PINARELLO・DOGMA F12【ハシケンのロードバイクエクスプローラー】
ハシケン
- 2019年07月24日
走れるサイクルジャーナリスト・ハシケンによる100kmインプレッション連載。
気になる最新のフラッグシップモデル1台を徹底的に掘り下げて紹介。
今月は、ピナレロが解き放った注目のドグマ F12のテクノロジーから
ライドフィールまで、その特徴を明らかにする。
1952年にイタリア北部のトレビゾで、ジョバンニ・ピナレロ氏によって創業されたチクリ・ピナレロ社。燦然と輝くビッグレースでの実績に証明される、時代の先端をいくテクノロジーと、圧倒的な人気は、67年の時を経て、その存在は揺るぎないものになっている。近年は、銀河系チームともいえるチームスカイ、そして2019シーズンのチームイネオスとの固いパートナーシップにより、その躍進はさらに加速していく。
そのピナレロのDNAともいうべきフラッグシップモデルがドグマだ。ドグマとは、ピナレロブランドの教義を意味し、まさに同ブランドのアイデンティティであり、絶対的な存在として鎮座する。そのルーツは今から16年前の2002年に誕生したマグネシウム合金ロードのドグマにある。その後、ドグマ60.1や65.1などを経て、2015年にドグマF8が誕生。ロードバイクにおける独占使用権をもつ東レの最高峰カーボン「T1100G」を新たに採用。ジャガー社とのコラボも実現し、空力性能・剛性・軽量化・バランスといった性能を全方位に向上させた。
そして、2016年にはF8比で空力性能を12.6%も向上させたドグマF10へと進化。あれからわずか2年、ドグマはF12へと生まれ変わってわれわれの前にその姿を現すことになった。
限界を引き出すダウンヒル性能と路面を滑走する加速感に心躍る
なんという威風堂々とした存在感だろうか。空力性能を追求した結果の機能美が琴線に触れた前作ドグマ F10とは似て非なる魅力が、その直線と曲線を複雑に融合させたフォルムから放たれている。
今回は、5月に発表されたばかりの新型ドグマ F12を心ゆくまで乗り込むぜいたくな時間を得られた。しかも、今回は前作F 10もそろえてのインプレッションをお届けする。
今回のF12はディスクブレーキ仕様で国内販売されるデュラエースDI2完成車だ。まずは足ならしがてら、フレームの剛性感や反応性を意識しペダリングを始める。前作F10同様、入力に対してフレームに伝わるダイレクト感が高い次元にあることは明白で、パワーのすべてを受け止めるような器の広さを感じることできる。
メイン素材に、高強度・高弾性を特徴とするトレカ1100Gカーボンを採用しているだけあり、ミドルパワーで踏み込んでいるときよりもハイパワーでトルクをかけたときに、このバイクの真価は発揮される。
時速30kmほどでリラックスしながら走り続けてから、トルクを高めて時速45kmほどまで引き上げる。イメージどおりのBB剛性の高さながら、スムーズに加速に変換されるハイレベルなパワー伝達性能も実感できる。
また、フロントフォークがガッチリと路面を捉えるダイレクト感はF10以上のものがあり、推進力を得ると安定感抜群の滑走を生み出していく。この加速性能は超軽量フレームには決して作り出すことができない世界観で、まるで排気量の大きな高級SUVに近いパワフルな加速がライダーをやる気にさせるだろう。
試乗車の実測重量は7.48kg(ペダルなし)であり、ハイエンドモデルとしては特筆して軽いわけではないものの、スペック以上に登坂時のバイクの振りの軽さやリズムの取りやすさに高い感動が得られた。
F8よりもF10、F10よりもF12と、モデルチェンジごとに硬さのなかに踏み抜きやすさが加わっている印象で、ダンシングのしやすさは確実に前作を上わまっているだろう。空力性能に注目されがちなドグマだが、オールラウンダーとしての性能進化を遂げていることを感じる。
その万能性能を決定づける要素が、“ピナレロ・ハンドリング”と呼ばれる安定感のあるステアリング性能だ。コーナーに向けてラインを決めて身体の重心を変化させた瞬間、フロントフォークがビシッとラインをとらえだす。
