キャノンデール50年の歴史はバッグ製造から始まった!
今坂純也
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往年のファンには、⾼品質なアルミフレームの製造や⽚持ちのフロントサスペンションフォークLEFTYなど、エポックメイキングなバイクパーツの開発などで知られるキャノンデール。今年は同社が創業して50周年を迎えた。そんな同社の50年をキーワードとともに振り返り、さらにそのブランドアイデンティティを解説する。
INDEX
バッグ製造に始まり、⼦ども乗せキャリアカーへ
1971年にその歴史が始まったキャノンデールは、創業時からバイクを製造していたわけではなかった。創業当時はスリーピングバッグやギアバッグ、サイクルバッグなどを製造。翌1972年、Bugger(バガー)と呼ばれる⼦ども乗せキャリアカーが、ハードギア製造開始の1号商品だ。
キャノンデール駅=創業時の本社ではなかった!?
キャノンデールは1971年、アイオワ州で1940年に⽣まれ、幼少期を果物農家で過ごしたジョー・モンゴメリーによって興されたブランド。創業時の社屋は、アメリカ東海岸にあるコネチカット州の鉄道の駅であるキャノンデール駅とよく⾔われているが、じつはその駅を線路で挟んだ向かいにある建物(Yellow Barn)が創業時の社屋だ。
ちなみに、社屋のそばにあったキャノンデール駅は、このあたりの名主であったジョン・キャノン⽒が⾃⾝の名を冠した雑貨店キャノンストアを1780年代にここに建て、1852年にキャノン駅を開業したのがそのはじまりと⾔われている。
1983年、創業から12年⽬にして初のキャノンデールブランドのバイク、Touringを発表。トップチューブが地⾯と⽔平な「ホリゾンタル」フレームをもち、創業時から製造技術を培ってきたサイクルバッグなども組み合わせられた当時の写真は、今⾒ても⾮常にスタイリッシュである。
キャノンデールのお家芸、アルミのCAADフレーム登場!
創業者のジョーがアルミに着⽬したのには理由があった。
趣味のセーリング(ヨット)を楽しんでいたあるとき、乗っていたヨットが転覆するという事故に遭う。サメもいる海で⼀昼夜漂うなか、彼が⽬にしたものはプカプカと浮かぶヨットのマスト部だった。⾦属でありながら海に浮かぶアルミ製マストを⽬にした彼は、このアルミをバイクフレームとして採⽤できないか?と考えた。
そうして作り上げられたのが前出のTouringであり、キャノンデールのお家芸でもあるアルミフレーム、CAAD(キャアド。Cannondale Advanced Aluminum Design)シリーズのはじまりでもある。
「キャノンデールの先進的なアルミニウム加⼯技術」と⾔えるCAADシリーズは2021年現在、13代⽬を数えるが、3代⽬(CAD3)までは“A”が1つしかない「CAD」と記されており、4代⽬からは現在と同様にCAADと記されるようになった。
なお、同社製のロードバイクにはSIX13などの数字が記されているが、これはフレーム素材を元素番号で記したもの。原⼦番号SIX(6)は炭素(カーボン)で、13はアルミニウムを指す。つまり、SIX13とはカーボンとアルミのハイブリッドフレームを意味しているのだ。
ちなみに、現在のロードフレームCAAD13の“13”はアルミニウムの元素記号。加えて、最新のCAAD13は「キャノンデール史上最⾼のアルミレーシングバイクというだけでなく、世界最⾼のアルミバイクであることを使命としている」と⾔える。
世界初のリアサスペンション付きMTB E.S.T.
