新星パデュンが超級山岳で実力者撃破、マイヨジョーヌはポートへ|クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ
Bicycle Club編集部
- 2021年06月06日
フランス南東部で開催されているUCIワールドツアー、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネは現地6月5日に第7ステージを行った。今大会最初の超級山岳が含まれた1日は、最後の約5kmを独走したマーク・パデュン(バーレーン・ヴィクトリアス、ウクライナ)が総合上位陣を振り切ってステージ優勝を果たした。個人総合争いにも変化が見られ、ステージ2位のリッチー・ポート(イネオス・グレナディアーズ、オーストラリア)が順位を上げてマイヨジョーヌに袖を通している。
24歳パデュンがUCIワールドツアー初勝利
サン=マルタン=ル=ヴィヌーからラ・プラーニュまでの171.5kmに設定された第7ステージは、中盤に上る超級山岳コル・デュ・プレ(12.6km、7.7%)と、最後に上る超級のラ・プラーニュ(17.1km、7.5%)が大きなポイントに。コル・デュ・プレと直後の2級山岳コルメ・ド・ロズランは、先に控えるツール・ド・フランスの第9ステージでも採用される。そして、頂上のフィニッシュめがけてラ・プラーニュの上りで激戦が予想された。
リアルスタートからハイペース進んだレースは、70km手前で5人がリードしたのをきっかけに数人がパックを形成して追走。やがて9人が逃げの態勢を整える。コル・デュ・プレやコルメ・ド・ロズランで人数を絞り込んで、ラ・プラーニュを前に先頭は5人になった。
この間、メイン集団は前との差を3分程度にとどめて進行。主にモビスター チームがペーシングを担って、ラ・プラーニュへと入っていった。
先頭では、ラ・プラーニュの入口でミケル・ヴァルグレン(EFエデュケーション・NIPPO、デンマーク)がアタック。単独で上りを進んでいくが、残り13kmでピエール・ロラン(B&Bホテルズ KTM、フランス)、さらにケニー・エリッソンド(トレック・セガフレード、フランス)が追いつき、ヴァルグレンをかわして2人で先行する。
しかし、この上りに入ってイネオス・グレナディアーズがコントロールを始めると、逃げる選手たちとの差はみるみる縮まり、残り10kmを前にすべて吸収。ロランとエリッソンドもそのまま下がっていった。それからは有力選手間の駆け引きが激化。残り9kmで前日の勝者アレハンドロ・バルベルデ(モビスター チーム、スペイン)がスピードを上げると、遅れる選手が続々と表れる。さらに、バルベルデが引き終えたタイミングでポートがアタック。これにパデュン、エンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)、セップ・クス(ユンボ・ヴィスマ、アメリカ)が追随した。
この4人は少しずつ後ろとの差を広げていき、そのままステージ優勝争いへ。1kmほど進んだところでパデュンがアタックすると、これに続いたのはクスのみ。ポートとマスはペースを維持しながら、淡々と進む。
そして、残り5kmを切ったところでパデュンが再びアタック。これでクスを振り切ると、完全に独走へと持ち込んだ。
前の4人を行かせたメイン集団からは、ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)やベン・オコーナー(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、オーストラリア)が追撃。さらにミゲルアンヘル・ロペス(モビスター チーム、コロンビア)も続き、オコーナーとともにポートとマスのところまで追いつく。
こうした後ろの混戦をよそに、トップはパデュンで変わらず。最後までしっかり踏み続けて、頂上フィニッシュに一番に飛び込んだ。
そしてステージ2位争い。ポートとロペスがマス、オコーナーを振り切ると、前を走っていたクスもパス。さらにポートはロペスを置いて単独走へ。そのまま後続との差を広げて2番目に頂上へと到達。この後ロペス、終盤追い込んだジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス、オーストラリア)と続き、マイヨジョーヌのルツェンコらメイン集団でレースを進めていた選手たちも次々と上り切った。
超級山岳を制したパデュンは、プロ4年目の24歳。これまで小さいレースでの勝利はいくつか挙げてきたが、ビッグレースとなるとジロ・デ・イタリアやブエルタ・ア・エスパーニャでのステージ上位が最高。これがUCIワールドツアーでの初勝利となり、フィニッシュ後は喜びを爆発させた。
もう1つの焦点、個人総合争いは大きくシャッフル。ステージ2位のポートが5つランクを上げてトップに浮上。最終日を前にマイヨジョーヌ奪取に成功。ジャージを明け渡したルツェンコが17秒差の2位、ポートのチームメートであるゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)が29秒差の3位で続いている。いまだ、総合タイム差1分以内に7人がひしめく大混戦だ。
なお、中根英登(EFエデュケーション・NIPPO)は38分21秒差の129位でフィニッシュ。レース後のツイートでは、「人生で一番キツくて苦しかったと思われるステージ。キツ過ぎてレース中の記憶が飛び飛びの状態」(一部抜粋)と投稿。実感するこの大会のハードさを言葉に表している。
