BRAND

  • Lightning
  • 2nd(セカンド)
  • CLUTCH Magazine
  • EVEN
  • BiCYCLE CLUB
  • RUNNING style
  • NALU
  • BLADES(ブレード)
  • RIDERS CLUB
  • CLUB HARLEY
  • DUCATI Magazine
  • flick!
  • じゆけんTV
  • 湘南スタイルmagazine
  • ハワイスタイル
  • buono
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • Kyoto in Tokyo

未来都市の自転車道ネットワーク、パリ副都心が壮大な自転車都市の実験室に!

コロナ禍のロックダウン(外出禁止令)施行中、パリ地区では三密不可避の公共交通機関回避&自動車による公害の軽減等を目的とした大胆な自転車通勤推奨計画が策定されました。しかし我々日本のサイクリストにとっては、夢の様な、または嘘だろ!と思うような計画ばかり。
例えば、パリ郊外鉄道網(RERV)の路線に沿っての650㎞に及ぶ自転車専用道の設置や、パリ中心部幹線道路における自家用車通行禁止策などなど。それら自転車政策に関する記事を前に執筆した当人の私さえ、実際に計画が実行されるまでは信じない!(笑)と疑っていましたが、嬉しいことにそれも杞憂に終わりそうです。

今回はパリの副都心で行われている自転車ネットワークの話を、パリ在住経験もあるUCI(国際自転車連合)公式選手代理人山崎健一さんが紹介していく。

欧州第2位のビジネス都市が自転車都市実験の舞台

エッフェル塔の後ろに見えるのがラ・デファンス PHOTO: Paris Tourist Office – Photographe : Jacques Lebar

既に中世から街の骨格が完成しているパリ都市部は、景観保護を目的に建造物の高さ制限が厳しい上、そもそも空地も少なく近代的な大企業にとってはなかなか住みにくい町。そこで仏政府は企業らのニーズに応えるべく、1958年にパリのシンボルである凱旋門やエッフェル等から西へ約5㎞、電車で10~15分ほどの比較的人口密度が薄い「ラ・デファンス」地区をルール無用!? の再開発地域に指定。それから約60年経った現在では、国際的大企業の本社高層ビルやタワーマンションが立ち並ぶ、伝統を良しとするフランスにおいてはかなり毛色の異なる地区になっています。

地区の名前だけ聞いてもピンとこないかと思いますが、ツール・ド・フランスのパリ・ステージをTVで観られた方ならば恐らく一度は目にしたことがあるであろう「新凱旋門(グラン・ダルシュ)」をシンボルとした高層ビル街がラ・デファンスです。世界的な監査法人EY社実施の“近代ビジネス地区パワーランキング”によると、欧州ではロンドンに次いて2位の評価を受けています。

後ろに見える白い門が新凱旋門(グラン・ダルシュ)」PHOTO: Paris Tourist Office – Photographe : Marc Bertrand

他の国の都市では、ロンドンの港湾地域を再開発した「ドックタウン」や、お台場が有名な東京の「臨海副都心」が似たような性質と目的を持っていますが、これらが都市中心部からの移動を余儀なくされる“街はずれ感“を若干漂わせるのに対し、ラ・デファンスはパリの中心地に実際に近く、東京に例えた場合、皇居からみての新宿、渋谷、池袋、品川程度の距離感しかありません。

今この「ラ・デファンス」が、世界にお手本を示す自転車都市最終形態⁉へと一気に進化をしています。

雨後の筍の様に設置される自転車専用道路

https://parisladefense.com/en/velos

ラ・デファンス地区の面積は約680ヘクタール。身近な例で例えると「東京ディズニーリゾート」(ランド+シー)の約6.5個分。この地域の71棟のオフィスビルには、約25,000のオフィスが入居し、日中の就業者人口は約18万人。なかなかこの地区全体の雰囲気&規模感はイメージしにくいと思うのですが・・筆者が実際に何度か行ってみて感じた雰囲気は……ずばり人口を4分の1ぐらいにした「新宿副都心」、または人を半分ぐらい少なくした「品川」。昼間は会社員でそこそこ賑やかながら、夜には半分ゴーストタウン化するアレです(汗)。

さて、こんな地区だからこそ出来る非常に攻めまくった官民一体(行政+地区の企業体+自転車連盟)の自転車道路実験が既にスタートしています。

我々サイクリストが自転車専用道路と聞くと、既存の車道幅を圧縮して横に自転車レーンを設ける程度を想像してしまいますが、ラ・デファンスのそれは自転車侵入禁止だった自動車レーンを一つ潰して自転車レーンとし、更に自動車道との間に物理的なバリケードを設置。既にバリケード付き自転車レーンの設置は始まっていますが、この7月にはさらには拡張され、下図の紫ラインにまで設置される予定です。さらにさらに、自転車道には専用照明と新規の自転車向けサイン(標識)も大量に設置し、申し訳程度の施策では決して終わらない徹底ぶり。

