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ポガチャルが2連覇へ向けTT勝利、マチューは総合首位を堅守|ツール・ド・フランス

フランス北部を進行中のツール・ド・フランス。現地630日に行われた第5ステージは、今大会最初の個人タイムトライアル。ここを、前回の大会覇者タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)が勝利。昨年に続くTTステージ制覇となった。マイヨジョーヌで出走したマチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス、オランダ)もステージ5位とまとめ、ポガチャルらに迫られながらもジャージをキープ。次のステージも継続してイエローをまとう。

ポガチャル激走で総合争いのライバルとの差を広げる

グランツールでたびたび劇的な展開を呼び込む個人タイムトライアルステージだが、ツールで第1週に採用されるのは13年ぶり(プロローグや第1ステージをのぞく)。個々の走力がダイレクトに反映されることもあり、大会前から総合成績につながる重要なステージの1つと見られていた。

27.2kmに設定されたコースは、おおむね平坦でTTスペシャリスト向き。ただ、ところどころで短距離ながらも急勾配も待ち受け、フィニッシュ前も上り基調。総合成績を意識する選手たちは、このステージで大きな遅れは許されない。

総合成績の下位から順にコースへと繰り出していく。まず好タイムで走ったのが26番出走のミッケル・ビョーグ(UAEチームエミレーツ、デンマーク)。331秒で走破し、これが当面の基準タイムとなった。

それからしばし強い雨が続いたこともあり、どの選手も伸びが見られなかったが、天気が回復したところで121番目にコースへと出発したマティア・カッタネオ(ドゥクーニンク・クイックステップ、イタリア)がビョーグを上回る3255秒で走り、この時点でトップに立つ。

ここからさらに好タイムが続々とマークされる。この種目のヨーロッパ王者シュテファン・キュング(グルパマ・エフデジ、スイス)は、8.8km地点と17.2km地点の中間計測ポイントからトップタイム。そのまま快調に飛ばし続けて、フィニッシュも3219秒とカッタネオのタイムを大きく上回った。第1計測ではキュングより速かったカスパー・アスグリーン(ドゥクーニンク・クイックステップ、デンマーク)は、フィニッシュで18秒差。終始好ペースで走ったヨナス・ヴィンゲゴー(チーム ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)は8秒差と続く。

©︎ A.S.O./Charly Lopez

総合争いで注目される選手たちもいよいよコースへ。プリモシュ・ログリッチ(チーム ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)は、キュングのペースからは遅れたものの、落ち込みを最小限に抑えてフィニッシュタイムを25秒差にまとめる。一方で、ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)は第1計測で25秒遅れると、その後も少しずつトップタイムからの差が広がっていき、フィニッシュでは59秒差に。

タイムを伸ばしきれない選手が続いた中、驚きの走りを見せたのが172番目に出走したポガチャルだった。スタートから飛ばして、第1計測でトップタイムを10秒更新して勢いづくと、その後も快調に飛ばし続ける。第2計測では17秒リードとなり、フィニッシュタイムに注目が集まる。ペースを落とすことなく、32分ちょうどでフィニッシュラインを通過。文句なしのトップ浮上を果たした。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

ポガチャルから2人あとにスタートしたワウト・ファンアールト(チーム ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)は、第1計測で7秒差としたが、以降少しずつ差が拡大。大きく落ち込むことなくまとめたものの、フィニッシュは30秒差。

残すは総合トップ3。個人総合3位で迎えたリチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ、エクアドル)は、前半からペースを上げられず、やがて1分以上の遅れに。結局、フィニッシュでは143秒遅れとなってしまった。同じく2位のジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ、フランス)も、第1計測こそ23秒差だったが、その後はペースダウン。こちらもフィニッシュでは111秒遅れで終わることに。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

そして、マイヨジョーヌのファンデルプール。第1計測を7秒差にとどめたが、中盤でわずかにペースダウン。第2計測を22秒差とする。しかし、ここから粘りの走り。コーナーや上りが待つ変化のある終盤を巧みにクリアすると、フィニッシュは31秒差。ステージ5位とまとめ、前日までの貯金を減らしたのは事実上ポガチャルとファンアールトのみに。このステージを終えた時点でのマイヨジョーヌキープも決まった。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

