ディスクブレーキ時代到来!ロードバイク乗りが知っておくべき基礎知識

いよいよ本格化してきたディスクブレーキロード。どのブランドもラインナップを充実させている昨今だが、はたしていまは買い時か? 不安、疑問や噂があふれるなかで、その実際を徹底検証してみる!

2016年のパリ〜ルーベにおける事故により、ロードレース界でのトライアル使用が中止されていたディスクブレーキ。長い間使われてきたリムブレーキに対し、そのメリットは語られながらもなかなか普及してこなかった。

ところが、各メーカーはここ数年こぞってディスクブレーキロードを投入。2018年のツール・ド・フランス第2ステージでは、マルセル・キッテル(当時クイックステップフロアーズ)がディスクブレーキロードを駆って優勝し、その注目度は極めて高まっている。

そこで、ディスクブレーキとは何か?これから買うべきバイクなのか?を、ドゥロワーザバイクストアの山路さんに聞いてみた。

ドゥロワーザバイクストア
山路篤さん
工具メーカー、完成車メーカーを経て2010年に「ドゥロワー」を設立。自転車業界の人材を育成するいっぽう、MTBチームも運営。ディスクブレーキに精通している。

不要か否か?リムブレーキよりもおすすめできる理由

「ディスクブレーキというと、ガツン!と急制動してしまう印象があるかもしれません。たしかにパッドがローターを押しつける力は強いのですが、ホイールを止めるための仕事(制動力)は、じつはリムブレーキとほぼ同じなんです」と語る山路さん。

油は非圧縮性流体で、高圧化でも体積変化がほぼないという特性をもつ。これといくつかの物理の法則により、作動しているのが油圧ディスクブレーキだ。そして、ロードバイク用のそれは、リムブレーキの制動力とフィーリングに近づくよう開発されている。

油圧式ディスクブレーキシステムの三原理とは

レバーから入力し、ホース内のフルード(油)を通してピストンに出力する油圧式ディスクブレーキ。小さな指の力を大きな制動力に変換する、倍力装置の秘密がこれだ。じつはリムブレーキも基本的に同じような倍力装置なのだが、伸びるワイヤーと比較してオイルはほぼロスがないので断然有利。しかも摩擦も少ないので引きが軽い、というワケ。けっこうシンプルでカンタンな構造だ。

テコの原理

支点〜作用点に比べて支点〜力点の距離が長いほど、入力はより大きくなって出力される。ディスクブレーキでは左側がレバー(入力)で、右側がピストン(出力)に相当。ロードバイク用は効きすぎず自然なフィーリングでブレーキできるように設計されている。

パスカルの原理

流体が密閉容器中にあり、かつ各分子が静止しているとき、すべての点に同じ圧力が発生するという原理。ピストンには常時同じ圧力がかかっているため、フルードの圧力を上げればピストンにかかる圧力も均等に上がる。

エネルギー保存の法則

仕事(エネルギー)の総和は常に一定という原理。パスカルの原理によって容器内の圧力は一定なので、断面積を10倍にすれば押し出されるピストンの移動量は1/10になり、入力の10倍の力で出力されることになる。

 

ロードバイク用油圧式ディスクブレーキの特徴

上記の三原理によって、指のわずかな力がより大きな力となってピストンを押すことがわかった。レバー比やストローク(レバーの引き代)はロードバイク専用設計となり、直感的な操作ができるように絶妙な味付けがされている。その具体的な工夫をみていこう。

レバー比

支点〜力点(L1 /入力)と支点〜作用点(L2 /出力)の比。ロードバイクに最適化したフィーリングと制動力になるよう設計される。

オープンシステム

よぶんなフルードを貯蔵しておくためのタンク。パッドやローターが消耗したときなどにフルードを供給し、パッドのストロークを自動で調節する。最近ではメジャーなシステム。

ピストン

ピストンまわりは特殊なシールが密着し、レバーを引くと(加圧)ピストンが押し出されてこれが変形。レバーを戻す(減圧する)とロールバックしてピストンが押し戻る構造。油圧式ディスクブレーキのパッドはバネで戻っているのではなく、このシールの変形によって元の位置に戻る。

