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トッププロチームでさえ自転車が足りない緊急事態、世界的な自転車&部品不足が深刻!

日本以上にヨーロッパで起きている自転車不足。じつは優先的に自転車の供給を受けているイメージがあるプロチームも例外ではない。その原因はコロナ禍で自転車の人気が世界各地で高まり、そしてさまざまなサプライチェーン(供給連鎖)のトラブルが同時多発的に起きているからとも言われている。ここでは国際事情に明るいUCI公認代理人の山崎健一さんがヨーロッパの現状をレポートする。

コロナ禍の影響で世界的に消費財が不足している宇宙船地球号

◇写真:2020年度暮れから顕著に見かけるようになった、「(クリスマスプレゼント用の)子供用自転車あります!」アピール広告atカナダ。

コロナ禍の影響で世界の工場として名高い中国や台湾の生産ラインが止まったことや、税関による検閲の強化、それに海上輸送費の歴史的高騰が影響しているようです。

特にその不足ぶりが目立つのは、コロナ禍でのソーシャルディスタンス+ステイホームにより需要が高まったアイテムたち。

例えば、半導体を使用した電子機器(スマホ、タブレット端末)、自転車&その部品、新車自動車、あと個人的な趣味で目につくのは、スケートボード、キャンプ用品などなど。ちなみに、私が欲しいガンダムのプラモデル(RGジオング)も、かれこれ10カ月ほど品不足ですが、これらは世界のプラモデル工場である静岡県で生産されているため、コロナというよりも、転売屋のせいですのでっ(怒)。転売絶対ダメ=TZD!

さてさて話は戻りまして……我々自転車ファンにとって最も身近なスポーツバイクの場合、2021年11月現在、ロードバイクを専門店で注文しても、数カ月以上待たされるのは当たり前というなかなかシュールな状況です……。

とはいえ、じつは日本における自転車不足は、欧米のそれと比べたらまだマシなのかも……。

欧米では日本以上になぜ不足しているのか?

鉄分が多めのコンテナも世界的に不足

世界全体における自転車&部品不足の深刻さは、“世界の工場“である中国&台湾などのご近所さんであり、欧米向けよりは輸送費が安い日本の我々にとって少々わかりにくい部分があるかと思います。

実際、日本でも中級・高級スポーツバイク(&パーツ)の供給は目に見えて不足しているものの、いわゆるカジュアル志向のクロスバイクやママチャリ車種に関しては、量販店でもずらりと並んでいます。

これが欧米では激烈ド級に深刻。

まず、2020年初頭に始まったコロナ禍以降、ソーシャルディスタンスの影響で自転車需要が急上昇しているにも関わらず、中国や台湾などでの自転車&パーツ製造数が、工場稼働率縮小(コロナ禍による労働者不足&化石燃料抑制政策による電力費用の高騰等)により激減。

そんななか、製造された自転車を船で輸出入する際に必要なコンテナ自体の製造量も、他の消費財と同様に減少しました。

2021年に入ってからは欧米諸国がコロナ禍でも社会・経済を動かすぜっ!な「withコロナ」政策へと大胆にシフトして、社会全体の消費熱が急激に復活。製造業者はモノを作れや!送れや!と躍起になるも、船輸送需要の急増で空きコンテナは足りないし、見つかっても輸送費がアホみたいに高い!

コンテナの輸送費も高騰
海運コンサルタント「ドリューリー社」(英)データより

例えば、コロナ禍前の2019年には、「上海→オランダ」&「上海→アメリカ西海岸」向けの船便による40トンコンテナ輸送費は1,500米ドル(約17万円程度)でしたが、2021年9月にはそれぞれ11,000米ドル&13,700米ドル(約120&155万円)とじつに7~9倍!

