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ロードレース『逃げればラクだし得になる』パワーデータから考えるクリテリウムでの戦術

『逃げればラクだし得になる』という唐突なタイトルたが、ロードレースの一種、クリテリウムで大集団のなかにいるのと、逃げているのとではどっちがラクなのか?
クリテリウムでは選手たちが受けている抵抗の約8割は空気抵抗といわれており、前の選手の影に隠れていればラクだといわれている。ところがレースの場合は、一概に人の後ろにいることがラクだとは限らない。先行して逃げるとラクなケースもあるのだ。

ここでは10月3日に行われたJプロツアー第7回 JBCF おおいたいこいの道クリテリウムをクローズアップ、ピークス・コーチング・グループの中田尚志さんがゲン・コグレさんとともにコーチングしている選手のパワーデータで解説する。

果たして、逃げるとラクなのはホントなのか?

クリテリウムの逃げと集団

大会一日目は45kmのクリテリウム。1kmの周回コースを45周します。
GPSデータでコースレイアウトを確認すると、1kmの間に180°ターンを含むコーナーが5つもあり、スピード変化の激しいクリテリウムになることが予想されます。

パワーデータを確認するとバックストレートでは時速55kmを超えた後、180°ターンで一気に減速し時速は20km以下へ。そして次のコーナーへと強烈なインターバルがかかっているこことが分かります。

映像とパワーデータからレースを振り返ってみましょう!

おおいたサイクルロードレースの中の1レースとして行われたJプロツアー。昨年はUCI公認の国際レースとして開催されましたが、今年はコロナウイルスの感染拡大を受けJプロツアーの一戦として開催されました。

例年5万人の来場者を数えるビッグイベントですが、今年は感染対策を行った上で基本的に無観客試合で行われました。しかし大会はJ:COM大分ケーブルテレコム、Youtubeをはじめ複数のメディアで生中継され、全国から視聴者を集めることとなりました。

集団内の小坂選手はダッシュを繰り返している

小坂選手 クリテリウムは絶え間なくダッシュが繰り返される(緑がスピード、ピンクがパワー)
こういったコースでは集団の中に居るとコーナーの度に700Wを超えるようなダッシュを繰り返すことになります。

逃げている阿部選手はペースに変動が少ない

阿部選手 逃げに乗っているために集団にいるよりも加減速は緩やか

一方逃げに入ると空気抵抗を一身に受けて足を使う反面、コーナーでは足を使わないように加速するので、集団に居るときほどダッシュは激しくありません。

スピードの変化の激しいクリテリウムでは、集団内でもダッシュを繰り返す必要があるために、通常のロードレースでの平坦コースほど逃げに対して集団のメリットは大きくないことが分かります。

詳しく見ていくと「逃げ=有酸素」「集団=無酸素」を使っている

上の図は宇都宮ブリッツェンから出場した小坂光選手と阿部嵩之選手のスピードのデータをかさねたものです。阿部選手は序盤から二人で飛び出しラスト4周まで逃げ、小坂選手はケガ明けの為、集団内で好機を狙っていました。

二人のデータを比べると逃げの阿部選手は減速が少ない安定した高速巡航をしていて、集団内の小坂選手はコーナーダッシュ後のスピードは逃げの速さを凌いでいることが分かります。

無酸素能力を使う集団内の小坂選手

小坂選手 集団内でコーナーダッシュの繰り返し。赤い線(無酸素パワー)が高く伸びている。

有酸素能力を使う逃げている阿部選手

阿部選手 逃げているためコーナーダッシュは少なく、グラフ内の緑、赤の有酸素能力をたくさん使っている

さらにパワーデータを見ると、阿部選手は有酸素能力(高速巡航)をたくさん使い無酸素能力(ダッシュ)をセーブしていること。小坂選手は無酸素能力(ダッシュ)を繰り返し、有酸素能力をセーブしていることが分かります。

スピード変化の激しいコースでのクリテでは集団のメリットは平坦のロードレースほど大きくはありません。クリテでは集団内にとどまり風を避けることが必ずしもラクということではなく、小坂選手は無酸素能力を沢山使い、有酸素能力をセーブ。逃げた阿部選手は有酸素能力を沢山使い無酸素をセーブしたということです。
ラクもしくは疲れるというよりも疲労の種類が異なるわけです。

パワーデータにはパワーはもちろんスピード・心拍・標高・ケイデンス・GPSなど様々な情報が記録されます。パワーデータは選手がどのように走ったか?レースにはどういった能力が必要かまでを教えてくれます。

小坂光(宇都宮ブリッツェン)

1988年生まれ 2017年シクロクロス全日本選手権優勝。オフロードからオンロードまでマルチな活躍を見せる。宇都宮市役所に勤務する公務員レーサーでもある。

https://www.blitzen.co.jp/team/blitzen/kosaka_hikaru/

阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)

https://www.blitzen.co.jp/team/blitzen/abe_takayuki/

データはトレーニングピークスを使用
http://tpks.ws/Y3U34CXTDKCFVTI4FEYTRMETSU

中田尚志 ピークス・コーチンググループ・ジャパン

https://peakscoachinggroup.jp/
ピークス・コーチング・グループ・ジャパン代表。パワートレーニングを主とした自転車競技専門のコーチ。2014年に渡米しハンター・アレンの元でパワートレーニングを学ぶ。

中田尚志の著書「ロードバイクのパワートレーニング」

こちらからお読みいただけます

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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