フィーリング

レバーの引きと制動力の関係図。MTB用(青ライン)は引き始めてすぐに制動力が高くなるが、ロードバイク用(赤ライン)は立ち上がりが穏やかで、レバーを引くほど制動力が高くなる設計を採用している。

制動力

回転軸(ハブ)に近いほど制動に必要な力は大きくなるので、リムよりもディスクのほうがパッドの押す力は大きい。だが、仕事(制動力:力×距離)は、計算上ほぼ変わらないように設計されている。

レバーの引きの軽さと優れた制動力が魅力

最大の魅力は、レバーを引いたときの圧倒的な軽さだ。そして、パッドとローターの摩擦によって回転エネルギーを熱エネルギーに変換し、どんなシーンでも安定したブレーキング性能を実現する。

さらに、熱変換をローターで行うためリムへの熱影響がなく、ホイール(リム)設計の自由度が格段に向上するというメリットもある。流行のカーボンクリンチャーホイールにとっても好都合で、機材としてのメリットは十二分にあるのだ。

デメリットはパーツの互換性が低いことと若干の重量増だが、総じてメリットのほうが大きいといえる。

機械式ディスクブレーキはアリか?

今回は基本的に油圧式ディスクブレーキについて解説しているが、廉価モデルでは機械式(ワイヤー引き)ディスクブレーキもある。おもなメリットとなる引きの軽さや安定した制動力は油がもつ特性に由来しているので、もしディスクブレーキロードを買うなら油圧式をおすすめしたい。

ジャイアントでは機械式レバーで油圧式キャリパーが使える独自システム「コンダクトブレーキ」を開発、展開。油圧式のメリットを手軽に味わえる。
コンダクトブレーキは、ワイヤーを油圧式ホースに変換するシステムをステムキャップに装着。対応モデルはジャイアントホームページを参照。

覚えておきたいディスクブレーキの主流規格

ディスクブレーキロードを購入するときに、いちばんのネックとなるのが「規格」。既存のリムブレーキはもちろん、関連するレバー、ホイール、場合によってはフレームすらも替えなくてはいけないからだ。

完成車で購入すればとりあえず乗ることはできるものの、パーツのスペックアップやアフターを考えると、しっかりと把握して、将来性がある規格を選びたい。

また、キャリパーのマウント方式や、制動力に影響するローターやパッドの規格も覚えておこう。その他の関連規格も紹介する。

エンド幅

フロント(前)/100mm
リア(後ろ)/142mm

ローターが入るスペースを確保するためにエンド幅の拡大が必要となり、ロードバイクではリア142mmが主流に。スルーアクスルという新機構の効果もあって、フレームはより高剛性化する傾向にある。ホイール購入時に関係する重要な規格なので、必ずチェックしておこう。フロントはリムブレーキと同じ100mmだが、スルーアクスルなので互換しない。

マウント方式

フラットマウント(シマノ)

キャリパーをフレームやフォークに固定するための台座の規格。MTBではポストマウントとインターナショナルスタンダードが主流だが、ロードバイクではシマノが提唱するフラットマウントが主流に。これはコンパクトかつ軽量で、フレーム設計がしやすく、ロードバイクならではの小径ディスクローターに最適化した規格だ。各マウントはアダプターを介して対応することもできる。

ポストマウント(PM)

 

インターナショナルスタンダード(IS)

 

スルーアクスル

フロント(前)/12×100mm
リア(後ろ)/12×142mm

クイックリリースよりも軸径が太く、高剛性の車軸。ロードバイクでは軸径12mmのフロント100mm、リア142mmが主流に。ネジやレバーの構造はメーカーによってバラバラだが、基本的にフレームまたはフォークとセットになっている。ホイールをまっすぐ取り付けできるので、じつは初心者にこそおすすめだ。

コンバーター

最近の完組ディスクブレーキホイールには、コンバーターが付属している場合が多い。これを組み替えれば、12×142mmのスルーアクスルでも130mmのクイックリリースでも、同じホイールが使える。

 

ブランド(メーカー)による違い

※2018年現在のデータを一部掲載。現行モデルでは異なる場合があります。

コルナゴ

軸径15mmで、エンドとの勘合部を六角形にすることでねじれ剛性を向上。レバーを回すと先端のフックがエンドにかかり外れを防止。

 