さらに、タイトなコーナーでバイクを寝かせれば、大経化したヘッドチューブと剛性を向上させたフロントフォークが積極的にリードしてくれた。時速70kmを超えるようなレースの下りで限界を引き出してくれるだろうし、下りが苦手なライダーには安心感を与えてくれるはずだ。“ピナレロ・ハンドリング”は、レーサーだけでなくロングライドやグランフォンドを楽しんでいるサイクリストにもメリットがある。
基本的な運動性能はF10をベースとしていながらも、ドグマのもつストロングポイントをさらに進化させることに成功しているドグマ F12。その実力を100kmのライドのなかで明確に感じ取れた。
INFO
ピナレロ・ドグマ F12
ディスク デュラエース Di2完成車:137万円、ディスクフレームセット:73万円(税抜)
デュラエース DI2完成車:130万円(税抜)、フレームセット:70万円(税抜)
■フレーム:トレカT1100G 1Kナノアロイカーボン
■フォーク:トレカT1100G 1Kナノアロイカーボン
■ホイール:フルクラム・ウインド40C
■タイヤ:ピレリ・P ゼロ ヴェロ
■サイズ:420、440、465、470、500、515、530、540、550、560、575、595、620(13サイズ)
■カラー:ウラノス ブラック/レッド、BOB(F12完成車)、ウラノス ブラック/レッド( F12 DISK完成車)、ウラノス ブラック/レッド、ボブ(F12・F12ディスクフレームセット)
■試乗車参考重量:7.48kg(51.5サイズ・ペダルなし)
※チームイネオスなどのカラーは今後ラインナップに追加予定。
※モスト・タロン ウルトラインテグレーテッドハンドルは別売り
GEOMETRY
テクノロジー詳細!
ハンドルからフレームまでをリファインケーブル完全内装を実現し最速へ
わずか2シーズンでグランツールを4度も制したF10の性能をさらに引き上げることに成功したF12。
ピナレロラボで開発された最先端テクノロジーに迫る。
ピナレロラボに限界という言葉はないのだろうか。ドグマF8とF10で推し進めた究極のエアロダイナミクス性能は、F12になり時速40km走行時のパワーを8Wもセーブすることに成功。さらに、BBからチェーンステーにかけてのBB剛性も10%向上させてきた。
フラットバックエアロチューブにコンケーヴ形状を融合したダウンチューブは、ボトル位置を下げられる工夫を施している。
前面投影面積のうち20%を占めるハンドルは、モスト製の一体型ハンドルをより進化させた「タロンウルトラ」によりケーブルの完全内装化を実現。また、フォークはFEM解析をもって、36パターン以上のサンプルを経て、空力的に優れながら、ディスクブレーキ特有のねじれを前作比で40%も減らす独自のフォークを開発。
トータルインテグレーションを実現する一方で、Di2ジャンクションを統合する「Eリンク」システムに加えて、機械式のフロントディレイラーのケーブル調整ができる専用システムを新たに採用。コクピットまわりも、調整が容易なヘッドセット・スペーサーや、トラディショナルステムも使用できる専用ヘッドキャップを開発するなど、汎用性を高めている。
世界最高の引張強度を誇るT1100 1Kを採用
細部からトータルで刷新8Wのセーブを実現
空力性能を左右するモスト一体型ハンドルはタロンウルトラへと進化
空力性能と剛性を獲得。史上最高のオンダフォーク
デザイナーがスケッチしたスタイリングも空力的、構造的なデメリットを解消
パワー伝達効率を高めるアシンメトリー構造を推進
コンケーヴ(凹型)形状のさらなるブラッシュアップ
10%の剛性向上を実現しパワー伝達効率を高める
IMPRESSION RIDER
ハシケン
問:カワシマサイクルサプライ www.riogrande.co.jp
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