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グラベルが大流行のアメリカ、いま起きているレースの変化|竹下佳映のグラベルの世界

アメリカでは日本で開催されるものとは比べ物にならないほど規模の大きいレースがあったり、子どもも参加できるようなアットホームなイベントがあったりと、種類もさまざまだ。UCI(国際自転車連合)のグラベルレースを開催するなど、世界的なブームとなっているグラベルだが、なぜここまでライダーの心をつかんでいるのか。北米で活動するグラベル界の第一人者、竹下佳映さんがここ最近のグラベルレースの傾向や変化について語る。

アメリカ国内のメジャーなレースの最新動向

最後2時間は上りっぱなし、ユタ州のクラッシャー・イン・ザ・トゥシャー。ゴール地点は標高3153メートル PHOTO: Crusher in the Tushar

アメリカ国内で人気なのは「ベルギーワッフルライド(BWR)」1つのレースから始まったものの、今では4州でレースが行われ、ちまたの噂ではまだ数を増やすそうです。昨年の最後のレースにはワールドツアーチームのDeceuninck-Quick-Stepから数名参加したり、女子総合は同じくワールドツアーチームのCanyon-SRAMの選手が勝ち取りました。

今年から始まった「Lifetimeグランプリ」は、グラベル3レース・MTB3レースからなるオフロードシリーズです。このようなシリーズ開催自体は特に新しいものではないのですが、男女平等に分け与えられる賞金の合計額は$250,000にもなり、優勝者にはそれぞれ$25,000が授与と、今までのグラベル界では考えられない規模になっています。

選出された男女各30名のシリーズ参加選手は、元・現ワールドツアーレーサー、世界選手権代表選手、ナショナルチャンピオン、世界記録保持者や若手選手を含むプロラインアップです。4月頭に米国カリフォルニア州モントレーで行われている、シーオッター・クラシックという、約1万人のプロ・アマチュア選手と7万人のファンが参加する世界最大の自転車の祭典で開催される自転車レース7種目のうちのひとつ、クロスカントリーMTBレースが、このグランプリの第1レースとなります。アンバウンド・グラベルの他にも有名なクラッシャー・イン・ザ・トゥシャーというグラベルレースもシリーズに含まれています。

「トップから、最終フィニッシャーまでが愛と尊敬で扱われる」

アンバウンド・グラベルの主催者の一人であるKristi MohnからLifetimeグランプリについてコメントを頂きました。「このような機会を、選手とサイクリングファンの双方に提供できることをうれしく思っています。グランプリの個々のレースを開催する地域社会にとっても、素晴らしいことなんです。小さな町には経済の原動力が必要で、これはその一翼を担うことになるわ」

2019年ダーティ・カンザ200の女子トップ5と、主催者Kristi Mohn(私の右隣) PHOTO: Advanced Inst.

先日、グラベルワールドという大規模な大会が、これまたアメリカの五大グラベル大会の一つと言われるザ・ミッド・サウスとコラボレーションをし、お互いの大会を盛り上げたことが話題になりました。

「このアイデアは、グラベルの世界に分裂という醜い頭が見え始めているのを見て生まれたんだ。エゴ、金銭、プライド、自分たちvs彼ら、自分らの大会vs彼らの大会、自分たちのチームvs彼らのチーム。どういう呼び方をしてもいいけど、僕ら(=両大会の主催者)はそれを何とか止めたいと思った。

グラベルがほかと違うのは、始まった当初からコミュニティが何よりも優先されていたことなんだ。コミュニティが第一で、スポーツは第二。世界トップクラスのアスリートたちの対決を見るのはもちろん楽しいけど。最初の人から最後の人まで、全てのライダーが同じように愛と尊敬をもって扱われる。だから、グラベルは多くの人にとって特別な存在なんだよ。

この二つの大会のパートナーシップは、何よりもコミュニティを優先させるということを、具現化したものなんだ」と、グラベルワールドからの発表でした。

女性ライダーの参加を促す大会も

女性参加1000人を目指す、グラベル・ワールド PHOTO: Matt Pearson

一般的に、グラベルに限らずスポーツでは女性参加が男性参加数より少なかったり、プロサイクリングでも男女の賃金差の問題が色濃くあり、女性参加をさらに盛り上げようとするグラベル大会が後を絶ちません。

グラベルワールドは今年女性参加者1000人を目指しています。他にも男女参加率50・50%を目標とし、達成している大会もあります。

私がオーダーウエアでお世話になっている、チャンピオンシステムUSA主催の新しい大会グラウンデッド・ネブラスカでは、「私たちは、平等・公平を信じています。自転車競技の賃金格差に特化した統計を取るのは難しいので、アメリカにおける男女間の平均賃金格差を賞金額差の基準として選びました」と、男女の賃金差を反転し、女性選手への総合賞金額を男性選手の金額より高く設定しました。