メリダ

軸径12mmのフロント100mm、リア142mmで、ここに紹介するなかではもっともシンプル。レバーを回してエンドに固定する。

 

シマノ

Eスルーと呼ばれる規格。軸径12mmのフロント100mm、リア142mmだが、ネジのピッチが広く、ナットを入れる専用エンドが必要。

 

エンヴィ

右エンドに下向きのスリットがあり、一般的なスルーアクスルよりもすばやく着脱できるスピードリリース。アクスルはマヴィック製。

 

デローザ

レバーではなく5mm六角レンチで回すタイプ。写真(プロトスディスク)は軸径16mmで、ホイールはコンバーターで対応している。

 

クイックリリース固定だとホイールがズレる?

数年前まではクイックリリース仕様のディスクブレーキバイクもあったが、フレーム設計を変更しなければいけないほど制動負荷が高いため、締め方次第ではホイールがズレてしまうことも。また、レバーの締め加減によってローターの位置が微妙に変化し、音鳴りしやすいという面もある。これからディスクブレーキロードを買うなら、スルーアクスルを採用したモデルを選ぶのがおすすめだ。

ディスクローター

フロント(前)/160mm
リア(後ろ)/140mm

MTB用も含めれば、ローター径は203、185、160、140mmというサイズがある。制動力を比較的必要としないロードバイクではフロント160mm、リア140mmが主流(メーカーによっては推奨)。ローター径が大きくなるほど制動力は高く、また放熱性も高い。ハブへの嵌合方式は下記の2タイプがある。

センターロック式
スプロケットを固定するように、ロックリングで固定する方式。交換作業がラク。

 

6穴式
6本のボルトで固定する方式。着脱はやや面倒だが、固定力はバツグン。

ウェーブローターは過去の遺物?

デザイン性が高くクリーニング機能(ギザギザがパッドを削り、ブレーキ面を磨く)もあるウェーブ(波型)ローター。しかし、パッドとの接触面積が小さいため制動力が比較的低いとされ、いまはあまり使われない。

パッド

レジンパッド

ローターを押さえ込むパッドは、モデルによって互換しないので確認が必要。材質はアラミド繊維にさまざまな混合物を混ぜて樹脂で固めたレジンと、銅にセラミックやカーボンなどを混ぜて焼結させたメタルがある。どちらがいいかは好みだが、ローターによって指定される場合も。ロードバイクでは幅の狭いナロータイプが一般的で、放熱フィンを備えたものもある。

レジンパッド

メリット デメリット
コストが低く、メタルよりも音鳴りがしにくい。また、材質が樹脂なのでローターへの攻撃性も低く、長寿命。 樹脂なので熱に弱く、高温状態が続くとフェード現象(制動力低下)を起こす。また、吸水すると制動力が落ちる。
メタルパッド

メリット デメリット
ガツンとした制動力を発揮。金属なので熱に強く、フェード現象が起きにくい。吸水しないので雨天走行も安心。 コストが高く、金属なので音鳴りがしやすい傾向にある。パッドの減りは遅いが、そのぶんローターが摩耗しやすい。

フルード(油)

ミネラルオイル

キャリパーとブレーキホース内に充満しているフルードには、天然のミネラルオイル(鉱物油)と、人工のDOTオイル(非鉱物油)がある。さらにDOTオイルにはシリコーン系とグリコール系があり、いずれも互換しない。キャリパーやホースはミネラルオイルかDOTオイルか指定があり、誤って使用するとシールが損傷したり、ブレーキが効かなくなったりするので注意しよう。

ミネラルオイル
メリット デメリット
吸湿性がなく、安定した制動力を発揮。シマノやカンパニョーロ、マグラ、TRPが採用。DOTよりも攻撃性は低い。 DOTよりも沸点が低い。長い下りなどで高温状態が続くとヴェーパーロック現象が発生し、制動力が一時的に低下しやすい。
DOT(ドット)オイル
メリット デメリット
沸点、耐久性が高く、スラムやMTB用ブレーキが採用。グリコール系にはDOT5.1やDOT4などのグレードがある。 吸湿性が高いため水分を含みやすく、ミネラルよりも劣化が早い。攻撃性が高いので、作業時は手袋が必須。