1990年、世界初の量産型マウンテンバイク⽤サスペンションフォークRS-1がROCKSHOX社から発売。その翌年の1991年、キャノンデールは世界に先駆けてリアサスペンション付きバイクE.S.T.(Elevated Suspension Technology)を発表。E.S.T.はフロントがリジッド(サスペンション機構なし)で、リアにのみサスペンション機構が付いていた。
この量産初のリアサスペンションのピボットには、じつは“BB(ボトムブラケット)”と同じ構造が採⽤されていた。
また、カンチレバー(⽚持ち式)ブレーキの後継で強⼒な制動⼒を誇ったシマノ製“Vブレーキ”がまだなかった時代に、ブレーキの⼒率を最⼤40%も増⼤させられる(実際にVブレーキと同等)Force 40というカンチレバーブレーキも搭載していた。
誰もがその登場に驚いた⽚持ちフロントフォークLEFTY
1990年代後半、マウンテンバイク⽤サスペンションフォークの開発は激化していた。そのサスペンションフォークは左右にインナーチューブとアウターチューブを備えた、モーターサイクル的なルックスのテレスコピックフォークの形式が主流だった。
そして1999年、キャノンデールが発表したのはインナーチューブとアウターチューブが左側にしかないLEFTY(“左利き”の意味)フォーク。
ただし、LEFTYを語るにはLEFTYより以前に同社製マウンテンバイクフレームに搭載されていたHEADSHOKから先に説明しなくてはならない。
他社製サスペンションフォークのほとんどは左右にアウターチューブとインナーチューブを備え、左右2つのアウターチューブが可動する形。しかし、HEADSHOKの可動部はステアリングヘッド下の1カ所のみと異彩を放っていた。
……創業者のジョーは⾃家⽤ジェットを持つほど⾶⾏機に興味があった。
あるとき、⾶⾏機の着陸する様⼦を⾒て、「⾶⾏機の⾞輪は1本のアームで⾞輪を⽀えている。バイクにもこの⽅式を使えないか?」と考えた。
この発想から作り出されたのが、可動部が1つしかないHEADSHOKなのである。
*余談だが、HEADSHOKのアイコンとなった頭部の⻑い“ブラッドおじさん”は、1994年に公開された映画Pulp Fiction内のセリフ“Check out the big brain on the BRAD!”からとったもの。
オリジナルのサスペンションフォークHEADSHOK
左右に可動部をもつサスペンションフォークは、左右をブレースなどで⼀体化したとしても左右が完全にシンクロして動くことはありえない。どうしても歪みやズレが発⽣してしまうからだ。
また、2つのインナーチューブとアウターチューブの嵌合部には摩擦⼒が発⽣し、左右の歪みやズレと相まってスムーズな動きも阻害してしまう。
それを解決したのがHEADSHOK。
HEADSHOKの最⼤のウリは、“On the Fly ダンパー”と名付けられた「ステム上部のダイヤルを回すとコンプレッションダンピングを“⾛りながら”変更でき、ロックアウトもできる」というものだった。
これは当時のサスペンションフォークにはなかった構造だが、のちに多くのサスペンションフォークがこの構造を“当たり前に”採⽤するきっかけを、この頃作ったことは驚きに値する。
HEADSHOKを搭載したリジッドフレームに乗り、Volvo Cannondaleのクロスカントリーチームは快進撃を続けた。
当時のクロスカントリー競技では80mm程度のストローク量が普通。その後、コースはよりアグレッシブに変化し、さらにハイスピード化が進むと、必要とされるストローク量は増していった。
これを解消するために頭を悩ませるが、ヘッド下に可動部をもつHEADSHOKの構造上、ストローク量を伸ばすとステアリング部は上に上がり、バイクの操縦性が⼤きく変わることになる……。
HEADSHOKの進化形、LEFTY登場!
