ」とは?
クロモリとはカーボンやアルミと同じ素材のことで、それらに並べて言うと「スチール」にあたる。そして、クロモリはスチールのなかに含まれる、「クロムモリブデン鋼」の略だ。したがって、クロモリバイクというと限定的なので正しくはスチールバイクになる。しかし、むかしはスチールバイク=ハイテン(後述)が多く、クロモリは高級モデルにのみ採用されていた。そのためクロモリ=高級品というイメージが付き、憧れの存在としてクロモリという言葉がひとり歩きをした、という流れになっている。
また、よく勘違いされることがあるがスチールと鉄は違う。スチールは「鋼(はがね)」あるいは「鉄鋼」であり、鉄(アイアン:Fe)に添加物を添加した合金だ。そして、添加物の含有率によって性質(物性値)が変わる。
クロモリ=クロムモリブデン鋼
クロムモリブデン鋼は炭素(C)のほかにクロム(Cr)やモリブデン(Mo)などを添加したスチールのこと。アメリカ工業規格ANSIで規定される4130材であり、日本のJISではSCM430に相当。C=0.28~0.33%、Cr=0.8~1.1%、Mn=0.7~0.9%、Mo=0.25~1.15%、密度7.85g/立方メートル、引っ張り強さ670MPaと定義され、元素記号では「Cr-Mo」と示される。
クロモリ以外にもスチールがある
ロードバイクに使用されるスチールには、クロモリ以外にもメジャーなものがいくつかある。
ハイテンション鋼(ハイテン)
比較的安価なスチールで、ママチャリ(一般車)や安価モデルに採用される。JISでは引張強度のみ規定され、SSと示される。高張力鋼ともいう。
マンガンモリブデン鋼
レイノルズ・531で知られる伝説的スチールで、軽さと独特の粘りが特徴。1930年代に開発され、大戦中は爆撃機の胴体材料にも使われていた。
ニッケルクロムモリブデン鋼
クロモリにニッケルを添加し、硬さと粘り、引っ張り強さを増したスチール。カイセイ・8630が有名で、ロウ接時に加熱部のほうが硬くなるという特性をもつ。
その他のスチール
合金という意味では、ステンレスもスチールに含まれる。ちなみにチタンやアルミにも合金があるが、これらは非鉄金属に分類される。
クロモリロードバイクの魅力
カーボンバイクが全盛の時代において、古臭いものと思われがちなクロモリ。だが、一目見ただけで美しいと感じる独特のオーラ、時を経ても色あせない魅力を放っているのもクロモリの特徴だ。さまざまな観点からその魅力を考えてみよう。
シルエットが美しい
予備知識ゼロでも「細くてキレイ」と思えるのがクロモリ。それはスチール(鋼管)だからこそ成立するフレーム構造によるもので、ロードバイクの普遍的価値観を象徴する最大のポイントだ。大径肉薄パイプのアルミや、有機的フォルムのカーボンには決してできない造形美といえる。
ポジションの自由度が高い
ロードバイクはポジションがとても重要な乗り物だ。どんなバイクでもパーツ交換によるポジション出しはできるが、フレームからミリ単位でカスタムして調整できるのはクロモリならではのメリット(カーボンなどでもオーダー可能なブランドはあるが、コストや手間を考えるとクロモリのほうが有利)。
車重が重くても走りは軽い
重さ、という比較をするならカーボンやアルミに軍配が上がる。しかし、手でバイクを持ったときに感じる軽さと、ペダルを踏んで走ったときの軽さ(軽快さ)は別の話。クロモリ独特の粘りは踏み込むほど伸びる不思議な感覚で、高級カーボンバイクよりも好みだという人も少なくない。
どんなライダーにも乗りやすい
先に述べた軽快さも大きな魅力だが、ある程度の重さがあることによって安定性に優れるというメリットもある。とくにロードバイクに不慣れな初心者の場合、軽すぎるハイエンドモデルでは操作がぎこちなくなり、かえって乗りづらいと感じてしまう場合も。独特のしなやかな乗り心地もファンが多い理由だ。
ヴィンテージ派の楽しみ
ロードバイク全体でみれば、クラシックスタイルといわれるクロモリバイク。往年のレーサーや絶版モデルを日々探し求めるヴィンテージマニアや、あえて古いバイクを手に入れてレストアを楽しんでいるサイクリストもいる。長く乗り続けられる素材だからこその、カーボンバイクにはない深淵なる趣味の世界だ。
デメリットはサビ?
物理的な弱点といえばサビ。クロモリバイクは美しい塗装も魅力のひとつだが、それは表面を錆から守るという意味も含まれている(錆に強いチタンやステンレスでは塗装をしない場合もある)。ちなみに、ロウフィニッシュという無塗装風の仕上げがあるが、厳密には酸化膜処理をしたあとでクリア―塗装をしているのがほとんどだ。
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