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ユンボ総力戦でヴィンゲゴーをアシスト、ポガチャルまさかの首位陥落|ツール・ド・フランス

ツール・ド・フランス2022は第11ステージで大きな局面を迎えた。レース中盤以降、11カ所、超級2カ所の山岳を上ったアルプスステージで、ユンボ・ヴィスマが猛攻。個人総合2位につけていたヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)が終盤にアタックを成功させ、そのままステージ優勝。ライバルに大差をつけて、個人総合首位のマイヨジョーヌに袖を通した。かたや、ここまで好調な走りを見せていた王者タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)は、ヴィンゲゴーのアタックを追えなかったばかりか、他選手にも次々と抜かれてしまった。251秒遅れのフィニッシュとなり、第6ステージから守ってきたリーダーの座を明け渡した。

このステージに狙いを定めていたユンボ・ヴィスマ 暑さもありポガチャルが沈む

出場選手から相次ぐ新型コロナウイルス感染者の発生を受け、主催者A.S.O.(アモリ・スポル・オルガニザシオン)は、この第11ステージからチームバブルを明確化。選手やスタッフの待機場所となるチームパドックには、チーム関係者のみ出入りが許可され、取材者や招待客の入場は禁止されることとなった。

Photo: Syunsuke FUKUMITSU

前日行われた第10ステージから始まったアルプスでの3連戦。その2つ目として、アルベールビルからコル・ドゥ・グラノン・セッレ=シェヴァリエまでの151.7kmが設定された。中盤から本格山岳区間へと入り、1級山岳テレグラフ峠(登坂距離11.9km、平均勾配7.9%)、超級山岳ガリビエ峠(17.7km6.9%)を立て続けに上って、最後は超級山岳コル・ドゥ・グラノン(11.3km9.2%)に入っていく。

このうち、ガリビエの頂上は標高2642mで今大会最高標高地点となることから、アンリ・デグランジュ賞が設けられる。

©A.S.O. / Aurélien Vialatte

1992年に冬季五輪が開催されたアルベールビルを出発したプロトンは、ニュートラル区間を経てリアルスタート。これと同時に動いたのはポイント賞のマイヨヴェールを着るワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)とマチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス、オランダ)。シクロクロスで長年にわたり世界ナンバーワンを争う2人が、ツールで一緒に逃げるユニークな序盤戦になった。

先行する間、16.5km地点に置かれた中間スプリントポイントは、“狙いどおり”にファンアールトが1位通過。それから15kmほど進んだところで、単独で追いついたマッティア・カッタネオ(クイックステップ・アルファヴィニル、イタリア)に続き、17選手が合流。この日最大の20人がレースを先行した。

©A.S.O. / Pauline Ballet

先頭グループは快調にレースを進めて、残り100kmで集団に対して5分のリードを確保。その後も差は拡大傾向。大人数でテレグラフ峠に入るが、ワレン・バルギル(チーム アルケア・サムシック、フランス)がスピードを上げると、前線の人数は11人に。タイミングを同じくしてメイン集団でも動きがあり、頂上まで4kmのポイントでプリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)がアタック。さらに頂上通過後の下りでも加速。先頭グループで走っていたクリストフ・ラポルト(ユンボ・ヴィスマ、フランス)も集団へと戻ってペースメイクに加勢した。

ガリビエ峠へ移って、先頭グループでは抜け出しを図る動きの中からワレン・バルギル(チーム アルケア・サムシック、フランス)が独走態勢へ。頂上をトップ通過し、アンリ・デグランジュ賞を決めた。そのはるか後ろのメイン集団では、ヴィンゲゴーとプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)のユンボ・ヴィスマコンビが交互にペースアップ。これに呼応するかのようにポガチャルも前をうかがう。こうした動きによって、この3人に加えてゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)が集団に対して先行する場面も。後ろに残った選手たちが再び合流したものの、頂上を前にポガチャルとヴィンゲゴーが再び前へ。出入りが繰り返されながら、ガリビエを越えた。

©A.S.O. / Charly Lopez

33kmに及ぶダウンヒルでも、バルギルの独走態勢は変わらず。メイン集団では、長く先頭グループに位置していたファンアールトが前待ちで合流し、ヴィンゲゴーをアシスト。さらにポジションを下げて、前線復帰を目指したログリッチのための牽引も。ダヴィド・ゴデュ(フランス)を前に送り出したいグルパマ・エフデジも追走に加わって、残り20kmを迎えたタイミングで、メイン集団には多くの総合系ライダーがそろった。

