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GIANT(ジャイアント)・TCRシリーズ|ニューモデルインプレッション

先日発表された、新型GIANT・TCR (ジャイアント・TCR)。 ここでは8代めと9代めを比較。さらにライダー管洋介と編集部山口が試乗、インプレッションとあわせて、NEW TCRの進化をお届けする。

ニューモデルインプレッション
一覧はこちらから

金メダリスト、ファンアーヴェルマートが実戦テストしていた軽量バイク

リオ五輪ロードで金メダルを獲得したグレッグ・ファンアーヴェルマート Photo : Getty Images

じつは9代めTCRはレースにもデビューしていた。2019年の秋にはグレッグ・ファンアーヴェルマート(CCCチーム/ベルギー)が実戦で使っていたのだ。

特徴は軽さ、9代めでは140g軽量化

8代めのTCRでは型押し型のカッターでカーボンシートをカットしていた。いっぽう9代めではレーザーカッターを採用、より無駄がなく精密なカーボンシートを切りだすことで、フレームを軽くすることになる。

9代めTCRの特徴は「軽さ」だ。とくにフラグシップモデルのアドバンスドSL0ディスクでは、ディスクブレーキの完成車で6.6㎏(ペダルなし)という、驚きの軽さを実現している。単純に重さを比較するとフレームで140gの軽量化になっている。

さらに軽さだけではなく、BBに力をかけた際のねじり剛性も確保している。このカテゴリーのバイクは各社がしのぎを削っているジャンルだが、そのなかでもトップクラスの剛性/重量を誇る。

TCRアドバンスドSL 8代めと9代めの重量比較

重量(g) 8代めTCRアドバンスドSL ディスク 9代めTCRアドバンスドSL ディスク 重量差
フレーム 818 765 -53
フォーク 331 330 -1
コーン 7.19 3.64 -3.55
スペーサー 14.37 19.59 -5.22
トップキャップ 15.6 6.6 -9
ISPクランプ 118 103.9 -14.1
フレームペイント 100 50 -50
フォークペイント 25 10 -15
トータル重量差 -140.43

TCRアドバンスドSL0ディスクに使われてるThinLineペイントプロセスはでは従来の7層ペイントに比べて最大50gの軽量化に貢献している。このためISP部分の肉厚が薄くなる分、クランプ部分にGIANT独自の3Mプロテクターを採用してサイズ調整する。

ディスクブレーキモデルとして設計された9代めTCR

TCR=Total Compact Roadがデビューしたのは1990年代。当時奇才と呼ばれたイギリスのマイク・バローズ氏が「コンパクト」デザインのフレーム。いわゆるスローピングフレームの概念を取り入れてデザインした。いまでこそスローピングは軽量化に欠かせないデザインだが、当時はUCIルールに抵触するのではないか? という議論を巻き起こすほどセンセーショナルなデビューだった。

そして、前作となる8代めTCRが開発されたのは2016年。この8代めTCRは当時はまだ主流だったリムブレーキモデルとしてデザインされた。そして、2018年にディスクブレーキモデルが追加された。つまり今回登場した9代めTCRは、20年間続くTCRの歴史の中ではじめてディスクブレーキモデルをメインに設計したモデルなのだ。

8代めTCRアドバンスドSL(2020モデル)

8代めTCRアドバンスドSLディスク(2020モデル)

8代めと9代め大きな違いはフォークが非対称から対称に

左がNEW9代めTCR、右が8代めTCR。写真を比較するとわかるが、9代めではフォークの肩の曲線が緩やかになり、タイヤとのクリアランスが大きくなっている。

8代めと9代め、新旧のTCRを比較すると、フォームが非対称から対象になったことが大きな変更点だ。これはエアロダイナミクスの改良が大きな理由だ。フォークとタイヤ、ホイールのクリアランスを大きくすることで、風の流れをスムーズにするため、フォークの肩が左右で対象になっている。

よりエアロになり40kmで34秒を縮める効果

プレス向けプレゼンテーションでの資料。青が8代め、赤が9代めの断面。

エアロ効果については8代めと9代めのTCRの比較したデータがある。「200Wで40km走ったとすると、タイムを34秒を縮める効果がある」という。ジャイアントにはエアロロード「プロペル」の開発を通して、蓄積してきたエアロダイナミクスに関するノウハウがある。今回も、実際にペダリングをするダミー人形を使い、より最適化された形状を採用した結果だ。さらにエアロダイナミクスの追求のためフレーム断面に、そしてハンドルバーにも「エアロな形状」を採用している。

上の画像が9代めのBBまわり。下の画像の先代よりダウンチューブがワイドになり、形状もエアロダイナミクスを意識した形だ。

エアロになったハンドル形状

プレゼンテーションで、ハンドルの形状の進化について解説するジャイアントジャパンの大友淳さん(商品部企画課)。右が新しいコンタクトSLR、左が従来のコンタクトSLR。