じつはHEADSHOKからLEFTYへの進化の過程で、“MOTO”というダウンヒルレース⽤ダブルクラウンフォークがあり、これもLEFTY開発の⼤きなきっかけとなっている。
今までのHEADSHOKでは、ダウンヒルレースに対応できるストローク量確保に限界が⽣じていた。そこで、ストローク量を伸ばすためにモーターサイクル同様にダブルクラウンとし、正⽴式ではなく倒⽴式を採⽤したのがMOTO。
このようなサスペンションフォークは、当時のサスペンションメーカーでさえ作り出すことができなかったうえ、中⾝はHEADSHOK同様にねじれのない、ある意味“超オーバースペック”なものだった。しかもあまりに剛性が⾼かったため、「剛性はそんなにいらない。半分だったらどうか?」という発想で考え出されたのがLEFTYである。
その姿はまさにダブルクラウンの倒⽴フォークMOTOを半分に切ったような、特徴的な⽚持ちのルックスだった。
*この⽚持ちサスペンションに関しては、すでにモーターサイクルの世界ではレーシングマシンにも採⽤されており、その⾒た⽬からいまさら「剛性が……」「操縦性に左右差が……」等を話すのはナンセンスであろうと筆者は考える。つまり、乗ってそれを感じられるか?が重要だと考えるからだ。
システムインテグレーションという他社にない考え⽅
同社製バイクのヘッド部等に⾒られる“Si”の⽂字はSystem Integration(システムインテグレーション。システムの統合化)の略で、キャノンデールのモノづくりの基本的な考え⽅・哲学・思想を表している。
同社はバイクを⼀つのパッケージとして考え、フレームとパーツを統合してイチから設計することで「最⾼のパフォーマンスを⽣み出す製品を開発すること」を理念として掲げている。
同社のクランク“BB30”、フォーク“LEFTY”、クランクやホイールの“HOLLOWGRAM”などがその考え⽅を形にした製品と⾔え、それらは同社が「最⾼のバイクを作れるのであれば⼀切の妥協をしない」ということの現れである。
とここで、BB30登場の背景を少し説明する。
当時のクランク軸の⽋点と⾔われたのが「軸のねじれ剛性の低さ」。
これを解決するために、削り出し専⾨の⼯房・マジックモーターサイクルが考えたのが、標準のBBシェルにアウトボードベアリングカップ(ベアリングをBBシェル外側につけた)を取り付けて、BB軸を⼤径の30mmにするというアイデア。
今までよりも⼤幅な剛性アップを果たしたこのシステムは、シマノ・オクタリンクの元となったとも⾔われている。
キャノンデールはこのマジックモーターサイクルを買収、“CODA MAGIC”クランクシステムを⾃社製品として販売して上級完成⾞に採⽤した。
「フレームと⼀体構造の、ムダのないBBシステムにするための解答」として、BB30システムは⽣まれたのである。
このようなところも惜しみなく突き詰めていく姿勢は、他の多くのフレームメーカーと、キャノンデールの考える“バイクメーカー”の違いと⾔えるだろう。
プロロードチームは1997年から始まった
キャノンデールはヨーロッパのプロロードチームにスポンサードした、最初のアメリカンブランドである。
1997年シーズンにSaeco Cannondaleチームをスポンサードすると、2004年までの8年間チームは継続。チームにはマリオ・チポッリーニやジルベルト・シモーニ、ダミアーノ・クネゴらそうそうたるメンバーが名を連ねていた。
2005年はLampre Caffita、2007-2012年はLiquigas Cannnondale、2013-2014年はオウンチームであるCannondale Pro Cycling、2015-2017はCannondale Garmin、2018からはEF Pro Cyclingチームをスポンサードし、その契約は2023年まで結ばれている。
⼀世を⾵靡したVolvo Cannondale
往年のキャノンデールファンには、1994-2002年のマウンテンバイクチーム“Volvo Cannondale”が最も印象的だろう。その戦績は11回の世界選⼿権優勝、ワールドカップタイトルは17個も勝ち取ったという“絶対王者”だった。