ブレーキホース

ストレート

ブレーキホースは、キャリパーやレバーの接続方式に規格がある。ロードバイクのキャリパー側はストレートが多く、シマノのレバーもストレートだが、カンパニョーロやスラムのレバーはバンジョーを採用。どちらかに優劣があるわけではないが、それぞれの接続方式は互換しない。ホースにはグレードがあって、剛性が高いものほど高価になる。

ホース先端にインサートピン(右下/シルバーの金具)を差し、筒状のオリーブ(右/真鍮色の金具)を通す。ボルト(中央下)を締めこめばオリーブがかしめられて密閉され、フルードが漏れなくなる構造だ。左の黄色い部品はホースガイドで、ホースをまっすぐカットするために使う。

 

ストレート

バンジョーのような金具がなく、ボルトでキャリパーやレバーとダイレクトに接続するタイプ。シマノの場合、BR-R785以外はほぼホース両端がストレートだ。

 

バンジョー

専用ボルトでキャリパーやレバーの接続部に固定するタイプで、弦楽器のバンジョーのような金具が付いているためこう呼ばれる。MTBではメジャーな規格。

フルードを漏らさないためには、ホースをまっすぐに切るのが鉄則。上記で紹介した黄色いガイドでもカットできるが、自分で作業するときは専用工具を使うのがおすすめだ。シマノの専用カッターはインサートピンの圧入機付きで便利。

魅力的なサードパーティーにも注目

ホースとフルードはミネラルかDOTかで同じものをそろえなければならないが、ジャグワイヤー
にはどちらのフルードにも対応するスグレモノがある。パッドのラインナップやカラー展開が豊富で、制動力も高いのでおすすめだ。

3大コンポブランドの実力を徹底比較

インプレッションライダー

鈴木祐一

現役時代はシクロクロスとMTBで活躍し、現在は自身のショップ、ライズライドを営む。MTBでディスクブレーキ黎明期を経験し、ロードのディスクブレーキも厳しく評価できるライダーだ。

主要コンポーネントブランドのディスクブレーキが出そろったいま、そのフラッグシップモデルの実力がいかほどかを徹底検証してみた。

シマノ・デュラエースR9170

テストバイク
STIレバーはディスクブレーキ&Di2のR9170、前後ディレイラーをDi2のR9150の仕様でインプレッションした。ホイールはディスクブレーキ専用チューブラーのWH-R9170-C60-TUだ。

SPEC
■キャリパー:対向2ピストン ■キャリパーマウント:フラットマウント ■ブレーキフルード:ミネラルオイル ■ローター径:140/160mm ■パッド材質:レジン、メタル(別売り)

レバー

リムブレーキ用のデュアルコントロールレバーとほぼ同じサイズ感を実現。リーチアジャストとパッドが当たるまでの引きしろのフリーストローク調整は無段階で調整可能だ。

ブレーキキャリパー

アルミ素材のコアにステンレスの制動面で挟んだアイステクノロジーフリーザローターを採用。内側の放熱フィンは80℃近くまで熱が上昇しているが、制動面の温度上昇はほとんどみられない。キャリパーはフラットマウントを採用する。

パッド

パッドには放熱のためのアルミフィンを装備する。キャリパーに付属するのはレジンパッド(L02A)だが、制動力と耐久性が高いメタルパッド(L04C)も別売りで用意され、使用条件や好みに応じて選択できる。

 

カンパニョーロ・H11

テストバイク
スーパーレコードEPSをアッセンブルした車両でテストを行った。ホイールはディスクブレーキ専用のボーラワンDB。クランクセットもスルーアクスルのチェーンラインに合わせたものだ。

SPEC
■キャリパー:対向2ピストン ■キャリパーマウント:フラットマウント ■ブレーキフルード:ミネラルオイル ■ローター径:160mm(フロント)、160/140mm(リア)■パッド材質:オーガニックレジン

レバー

油圧機構を内蔵するため上部が延長されているものの、これまでのエルゴパワーの操作感を維持した。パッドがコンタクトするまでのストロークは2段階、レバーのリーチは無段階で調整できる。

