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世界王者が決まるロード世界選手権、知っておきたい直前情報|ロードレースジャーナル

vol.15 ワウト、アラフィリップ、マチューが軸か
Wエースのイタリア、チーム力は随一のデンマーク勢も有力

国内外のロードレース情報を専門的にお届けする連載「ロードレースジャーナル」。919日に開幕したUCIロード世界選手権は順調にレースが消化し、各カテゴリーで続々と世界王者が決まっている。そこで今回は、大会最終日の26日に行われる男子エリートロードレースの展望。開催地であるベルギー・フランドルならではのコースセッティングに着目し、マイヨアルカンシエル候補選手たちの動向も確認。これを読めば、レース前の予習はバッチリ!の内容でお届けします。

アルカンシエルをかけた268.3km

現在、ベルギー北部のフランドル地方を舞台に行われているUCIロード世界選手権。世界で最もロードレースに熱い地域で、今年の世界王者を決める戦いが繰り広げられている。

19日の開幕以降、会期前半をタイムトライアル種目を行い、24日からはロードレース種目がスタートした。

大注目の男子エリートロードレースは、大会最終日の26日に実施。コースは、アントワープを出発してから50kmほど走っていったんフィニッシュ地のルーヴェンへ。ここからは変化の連続で、ルーヴェンの市街地の外郭を沿うように1周走って、春のクラシックでも走ることのある「フランドリアンサーキット」へ。これを1周したのち、ルーヴェン市街地周回へ戻って4周し、再びフランドリアンサーキットを1周。そして最後は、ルーヴェン市街地サーキットを2周半してフィニッシュを迎える。レース距離は268.3km、獲得標高は2562mとなっている。

ルーヴェン市街地周回はおおよそ15kmで、4つの短い上りと20カ所に及ぶタイトなコーナーが特徴。街の中を走るとあって、道幅が局面によって異なるあたりもレース展開に影響しそうだ。フランドリアンサーキットは約50kmで、北のクラシックでもおなじみのモスケストラートやベケストラートといった最大勾配が15%を超える石畳の上りなど、6つの登坂区間が待ち受ける。

前述したように獲得標高そのものは山岳レースほどの数字ではないが、主催者発表による登坂区間全42カ所に加えて無印の上りもあり、選手たちに休む暇を与えない。今年の世界ナンバーワンを決めるにふさわしいルート設定になったといえよう。

地元でのアルカンシエルに燃えるワウトが優勝候補筆頭

アルカンシエルをかけた一戦。地元勝利に燃えるワウト・ファンアールト(チーム ユンボ・ヴィスマ)が優勝候補筆頭だ。今年のツール・ド・フランスでは、山岳・TT・スプリントとあらゆるレース展開を制しており、今回のフランドルのコースも「ワウトのためのコース」といわれるほど脚質にピッタリ。コンディションも一切の問題がなく、今大会は19日の個人タイムトライアルで大激戦の末に2位。優勝こそ逃したが、調子の良さを証明している。

ベルギー陣営はワウトを単独エースに据えていることを公言しており、残る7人の選手たちがアシストとしての働きに徹する。東京五輪のロードレースでは自らの結果を求めて走ったのではないかと指摘されたレムコ・エヴェネプール(ドゥクーニンク・クイックステップ)も、「ワウトのために走る」と宣言した。

ワウトと並んでこのレースの軸となるのが、ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ、フランス)とマチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス、オランダ)だ。

アルカンシエル防衛をかけて臨むアラフィリップは、最終調整の場に選んだ9月上旬のツアー・オブ・ブリテンで個人総合3位。このレースではワウトに敗れたものの、状態のよさは確認できた。細かな変化のあるコースはもちろん得意とするところで、石畳への適性も高い。昨年のこの大会、今年のラ・フレーシュ・ワロンヌやツール第1ステージで見せたような大一番での強さを発揮できるあたりもプラス要素。

マチューは東京五輪マウンテンバイクでの落車以降続く背部・腰部の痛みを抱えながらも、この大会への出場を決めた。9月に入ってワンデーレースを3戦走り1勝。勝たなかった2レースでもまずまずの状態にあることが確認できたことから、ひとまずは不安なく本番を迎えられるメドが立った。コースへの適応は問題ないが、長丁場のレースにどこまで合わせられるかがポイントか。

絶対的なエースを擁して挑むのがイタリア。ヨーロッパ王者に輝いたばかりのソンニ・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス)の強さが際立っている。このところのレースではスプリントだけでなく、上りや独走でも勝てるところを見せており、どんな展開にも対応できるあたりは大きな強み。陣営はマッテオ・トレンティン(UAEチームエミレーツ)もコルブレッリと同等の立場に据えて、ダブルエース体制を敷く。このほど、8年間同国を率いてきたダヴィデ・カッサーニ監督の今大会限りでの勇退が決まり、チームとしても最高の花道を演出したい。

イタリアのエース、ソンニ・コルブレッリ ©️ Tornanti.cc

戦力の充実度ならデンマークが随一。2年前の世界王者であるマッズ・ピーダスン(トレック・セガフレード)を筆頭に、先のブエルタ・ア・エスパーニャで大活躍したマグナス・コルト(EFエデュケーション・NIPPO)、さらには今年のロンド・ファン・フラーンデレン王者のカスパー・アスグリーン(ドゥクーニンク・クイックステップ)、上りに強いミッケルフレーリク・ホノレ(ドゥクーニンク・クイックステップ)と、どこからでも勝負できる布陣になった。コルトは「明確なエースはいない。レース展開に合わせて勝ちにいく選手を決められる」と述べており、一気にアウトサイダー的な存在へと上がってきた。