動画 ラ・デファンスがビデオで自転車道プランを紹介

極めつけは、ラ・デファンスの地下に広がっていた車道までもが自転車レーンに変貌してしまった事。

下記動画は突如現れた地下自転車レーンを実際に走ってびっくりした一般サイクリスト撮影の映像です。彼らが言っている事を超訳!?すると「まじかよ!すげー広いサイクリングロードが出来てるじゃん!!世の中どうなっちゃってんだ!?まさかこんなに早く自転車道路拡張計画が稼働するなんて思ってなかったぜ!!!」

企業向け地域のラ・デファンスはこれまで車でのアクセスを優先してきたため、自転車にはそんなに優しくない場所でしたが、それがコロナ禍を境に一変しています。

この背景にはやはりフランスを代表するビジネス地区の経済活動が、コロナ禍による影響で停滞するのをなんとしても阻止したいというフランスの危機感と意地を感じます。

そして、この地区限定にみえる計画も、パリ地域圏が推し進める鉄道郊外線に沿った大規模自転車道設置計画(RER V)とも親密かつ有機的に繋がっており、パリ郊外に住むラ・デファンスで働く人々の自転車通勤を大いに促進する事でしょう。

これまでラ・デファンスへ流入していた自転車台数は約5000台/日。ゆくゆくはこれを4倍の20,000台にまで増やそうとしていますが、もしかすると近々目標の上方修正が必要になるかもしれません。

未来に向けての壮大実験にはビジネスの香りも!?

​このラ・デファンスの自転車都市化計画は、自治体による強力な人的+資金的バックアップに基づき、工事を実行する民間ゼネコン企業が(いつもより遥かに)迅速な施工をし、地区の自転車推進団体もロビー活動や啓蒙を積極的に行うという官民協業案件。

具体的な計画実行は5月11日のロックダウン解除後から始まり、7月中には計画している自転車道設置工事&サイン設置を完了させ、6月から9月にかけては「交通量&移動導線の変異」、「事故発生率」、「騒音減少率」、「公害の減少率」、「犯罪率の推移」、「市民へのアンケート」、などを徹底的に調査。

つまり自転車を軸にしているものの、都市インフラの構造を根本的にデザインし直すというかなり野心的な計画。

早くも、10月末には第一次実験結果報告書が完成する予定。

ヨーロッパで急速に進む欧州自転車道

『コロナ禍後の欧州自転車道設置進捗状況』(欧州自転車連盟が6月19日に発表)
  • 左上グラフ 黄色は発表された自転車道路設置計画
    青は実際に設置された自転車道路
  • 31
    EUにある94の大都市中、31の都市がコロナ禍後に自転車道路設置を計画中または設置済み。
  • 28
    ヨーロッパ(≠EU)にある89の「広域都市圏」中、28の都市圏がコロナ禍後に自転車道路設置を計画中または設置済み。
  • 14
    ヨーロッパ(≠EU)にある47の首都中14の首都が自転車道路設置を計画中または設置済み。
  • 右上地図
    コロナ禍後の自転車道路設置計画が最も進んでいるヨーロッパ(≠EU)の国はフランス(5段階評価の5)。

この驚くほどのスピード感で完成する報告書は、自転車を軸にした「ポスト・コロナ版都市計画」を進めたい全世界の都市にとっての指針となる事は間違いないでしょう。

この計画の背景には、世界最大の自転車レース「ツール・ド・フランス」を開催するフランスのプライドもあるでしょうが、腰が重いはずの⁉行政が関わるというのに、この尋常では無いスピード感は一体なんなのか⁉

我々の見えないところで、ポスト・コロナの都市計画ビジネスレースが水面下で始まっているのかもしれません。

引き続き注視していきたいと思います。

 

SHARE

PROFILE

山崎健一

BiCYCLE CLUB / UCI公認選手代理人

山崎健一

UCI公認選手代理人&エキップアサダマネージャー。日本人選手の育成に尽力し、プロ選手からの人望も厚い。バイシクルクラブ本誌では連載「フ●ッキンジャップくらいわかるよ、コノヤロウっ!」を担当。

山崎健一の記事一覧

UCI公認選手代理人&エキップアサダマネージャー。日本人選手の育成に尽力し、プロ選手からの人望も厚い。バイシクルクラブ本誌では連載「フ●ッキンジャップくらいわかるよ、コノヤロウっ!」を担当。

山崎健一の記事一覧

No more pages to load