ブレーキキャリパー

ローターはセンター部をアルミ、エッジを面取りした制動面をスチールとした2ピース構造でセンターロック式を採用。キャリパーはフラットマウントのみとなる。ローター制動面は45℃まで熱が上がったが確実に放熱されており、余裕のある印象だ。

パッド

オーガニックレジンパッドを使用する。キャリパー内部にはマグネットを装備しパッドを保持するため、ブレーキリリースにスプリングを必要とせず操作性も高い。マグネットによりパッド交換の作業性にも優れている。

スラム・レッドEタップディスク

テストバイク
アルゴン18のガリウムプロディスクをテスト車両として、Eタップディスクをアッセンブル。ホイールはスラムの系列ブランドであるジップ・404ファイアークレストチューブラーディスクだ。

SPEC
■キャリパー:対向2ピストン ■キャリパーマウント:フラットマウント、ポストマウント ■ブレーキフルード:DOT ■ ローター径:140/160mm ■パッド材質:オーガニック

レバー

直感的に操作できる無線通信方式のEタップ用ディスクブレーキレバーは、人間工学から導き出された形状を採用。リーチとパッドコンタクトは、それぞれ無段階で調整できる。

ブレーキキャリパー

センター部をアルミ、制動面がスチールのセンターラインXローターは、6ボルト式とセンターロック式の両者をそろえる。キャリパーもフラットマウントのほかポストマウントも用意。表面積を広げるスリットがあり、ローター制動面の温度は45℃と放熱性も良好。

パッド

ロードバイク向けに設計された専用ブレーキパッドを採用。パッドはオーガニック素材でバックプレートにはステンレスを用いる。パッド交換は脱落防止ピンを外してから、固定ボルトを取り外すことで容易に行える。

制動力曲線の好みと変速システムが選択のポイント!

シマノとスラムはMTBでノウハウを蓄積してきたし、MTBパーツを現在製造していないカンパニョーロはマグラとの協力関係で開発しており、いずれも高い完成度だ。ポイントはロードバイク向けにどう味付けしているか?ということで、その違いは制動力の出し方に表れている。
いちばんリニアに効くのがカンパニョーロ。シマノは引き初めに強めの制動力で、そこから緩やかに効きが高まっていく。スラムは、効き初めがシマノより抑えられた印象。この違いは優劣ではなく、ライダーの好みや乗り方によって選ぶべきだろう。軽く引いただけで制動力が発揮されるシマノやスラムはすべてのライダーに安心感を与えてくれるし、カンパニョーロは、ブレーキを積極的に使ってコントロールしていきたいライダーに向いている。

今回のテストでは、シマノのみ140㎜ローターだったが、放熱フィンをローター内側に設けているから小径でも問題ないということだろう。ローターには放熱性のほかに、熱容量を大きくすることも求められ、カンパニョーロとスラムはそのバランスを考慮して160㎜という選択なのだと思う。

気になるレバー形状については、カンパニョーロはブラケット下側のスペースが広くて握りやすかった。また、変速システムの好みも大事。スラム・Eタップはワイヤレスなのと、コンポーネント全体での軽さも強みだ。ブレーキ性能には注目したいが、実際には総合的判断でコンポーネントを選びたい。

ディスクブレーキとリムブレーキの比較検証

同グレードの2台で制動力と乗り味を比べてみた

ディスクブレーキとリムブレーキの違いは、どれほど体感できるのか? ローター径を変えると何が変わるのか? 同じグレードのロードバイク2台をインプレし、プロライダー目線と一般ライダー目線の双方から、ディスクブレーキの性能を考えてみる。

インプレッションライダー

管洋介(左)

競技歴25年というベテランライダーで、数々のインプレを担当。2018年からアヴェントゥーラサイクリングを立ち上げ、ライディングスクールなども手がける。プロライダー目線でインプレした。

トモヒロ(右)

メッセンジャーとして都内を駆けまわり、ホームセンターで多いときには1日100台も自転車を販売し、いまでは趣味でフレームビルドもこなすイジり派編集部員。今回は一般ライダー目線でインプレした。

 

メリダ・スクルトゥーラ 4000

19万9000円(2018年モデル/税抜)
■フレーム:スクルトゥーラCF2 ■フォーク:スクルトゥーラカーボンプロ ■ディレイラー:シマノ・105 ■ブレーキ:シマノ・RS561 ■タイヤ:マキシス・ドロミテ25C ■重量:8.17kg(ペダルなし/編集部実測)

