マリアローザだけじゃない! ジロ・デ・イタリアの各種タイトル|ロードレースジャーナル
福光俊介
- 2021年05月19日
vol.6
実はタイトル満載!
ジロならではのユニークな賞とは
国内外のロードレース情報を専門的にお届けする連載「ロードレースジャーナル」。今回は、熱戦展開中のジロ・デ・イタリアから、知られざる各賞について。個人総合時間賞の証であるマリアローザは誰もが知るところだが、ジロにはこの大会ならではのユニークな賞がいくつも存在する。そこで、大会が公認する各賞とそのルールについて紹介。今後のレース観戦にぜひ役立ててほしい。
個人4賞とチーム賞
大多数のステージレースで採用される、個人対象の4つの賞とチーム賞について。これらは首位の選手に贈られる特別賞ジャージ(リーダージャージ)や、特別カラーのナンバーカードなどに反映されるので、レース観戦時には判別しやすいというメリットもある。
個人総合時間賞/マリアローザ
各ステージ終了時点で、初日からの総所要時間が最短の選手が個人総合首位として表彰対象となる。そして、全21ステージを通しての総計で最も短時間で走り切った選手が、最終的に個人総合優勝となる。
個人総合首位の選手に贈られるバラ色のリーダージャージは「マリアローザ」と呼ばれ、大会の公式新聞であるガゼッタ・デッロ・スポルトの紙面カラーに由来する。
第10ステージ終了時点で着用しているのは、エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)。
ポイント賞/マリアチクラミーノ
スプリンターにとっての最高名誉。各ステージの途中で設定される2度の中間スプリントポイントと、フィニッシュ時に付与されるステージポイントとの合算で、最も多くポイントを稼いだ選手に贈られる。こちらもマリアローザ同様に、各ステージ終了時の首位選手も表彰対象となる。基本的にはスプリンターが争う賞ではあるものの、ステージ構成や全体のレース展開によっては総合系ライダーが上位を占めるケースもある。
ジャージカラーのシクラメン色にちなみ、「マリアチクラミーノ」と呼ばれる。第10ステージ終了時点で着用しているのは、ペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ、スロバキア)。
なお、ポイント配分は以下のように設定されている。
ロードレースステージの中間ポイント(各区間2回・上位8人)
12、8、6、5、4、3、2、1
ステージポイント
平坦ステージ(上位15人):50、35、25、18、14、12、10、8、7、6、5、4、3、2、1
丘陵ステージ(上位10人):25、18、12、8、6、5、4、3、2、1
山岳ステージ、個人タイムトライアルステージ(上位10人):15、12、9、7、6、5、4、3、2、1
※平坦ステージ(第2、5、7、10、13、18ステージ)、丘陵ステージ(第3、4、6、8、12、15ステージ)、山岳ステージ(第9、11、14、16、17、19、20ステージ)、個人タイムトライアルステージ(第1、21ステージ)
山岳賞/マリアアッズーラ
登坂区間を難易度に応じて5つにカテゴライズし、ポイント化。頂上に設定される山岳ポイントの通過順位に基づきポイントを付与し、その合算で争われる。ジロでは、1級から4級までのほかに、最高標高地点を「チーマコッピ」として高配点がなされる。2021年大会は第16ステージで上るパッソ・ポルドイの標高2239mにセッティングされる。
リーダージャージのカラーは青で、「マリアアッズーラ」と呼ぶ。第10ステージ終了時点での着用者はジョフリー・ブシャール(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、フランス)。年によって、山岳逃げを得意とする選手が獲得したり、個人総合争いと並行して上位陣が袖を通したりとさまざま。今年は果たして。
なお、ポイント配分は以下のように設定されている。
チーマコッピ(上位9人):50、30、20、14、10、6、4、2、1
1級(上位8人):40、18、12、9、6、4、2、1
2級(上位6人):18、8、6、4、2、1
3級(上位4人):9、4、2、1
4級(上位3人):3、2、1
ヤングライダー賞/マリアビアンカ
個人総合時間賞における、25歳以下で最上位につける選手に贈られる。2021年大会は1996年1月1日以降に生まれた選手が対象となる。近年は若い選手の台頭が目立っており、グランツールでも個人総合時間賞とヤングライダー賞を同時受賞する選手も増えてきている。
ジャージカラーは白。「マリアビアンカ」と呼ばれる。第10ステージ終了時点で着用しているのは、エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)。
チーム総合時間賞/スーパーチーム
各ステージ、チーム内上位3選手のフィニッシュタイム合算で争われる。各選手の個人総合順位は関係なく、各ステージをいかに速く走るかが上位進出のポイントとなる。
第10ステージ終了時点でトップに立っているのは、イネオス・グレナディアーズ。
ジロ・デ・イタリア独自の賞
ここからはジロならではのタイトルを紹介。リーダージャージや特別カラーのナンバーカードはないが、いずれも大会最終日のポディウムでは授与式が行われる名誉あるものばかり。各賞の獲得条件なども説明していく。
中間スプリント賞/トラグアルド・ヴォランテ
ロードレースステージで2回設定される中間スプリントポイントの上位通過5選手が対象。1位通過から10、6、3、2、1ポイントが付与され、その合計で争われる。
逃げを得意とする選手が有利で、第10ステージ終了時点では今大会の逃げ常連となっているシモン・ペロー(アンドローニジョカトリ・シデルメク、スイス)が首位に立つ。
逃げ賞/フーガ
逃げた距離をポイント換算し、その合計で競う。条件としては、10人以下の逃げグループで、メイン集団に対して5km以上リードした時点でカウントがスタート。4賞ほどのインパクトではないものの、この賞を狙う選手も存在する。
こちらも、第10ステージ終了時点での首位にはペローが立っている。
複合賞/コンバッティヴィータ
フィニッシュ順位、中間スプリントポイント通過順位、山岳ポイント通過順位をそれぞれポイント化し、その合計でランク付けする。最大配点は1位フィニッシュの6ポイントだが、中間スプリントポイントと山岳ポイントも高めに配点されており、逃げで魅せるとフィニッシュ配点よりも高得点が得られる場合も。
こちらも、第10ステージ終了時点での首位はペロー。なお、配点は以下の通り。
フィニッシュ(上位6人):6、5、4、3、2、1
中間スプリントポイント(上位5人):5、4、3、2、1
チーマコッピ、1級山岳(上位4人):4、3、2、1
2級山岳(上位3人):3、2、1
3級山岳(上位2人):2、1
4級山岳(上位1人):1
フェアプレー賞
各チーム0点からスタートし、ルール違反をするとポイントを加算。実質の減点方式で、合計得点の少ないチームに賞が贈られる。
第10ステージを終えた時点では、トレック・セガフレード、グルパマ・エフデジ、EFエデュケーション・NIPPO、バーレーン・ヴィクトリアス、イスラエル・スタートアップネイション、チームDSM、ボーラ・ハンスグローエ、ユンボ・ヴィスマ、ロット・スーダルの9チームが0点で並ぶ。また、第6ステージでチームカーが選手に接触し、運転していたチームマネージャーが失格となったチーム バイクエクスチェンジが、現在350点で最下位となっている。
違反に伴う配点は以下の通り。
警告:1回あたり0.5
罰金:10スイスフランあたり1
タイムペナルティ:1秒あたり2
選手降着、チームカー降格:100
失格:1000
ドーピング:2000
福光 俊介
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。
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PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。