CINELLI・PRESSURE【ハシケンのロードバイクエクスプローラー】
ハシケン
- 2021年07月14日
伸びやかさを感じられる生粋のエアロロード
意識すればするほど気になる独自の世界観
現代のロードバイクにおいて、チネリというブランドは個性派だ。ビビッドな色づかいでイタロデザインと称され、オシャレ心や楽しみを大切にしたいファンの心をつかむ。一見ファッション系とも思われるが、レーシングバイクとしてのDNAも流れる。
今回チネリが開発したプレッシャーは、インテグレーションをテーマに、空力を意識した昨今のトレンドをすべて組み込んでいる。
そんなプレッシャーを、6月某日に雨雲を避けるように走らせた。バイクの頭からお尻までエアロで武装したこのバイクからは、スパルタンなライドフィールを想像しやすい。実際にペダルを踏み込めば、ダイレクトな入力感とともに高い反応が返ってくる。
ところが、一般的に剛性感が高いフレームはトルクを高めるほどに、身体に硬さを感じやすくなるが、プレッシャーは一味違う。高強度域でも一定のフィーリングを維持したままストレスなく加速していけるのだ。バイクの上でシャカリキにならずにリラックスしながらケイデンスを上げて推進力を高めていける印象だ。
これは、生粋のエアロロードながら剛性バランスがほどよいレベルで調整されているためと言えよう。硬いフレームは踏み感は強いが、力を込めて踏み抜かなければ推進力を得にくいところがある。その点、プレッシャーは非常に扱いやすいエアロロードと言える。しっかりとクリアな反応性を感じつつも、伸びやかさのあるフィーリングを残してくれるところがプレッシャーの魅力だ。
今回のテストバイクのホイールはバイクアヘッドの6本スポークモデルのビターボロード仕様。その見た目の迫力に反して、前後1200g台の軽量モデルであり、一枚岩感のある回転体としての高い剛性感も持ち合わせている。そんな高性能な足まわりの恩恵も授かり、スピードの乗りは速く、時速30〜45kmの速度域での巡航のしやすさは際立っていた。もちろん、ホイールだけではなく、そこには空力を強く意識したエアロフレームの効果も感じられた。
ヘッドまわりの剛性もバランスがとれており、しっかり路面を捉えつつも振りやすさと共存できている。コーナーではラインを外れることなく安定したコーナーワークが可能で、気持ちよく高速で駆け抜けることができた。さらに、登坂シーンではパワフルに加速を試みても満足のいく伸びやかさも発揮してくれる。シーンを問わずに楽しめるエアロロードだ。
一切のムダがない美しいエアロフォルムは最新エアロロードにふさわしいもの。それに加えて、ブランドロゴとビビッドなオレンジの差し色が個性あるビジュアルを表現している。エアロロードは性能至上の製品作りになりがちだが、しっかりとチネリのアイデンティティーともいうべきデザインにもこだわった一台と言える。
これまでしばらくピュアレーシングという肩書きのモデルとは、ごぶさただったチネリ。今回生粋のエアロロードが登場したことで、徹底して速さを求めるコンペティティブなレーサーたちからも注目されることだろう。今回の100kmライドで、その性能はアマチュアレーサーに申し分ないことを確認できた。
比較的良心的な価格設定のモデルが多いチネリにおいてフレームセットで40万円オーバーであり、初のエアロロードには開発予算がかかったことがうかがえる。
昨今、どのメーカーのエアロロードも設計の方向性が似てきているなかで、チネリのようにデザインやカラーリングで独自の世界観を作りあげているモデルは魅力的だ。クールすぎる冷徹な戦闘機のようなエアロロードに飽きてきたサイクリストには、チネリ初のエアロロードは、意識すればするほど気になってくる一台ではないだろうか。
SPECIFICATION
CINELLI/PRESSURE
価格:41万8000円(ハンドルバー+シートポスト付属フレームセット)
■フレーム:コロンブス・カーボン モノコック T800
■フォーク:コロンブス・カーボンモノコック
■シートポスト:チネリ・エアロ カーボンモノコック
■ハンドル:ヴィジョン・メトロン5D
■フレーム重量:990g(サイズM)
■フォーク重量:390g(サイズM)
■試乗車実測重量:7.3kg(サイズM・ペダルレス)
GEOMETRY
問:ポディウム https://www.podium.co.jp
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