レース序盤の大クラッシュで波乱の1日はカンペナールツの逃げ切り勝ち|ジロ・デ・イタリア
Bicycle Club編集部
- 2021年05月24日
ジロ・デ・イタリアの第15ステージが現地5月23日に行われた。リアルスタート直後に多くの選手が巻き込まれるクラッシュによってレースが一時ストップした波乱の1日は、仕切り直し直後の逃げに乗った選手たちによるステージ優勝争い。最後はヴィクトール・カンペナールツ(チーム クベカ・アソス、ベルギー)が、オスカル・リースビーク(アルペシン・フェニックス、オランダ)との一騎打ちを制してグランツール初勝利を挙げた。個人総合首位のマリアローザはエガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)がキープしている。
アドリア海上のラグーナで大規模クラッシュ発生
前日に“魔の山”モンテ・ゾンコランを上った選手たちは、一転してアドリア海に面したグラードの街からこのステージを開始。島になっている街の中心部からスタートすると、ラグーナ(潟湖)を渡るようにして本土入り。そこからはワンウェイルートを走ったのち、中盤から4級山岳ゴルニェ・セロボを含んだ31kmの周回コースを2周半。この間、一時的にスロベニアに入国をしながら、フィニッシュまでの距離を減らしていく。終盤は、残り3kmでの無印の登坂や最後1kmで現れる石畳が特徴。スロベニアとの国境の街・ゴリツィアにフィニッシュラインが敷かれる147kmのステージだ。
レースを前に、第13ステージで勝ったジャコモ・ニッツォーロ(チーム クベカ・アソス、イタリア)が出走しないことを発表。今後の目標に向けて、再調整に入ることを明らかにしている。
158選手がコースへと繰り出しリアルスタートを迎えると、3kmほど進んだラグーナの途中で大規模なクラッシュが発生。前方では逃げ狙いのアタックが次々と発生していたが、コミッセールによってレースをいったん中断。このクラッシュには、個人総合6位でスタートしたエマヌエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグローエ、ドイツ)も巻き込まれ、負傷もありその場から動けない様子。再スタートまで約25分かけて状況を整え、後方に取り残されていた選手の復帰やけがの手当てを行ったが、ブッフマンを含む3人がその場でリタイア。一度は走り直したルーベン・ゲレイロ(EFエデュケーション・NIPPO、ポルトガル)も集団から遅れ、その後レース続行を断念している。
数キロのニュートラル走行ののち再スタートが切られると、15人が逃げることを容認され、そのまま先頭グループを形成。さらに4人が追走を試みたが、これは集団へと引き戻されている。メイン集団は早々にイネオス・グレナディアーズが統率し、前を行く選手たちをそのまま逃がす構え。残り100kmを切ってからは10分以上の開きとなり、ステージ優勝争いは先頭グループにゆだねられることが濃厚になった。
ステージをかけた争いは、残り30kmで本格化。最終周回に入ってリースビークやカンペナールツらが立て続けにアタック。簡単には決まらなかったが、残り22kmでのカンペナールツのアタックによって、すぐに反応できたリースビークとアルベルト・トレス(モビスター チーム、スペイン)が追随。3人がリードする形で最後の4級山岳の上りへと入ると、頂上を目前にトレスが脱落。この頃に強い雨が降り始めて、カンペナールツとリースビークはリスクを負いながら下りを攻めていく。追走グループとの差を一気に広げることは難しいもののも、路面状況も相まって一定のリードを保ちながら逃げ続けた。
残り距離が7kmを切ると、リースビークが断続的に攻撃してカンペナールツを引き離しにかかるが、いずれも失敗。代わってカンペナールツが残り3kmの上りでアタックに転じるが、一度は離されかけたリースビークが粘って残り1kmで再合流。結局2人はマッチスプリントで勝負することになった。
そして残り250m、番手につけていたリースビークの加速でスプリント開始。前を譲ったカンペナールツだったが、冷静にチェックすると、再度抜き返してその勢いのまま一番にフィニッシュラインを通過。今大会は再三再四逃げを試みていたが、ついに勝利をゲット。チームとしても第11ステージのマウロ・シュミット(スイス)、第13ステージのニッツォーロに続く今大会3勝目。一足先に大会を去ったニッツォーロに頼らない各選手の積極性が生きている印象だ。
逃げた15人がそのまま上位を占め、メイン集団は強まる雨に対処するべくセーフティーを選択。終盤の下りでは意識的にペースを落として、確実にフィニッシュラインを通過する形をとった。これにより、個人総合上位陣はリタイアしたブッフマンをのぞいて全員集団内でフィニッシュ。マリアローザのベルナルはじめ、順位には大きな変動は起きていない。
新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)も、個人総合3位につけるダミアーノ・カルーゾ(イタリア)を守りながら走り切り、メイン集団内の37位でステージを完了している。
