それは進化なのか?【革命を起こしたいと君は言う……】
Bicycle Club編集部
- 2020年04月03日
進化? 退化?
昨今の大型船舶の最新テクノロジーのひとつに「凧」を取り付け推進力の補助にする技術がある。船首部に巨大なパラシュート型のカイト(凧)を取り付け、風向き、進行方向、最短距離等をコンピューターが割出し、もっともよいタイミングでカイトを飛ばし船を引っ張る仕組みだ。
燃料費は年間数億円規模でカットされ二酸化炭素排出も軽減される地球にも優しいすばらしい技術だ……と、ここまで読んで矛盾を感じた方も多いのではないか。
そもそも船舶はマスト(帆)を使った風力で進む帆船の歴史がもっとも長く1世紀近くある。燃料を積んだ船の歴史は蒸気船から200年ほど。もともと船は風力で進んでおり、 風を読みマストを操るのが船乗りだった。これは進化なのか退化なのか?
われわれの輪界は?
昨今のEバイクはどうだろう?選択肢が増えたのには感銘も受ける。また体力的なギャップなく、みんなで楽しめる。いまや子乗せ自転車には不可欠なスタイルだ(私も所有している)。
しかしそもそもの自転車論からは外れていく。たとえば、人力のみに頼ったシステムは失われ、充電が必然となる。二酸化炭素排出も避けられずエコな乗り物というところからも離れざるを得ず、不便が満載だ。
スポーツとして見たときにも、アシストは、限界に挑むようなシチュエーションにおいては、とんだ根性なし(失礼)だ。はたしてサイクリングの感動を共有できるのだろうか。
また、電動コンポーネント(弊社もよく使う)はどうだろう。マヴィックが90年代に発表した電動コンポはスポーツマンシップに反すると競技で禁止となったにもかかわらず、今では各社電動コンポを発表しUCIでも認められるまでになった。
よく考えてほしい。コンマを争うレースでアドバンテージがあるのはわかるが、要は変速操作での、指の動きを別エネルギーに変えているだけだ。そんなことに電気を使わなくてもいいのでは?
スタッフ最速ライダーのS君の最近の悩みは、充電だという。往復80km以上を通勤している彼は、会社、自宅に着いたらまず充電作業となる。ガーミン、ライト、電動コンポ、アイフォーンなど、すべてコネクターも異なる。配線だらけでかなり手間だ。自転車から各機器を外さずにすべて連動させコンセントひとつで充電できるシステムが欲しいとのこと……。
まとめ
今回の件について、正直私のなかに答えも思想もない。しかし、違和感は感じている。エネルギー関連は最大のビジネスでもあるが、私のブランドはもとより、輪界が囲い込まれるのだけは避けたいと願うばかりだ。
自転車はヒューマンパワーを最大限引き出せる世のなかでもっとも効率のいいシステム。それが自転車であり、われわれにとっての正義だ。
数十年たったら「ケルビムの自転車は電気をいっさい使わず人力のみで進めます!」なんてコピーが出てきたりして……。
Cherubim Master Builder
今野真一
東京・町田にある工房「今野製作所」のマスタービルダー。ハンドメイドの人気ブランド「ケルビム」を率いるカリスマ。北米ハンドメイド自転車ショーなどで数々のグランプリを獲得。人気を不動のものにしている
今野製作所(CHERUBIM)
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PROFILE
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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。
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