これにより、ポガチャルがステージ優勝。昨年の大会では、最終日前日の山岳個人TTでの激走でマイヨジョーヌを手繰り寄せたが、それを思い起こさせるこの日の走り。ファンデルプールのとの総合タイム差を8秒とし、個人総合2位に浮上。もちろん、ヤングライダー賞ではトップ。先は長いとはいえ、大会2連覇へ向けてこれ以上ない好況を築いている。総合争いのライバルとなりそうな選手に対しては、同7位につけるリゴベルト・ウラン(EFエデュケーション・NIPPO、コロンビア)と121秒差、同9位となったカラパスと136秒差、同10位まで順位を上げてきたログリッチと140秒差としている。

各選手間でタイム差がつき、この先のステージではどのような戦術が組まれるか。有力選手・チームの動向に注目が集まる。翌71日は、平坦基調の第6ステージ。中盤の4級山岳以外は変化が少なく、主役はスプリンターと見られる。レース距離は160.6kmに設定される。

ステージ優勝、マイヨブラン タデイ・ポガチャル コメント

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

「今日は本当に良い1日だったことは間違いない。天候もマッチしたし、ウェットな路面に苦しんだ選手がいた一方で私はベストコンディションだったことも幸運だった。最近はタイムトライアルでうまくいっていなかったので、今日は序盤から飛ばしていくことを心掛けた。思い切ってペースを上げたが、結果的に最後までパーフェクトなリズムで走ることができた。今日の目標はタイムを大きく失わないことだったので、この結果には大満足している。

(戦術的な理由から)マイヨジョーヌはまだ持っていなくて良いように思う。もちろん大好きだが、現時点ではマイヨブランで十分だ」

マイヨジョーヌ マチュー・ファンデルプール コメント

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

「今日の結果には驚いている。最高のライドポジションをセッティングするために夜遅くまで働いてくれたメカニックやチームスタッフに本当に感謝をしている。バイクの状態が最高だったおかげで、限界を超えることができた。今日の走りは誇らしい。最後までしっかり走るためにペースを意識したのが良い結果に結びついた。正直マイヨジョーヌを失うと思っていただけに、この状況に言葉を失っている」

ツール・ド・フランス2021 第5ステージ 結果

ステージ結果

1 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)0:32’00”
2 シュテファン・キュング(グルパマ・エフデジ、スイス)+0’19”
3 ヨナス・ヴィンゲゴー(チーム ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)+0’27”
4 ワウト・ファンアールト(チーム ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)+0’30”
5 マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス、オランダ)+0’31”
6 カスパー・アスグリーン(ドゥクーニンク・クイックステップ、デンマーク)+0’37”
7 プリモシュ・ログリッチ(チーム ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)+0’44”
8 マティア・カッタネオ(ドゥクーニンク・クイックステップ、イタリア)+0’55”
9 リッチー・ポート(イネオス・グレナディアーズ、オーストラリア)ST
10 アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・プレミアテック、カザフスタン)+1’00”

マイヨジョーヌ(個人総合成績)

1 マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス、オランダ) 16:51’41”
2 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)+0’08”
3 ワウト・ファンアールト(チーム ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)+0’30”
4 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ、フランス)+0’48”
5 アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・プレミアテック、カザフスタン)+1’21”
6 ピエール・ラトゥール(チーム トタルエナジーズ、フランス)+1’28”
7 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーション・NIPPO、コロンビア)+1’29”
8 ヨナス・ヴィンゲゴー(チーム ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)+1’43”
9 リチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ、エクアドル)+1’44”
10 プリモシュ・ログリッチ(チーム ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)+1’48”

マイヨヴェール(ポイント賞)

マーク・カヴェンディッシュ(ドゥクーニンク・クイックステップ、イギリス)

マイヨアポワ(山岳賞)

イーデ・スヘリンフ(ボーラ・ハンスグローエ、オランダ)

マイヨブラン(ヤングライダー賞)

タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)

チーム総合成績

チーム ユンボ・ヴィスマ

 

ツール・ド・フランス スタートリスト&コースプレビュー

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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