24日に行われる第16ステージが第2週の最終日。ドロミテ山塊をめぐる今大会のクイーンステージで、標高2000m超の山岳を3つ上る、獲得標高約5700mのハードな1日。サチレをスタートしてすぐに1級山岳ラ・クロセッタを登坂。一度下って、中盤から1級山岳パッソ・フェダイア(登坂距離14km、平均勾配7.6%、最大勾配18%)、今大会最高標高地点「チーマ・コッピ」の標高2239mパッソ・ポルドイ(11.8km、6.8%、10%)、1級山岳パッソ・ジャウ(9.9km、9.3%、14%)と立て続けに上る。最後の登坂であるパッソ・ジャウは10%級の勾配が長く続き、総合争い勃発は必至。頂上通過後は約17kmのダウンヒルを経て、コルティナ・ダンペッツォへとフィニッシュする。レース距離は212kmに設定される。
ステージ優勝 ヴィクトール・カンペナールツ コメント
「最終局面はクレイジーだったが、それ以上にスタートをどうこなすかが重要だった。チームはすでに2勝を挙げていて最高のムードだが、残りのステージからも美しい結果を得たいと思っていた。逃げグループが形成された時点で私たちのチームが最も人数を送り込むことができていたので、彼らとともに勝利を目指した。その通りの結果になり、チームとしても3勝目を挙げられて本当にうれしい。
今シーズンはロードレーサーとして異なるアプローチが求められていた。フィリッポ・ガンナだけでなく、レムコ・エヴェネプールやワウト・ファンアールトの存在が大きく、タイムトライアルで結果を出すことが難しくなりつつある。今大会もタイムトライアル(第1ステージ)では上手くいかなかったが、このグランツール初勝利によって晴れてロードレーサーになれたと思う」
個人総合首位 エガン・ベルナル コメント
「(逃げを行かせて)後ろを走っていた私たちにとっては楽な1日だった。終盤は風雨が強かったが問題はなく、集中して走ることができていた。明日は決定的なステージになると思う。寒くなるとの予想なので、防寒着が山岳での戦いには重要となりそうだ。チームメートにとっても長く難しいステージになると思うが、心身ともに準備はできていると思う」
ジロ・デ・イタリア2021 第15ステージ 結果
ステージ結果
1 ヴィクトール・カンペナールツ(チーム クベカ・アソス、ベルギー)3:25’25”
2 オスカル・リースビーク(アルペシン・フェニックス、オランダ)ST
3 ニキアス・アルント(チームDSM、ドイツ)+0’07”
4 シモーネ・コンソンニ(コフィディス、イタリア)ST
5 クイントン・ヘルマンス(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、ベルギー)ST
6 ダリオ・カタルド(モビスター チーム、イタリア)ST
7 バウケ・モレマ(トレック・セガフレード、オランダ)+0’09”
8 アルベルト・トレス(モビスター チーム、スペイン)+0’44”
9 フアン・モラノ(UAEチームエミレーツ、コロンビア)+1’02”
10 マキシミリアン・ヴァルシャイド(チーム クベカ・アソス、ドイツ)ST
37 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+17’21”
マリアローザ(個人総合成績)
1 エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア) 62:13’33”
2 サイモン・イェーツ(チーム バイクエクスチェンジ、イギリス)+1’33”
3 ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)+1’51”
4 アレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プレミアテック、ロシア)+1’57”
5 ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・NIPPO、イギリス)+2’11”
6 ジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード、イタリア)+3’03”
7 レムコ・エヴェネプール(ドゥクーニンク・クイックステップ、ベルギー)+3’52”
8 ダニエル・マルティネス(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)+3’54”
9 ロマン・バルデ(チームDSM、フランス)+4’31”
10 トビアス・フォス(チーム ユンボ・ヴィスマ、ノルウェー)+5’37”
86 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+1:54’16”
マリアチクラミーノ(ポイント賞)
ペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ、スロバキア)
マリアアッズーラ(山岳賞)
ジョフリー・ブシャール(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、フランス)
マリアビアンカ(ヤングライダー賞)
エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)
チーム総合成績
トレック・セガフレード
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