 

メリダ・スクルトゥーラ ディスク 4000

23万9000円(2018年モデル/税抜)
■フレーム:スクルトゥーラCF2ディスク12 ■フォーク:スクルトゥーラカーボンCF2ディスク12 ■ディレイラー:シマノ・105 ■ブレーキ:シマノ・RS505 ■タイヤ:マキシス・ドロミテ25C ■重量:8.38kg(ペダルなし/編集部実測)

 

どのポジションでもしっかり止まれる

:ブレーキシステムとハブが違うだけで、コンポもタイヤも、サイズも同じスクルトゥーラでの比較インプレ。どうなるでしょう?
トモヒロ:僕はレースはしないし、リムブレーキのほうが使い慣れています。でも制動力の差はたしかに体感できたし、実際、制動距離にも違いが出ましたね。

時速25kmからブレーキしたときの制動距離を比較
ブラケットポジションまたは下ハンドルポジションで、時速25kmから人差し指(同じ力加減)でブレーキしたときの比較。差は数十cmだが、同じ力でもディスクブレーキのほうが制動力が高く、距離も短いという結果になった。

:プロでなくてもわかる明確な違いがありますね。急に止まってしまう恐怖感などはありましたか?
トモヒロ:予想外ですけど、まったくありませんでした。
:制動力が発揮されるまでが滑らかで、ブレーキへの意識と指の微妙な加減がキレイにリンクするからでしょうか。それでいて走行環境を問わない確実な制動力を発揮してくれます。
トモヒロ:スピード調整がしやすく、当て効きもしやすい印象でした。でも、効かせたいときは指1本でもカンタンに止まれるから、安心感が高い。
:手が小さい女性などは、操作性に影響されてポジションが限定的になってしまうケースがあるけど、ブラケットでも下ハンでも操作しやすいのはメリット。ドロップハンドルの特性を生かした走りをより楽しめますね。

操作感に合わせたバイクコントロール

:急制動はしないけど、あるラインを超えてから制動力が高くなりますね。
トモヒロ:むやみにフルブレーキすると、後輪がロックしそうな気はしました。たとえば濡れた路面で走ってみると……あ!ロックした!
:もしフルブレーキするなら、スピードや体重に合わせて後ろ荷重しないと、後輪がロックして滑ってしまいますね。
トモヒロ:制動力が大きいから、リムブレーキよりもカンタンにロックしちゃうということでしょうか。
:雨の下りでブレーキをするときは、強くブレーキングするよりも、軽い引きで微調整するほうがいいですね。不安要素ではないですが、少し慣れが必要かもしれません。

おすすめのローター径の組み合わせ

トモヒロ:ローター径の違いによる差も気になりますね。山路さんによれば、ローター径が1インチ大きくなると制動力は約15%上がる。さきほどのテストでは前後160mmでロックしやすかったですが、リアだけ140mmに替えるとどうでしょう?

ローター径の違いによる制動距離の比較
ブラケットポジションで、指3本でフルブレーキしたときの比較。前後160mmの管は後輪がロックして滑ったため距離が長かったが、後140mmでは両者とも短くなった。ロックしない程度の制動力が望ましいと考えられる。

:おぉ!より自然なフィーリングに!相対的に前ブレーキの制動力が高くなって、リムブレーキの感覚に近づいたイメージです。フレームサイズや好みにもよると思いますが、個人的にはこの感覚のほうが好きですね。

シーンによる使い分け

トモヒロ:レースでの使用についてどう思いますか?
:レーサーはまわりの挙動(加減速など)を予想しながら集団のなかでブレーキするので、挙動が違うと予想がつかなかったり、コントロールがしづらかったりする側面はあります。でも、ディスクブレーキロードが増えて、ライダー側も操作に慣れてくれば、こうしたイメージも変わってくるでしょう。
トモヒロ:ツーリングにもオススメできそうな気がします。
:少ない力でブレーキできるので、ロングライドや長い下りでも手が疲れにくくなるし、雨が降っても制動力が低下しにくい。初心者や手の力が弱い女性にもおすすめですね。

