サイクルウエアで透明人間ができる!? 北米ライダーの極寒生活|竹下佳映のグラベルの世界
竹下佳映
- 2022年03月22日
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そろそろ春を迎えるが、それでもまだまだ寒い日が続く。日本よりもさらに冬が寒いアメリカ・イリノイ州シカゴはウエアを凍らせると透明人間ができてしまうくらいの極寒の地だ。ここでは北米で活動するグラベル界の第一人者竹下佳映さんが極寒のシカゴでの冬季の過ごし方を紹介する。
とあるシカゴライダーの冬季の過ごし方
3月になりましたが、まだまだ春の兆しは遠いですね。つい先日も大雪のせいで近くの高速道路で100台玉突き事故がありました。私がずっと住んでいるここ米国イリノイ州北部の冬は長くて厳しいです。暖かい地域に住んでいる友人や知り合いをうらやましく思います。スノースポーツを気軽に楽しむには極寒過ぎるシカゴでの冬期間、私の過ごし方を紹介します。
1 吹雪で最悪の時期になるまでCXをする
9月後半から12月頭までは、シカゴ・クロス・カップという10週間続くシクロクロスのレースシリーズがあります。参加者も多く(毎週日曜日500~700人参加)かなり盛り上がります。
会場は毎週末変わり、どの会場も自宅から車で15分〜1時間で行ける距離で、グラベルレースに行くより随分とお手軽です。シーズン開始は気持ちのいい秋という感じですが、最後のほうになると吹雪の中でのレースもありえます。パンデミックの影響で2020年・2021年とシリーズは中止になってしまいましたが、今年こそシクロクロスを堪能したいと思っています。
2 オフシーズンを楽しんで、計画を立て始める
シクロクロスが終わるとクリスマス・年末年始の頃なので、しばらくオフ時間を楽しみます。
前のシーズンでのできごとを思い返して改善案を考えたり、必要な部品・消耗品・アパレルをリストアップして買い足したり。アイオワ・ウィンド&ロックや、ザ・クラッシャー(前の投稿参照)でも使ったアルパカ毛の靴下がメリノウールよりずっと暖かく重宝したので、この冬もう2足買い足しました。
▼アイオワ・ウィンド&ロックはこちらへ
来たるグラベルシーズンで、どの大会に出場したいか、どんな新しいアドベンチャーに挑戦してみたいかを考え始めたりする頃でもあります。過去5年はレースチームに所属していたので、チーム側で決められたレースカレンダーがあり、自分個人で出たい大会は空いた時間があれば、という形だったのですが、今季からプライベーター活動のため予定を組むのに自由さがあります。「とにかく楽しむ。徹底的に楽しむ」が私のモットーなので、楽しみ満載の一年にしたいです。
3 自転車整備の勉強と復習
私はSRAMのコンポーネントを使うので、SRAMテクニカルユニバーシティ(STU)という自転車整備士のためのトレーニング提供サービスの動画を見直したり、YouTube一般公開の動画で勉強したり、それまでに実際に自分ではやってみたことのないメンテナンスをやってみたりします。練習するなら、何も予定のないこの時期です。この冬は、油圧ディスクブレーキのエア抜きを自分でやってみました。一回目はかなり時間かかりましたが、次回はもっとスムーズにいくと思います。自分でできることが増えるとうれしいものです。シーズン前のチューンアップ・部品交換も今のうちに行います。
4 インドア・トレーナーと、筋力トレーニング
オフシーズン中は特に筋トレに力を入れるべき時なので、週3回を目安に行っています。実家札幌の降雪量よりはずっと少ないですが、たまに雪かきが筋トレ代わりになったりもします。自転車に乗るとなったら私の場合は冬場はもっぱらインドアです。天候に関わらず行えるインドアライド、じつは冬に限らず夏場も行っています。外で乗るほうが楽しいのは間違いないですが、トレーニングに使える時間が限られていると、やはりインドアは効率がいいですね。最近はZwiftを筆頭にバーチャルライドの選択肢がたくさんあるので、ひと昔前のインドアトレーニングよりずっと楽しいし続けやすいです。前の月の投稿のアイオワ・ウィンド&ロックに向けてのトレーニングも大会1カ月前までは全てインドアで行いました。
この冬はベーストレーニングのプラットフォームとしてZwiftを使うのが主ですが、2020~2021年の2シーズンはeスポーツ専門チームに所属し、米国自転車連盟認定eレースや、Zwiftレーシング・リーグ・プレミア部門を始めとする多くのチームレースに出場したりしました。それまでZwiftは単に走る場所確保にだけ使っていたので、チームメイトやチームディレクターと密にコミュニケーションを取りながら行うレースでは、皆お互いに刺激を与え、励ましあい、ポジティブさに溢れた時間でした。
5 寒さがひどくなって嫌になる。楽しめる何かを探す
最近の話だと、2019年・2021年に歴史的な寒波が到来し、南極より寒くなる日もありました。外で大きく空気を吸い込むと、胸が痛く感じるほど空気が冷たいです。強風のおかげで、体感気温は実気温よりさらに5~10℃ほど下がります。
凍ったバナナで釘は打てます。でも打ち付けるものも凍っているので、バナナが砕けることもあります。
外で熱湯を放ると一瞬で雪に変わります。シャボン玉も凍って地面を転がりますが、うまく動画に収めることができていません。携帯タッチスクリーンを触るのに手袋を外すと、直ぐに指が痛くてもげるかもしれない、と本気で思うほどの寒さ。そして、頻繁に懐に入れて温めないと、明らかに携帯機能の動きが鈍くなっています。
6 我慢できなくなると、一時避寒
寒いのにいい加減嫌気が差してくると、数日間暖かいところに住む友人に会いに行ったりすることもあります。
コロナ規制も緩んできていますし、ここ数年で米国の大手航空会社数社が預け荷物費用に加えて発生する「スポーツ用品費用」を撤去したのもあり、前より気軽にバイクを持って飛行機で移動できます。
今年の2月上旬には、何年もやってみたいと思っていたカリフォルニア州でのグラベルイベントに参加してきました。厳密に言うとレースではなく激ハードなライド、という位置付けで、2月の冬眠明けにはちょうどいい雰囲気の楽しく激しい大会でした。カジュアルライダーから有名選手もたくさん集まりました。シカゴに戻る前には海岸沿いを走る機会もあって、久々に海を見て最高の気分でした。
やっぱり暖かいところがいいですね! 春が待ち遠しい!
竹下佳映
札幌出身、現在は米国シカゴ都市部に在住。2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に引かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。5年間グラベルチーム選手として活躍し、2022年からはプライベティアとしてソロ活動。ここしばらく飛んでいないが飛行機乗り。
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PROFILE
札幌出身、現在は米国シカゴ都市部に在住。2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に引かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。5年間グラベルチーム選手として活躍し、2022年からはプライベーターとしてソロ活動。ここしばらく飛んでいないが飛行機乗り。