通勤自転車が東京・渋谷などで増加、ただし集中による危機的状態は回避【 #RideSolo】
Bicycle Club編集部
- 2020年06月11日
INDEX
バイシクルクラブ編集部ではNPO法人自転車活用推進研究会と共同で「コロナウイルス回復期の通勤通学への自転車利用に関するアンケート」を実施した。
さらに東京工業大学交通研究グループ屋井鉄雄教授(副学長)の協力を得てアンケート結果の解析と同時に東京で自転車の交通量をモニタリングしている。これは自転車通勤、通学の増加により道路の容量を超え、自転車利用者に危険が及ぶ可能性がないかをチェックするためのものだ。
5月26日の全国的な緊急事態の解除以降、通勤のための自転車の交通量は上がっているが、いまのところ大きなトラブルがないので、ひと安心しているところだ。「安全第一に」ということで、以前の記事ではあえて大げさに表現したことはこの場をお詫びするが、動画を見ていただければわかるが、渋谷などターミナル駅を中心に混雑する可能性があることは事実だ。
以前の記事 感染防止で自転車に注目の前に対策を! 自転車通勤推奨の落とし穴
https://funq.jp/bicycle-club/article/589188/
東京・渋谷では緊急事態明けから6月5日まで急増
都内2か所(渋谷区渋谷駅前、台東区大関横丁)の自転車台数の変化
(5月26日~6月9日)
データ東京工業大学屋井研究室調べ(グラフは編集部)。渋谷駅前交差点は道玄坂方向から交差点への進入、大関横丁交差点は都心方向の通行
今回、渋谷駅前交差点と大関横丁交差点(三ノ輪駅前)で朝の定点観察をしたところ、大関横丁の緩やかな増加に対して、渋谷駅前交差点で顕著に自転車の増加がみられた。ただし、6月5日をピークに落ち着いてきたので、自転車増加による道路のキャパシティーオーバーまでは至らずに済んでいる。
参考までにコロナ前の自転車交通量を警視庁が実施した自転車定点調査結果報告書(令和2年2月発表、調査時間は午前7時から午前10時までの3時間及び午後2時から午後5時までの3時間)を調べてみた。渋谷駅前交差点近くの道玄坂下交差点で673台、大関横丁交差点の近く、同じ国道4号の南千住警察署入口交差点で1189台となっていることから、もともと自転車の交通量が少なかった渋谷駅前交差点に自転車が集中したことがわかる。
渋谷から5㎞の国道246号上馬でも徐々に増加
国道246号上馬の自転車台数の変化(5月26日~6月9日)
データバイシクルクラブ編集部調べ。国道246号上馬交差点の駒沢方向から渋谷交方面への進入
同時に編集部でも、渋谷から約5㎞地点、国道246号の上馬交差点をモニターしていたが、やはり5月26日から6月5日をピークに自転車の交通量が増えている。ただし、ここから三軒茶屋まではバス専用通行帯があり、三軒茶屋駅までは比較的安全な走行環境が維持されていた。ただし、以前報告したように三軒茶屋駅から渋谷方向へ向かうと、なかなか厳しい走行環境にあった。
このほか、国道246号と並行して走る、目黒通りについてもRX BIKE(目黒区下目黒)の協力により定点観察しているが、こちらも目立った増加はしていない。
5月26日の様子はこちら
https://funq.jp/bicycle-club/article/592824/
東京のアンケート結果から見えた傾向
10km~15km の中距離勤務者が自転車にシフト
今回、東京工業大学の屋井鉄雄教授の指導
傾向①
- 自転車通勤している人の通勤距離は 1km~5km が多い
- 会社からの自転車通勤の許可を得ており、職場の駐輪場も確保
できている - パート・アルバイトの人が自転車通勤多い
傾向②
- 徒歩通勤している人の通勤距離は 1km 未満が多い
- コロナ禍きっかけで自転車を購入した人は安全確認をしている人もいるが、交通ルールを理解できていない人もいる
- 通勤距離が短いと自転車利用時にヘルメットを着ける人は少なく,自転車への注意意識が低い可能性
傾向③
- 以前から自分の自転車を使っている会社員は(趣味がサイクリング)自転車通勤する傾向
- 交通ルールを遵守してヘルメットを着用して走行
- 雨の日は無理に自転車に乗らず、別の交通手段で移動
結論
- コロナ禍前後で自転車利用者が約 20% 前後増加傾向
- 通勤距離 10km~15km の場合 25% 増加し,中距離勤務者が自転車にシフト傾向
