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北米・コロラドで注目のグラベルイベント「SBT GRVL」を竹下佳映がレポート

グラベルの本場アメリカ。ここでは米国グラベル界の中でも群を抜く大規模な大会、「SBT GRVL (エス・ビー・ティー・グラベル)」の様子をグラベルレースの第一人者でもある竹下佳映さんがお伝えする。

コロラド・スプリングスで、シャンパン・グラベルを走る。SBT GRVL大会

大会前、木曜日のグループライド。ライドリーダーは、現全米ロードチャンピオンで友人でもあるローレン・スティーブンズ。金曜・土曜と現地入りする参加者が増え、グループライドも250人以上に! PHOTO : SBT GRVL

ロッキーマウンテン国立公園のあるコロラド州は、美しい大自然で知られる州で「カラフル・コロラド」と呼ばれています。私にとって4回目となる今年の訪問を楽しみにしていました。

牧場が至る所にあり、干し草が見える

目的は8月にコロラド州スチームボート・スプリングスで行われる、SBT GRVL (エス・ビー・ティー・グラベル)と言う米国グラベル界の中でも群を抜く大規模な大会への参加です。

2019年に初登場した新しいイベントであるにも関わらず、開催初年度から大会運営のレベルの高さを感じました。

s招待された大会主催のVIPパーティにて。Tibco/SVBプロチームとカナダからのロードプロ選手/友人たちと

登録参加者数は2021年には約3000人。賞金の合計金額(賞金の出るグラベル大会もあるのです)、エキスポの規模、スポンサーの多さ、参加者へのサポートの豊富さ、トップ選手のレベルの高さ(元・現ワールドツアー選手、元・現ロード&MTBプロ選手を含む)、レース前のVIPパーティ、参加者だけでなく家族・友人が何日にも渡って楽しめる工夫がたくさんされています。前回に引き続き、女性選手の参加率を更に引き上げるための努力も惜しみませんし、今年は黒人・先住民・有色人種(BIPOC)への人種差別を解体することを目的とした非営利サイクリング団体とのコラボも見られました。

前日のレッドビル・トレイルと連日走破すれば合計399㎞

早く現地入りしたので、スキースロープの天辺まで、スイッチバックをひたすら上る

コース距離は144マイル(232km)、104マイル(167km)、64マイル(103km)、38マイル(61km)と四つの設定です。冬季はパウダー・スノーより質の良い、シャンパン・スノーで知られるスキー・リゾートでもあるこの地。ロードバイクでも問題なく走れるような、ローカル・サイクリストたちが「シャンパン・グラベル」と呼ぶ、とても走りやすい地面がコースのグラベル部分の大半を占めます。舗装も他のグラベル大会に比べると結構あるので、ロードバイクにスリックタイプのタイヤでも走れそう……? 私有地の一部をこの大会のために開放してダブルトラックを作った牧場や、レース終盤に数キロに渡る結構荒れた石ばかりの道、また私たちがWashboard(洗濯板)と呼ぶガタガタと波打った地面も所々に見られるので、やはりグラベルセットアップになります。

また、今年から新カテゴリーが登場しました。米国MTB界で有名なレッドビル・トレイル100MTBレースが同じ週末の土曜日に開催され、日曜日に行われるSTB GRVLの144マイルコースと連日参加する「LeadBoat(レッド・ボート)」というものです。2日間で399㎞を走る鬼のようなカテゴリー。

レッドビルMTBとSBT GRVLの標高と距離
開始標高 獲得標高 距離
レッドビル・トレイル100MTB 3100m 3400m 167km
SBT GRVL 2050m 2865m 232km

椎間板の故障で久々の復帰レース

エキスポ中にABUSテントで、チームメイトのクリスティーとリラックス

私は144マイルコースに登録し、高標高に慣らすため早めの現地入りの予定も立てていたのですが、今年の5月に頸椎椎間板の故障でダウンしました。最初の1~2日間はこの世のものとは思えない痛みのため1ミリも動くことすらできない状態で、このレースシーズン真っ最中は治療・フィジカルセラピー・療養に努めていました。