ブエルタ・ア・エスパーニャで活躍したマグナス・コルト擁するデンマークも強力だ ©︎ Photogomezsport

一大勢力となったスロベニアは、ツール王者のタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)、今大会はこの一本に絞ってきたプリモシュ・ログリッチ(チーム ユンボ・ヴィスマ)が中心。ここに、上り・下り・石畳何でもOKのマテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)も加わり、アルカンシエルを射程圏にとらえる。

スロベニア勢にも注目。プリモシュ・ログリッチはロードレース1本に絞ってきた ©︎ Photogomezsport

穴のないメンバー選考ができたイギリスは、シーズン後半にきて絶好調のイーサン・ハイター(イネオス・グレナディアーズ)に注目。19日の個人TTでは8位とまとめ、世界レベルでも戦えると自信をつけた。ここにトーマス・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ)も加わって、勝機を探る。スプリントになれば、マーク・カヴェンディッシュ(ドゥクーニンク・クイックステップ)も控える。

まさに群雄割拠の今大会。侮れない選手がまだまだ多数。オーストラリアはマイケル・マシューズ(チーム バイクエクスチェンジ)とカレブ・ユアン(ロット・スーダル)、スペインもアレックス・アランブル(アスタナ・プレミアテック)とイヴァン・ガルシア(モビスター チーム)と、それぞれ強力な上れるスプリンターが代表入り。秋に入って好調のジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ、ポルトガル)は上り・独走・小集団スプリントと、どんな展開にも対応可能。ミハウ・クフィアトコフスキ(イネオス・グレナディアーズ、ポーランド)、ペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ、スロバキア)は、ともに戦い方を知るアルカンシエル経験者だ。

日本勢では新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)が単騎で出場する。アンダー時代も含めると14回目の世界選手権で、今大会のエリート男子では最多出場選手としてレースに挑むこととなる。

スプリントか逃げ切りか、どんなレースになる!?

8人の最大出場枠を確保している国の多くが、スプリント力のある選手とパンチ力のある選手をミックスして臨もうとしている印象だ。スプリントでも、要所でのアタックでも、ここぞというところで勝負できるよう戦力を整えている。

いわば、「どんな展開も起こりうる」レースだが、地元ベルギーはワウトのスプリントに賭けるよう。ワウト自身も直前の記者会見で「あまり動きすぎて孤立することだけは避けたい」と述べており、アシストを有した状態で最終盤へと持ち込みたい構え。

ワウト・ファンアールトはスプリントに持ち込みたい構え(写真はヘント〜ウェヴェルヘム2021) ©️ Digitalclickx

対して、スプリント力の高いコルブレッリとトレンティンを擁するイタリアは、できるだけ絞り込んだうえでスプリント勝負をしたいという意識。コルブレッリは「ワウトとの勝負になると厳しい。何とか彼を後方に追いやってスプリント勝負に持ち込みたい」とコメントしている。

2連覇がかかるアラフィリップは、フィニッシュ前のスピードはあるものの、さすがにスプリンター相手には少々厳しい。できるなら昨年同様に独走に持ち込みたい。マチューも独走かスプリントなら、独走を選びがちな印象がこれまでのレースにはある。

ジュリアン・アラフィリップは昨年同様独走に持ち込めるか ©︎ A.S.O. / Pauline Ballet

他のカテゴリーでの傾向がそのまま当てはまらないのが男子エリート。いずれにしても、序盤から中盤にかけてはベルギーやイタリアといった有力国が集団をコントロールし、後半勝負となるだろう。そうした中で、フランドリアンサーキット内の石畳区間や、ルーヴェン市街地サーキットの短い上りで少しずつ集団の人数が絞り込まれていくことが想定される。とにかく、集団前方に位置していないと勝負にならない。なお、レース全体最後の上りとなる「シント=アントニウスベルグ」は、フィニッシュ前約1.5km。ここで決定打が生まれることも大いにあり得る。

マチュー・ファンデルプールも勝つなら独走か ©︎ PresseSports/Bernard Papon

ちなみに、24日にオンライン記者会見に臨んだ新城は「どこで誰が仕掛けても不思議ではないコース」と印象を語っている。「予測がつかない難しいコース」というのが試走した感触だとか。その言葉からも、レース本番は激戦となることは間違いない。

男子アンダー23は来季プロ入りのバロンチーニが優勝

最後に、24日に行われた男子アンダー23ロードレースに触れておきたい。

「次世代スター候補」がしのぎを削った戦いは、最終盤で独走に持ち込んだフィリッポ・バロンチーニ(イタリア)が勝ち、この世代の頂点に立った。バロンチーニは8月にトレック・セガフレードへトレーニー(研修生)として合流しており、同チームとは来季からの正式契約も結んでいる。先のヨーロッパ選手権では、このカテゴリーで2位だったが、そのリベンジを果たしてみせた。

2位争いは約30人のスプリントとなり、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオで走るビニアム・ギルマイ(エリトリア)がこの大会で同国史上初のメダリストに。このところワンデイレースを中心に存在感を見せていた21歳が、世界大会でも大仕事を果たした。3位には、チーム ユンボ・ヴィスマで走るオラフ・コーイ(オランダ)が続いた。

161.1kmで争われたレースは、序盤から有力選手たちが集団前方を争う展開となり、逃げを吸収してからはアタックの打ち合いに。結果的に、プロ入りが決まっている選手やすでにトップチームで走っている選手たちが上位戦線に生き残るレースとなった。

福光 俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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