- 短距離移動で自転車を利用している人はヘルメットを着用せず、交通ルールを理解していない人も多い
- 今後自転車利用者増加に伴い、短距離自転車利用者による事故が増える可能性
- 趣味がサイクリングの会社員は比較的安全に自転車通勤できることが考えられる
以上が、斎藤さんによる結論だ。
今回の調査はあくまでも自転車愛好家中心のデータで、平成20年の東京都市圏パーソントリップ調査によると東京都市圏の自転車の代表交通手段分担率は14%となっていることと比較しても、一般的な数値に比べて通勤、通学での自転車利用率が高くなってしまっている。ただし、愛好家のなかでもいままで自転車通勤をしてこなかった5㎞以上の中距離層が、3密の通勤電車を回避するために自転車通勤にシフトする割合は増えることは言える。
アンケート結果
コロナ前と後とでの交通手段の変化
ここからは、バイシクルクラブ編集部ではNPO法人自転車活用推進研究会と共同で実施した「コロナウイルス回復期の通勤通学への自転車利用に関するアンケート」の結果を報告する。ここではコロナ前と後とでの交通手段の変化については、データが十分に集められた都市部のみを発表する。
コロナ前と後での通勤通学の交通手段の変化
(上段) 後 今後、経済活動が再開した場合、通勤や通学の主な交通手段はどうされますか?
(下段) 前 コロナウイルス蔓延前の通勤、通学の主な交通手段はなんですか? 単位(%)
全国
東京エリア
中京エリア
関西エリア
九州エリア
平成22年の国勢調査によると、代表交通としての自転車分担率は全国で11.2%。このほかの政令指定都市では最も高い大阪市で27.8%、それに次ぐ京都市で23.4%、ほか、福岡市17.8%、名古屋市16.6%、さいたま市15.8%、東京都区部14.2%、川崎市10.7%、千葉市11.1%、北九州市7.5%、横浜市5.8%となる。
今回のアンケートはあくまでも自転車愛好家を中心としているため自転車利用率高めにはなる。ただ、コロナ前に比べ、コロナ後では電車から自転車に乗り換える層が多くなっていることは言える。
DATA
期間:2020年5月15日12:00から5月19日24:00まで
アンケート方式:インターネットによる無記名式
回答件数:1,652 件
バイシクルクラブ編集部
NPO法人自転車活用推進研究会
https://www.cyclists.jp/
編集部では“RideSolo”(ライドソロ)をお薦めします
世界中で「ロックアウト(都市封鎖)していない自転車に乗れる国や地域」では、社会的距離をとるために「一人で走る“#RideSolo”(ライドソロ)」が、感染拡大を防ぎつつ健康的に欠かせない運動として自転車に乗る上でキーワードとなる。
外出自粛ながらも日常の健康維持として自転車に乗れることは奇跡的な状況といえる。海外ではサイクリングすらも許されない厳しい事態にまで追い込まれているが、もちろんこうした強制は望ましい状況ではないし、避けないといけない。
この先、各国、地域ごとの事情。そして刻一刻と変化すると状況は変化する。さらにそれぞれ置かれた立場が異なるのでこの“ライドソロ”がいつまでベターな方法かはわからない。今現在(6月11日)、編集部では感染が広がりつつつある地域でできることは、集団ではなく、一人で安全に自転車に乗ることだと考えている。
ただし、これは自主的なもので、決して他人に強要したり非難するものではない。あくまでも安全で、健康的に自分たちが走り続けられる環境を維持するために、自分たちができる行動をしようというものだ。
最後に、基本は健康で安全であること。住んでいる国や地域の自治体からの要請、指示に従うことが前提であることをあらかじめ付け加えさせていただきたい。編集部でもひきつづき#RideSoloをキーワードにヒントとなる情報をアップデートしていく。
※新型コロナウイルス(COVID-19)に関する最新情報は 厚生労働省 や 首相官邸、お住まいの各自治体など公的機関の情報でお確かめください。
参照
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
首相官邸
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/coronavirus.html
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