7月の後半に徐々にインドアライドを再開し、8月頭からやっとアウトドアで走り始めました。もちろん当初は落ち込みましたが、故障を悔やんでも仕方がないので、回復に専念し、このシーズン後半はできるやり方で楽しむことにしました。そうです、グラベルはたくさんの楽しみ方があるのが素晴らしいところ。長年グラベルをやってきて、それを一番知っているのは自分自身なのに忘れるところでした。

自撮り走行可能な、良い状態のグラベルロードが多い

「Make it what you want it to be.」自分の望むようにすればいいだけです。現地入りした時には、64マイル(103km)コースで行こうと思っていましたが、同じく早めに来ていた友人たちと数日過ごして気分もかなり上がり、どうせ「レース」をするのでないし、時間が掛かってもいいからパーティ・ペースで104マイル(167km)コースを楽しもう! ということにしました。

レース仕様バイクも現地には持ってきましたが、当日乗るのに決めたのは、バイクパッキング用のクロモリ製フレームです。スピード感はありませんが、姿勢は楽だし、タイヤが大きいので空気圧をがっつり下げて、ふかふかな乗り心地。見た目もカラフルで、楽しさが倍増すること間違いなし。木曜・金曜・土曜のグループライドの最中も、虹色配色のスポークで話が盛り上がりました。

レッド・ボートに参加している、友人ジェニーを見かけ、会話が弾む

大会当日は144マイルコース参戦のチームメイトや友人を見送って30分後に104マイルコースの出発です。SBT GRVLは約25マイル(40km)ごとにチェックポイント・補給地点があり、その他にも休憩・スナックテントがコース上にいくつか設置されています。

ゲットしたベーコン第1号
バーボン・ショットもゲット。じつは初めて飲むウィスキー

レースペースであれば最低限の時間しか滞在しませんが、各補給地点でゆっくり飲食したり、走行しながら写真を撮ったり、普段見ることのない山景色を拝んだり、他のライダーとおしゃべりしながらのパーティ・ペースで一日を過ごしました。カリカリに焼いたベーコンを走行中に手渡しで受けたり、スキーリフトに座って大会専属カメラマンに写真を撮ってもらえる場所があったり、バーボンウイスキーのショットを差し出されたり! とっても楽しかった……。そして新しいグラベル友が何人もできました。

SBT GRVLに乾杯!「今日ゆっくり過ごしている人はここに並んで」とのサインが」とのサインが。PHOTO : SBT GRVL

大会後も次の移動までに数日あったので、セルフでフィジカルセラピーを引き続き行い、沢山あるハイキング・トレイルの一つに行ったり、ちょっと軽く走りに行ったりと、とても有意義に過ごすことができました。本調子で大会に参加できないなら、自宅に留まると言う選択肢ももちろんあったのですが、参加することに決めて本当に良かったです。コロラドの美しさとグラベルの楽しさで、精神面からもケガ回復にプラスとなったと信じています。来年こそは、144マイルコースに参加したいです!

現地入り前に立ち寄った、北米最大の砂丘、グレートサンドデューンズ国立公園。延々と広がる景色のほんのごく一部。
竹下佳映

北海道出身。19歳でパイロットを目指し渡米した。現在はシカゴで仕事をしながら、2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に惹かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。アブス・プログラベルチ―ム所属 https://www.facebook.com/kae.takeshita/

インスタグラム
https://www.instagram.com/kae_tkst/

 

 

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PROFILE

竹下佳映

竹下佳映

札幌出身、現在は米国シカゴ都市部に在住。2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に引かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。5年間グラベルチーム選手として活躍し、2022年からはプライベーターとしてソロ活動。ここしばらく飛んでいないが飛行機乗り。

竹下佳映の記事一覧

札幌出身、現在は米国シカゴ都市部に在住。2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に引かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。5年間グラベルチーム選手として活躍し、2022年からはプライベーターとしてソロ活動。ここしばらく飛んでいないが飛行機乗り。

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