重量と剛性、今後の展望は

トモヒロ:実測値での重量差は210gでした。イメージとしては、ディスクブレーキのほうがガチッとした硬い印象でした。
:僕もです。でもこれ、重量差じゃなくてフレームとフォークの剛性によるものではないでしょうか。
トモヒロ:同じグレードでも、リムブレーキとディスクブレーキでは全然変わるんですね。
:モデルによりけり、としか言えませんが、高負荷がかかるシステムなので必然的に高剛性になりがちだと思います。太めのタイヤにしたり、空気圧を少し落としたりして調整するのがおすすめですね。
トモヒロ:ブレーキが変わることで、バイク全体のバランスが変わる。それに合わせたパーツアッセンブルが必要ということですね。
:高剛性が好きな人はそのままでいいかもしれませんし、だからこそレース機材としては望まれているのだとも思います。
トモヒロ:電動コンポもいまでは普及しましたし、時間がかかるとしてもディスクブレーキ化は必須でしょう。操作がしやすくなることで、ロードバイクユーザーの間口が広がるのはすばらしいことです。
:ホイールの進化も見逃せませんね。完成したと思われたロードバイクを、変えるキッカケになってくれたらおもしろいですね。

知っておきたいディスクブレーキの豆知識

Q.パッドの交換時期は?
A.メーカー指定の最低厚みを参考に

リムブレーキのシュー交換は「溝がなくなったら」だが、ディスクブレーキのパッドは「メーカーが指定する最低の厚さ」が基準。上の写真は摩耗した状態(右)と新品(左)の比較だ。キャリパーの上からのぞいて目視するか、またはパッドを外してノギスで測り、定期的に摩耗状況を確認しておこう。パッドが完全になくなるとベースにローターが食い込んでしまう危険があるので要注意だ。

Q.キャリパーの汚れを落とすには?
A.水で洗うのが正解

走行するとホコリや泥が詰まり汚れてしまうキャリパー。ほかのパーツと同じようにパーツクリーナーで洗う人がいるが、これはNG。パーツクリーナーの成分は油なので、制動力低下の原因になってしまうからだ。ではどうするかというと、水が正解。霧吹きで水を吹き付け、キレイなウエスで拭き取ろう。パッドを外した状態でも、余計な油が付かないように気をつけよう。

Q.ブレーキの音鳴りの解消法は?
A.パッドを洗浄または台座を修正する

音鳴りの原因はおもに2つで、パッドまたはローターが汚れているか、正しく取り付けられていないかだ。パッドとローターをよく洗浄して、それでも音鳴りが解決されないときは、台座をフェイシングしてからに再度キャリパーを組む。ローターに対して左右平行にパッドがセットされていれば、音鳴りは解決されるはずだ。フェイシングは専用工具が必要なので、ショップで作業してもらおう。

Q.ディスクローターって曲がらないの?
A.曲がる。が、修正できる

ローターが歪んだときは専用の修正工具か、なければモンキーレンチで挟んで曲げ直す。加減が難しい作業なので、ビギナーは手を出さずにショップにお願いしよう。ちなみに、曲がる原因はブレーキングの熱によるものがほとんど。軽くぶつかったり、輪行でぐっと押されてしまったりした程度でローターが曲がることはない。

Q.輪行するときの注意点は?
A.レバーを閉じないようにすること

ホイールを外し、パッドの間に何もない状態でレバーを引くと、ピストンが押し出されてローターが入らなくなってしまう。そこでローターの代わりになるパッドスペーサー(完成車やキャリパーの購入時に付属)を挟んでおこう。段ボールなどでも代用できる。もし誤ってピストンが押し出されてしまったら、マイナスドライバーやレンチで押し広げると直せる。

Q.バイクを逆さにするのはダメ?
A.しっかりエア抜きしていれば問題ない

もしブリーディングが不完全でシステム内に空気が入っていた場合、逆さにすると上にあった空気がホース内に浮いてきて、その状態でレバーを動かすと空気をかんだ状態になってしまうのでNG、という話。空気をしっかり抜いてあれば問題ないし、空気が多少入っていても逆さ状態でレバーを動かさなければセーフ。注意すれば輪行も心配せずに楽しめる。

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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