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川を渡る自転車レースにはシュノーケルが必要!?|竹下佳映のグラベルの世界

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自分の手の平にも普段感じることのない痛みが走っていました。このバイクのエアロ・ハンドルバーは、見た目が格好いいのでバーテープは一部だけ巻いてあり残りはむき出しのカーボン。今までどんなに激しくグラベル乗っていてもそれが理由で痛い思いをすることはなかったので、UPに来る前にバーテープを追加で巻くことは思いつきませんでした。コース完走までに手の平に内出血による青アザができててもおかしくないでしょう。

小休憩するのに選んだ場所には都合よくピクニックテーブルがあって、サポートのダンと先に着いたペトルがベンチに座って待っていました。ここへの到着時間は当初計画していたより格段に遅れていましたが、制限時間は36時間で、まだ何時間も残っていたので心配はすることはありませんでした。

自転車から降りた瞬間は、身体中のパーツがバラバラに崩れ落ちるのではないか、と思いました。全てが凝り固まっていて痛いし、足首にまで理解できないようなひどい痛みがあります(後からよく考えると、カーボン・ソールのシューズでの、長時間ハイキングしたせいでしょう)。ベンチに腰を下ろし、久し振りにサドル以外のものに座ることができて、すごくホッとしました。

ストレッチをして、サンドイッチを食べて、ひと息ついてから最後の32kmへ向けて整理を始めました。ダンがウェブの追跡地図上の私の“点”が昨夜遅くから何時間も動いてなくて、地元の四輪バギーライダーを雇って救助しないといけないかも、と思ったと言っていました。自分の追跡装置とずっと不調だったGPSを両方再起動し、機能しているのを確認。バッテリーパックにGPSを接続して、これで行程の最終区間は大丈夫なはずです。

ピクニックエリアを後にして、瞬時に後れを取ってしまった私。信じられないほど眠気がひどく、ペダルを踏み続けることができません。まぶたが降りてきてこのままでは居眠り走行は免れないので、自分で自分の頬を叩いたり叫んだりして、ひたすら寝ないように努力しました。

ようやく最後の(最後であってほしい)テクニカルなトレイルの入り口に着いたとき、そこで待っていてくれたグレッグに「そばの木の下で10~15分ほど仮眠するから先に行ってて」と伝えたら、もう残り少ないからこのまま進もうと説得され、前進することに。今思うと、あそこで進み続けるように説得してもらって本当に良かったです。そうでなければ、15分の仮眠が3時間の昼寝になっていたかもしれません。

最後のチェックポイントはただの木!?

最後のチェックポイント。木の幹の大会ロゴの横に、「かわいそうなヤツらめ」と主催者からのメッセージが書いてある(笑)

最後のチェックポイントは、今までの他のチェックポイントと同じように緯度と経度の組み合わせが事前に与えられていましたが、それを見つけるのは至難の業のように思えました。

森の中から一本の木を見つけないといけません。走っているトレイルはチャンキー・サミット(ゴロゴロした頂上)という名前で、期待を裏切ることなく、岩石が散りばめられた長い急登が延々と続くロック・ガーデンそのものでした。ダメージの少なくうまく走れそうなラインを選び、時には自転車から降りて前進します。もしかしたらチェックポイントを通り過ぎてしまったのでは、と不安になりながらザ・クラッシャーのロゴが付いた一本の木を探していたら、眠気もいつの間にかなくなりました。やっと見つけて、最後の写真を撮って、任務はほぼ完了です! 完走まで残りわずか、距離はあと15kmくらいです。

日差しは明るくて、涼しい風も心地よく、まるで絵に描いたような景色がたくさんありました。こんなに美しい場所で自転車を楽しんでいるという事実に感謝の気持ちが絶えません。気分は良いし時間に余裕はあるし、立ち止まって写真を何枚か撮り、携帯電話の電波が入ったので「すごい近いよ、あとほんの少しで到着」とダンにテキストを入れました。ここから先は簡単な下り坂になるはず。