そんなこんなで、全世界の製造に関わる方々は原材料や部品が手に入り難いし、製品を完成させられないという、いわゆるサプライチェーン(供給連鎖)の大崩壊を食らっているわけです。

自転車業界はと云えば、「値上げ」、「船便輸送価格が落ち着くまで輸出入をセーブ」、「利益率の高い最新モデル&パーツを優先製造」などなどの経営判断を余儀なくされているようです。

実際に、英国の地方で自転車店を営む友人にチャットで聞いた話では、「買える/買いたい自転車が市場にないお客さんは、自分の古い自転車の修理をうちに頼むわけだけど、それを直す部品がそもそもない!入荷の予定だってもちろんないぜっ! なんせ、部品メーカーは最新モデルの部品生産を優先させてるみたいで、5年前以上の部品なんて特に手に入らないんだぜ! ひゃっはー!」

投げやりである。

私のウチの押し入れで眠っている20年以上前のぼろぼろデ○ラエースを「送料+定価x10倍」で売ってやってもいい、と提案したのは言うまでもありません。

プロチームが早くも2023年シーズン!?に必要な自転車を注文

グルパマ・FDJ代表のマディオさん涙目(グルパマ・FDJ公式ページより)

この状況は、どうやら世界自転車ロードレース競技界トップのUCIプロ/ワールドチームであっても例外ではないようです。

フランスを代表するUCIワールドチーム「グルパマ・FDJ」のジェネラルマネージャーであるマルク・マディオ氏は「このコロナ禍で大きなチーム組織を回すのは極めて大変なんだ。チームはこれから冬のシクロクロス・トレーニングキャンプを行うところなんだが、世界的な自転車部品不足の影響で、機材パートナーから予定どおりの納品がなく、選手40人分の自転車を用意することが困難……どうしよ」とチームの公式記者会見でほえて、いや泣いています。

PHOTO:RCS SPORT

同じくフランスのUCIワールドチーム「チーム・コフィディス」の代表、セドリック・ヴァスール氏も、「本来は11月下旬に2022年シーズンの自転車が供給されてくる予定なんけど、ちょっと心配。なんせ、機材パートナーからは“生産が間に合わないかもしれないから、今から再来年2023年シーズンに必要な自転車の台数&サイズを教えてほしい”なんてリクエストが来ているくらいなんだ。まだ再来年にどの選手と契約するかわからないにも関わらずだよ!? あまりのもの不足具合から、メーカーは今から再来年の準備をせざるを得ない状況になってるんだよ」

このような非常事態に対応するため、チーム・コフィディス内では、選手が使う機材・部品の使用期間を延長。例えば、平常時は2,000km程度の走行で交換するチェーンも、機材不足の現在は2,500kmまで選手に使用させているそう。

また、世界のロードレース界には、選手がチームから“貸与”された自転車の“処分“を、シーズン終了後に選手に任せるというユルい文化が(チームによっては密かに)ありますが、コロナ禍の現在はほぼ凍結。というのも、特にディレイラーやブレーキなどのコンポーネンツ部品不足の解消が見通せないため、チームは選手が使用した自転車から部品を取り外して再利用(&もしものときに備えてストック)せざるを得ないのがその理由です。

その他、あるUCIの某チームに所属する某欧米圏選手は、チームから「来季の自転車が足りずに渡せないから、露出は一切避けつつ自分の私用自転車に乗ってトレーニングしてほしい」とのお達しを受けたそうな……。

クロモリ(鉄などの合金)自転車ファンの小生としては、今からUCIが全チームに「UCIレースで使用する自転車は、耐用年数が長くて修理がしやすいクロモリに限る」とのお達しを出し、数年間同じ自転車に乗るように促してほしいもの。

なにはともあれ、世界的な自転車不足はもうしばらく続くようです。

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PROFILE

山崎健一

Bicycle Club / UCI公認選手代理人

山崎健一

UCI公認選手代理人&エキップアサダマネージャー。日本人選手の育成に尽力し、プロ選手からの人望も厚い。バイシクルクラブ本誌では連載「フ●ッキンジャップくらいわかるよ、コノヤロウっ!」を担当。

山崎健一の記事一覧

UCI公認選手代理人&エキップアサダマネージャー。日本人選手の育成に尽力し、プロ選手からの人望も厚い。バイシクルクラブ本誌では連載「フ●ッキンジャップくらいわかるよ、コノヤロウっ!」を担当。

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