元トレック・セガフレード所属・現グラベルトップライダーPeter Stetinaが開催するペイ・ダートも男女平等の問題に取り組み、女性ライダーを主役とし女性表彰台のみに賞金を用意しています。(男性表彰台もあるし賞品はあるが、賞金は女性のみ)

BIPOC(黒人・先住民・有色人種)やLGBTQ(性的少数者)等の社会的な少数派グループへのサポートに力を入れたりと、もともとグラベルに存在した「多様性・包括性」が多くの大会を通してどんどん拡大していっています。

UCIの介入で見えたアルカンシェルのチャンス

UCI(国際自転車連合)がグラベルに関与するという件は、前々からアメリカ国内では賛否両論でした。当初は圧倒的に批判の方が多かったです。人気グラベルメディア、グラベル界のトップライダー、ベテランライダーからアマチュアライダー、他の自転車競技の選手からも、反対の声またはノーコメント。「私たちのイベントはUCIレースにはならないということはハッキリしています」と言うような表明をする大きな大会主催者もいて、いったい誰がアメリカ国内のUCIレースを主催するのだろう、と思ったりもしました。

UCIから正式に詳細やスケジュール発表となると、現実を受け入れたというのもあってか各メディアの口調もニュートラルになってきました。プロ選手の中では誰が出場するのか、という話はまだあまり出ていません。もとより、UCIの介入に反対だからパス、と興味を全く示さないトップ選手もいます。ほかにも国内に名声の高いレースやシリーズが数多くあるので、UCIレースに行く必要が……という姿勢もあります。単にUCIの発表が遅かったため、すでに今シーズンのスケジュールが決まっていていまさら予算や予定の変更ができないので行かない、という選手もいるようです。

もちろん、ポジティブな意見もあります。もともとアメリカでのグラベルは反UCI的な部分があるので、興味を持つライダーは限られてくるかもしれませんが、アメリカ国内では6月と8月、2つもUCIグラベルシリーズのレースがあり、世界戦でアルカンシェルを手にするチャンスがあるかもしれないわけですから、なんだかんだで最終的には多くのライダーで盛り上がると思っています。

フィリピンのUCIレースに行ったローカルの参加者から話を聞くことがあったのですが、最高に楽しかったと、素晴らしい時間を過ごせた、との感想でした。UCIが抱える問題も数多くあるでしょうが、個人的にはUCIだから駄目、という意見は一方的すぎるかなと思います。グラベルの世界は広いですから、いろんな種類に富んでいるのは良いことだと思いますし、誰も「これをやりなさい」「これをサポートしなさい」と強要しているわけではないので、自分に合ったイベントを選んで参加すればいいだけですから。これを機会にもっと多くの人が自転車を楽しむことにつながり、次世代のグラベルライダーが増えるのではあれば、それは素晴らしいと思います。

アメリカ・トライアスロン連盟(USAT)も、グラベル・トライアスロン・シリーズを発表しました。自転車区間がMTBでなくてグラベルなので、エクステラとは違います。連盟に属さないトライ・グラベルレースもあります。

最後に、グラベルは身近にある。

この夏来たる新規レース、Core4のコースのプレビューライド  PHOTO: Alex Buhmeyer / www.core4.bike

メディアに取り上げられ、名が知られているメーカーやベンダーのエクスポに溢れる上位選手には結構な額の賞金が出るレースのほか、手作り感に溢れる質素だけどアットホームなグラスルーツ(草の根)タイプ、そしてその間に位置する大会・イベントがアメリカにはたくさんあります。

ほかにも、バイクパッキングのフォーマット、順位付けのないみんなで楽しむタイプのイベント、ひたすらハードで完走そのものが危ういもの、大人だけでなく子どもにもフレンドリーなイベント、平日仕事後のグループ・グラベルライド、週末のグラベルライドなど、アイデアとグラベルロードさえあれば、グラベルは誰もが楽しめます。

主催が誰であれ、規模が何であれ、コミュニティに還元して、多くの人が自転車に乗れる環境を作る。仲間意識を高め合い、いっしょに最高の時間を分かち合って、自分に挑戦し続ける場もある。可能性が無限大なのがグラベルの世界だと思います。

 

竹下佳映

札幌出身、現在は米国シカゴ都市部に在住。2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に引かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。5年間グラベルチーム選手として活躍し、2022年からはプライベティアとしてソロ活動。ここしばらく飛んでいないが飛行機乗り。
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PROFILE

竹下佳映

竹下佳映

北海道出身。19歳でパイロットを目指し渡米した。現在はシカゴで仕事をしながら、2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に惹かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。アブス・プログラベルチ―ム所属

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北海道出身。19歳でパイロットを目指し渡米した。現在はシカゴで仕事をしながら、2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に惹かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。アブス・プログラベルチ―ム所属

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