しかし、ザ・クラッシャーEXはそんなに簡単には終わらせてくれません。

通常、山頂フィニッシュを除き、レースやイベントでは最後の数kmが穏やかなものになりがちですが、ここではそんな「通常」なんて当てはまらないのです。開けた視界に入る、どこまでも長く続く緩やかな下り道は、よくよく見ると全部砂で、最初の少ししか走れる状態でありませんでした。そしてその後に待ち受けるのは、上り坂ばかりのMTB向けの激しいトレイル……。

長い長い下り。楽ちんと思いきや、全て砂場

ゴール地点であるキャンプ場につながったトレイルの終わりが見えたときは、待ちに待った瞬間でした。サバイバルモードから一瞬でスイッチが切り替わったような感じで、大変だったことや疲労感が夢のように消えていき、表現しがたい高揚感でいっぱいな気持ちでした。この大冒険の時間を友人・仲間たちと共有できて本当に良かったです。ソロだったらまったく違う経験になっていただろうし、みんなと一緒でなければ、もっとずっと困難だったと思います。

無事帰還。

その後はひどく眠い空腹なゾンビと化していました。翌朝、シカゴに戻る前には、リカバリーを兼ねて軽いハイキングに行きました。自然いっぱいなUPは素敵な場所で、何度でも戻ってきたいです。この日までの私の自転車経験で、最も長く圧倒的に一番タフなライドだったけれど、楽しい瞬間しか思い出せません。普段の生活から離れた、この素晴らしくハードな体験をさせてくれたザ・クラッシャーEXに感謝です。

「苦痛を追いかけるな。向こうからお前を見つけてやってくるから」とメッセージの入った、ザ・クラッシャーEXならではイベントジャージ。完走者の一人として誇りに思って着ます!

2021年の後半には、新しくなったザ・クラッシャーEXコースに、同じメンバーで挑戦しに行きました。前回の経験を踏まえ、色々と改善できるところは改善し準備しました。その2021年バージョンの話は、またいつかの機会にしたいと思います。

翌年は、バイクセットアップも改善・変更。レポートはいつかの機会に

2020年、ザ・クラッシャーEXでの面白事情
(載せきれないので一部だけです)

  • 「は、なにこれ、トッド!?」と思った回数:カウント不可能。(*黒幕主催者がトッド)
  • ミスターン:これもカウント不可能。
  • 迷子な状況:1.5回 (少なくて良かった)
  • 着地回数(=クラッシュ):3回
  • 1)最初のMTBトレイルで、大きな石の側面か太い木の根で滑った。
    2)ツルツル泥の路面で、”ダイブ “的な感じで。
    3)まるで砂場を走っているような場所で、勢いがなくなりコケた。
  • 徒歩の距離:15kmかそれ以上?
  • 蚊&吸血蝿の数:無限。準備をしっかりしたので被害は最小限。吸血マダニの被害もなし。
  • 幻覚の回数と内容:人の想像力には限りがない。
  • 途中で諦めたくなった瞬間:ゼロ。
  • 走行距離:360kmコースで実距離は402km。参加者全員にもれなく10%のボーナスがあったよう。
  • 獲得標高:4420メートル。
  • 所要時間:経過時間で33時間弱。GPSデータが不良のため、実走(歩)時間が定かでないが、28~29時間くらい??
竹下佳映

北海道出身。19歳でパイロットを目指し渡米した。現在はシカゴで仕事をしながら、2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に惹かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。アブス・プログラベルチ―ム所属 https://www.facebook.com/kae.takeshita/

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https://www.instagram.com/kae_tkst/

 

 

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PROFILE

竹下佳映

竹下佳映

札幌出身、現在は米国シカゴ都市部に在住。2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に引かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。5年間グラベルチーム選手として活躍し、2022年からはプライベーターとしてソロ活動。ここしばらく飛んでいないが飛行機乗り。

竹下佳映の記事一覧

札幌出身、現在は米国シカゴ都市部に在住。2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に引かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。5年間グラベルチーム選手として活躍し、2022年からはプライベーターとしてソロ活動。ここしばらく飛んでいないが飛行機乗り。

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