じつはロードバイクの空気抵抗はほぼ究極のレベルまで下げられており、前面の風をうけるところの面積を、あらゆる部分で極限まで減らすことがキーとなる。そこでハンドルの形状にも注目した。TCRアドバンスドSLに採用している、コンタクトSLRハンドルではハンドルバートップと下ハンドルにフレームと同じく「エアロ形状」を採用している。

実際に握ってみると握りやすい下ハンドルの形状

左が従来の丸ハンドル、右がNEWコントロールSLRハンドルバー

下ハンドルをエアロ形状にした下ハンドルを握り心地を比べてみたが、予想に反して違和感はなく、むしろ手にしっくりなじむ印象だった。

TCRらしい反応の良さはチェーンステイの短さとホイールのバランスのよさから

シートステイ長(BBからリアアクスルの中心までの距離)は405mmとなっている。これは8代めから踏襲されている。

TCRでは歴代モデルでチェーンステイの長さを極限まで短くしている。チェーンステイの長さ405㎜は8代めから9代めに踏襲されているが、他のブランドモデルに比べると短いことがわかる。ただし、このチェーンステイを短くすることで、リア三角のねじれを抑え、レースマシンとしてのレスポンスを向上さえている。9代めではこうしたTCRらしさを8代めから継承しながら、さらなるブラッシュアップを図っている。

シートチューブにはホイールとのクリアランスを確保するために凹みを設け、32mm幅(実測)のタイヤを装着できる。

TCRアドバンスドSL(9代め)インプレッション

強力なリア三角の剛性を感じる (管洋介)

ペダリング時の入力したときにダンシングやコーナーリングなどのコントロール時の重心移動に対してキレが良く、つねに軽快な立ち回りを演出してくれるのがSL0の第一印象でした。

踏んだときにクランク位置が1時で軽いタッチで踏み始め、2時‐4時で踏み込んでいくとパワーの駆動を明確に感じられます。これはダウンチューブのねじり剛性の高さと、チェーンステイが短かさによるものだと思います。そして、5時あたりからスッとペダルが抜けていく感触をうけますが、これはBBまわりの剛性が高く、ウイップが少ないために起こるようです。

このため左右の踏み換えが、素早くできるのでロードレースで求められる加減速にレスポンスよく反応できますね。

8代めと比べ、ホイールとパーツなどトータルでの完成度がアップした(山口博久)

ここでは参考までに9代めTCRアドバンスドSLと8代めTCRアドバンスドプロを比較

ヒルクライムで、ペダルを踏んだときにすっと前に出ていくのが印象的でした。休むダンシングをしたときに、チェーンステイとホイールの剛性が高いので、体重を乗せればそのまま前に進む印象です。

完成車では確かに高いと思いますが、カーボンスポークを使ったCADEXホイールがものすごくよく、剛性は高いのに快適という相反する性能をもっているので、アドバンスドSLフレームはホイールとセットがいいですね。

さらに8代めと比較すると、フォークの安定性がよくなっている。とくにダンシングしたときに、左右差を感じないのが印象的でした。TCRはもともとクセがすくないバイクですが、9代めはさらに素直な印象ですね。

さらに今回採用しているハンドル、コンタクトSLRは下ハンドルが握りやすく、エアロ形状で持ちにくいのでは? というイメージとはかけ離れていました。さらにサドルまで含めたトータルで快適さを実現している。

TCR ADVANCED SL 0 DISC

標準価格 : ¥1,200,000 (税抜)
サイズ : 680 (XS)、710 (S)、740 (M)、770 (ML) mm
重量 : 6.6kg(740mm)
カラー : カーボン

 

TCR ADVANCED SL DISC FRAME SET

標準価格 : ¥360,000 (税抜)
サイズ : 680 (XS)、710 (S)、740 (M)、770 (ML) mm
重量 : FRAME / 770g(710mm)、FORK / 340g
カラー : マットクリソコラ
※TCR ADVANCED SL DISC フレームは電動コンポーネント専用設計

 

ニューモデルインプレッション
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管洋介のその他の記事は
こちらから

副編・山口のその他の記事は
こちらから

 

問:ジャイアント
https://www.giant.co.jp/

出典

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PROFILE

山口

Bicycle Club / 編集長

山口

バイシクルクラブ編集長。かつてはマウンテンサイクリングin乗鞍で入賞。ロード、シクロクロスで日本選手権出場経験をもつ。47歳を迎えた現在ではレースだけではなく、サイクリングを楽しむためために必要な走行環境やサイクルツーリズムなどの環境整備などにも取り組んでいる。

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バイシクルクラブ編集長。かつてはマウンテンサイクリングin乗鞍で入賞。ロード、シクロクロスで日本選手権出場経験をもつ。47歳を迎えた現在ではレースだけではなく、サイクリングを楽しむためために必要な走行環境やサイクルツーリズムなどの環境整備などにも取り組んでいる。

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