人生で一番キツくて苦しかったと思われるステージ。キツ過ぎてレース中の記憶が飛び飛びの状態。コレが世界トップカテゴリーのレース。自分が強くなる程、出来る仕事・耐えられる時間が伸びるのでキツい。
今日もLawsonがやってくれました🤩山岳ジャージ奪取!— Hideto Nakane 中根 英登 (@hideto_252) June 5, 2021
いよいよ大会は最終日を迎える。第8ステージは、レース距離147kmの中に6つの上りを詰め込んだ。中盤に1級山岳コロンビエール峠(11.7km、5.8%)、終盤には超級山岳コル・ド・ジュ・プラーヌ(11.6km、8.5%)を通過するが、例年チーム戦や奇襲攻撃が見られるのがドーフィネの最終ステージ。上級山岳にとどまらず、2級以下のカテゴリー山岳でも何かが起きる可能性を秘める。ステージ優勝争いはもちろん、マイヨジョーヌの行方も最後の最後までどうなるか分からない。
ステージ優勝 マーク・パデュン コメント
「この瞬間を迎えられるなんて信じられない。ドーフィネの最も難しいステージでUCI初勝利を挙げられて最高だ。
ここまでの6日間は調子がとても悪く、完走できないと思っていた。それが今日はステージ優勝。フィニッシュラインを越えたとき、夢なら醒めないでくれと思ったけど、これは現実だった」
個人総合首位 リッチー・ポート コメント
「モビスター チームのコントロールが長かったが、彼らはメンバーを残していなかったのでチャンスがあると思っていた。
明日のコル・ド・ジュ・プラーヌは世界屈指の上りで、厳しいレースになるだろう。何が起ころうとも全力を尽くして、このジャージを家に持ち帰りたいと思う。最終日前日にジャージを着ていた経験もあり、最後まで簡単に運べるとは思っていない。ドーフィネは最終日に何かが起こっているし、明日もきっと大きな戦いになる。とにかく最後までやり遂げるだけだ」
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2021 第7ステージ 結果
ステージ結果
1 マーク・パデュン(バーレーン・ヴィクトリアス、ウクライナ)4:35’07”
2 リッチー・ポート(イネオス・グレナディアーズ、オーストラリア)+0’34”
3 ミゲルアンヘル・ロペス(モビスター チーム、スペイン)+0’43”
4 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス、オーストラリア)ST
5 ベン・オコーナー(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、オーストラリア)+0’47”
6 セップ・クス(ユンボ・ヴィスマ、アメリカ)+0’52”
7 ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)+0’56”
8 エンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)ST
9 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+0’59”
10 アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・プレミアテック、カザフスタン)+1’00”
129 中根英登(EFエデュケーション・NIPPO、日本)+38’21”
個人総合成績
1 リッチー・ポート(イネオス・グレナディアーズ、オーストラリア)25:28’06”
2 アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・プレミアテック、カザフスタン)+0’17”
3 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+0’29”
4 ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグローエ、オランダ)+0’33”
5 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス、オーストラリア)+0’34”
6 ミゲルアンヘル・ロペス(モビスター チーム、スペイン)+0’38”
7 ヨン・イサギレ(アスタナ・プレミアテック、スペイン)ST
8 ベン・オコーナー(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、オーストラリア)+1’00”
9 ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)+1’12”
10 オレリアン・パレパントル(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、フランス)+1’17”
119 中根英登(EFエデュケーション・NIPPO、日本)+1:23’14”
ポイント賞
ソンニ・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)
山岳賞
ローソン・クラドック(EFエデュケーション・NIPPO、アメリカ)
ヤングライダー賞
ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)
チーム総合成績
イネオス・グレナディアーズ
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