CANYON・AEROAD CFR【ハシケンのロードバイクエクスプローラー】
ハシケン
- 2021年01月13日
INDEX
キャニオンが過去最高の開発費を投資して生み出したとされる新型エアロード。
フルモデルチェンジとなる第3世代は
エアロロード全盛の時代にどのような存在感を示すのか!?
6年ぶりに満を持して登場した革新的エアロレーサー
世の中が急速にオンライン時代へと突入した2020年。以前よりその時代を先取りして革新をもたらしてきたメーカーこそ、オンラインによるメーカー直販形態を築き、グローバルでシェアを伸ばしているキャニオンバイシクルだ。
ドイツ西部の街コブレンツの郊外へとクルマを15分ほど走らせると突如として巨大なファクトリーが姿を現す。ライン川とモーゼル川が合流する風光明媚な土地に本社工場を構える。
キャニオンは、ローマン・アーノルド氏によって2002年に創業した新興ブランドながら、またたく間にトップレースで成功を収め、グランツールとアルカンシェルのタイトルを獲得。
2020シーズンも、モビスターチーム、アルペシン・フェニックス、アルケア・サムシックなど複数の有力チームをサポート。今秋に開催されたロンド・ファン・フラーンデレンではマテュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)がスプリントで優勝した。彼が乗っていたバイクこそ、今もっとも注目の新型エアロードCFRだ。
ロードラインナップには、軽量オールラウンドモデルのアルティメット、ロングライドモデルのエンデュレース、そしてエアロロードのエアロードが展開される。
エアロードは2010年にキャニオン初のエアロロードとして誕生して以来、ホアキン・ロドリゲス、アレハンドロ・バルベルデなどの愛機として活躍。今作は6年ぶりのフルモデルチェンジだ。
ディスクブレーキ化によるエアロロード全盛の時代に入り、メーカーの新作はどれもエアロダイナミクスを追求。そのなかで、新型エアロードCFRは、どのような進化をとげているのか。100kmにわたる実走インプレッションを経てキャニオンの新型エアロードを徹底的に紹介していく。
TECHNOLOGY
革新的なテクノロジーが満載の新型エアロード。独創的なコクピットまわりやシートポストに
焦点を当てつつ、大幅にアップデートされた独自の最新エアロテクノロジーに迫っていく
エアロフォルムに隠された革新的テクノロジーが新型の真の武器
およそ4年前に立ち上がった新型エアロードの開発プロジェクトは、キャニオン史上最高の開発費が投入された。そして、元ザウバーのF1エンジニアたちによって設立されたスイスサイド社との協業によって、ハイレベルなCFD解析を可能にし、合計22回のテストループを経てフレーム設計を最適化。前作比でじつに7倍のテストを実施して誕生した。
また、ダミーレッグを開発し、現実世界でのペダリングによる風の流れを考慮。±20度のヨー角テストにより横風を味方につけるセーリング効果を獲得するなど、過去最高のエアロダイナミクス性能を実現。
そのエアロフォルムに隠された革新的なテクノロジーのひとつはハンドル幅と高さを自在に調整可能な新型エアロコクピットだ。
ハンドル幅の調整幅は最大40mm。高さもコラムカットせずに15mm調整できる。
いっぽうで、セルフロック式により万が一クランプネジが固定されてなくても、ハンドルがコラムに対して正面を向いて固定されるため安全性も確保されている。
さらに、内装クランプ式の、2層構造のエアロシートポストも空力と快適性に加えて軽さも実現する革新的な構造を採用する。
ジオメトリーは従来モデルからスタックを9mm高く、リーチを5mm短くし、幅広いライダーに乗りやすく変わっている。
スイスサイド社との共同開発により高度な空力性能を追求
空力を高めつつ新素材を採用剛性14%向上、170g軽量化
ライドスタイルに合わせてハンドル幅を自由に調整可能
高さ調整もできるフル内装一体型エアロハンドル
軽さと快適性向上を実現する2層構造によるシートポスト
整流効果を最大限に引き出すコンパクトリアバック設計
100km IMPRESSION
フルモデルチェンジを果たしたキャニオンの新型エアロード。
独創的な機構を搭載する次世代モデルを100kmインプレッションした
独創的な機構を感じさせない熟成感を持つエアロロード
また同じようなエアロロードが登場したな。やや乱暴な言葉選びだが、新型エアロードの初見の印象は、今シーズン続々と登場した他社のエアロロードと似ているというものであった。もちろん、前作から比較的長い歳月が流れたぶんだけ、前作からの進化ぶりは一目瞭然ではあったが、初見の驚きはそれ以上でもそれ以下でもなかった。
