サイクリングで混雑を避けるには?|スペインの感染予防対策は時間制【 #RideSolo】
山口
- 2020年05月04日
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日本ではコロナウイルス感染症(COVID-19)による外出自粛が5月31日まで延長される見込みだが、各地で混雑を避けるための自粛が呼びかけられている。いっぽう感染拡大の収束の兆しが見えたスペインでは5月2日に外出禁止が解かれ、3月14日以来、8週間ぶりに外でのサイクリングが許された。同様にイタリアでも5月4日から外出が一部解禁となる。
ドイツやオランダなどでは、要件を満たせば日常に必要な自転車での移動、エクササイズは許されている。
いっぽう、コロナウイルス感染症による死者数が拡大したイタリアやスペイン、フランスでは一律に外出禁止、違反すれば逮捕せざるを得ない状況に追い込まれていた。スペインでは5月2日現在、感染者数が24万人、死者2万5000人を越えているが、4月後半から新規感染者数は1日に2000人と減少(最大時には1日に8000人超え)してきたことを受け、ようやく外出が許可された。ここではスペインでの一般人のサイクリング事情をお伝えする。
スペイン政府は身体を動かすことを推奨
成人の場合、朝と夜にスポーツすることが許されている
4月30日、スペイン保健省は、5月2日から解禁となったスポーツに関するルールを官報として発表。これによると、年齢などにより、外出時間を細かく分けることで、ひとの密集による感染、さらに高齢者への感染拡大を狙った対策をしている。この中には「成人集団に対するスポーツの推奨は、1週間あたり少なくとも150分間の中程度の活動、または75分間の活発な活動、またはこれらの同等の組み合わせを実行することと」書かれており、できるだけ身体を動かすことで、身体のみならず、精神的な健康を維持する大切さを訴えている。
人口5000人以上の街では、年齢で時間を分けることで人の密集を分散
まず、人口の少ない5000人未満の町村では時間制限はない。いっぽう、5000人を超える市町村では、年齢によって外出できる時間制があり、プロ以外のスポーツでは午前と午後の割り当て時間のうち、どちらかの1枠しか使えないルールになっている。スポーツや各年齢ごとの時間制は以下の表のようになる。
個々のスポーツとウォーキングは、午前6時から午前10時までと午後8時から午後11時までの間に1日1回のみ実行できる。なお、ウォーキングは家から1㎞以内、1家族2人までと制限される。
さらに70歳以上の人は、午前10時から午後12時まで、午後7時から午後8時まで歩くことができ、成人(14歳から70歳までの方)が同行して外出できる。
また、14歳未満の子どもの場合、正午から午後7時まで、同居する成人が同伴し、最大1時間、家から1 kmを超えない距離に限らている。
ポイントは、高齢者と子どもが同じ時間に外出しないようにすることで、感染拡大を防ごうとしていることだ。
詳しくはあとで述べるが。ここにプロ以外とあるのは、プロ選手は時間制限を設けないと政府内の動きがあるためだ。
ウォーキングの場合は自宅から1㎞以内
サイクリングの場合各市町村から出てはいけない
セルジ・フローレンシアーノ スペインを中心に活動するトーマスバイクツアーwww.thomsonbiketours.comスタッフ
時間制限のほか、外出する際には自分の住んでいる市町村から出てはいけないルールになっている。
スペインでサイクリングツアーのガイドをしているセルジ・フローレンシアーノさんに話を聞いた。
「5月2日、2カ月ぶりに表を走ってきました。私はバルセロナ近くのサンペレデリベスという村に住んでいますが、丘やいい道があるので、走るには十分です。私の場合、妻と娘の3人暮らしで、妻もサイクリストなので、私が6時から8時、妻が8時から10時に走りにいくようにしました。その次の日はグラベルライドを楽しんできました」
というように、ようやく制限のなかで、サイクリングを楽しめるようになったが、遠出することは許されない状態だ。さらに、ルールを要約すると以下のようになっている。
スペインでのスポーツのために外出するときの条件
- 基本1人でおこなうこと。やむをえない場合には、同居者、世帯主、または常時介護者の同伴が許される。
- 社会的距離を2m以上とること
- 感染症の疑いがあるひとや、そのほかの理由で隔離されている場合には外出は許されない
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閉鎖されたスポーツ施設は使用不可。クルマまたは公共交通機関を使用して身体活動を行うことはできない
スペイン車連は混雑を危惧している
プロのみならず時間、移動制限の緩和を要求
5月3日に、RFEC(スペイン王立自転車連盟)が声明を発表。
その内容は保健省の官報にある、「プロやハイレベル登録競技者の規制の緩和される」ことについて正式な回答を待っているとした。この内容はトップ選手に対し、時間の制限の緩和や、州単位で移動ができるようになるといったものだ。さらにこの声明にはエリートサイクリストがこの措置から除外されないことを保健省に要望しているともある。このほか、道路での人の密集を懸念し、その対策として時間的、エリア的な制約を緩和することを保健省に訴えているという。
REFのWEBサイト
https://rfec.com
編集部では“RideSolo”(ライドソロ)をお薦めします
世界中で「ロックアウト(都市封鎖)していない自転車に乗れる国や地域」では、社会的距離をとるために「一人で走る“#RideSolo”(ライドソロ)」が、感染拡大を防ぎつつ健康的に欠かせない運動として自転車に乗る上でキーワードとなる。
この先、各国、地域ごとの事情。そして刻一刻と変化すると状況は変化する。さらにそれぞれ置かれた立場が異なるのでこの“ライドソロ”がいつまでベターな方法かはわからない。今現在(5月4日)、編集部では感染が広がりつつつある地域でできることは、集団ではなく、一人で安全に自転車に乗ることだと考えている。
ただし、これは自主的なもので、決して他人に強要したり非難するものではない。あくまでも安全で、健康的に自分たちが走り続けられる環境を維持するために、自分たちができる行動をしようというものだ。
最後に、基本は健康で安全であること。住んでいる国や地域の自治体からの要請、指示に従うことが前提であることをあらかじめ付け加えさせていただきたい。編集部でもひきつづき#RideSoloをキーワードにヒントとなる情報をアップデートしていく。
※新型コロナウイルス(COVID-19)に関する最新情報は 厚生労働省 や 首相官邸、お住まいの各自治体など公的機関の情報でお確かめください。
参照
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
首相官邸
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/coronavirus.html
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PROFILE
バイシクルクラブ編集長。かつてはマウンテンサイクリングin乗鞍で入賞。ロード、シクロクロスで日本選手権出場経験をもつ。47歳を迎えた現在ではレースだけではなく、サイクリングを楽しむためために必要な走行環境やサイクルツーリズムなどの環境整備などにも取り組んでいる。