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血友病と戦い、走り続ける自転車選手ドーセットがメキシコでアワーレコードに挑戦

2021年11月3日にメキシコ・アグアスカリエンテス州でアワーレコードに挑戦するのがイングランド人のアレックス・ドーセット(以下アレックス)、現在はイスラエル・スタートアップ・ネイションズ(以下ISN)に所属する世界屈指のTTスペシャリストである。

現在のアワーレコード記録保持者は2019年4月にここ、アグアスカリエンテスで記録を叩き出したビクトル・カンペナールツの55.089kmだ。

高地というメリットがあるメキシコ、アグアスカリエンテス

五輪に行けなくても追える夢がある、4㎞個人パシュートで世界記録更新!時速60㎞超

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2021年08月20日

メキシコ、アグアスカリエンテス州といえば、2021年8月にアメリカ人のアシュトン・ランビーが4㎞個人パシュートの世界記録を打ち立てたことは記憶に新しい。アシュトン以外にも好記録を狙いに世界中からトラック選手が集まるアグアスカリエンテス州ヴェロドロモ・ビセンテナリオ。元リオデジャネイロ五輪代表ルイス・レムスの地元であり、標高1800m超の空気抵抗の低さと一年中涼しく乾燥した気候であることから最も条件の良いトラックに数えられる。

同じ場所を選んだのには理由がある。当初は2020年12月にマンチェスターで挑戦予定だったのは海外渡航のリスクを考えてのことだった。しかし、同年11月に当の本人がCOVID陽性になったことより延期、さらにワクチンも普及したことから、よりよい環境を目指してメキシコでの結果となった。

スポンサーにはファイザーの名も連ねる、その理由

2020年のジロ・デ・イタリア第8ステージで勝利した PHOTO:Fabio Ferrari/LaPresse

今回のアワーレコードの挑戦にはもちろん期待と共にスポンサーも多く集まる。そのなかの一つが今現在、全世界で知らない人はいない、製薬会社ファイザーである。

コロナ復帰を応援してのスポンサーか、いや違う。これはアレックスという一人の男の、これまでも、これからも生涯戦い、ともに歩むべき人生に対するエールであるといえる。

アレックスはイングランドで生まれ、カーレースドライバーの父親というルーツをもつ。生後18カ月で発覚したのは血友病という、男児の1万人に1人が発症する遺伝性の難病である(女性も発症例あり)。血液凝固因子の異常で止血が難しく、特に子どもは細心の注意が必要とされる。アレックスの母親もヘッドギアとニープロテクター、ヒジ当てを自作、まるで鎧のような姿で学校に通わせたという。

●アレックス(以下略AX)

「とある日にクラスメートの女の子に、なぜ怪我をしていないのにギブス(プロテクター)を付けているの?目立とうとしてるんでしょ、と言われてひどく傷付いたことがあった」と語る。

運動が大好きだった少年アレックスは親の勧めで水泳教室に通う、もちろんどちらかと言えばローリスクというのを考えてのことだ。

12歳のある日、自転車に乗った彼はその魅力に引き込まれてしまう。当初は両親に反対されたが、やがて本格的に始めるうちに才能を開花させ、今でも血友病であることを表明するネックレスを両親との誓いとして肌身離さず身に着けている。

彼がプロとして活躍するのはそう先のことではない。2008年当時19歳の彼はイギリス国体U23でTTで初勝利、その後もトレックリーブストロングでチームを率いる。2011年、チームスカイと契約した彼はサイモン・ゲランスのアシストとして名をはせる。

2013年のジロ・デ・イタリア PHOTO:LaPresse/Gian Mattia D’Alberto;

2013年から5年間彼の最大キャリアとなるモビスターと契約、グランツールデビューとなる2013年ジロ・デ・イタリアのチームタイムトライアルで大活躍、個人ラップ1位を叩き出す大躍進を遂げる。同在籍中2015年ローハンデニスが保有していたアワーレコードを52.937kmで更新。が、その3カ月後に同じイギリス人のブラッドレー・ウィギンスに記録を塗り替えられてしまう。

2018年カチューシャ・アルペシン移籍後、サイクリングアカデミーとの併合後のISNに現在も在籍。

彼の華々しい戦歴のすべてが血友病への挑戦と共にある

2018年のティレーノアドリアティコ PHOTO:LaPresse/Spada;

血友病患者は1950年代にはほぼ不治の病、余命は20歳までとされてきたがまさにここ35年間の技術の進歩により現在は遺伝子療法などさまざまな治療法(予防法)も見つかっている。まさに血友病とともに歩んだ人生、しかしこんなにも大きく晴れ舞台で活躍するプロスポーツ選手の血友病患者がいるだろうか。

血友病の子どもたちに勇気を与えたいという思いが彼を突き動かす。その思いはいつだって、そんなことは消し飛んでしまうくらい素晴らしい結果が伴っているので、もはやあまり知られてもいないが、血友病の子どもたちにとってはいつだってHero(ヒーロー)だ。

ファイザーが開発したHaemoHeroes(ヘモヒーロー)はそんな子どもたちが血友病と戦うために学ぶべきことがゲームで体験できるアプリだ。また彼が自身で立ち上げた血友病支援コミュニティ、リトル・ブリーダーの子どもたちも彼の背中を押す。

PHOTO:Fabio Ferrari/LaPresse

昨年2020年再びジロで光を浴びることとなる。第8ステージお得意のスピード展開で最後の上りで逃げ切りが決まり、感極まったガッツポーズがステージを、全世界の血友病患者を沸かせた。

ジロ・デ・イタリア|ドーセットが単独で逃げ切り勝利。イェーツが新型コロナ陽性でリタイヤ |第8ステージ

ジロ・デ・イタリア|ドーセットが単独で逃げ切り勝利。イェーツが新型コロナ陽性でリタイヤ |第8ステージ

2020年10月11日

●AX

「血友病は1万人に1人の珍しい病気だといわれる。僕の場合は母がキャリア(潜在遺伝子保有者)だった。私が発症し、娘のジュリエットもキャリアだ。彼女の子どもは男児が生まれる確率とともに血友病発祥のリスクがある。けど子どもをもつかどうかは彼女次第だね。それに今は目覚ましく技術が進んでいる。僕自身は平均男性より寿命は短いだろうけれど、きっと明るい未来がある」

今年生まれたばかりの娘の子どもの世代まで、難病を受け入れた戦いと歩みはサドルの上だけではない。

●AX

「こんなに元気で33歳を迎えられるなんてラッキーだよね。」

アワーレコードはメキシコ時間の11月3日水曜日に実施される。

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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