ところが、公式のオンラインプレゼンテーションを聴くなり、革新的機構が搭載された独自性たっぷりのバイクであることを知る。ハンドルの分割機構や高さの調整システムなど、独創的すぎて一気に興味が増していった。
そして迎えたテストライドの日。凛とたたずむ新型エアロード。早朝の冷気を切り裂きながら走り出す。ダウンチューブはじめ全体的にエアロロード然としたボリュームのあるフレームが剛性を高め、力強くペダリングを受け止めてくれる印象だ。しかし、ただ剛性が高いわけではない。
ペダルの踏み込みのタイミングに合わせてスッスッと体重を乗せていけば、意に反して穏やかな加速感を得られ、数秒後には高速域へナチュラルに到達する。踏み込みのフィーリングにはフレームのボリュームを感じるが、脚あたりは比較的マイルドだ。わずかに粘りを感じるほどで、圧倒的なボリュームを実現するBBまわりからは想像がつかないが、そのわずかなウィップ感がペダリングの調律をとってくれている。
エアロハンドルの両ウイングが分割式でネジ留めされている点や、高さ調整が可能な独自機構がどのようにライドフィールに影響を与えるのか不安があった。この点が気になる人も多いはずだが、私も走り始めは先入観からどことなく不安を感じていた。しかし1時間も走っている間に特殊な機構のコックピットであることをすっかり忘れていたほど違和感はない。穏やかなペダリングフィールとは異なりコクピットまわりの剛性は高めで、時速40kmを超えた高速クルージングでの安定性は抜群だ。
テストバイクの完成車に標準装備されるDTスイスの1100ダイカットモデルは空力性能にすぐれるが、その恩恵も存分に感じつつ、いつもであれば脚を休められないスピード域や緩斜面走行でもトルクをゆるめて確実に脚を休められた。これは実際のレースシーンでも大きなアドバンテージになることは間違いない。
フォークを含めたヘッドまわりの剛性は高く、いざ腰を上げてスプリントをかけてみれば、フロントまわりでリードしてくれる印象があり、この日初めて乗るバイクとは思えない切れ味鋭いスプリントを繰り出すことができた。
フレームのボリューム感に反して乗りやすく、コントロールしやすい新型エアロード。その秘密が路面の微振動をいなしてくれる快適性の高さだろう。快適性はホイールとタイヤに依存しやすいが、2層構造のシートポストが前作までにはなかった高いコンフォート性能を引き出してくれていることは確かだろう。
わずか100kmのテストライド。そう思えるほど、ふだんのテストコースの高速巡航はラクに感じられ、フレーム全体で振動を減衰してくれる乗り心地のよさを終始感じられるライドになった。
6年ぶりの沈黙を破って登場した新型エアロードは、前作を踏襲するというよりは、まったく新しいスタイルのエアロードであると言っていいだろう。そして、このエアロードCFRは、その革新的な機構を携えて次世代のエアロロードのフロントランナーとしての価値も生み出すことに成功している。まさにセンセーショナルで独創的なエアロロードだ。
ロードバイクシーンは、ディスクブレーキ化にともないエアロロード化も急速に進んだ。そして、2021モデルはどのブランドもその熟成が進んだ。
そのなかにあって、新型エアロードCFRはド真ん中の生粋のエアロロードとして、2021モデルのエアロロードを代表するモデルと言っては言い過ぎだろうか。それほど全方位に熟成を果たしていることを実感することになった。
SPECIFICATION
CANYON/AEROAD CFR DISC DI2
価格:909,000円(完成車/税抜)※配送料別
■フレーム:東レ・M40Xカーボン(915g)
■フォーク:キャニオン・FK0060 CF ディスク(425g)
■ハンドルバー:キャニオン・CP018エアロコクピット
■コンポーネント:シマノ・R9150デュラエースDI2
■ブレーキ:シマノ・R9170油圧ディスク
■ホイール:DTスイス・ARC1100ダイカット
■タイヤ:コンチネンタル・GP5000(25mm/28mm)
■パワーメーター:シマノ・FC-R9100-P
■サイズ:2XS、XS、S、M、L、XL、2XL
■カラー:CFRステルス/ CFRクローム
■試乗車実測重量:7.14kg(サイズXS、ペダルなし)
GEOMETRY
問:キャニオンバイシクルズジャパン www.canyon.com
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