Volvo Cannondaleチームにはミッシー・ジオーヴィ、アリソン・サイダー、アン・カロリン・ショッソン、ブライアン・ロープス、セドリック・グラシア、カデル・エヴァンスほか多くのビッグネームが名を連ねたが、ここに⽇本⼈である鍋島健⼀も所属した。
ただ、このうち最もユニークで強烈な印象を残したのは、「ミサイル・ミッシー」と⾔われたミッシー・ジオーヴィだろう。
ドレッドヘアに⿐ピアス、ピラニアの剥製のネックレスを⾝に付け、まさに“ミサイル”のように、ダウンヒルコースを疾⾛した。
2007-2009年にはタイヤブランドVredesteinとクロスカントリーチームをもち、Cannnondcale Vredestein として活動。2021シーズンにプロロードレースチーム、アスタナ・プレミアテックでエースとして活躍したヤコブ・フルサンも所属していたチームだ。
また、2008年に⽴ち上がったマウンテンバイクチームはCannondale Factory Racing(CFR)として活動し、ブランド史上最も⻑い歴史をもつチームとなった。
クロスカントリーチームは2年連続でワールドカップ・ベストチームに選ばれ、2018年にはエンリケ・アヴァンチーニがマラソンの世界選で優勝している。
ついにオフロードモーターサイクルの世界へ
常にチャレンジを続けるキャノンデールは1998年、ついにモーターサイクル製作にも着⼿。翌年プロトタイプを発表し、2001年には第1号として400ccのモトクロッサーMX400を発売した。
MX400は当時のアメリカのMX誌の表紙にも登場するなど⼤きな話題をさらったが、事業としては軌道にのせることはできず、2003年ついにチャプターイレブン(⽶連邦破産法11条)を申請。
モーターサイクル部⾨のみを精算し、バイク部⾨は継続して⽣産を続けることになった。その後、豊富な資⾦⼒を誇るドレルインダストリー社が親会社となったことでさらに先進的なバイクやパーツを作れるようにもなったのだ。
汎⽤品か? 専⽤品か?
「フレームメーカーではなくバイクメーカーである」
多くのバイクブランドは、フレームを⾃社で作り、コンポーネントやホイール、ハンドルなどは他社製品を使っている。だが、そこにはそのパーツを取り付けるために⼨法を限定されるなど、少なからず「妥協」が⽣じてしまう。
設計者が最⾼のバイクを作るために妥協を捨て、最⾼のバイクのために可能な限り専⽤品を作っているのが同社なのだ。
これは例えばアップル社のMacと他社のPCの関係に似ている。アップルは⾃社製のMacに⾃社製OSを搭載し、多くの⾃社製ソフトを搭載。対して、ほとんどの他社製PCは筐体のみを製造し、OSやソフトは他社製を使う……そんな感じだろうか。
⾼速巡航性と低速俊敏性、速さと快適さ、トラクション性、安定性ほか、相反する性能でありながらも妥協せず設計し、もちろん汎⽤品採⽤による⼀切の妥協をせず、現時点で最⾼のバイクを作り上げることに最⼤の⼒を注ぐブランドがキャノンデールなのだ。
50年という⻑きに渡りビッグブランドをもつバイクメーカーとして君臨しつつも、この「妥協しないモノ作り」を徹底して⾏っているキャノンデール。
そしてエポックメイキングな製品やこだわりのモノ作りへの姿勢は、今までのように、そしてこれからも我々ユーザーを⼼底ワクワクさせてくれるに違いない。
*同社のバイクにはAiホイールしか付けられないと思っているユーザーがいる。ユーザーが複数台のバイクを持ち、複数のホイールを⼊れ替えてライドを楽しみたくともできないのであれば、それは残念なこと。
だがじつはRE-DISHという⽅法で、⼿持ちの他社製ホイールをAiフレームに「追加するパーツなどなく」適合させられることは意外と知られていない。
詳しくは、購⼊したキャノンデール販売店にお問い合わせいただきたい。
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Cannondale(キャノンデール)公式サイト
https://www.cannondale.com
- BRAND :
- Bicycle Club
- CREDIT :
-
TEXT:今坂純也/DIRT SKIP
取材協力:キャノンデール・ジャパン
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