MERIDA・REACTO TEAM-E【ハシケンのロードバイクエクスプローラー】
ハシケン
- 2020年10月17日
最新の注目モデルをサイクルジャーナリスト・ハシケンが100km徹底インプレッション。
今月は、3年ぶりにフルモデルチェンジを果たし、
第4世代へと生まれ変わったメリダのエアロロード「リアクト」の全貌を明らかにする。
エアロロードのセンターポジションをねらう次世代リアクト
ロードバイクシーンを牽引するメジャーモデルが相次いでフルモデルチェンジを果たしている豊作の2021モデル。世界第2位のシェアを誇るメリダの旗艦モデル「リアクト」も前作から3年の時を経て待望のフルモデルチェンジを迎えた。
2013シーズンからUCIワールドチームに供給を開始して7シーズンめ。2011年に誕生したリアクトの進化は常にトップレーシングシーンとともにあった。世界で戦う第一人者である新城幸也(バーレーン・マクラーレン所属)も今作で3世代を乗り継ぐことになる。国内でも長年にわたり宇都宮ブリッツェンのチームバイクとして活躍している。
そんなグローバルブランドは、およそ半世紀前に台湾で創業し、現在は本場欧州のドイツ・シュツットガルトにあるR&Dセンターで開発され、アジアの自転車中枢である台中で製造される。なお、メリダは「美利達」と表記され、「美しく、どこへでも走っていけて、そして楽しい」という意が込められている。
今月はディスク専用設計としてケーブル完全内装化を実現し、正常進化を果たした第4世代のリアクトが示す次世代エアロレーサーとしての実力を感じてみようではないか。
TECHNOLOGY 【テクノロジー詳細】
ディスクブレーキモデルのみの開発となり、ケーブル完全内装化など細部までアップデート。
新たにカーボン素材CF5を採用するなど
前作を踏襲しながらも再構築された新型リアクトのテクノロジーに迫っていく
完全内装化だけではない数多くの独自テクノロジーが光る
前作に続き、空力性能を高めるメリダ独自のNACAファストバックチューブを採用。エアロダイナミクス性能と軽さを両立する新型リアクトは、東邦、東レ、三菱ケミカルという大手ブランドの炭素繊維を配合したハイエンドカーボンのCF5を採用する。CF5は軽量シリーズ「スクルトゥーラ」での実績もあり、今回初めてリアクトにも投入された。
コクピットはヴィジョンのメトロン5D ACR一体型ハンドルによって、ケーブル完全内装化を実現。フロントフォーク先端のエアロフィンやフレームとのインテグレーションを改良するなど空力性能を向上させながら、フレーム965g、フォーク457gを実現。エアロロードとして一線級の軽さを手に入れている。
いっぽうで、リアクト伝統の快適性もブラッシュアップさせる。振動吸収性を高めるS・フレックステクノロジーを採用するシートポスト、細身のシートステーが快適性を追求。
このほか、ディスククーラーやリアディレイラーのダイレクトハンガーの採用、最大30mmのタイヤクリアランスの確保など細部までアップデートを果たしている。
ディスクブレーキ専用で妥協なきエアロスタイルを構築
最新ヴィジョン メトロン5DとACRシステムで完全内装化
インテグレーションを進めたエアロフロントフォーク
高い空力性能と剛性を両立するNACAファストバックチューブ
マッシブなBBエリアによりパワー伝達性を最大化
ディテールまで突き詰めたエアロデザインのリアバック
Sフレックステクノロジーにリアライトを融合する新設計
剛性アップと脱着を容易にするダイレクトマウントハンガー採用
100km IMPRESSION 【100km徹底乗り込みインプレッション】
最先端のエアロロードへとアップデートされた第4世代のリアクトには、
どのような世界観が広がっているのだろうか。
前作とのフィーリングの違いも交えながら100kmインプレッションへと走り出す
常套句ではなかった快適性と万能性熟成エアロレーサーからの真の回答
リアクトは初代モデルから快適性の高さを謳うエアロロードだった。同時に、登坂も苦にしないマルチパフォーマンスモデルであるとも……。それは今作でも変わらない。しかし、快適性と万能性はライバルメーカーも声を大にするエアロロードの高性能を誇示する常套句でもある。
残暑の熱風を切り裂くようにリアクトを走らせる。55mmハイトのエアロホイール仕様のため、高速域が得意であることは容易に予想されるが、まずは軽めのトルクでペダリングや挙動を確かめる。すると、ローパワーの入力にもスルスルスルと加速していく気持ちよさが身体を駆け抜けていく。
本連載では以前に第3世代(前作)も紹介してきた。明かに前作よりもソリッド感が増し反応性が上がっているが、足当たりは攻撃的ではなく、ストレスを感じずに時速30km超の中速域へ到達する。今作から最高グレードカーボンCF5を採用している恩恵だろう。
ここからグッとトルクを高めて時速45〜50kmを目指して加速していく。腰を上げてダッシュをかけても、エアロロード然としたフォルムからは想像できない軽快な挙動と安心感が印象的だ。これは、全体のバランスのよさと多少のウイップがあるBBまわりが効果的に働いていると推測できる。一瞬のタメを作れるため、トラクションの伝達を実感しやすく、ペダリングのリズムをとりやすい。
結果、不安定になりがちな時速40kmを超えてからのスプリントシーンなどでもバイクを完全に支配下におき続けられるために安心感がもたらされる。剛性一辺倒のエアロロードとは違い、この懐の広さはメリダ独特のテイストだ。
さて、純粋な振動吸収性の高さからくる快適性という点では、今作も伝統のSフレックスシートポストが路面からの突き上げによる振動を減衰してくれている。エラストマー部にリアライトを内蔵してきたところは、メリダならではの発想であり、快適性と融合する先進的構造体とみた。ヴィジョンのメトロン55ホイールも快適性に寄与している。
今作ではACRシステム、新型のディスククーラーやSフレックスなど多くのスペックを積んでいるにも関わらず、フレーム重量もS社のVモデルなどと肩を並べており、軽量エアロロードの部類と言える。低速域でも俊敏さを失わず、登坂シーンでのダンシングもしやすいエアロロードに進化している。軽快な挙動は今回のライドのあらゆるシーンで感じられた。
快適性と万能性。新型リアクトは、これらが謳い文句だけでないことを走りで証明してみせた。ここ2年ほどの間に、ケーブル完全内装化はハイエンドエアロロードのスタンダードになっている。3年ぶりに刷新されたリアクトもそのトレンドを確実に捉えてきたと言える。一見するとフレームのスタイリングに大幅な変更は見てとれないが、細部に目を移せば第3世代からのブラッシュアップが各所に散りばめらている。快適性と万能性を備えたその走りとともに、熟成という言葉がしっくりくる第4世代のデビューだ。
BIKE INFO 【スペック詳細】
メリダ/リアクト チームE
価格:125万円(完成車/税抜)
■フレームセット 36万9000円(税抜)
■フレーム:リアクトCF5カーボン
■フォーク:リアクトCF5カーボン
■ハンドルバー:ヴィジョン・メトロン5Dカーボン
■ハンドルステム:ヴィジョン・メトロン5D ACRカーボン
■ホイール:ヴィジョン・メトロン55(TLR)
■タイヤ:コンチネンタル・GP5000(25C)
■コンポーネント:シマノ・デュラエースDI2
■ブレーキ:シマノ・デュラエース油圧式
■サイズ:47、50、52、54、56cm(フレームセットのみ56cmあり)
■試乗車参考実測重量:7.4kg(サイズ50cm・ペダルなし)
GEOMETRY
問:メリダジャパン www.merida.jp
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