いよいよやってきたコル・ドゥ・グラノン。先頭のバルギルは、集団に対して約330秒のリードを得てクライミングを続ける。自然と個人総合争いへとシフトしていったメイン集団では、同12位につけるナイロ・キンタナ(アルケア・サムシック、コロンビア)が単独アタック。トップを行くチームメートへの合流を目指す。これを見送った精鋭メンバーは、ラファウ・マイカ(UAEチームエミレーツ、ポーランド)のペーシングで着々と残り距離を減らしていく。

©A.S.O. / Charly Lopez

情勢が少しずつ変化を見せたのは、残り5.5kmでのロマン・バルデ(チーム ディーエスエム、フランス)のアタックから。この流れから、ヴィンゲゴーもアタック。そして、衝撃的なシーンがやってくる。

スピードを上げるヴィンゲゴーを一瞬はチェックに動いたポガチャルだったが、すぐに失速。両者の勢いは一目瞭然で、完全に“ゾーン”に入ったヴィンゲゴーは、前にいたバルデ、バルギル、キンタナをすぐにパス。ポガチャルはトーマスのアタックにも対応できず、追い上げてきたアダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)やゴデュにも引き離されてしまった。

最後の4kmをトップで駆け抜けたヴィンゲゴーは、あっという間に2位以下に大差を奪って、マイヨジョーヌ奪取は確定的に。あとは、ライバルとどれだけのタイム差をつけられるかが焦点になった。

©A.S.O. / Charly Lopez

初めてとなるツールのステージ優勝にもウイニングセレブレーションは後回しに、最後までしっかり踏み続けたヴィンゲゴー。終わってみれば、ステージ2位のキンタナに59秒、3位バルデに110秒の差をつける圧勝劇。レースを通じてユンボのアシストたちがヴィンゲゴーに寄り添い、序盤から先行したファンアールトやラポルトも前待ち役で中盤以降に機能。総合系ライダーとして双頭体制をとってきたログリッチがアシストにシフトするなど、チームとしてこのステージにフォーカスしてきたことがはっきりと見えた戦いぶりだった。

一方で、絶対王者とみられていたポガチャルがまさかの大敗。レース中にたびたびアシストを失っていたことや、苦手な暑さに苦しめられたことが敗因か。ヴィンゲゴーのアタックに屈した終盤は、ジャージの前部をオープンし、苦しさに表情をゆがめた。251秒差のステージ7位に沈み、マイヨジョーヌを明け渡した。

これらの結果により、ヴィンゲゴーはツールで初めてとなるマイヨジョーヌ着用。個人総合2位に浮上したバルデとのタイム差は216秒。ポガチャルは同3位にランクダウンし、総合タイム差は222秒となっている。上位陣のシャッフルも見られ、キンタナが7ランク上げて同5位に浮上。痛みを抱えているアレクサンドル・ウラソフ(ボーラ・ハンスグローエ)が8位へ、アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・カザクスタン チーム、カザフスタン)が9位に上げている。

©A.S.O. / Charly Lopez

本格山岳での劇的展開になったが、まだアルプスステージは終わっていない。翌14日に行われる第12ステージは、ブリアンソンからアルプ・デュエズまでの165.1km。上る山岳はすべて超級。スタート直後から、再びガリビエの登坂があり(第11ステージの逆走)、長い下りの後にクロワ・ド・フェールでの29km登坂、そして最後に待つのは名峰アルプ・デュエズ。頂上のフィニッシュに向けては、登坂距離13.8km、平均勾配は8.1%。上り始めてすぐに10%前後の勾配が続く一方で、最後の3kmは緩斜面。ヴィンゲゴーがマイヨジョーヌをキープするのか、はたまたライバルが反撃に転じるのか。今大会で群を抜くチーム力を誇るユンボ・ヴィスマの牙城を崩せるかが見ものの1日といえる。さらに、この日はフランス革命記念日。バルデやゴデュら地元期待の選手が勝利を狙って攻めることは間違いない。

ステージ優勝、マイヨジョーヌ ヨナス・ヴィンゲゴー コメント

©A.S.O. / Charly Lopez

「言葉にならないくらいうれしい。これこそが夢見ていたものだ。ツール・ド・フランスのステージ優勝とマイヨジョーヌを同時に手にできて最高の気分だ。

今日のレース展開は早くから計画していたものだった。とにかくレースを難しくしたかったし、成功させられれば私やプリモシュ(ログリッチ)が有利になるだろうとも思った。うまくいくまでかなりの時間はかかったけど、これまでにない最高のレースだった。チームメートなしでは成し遂げられなかった。

アタックしたときは、ポガチャルが苦しむだろうと確信していた。ガリビエ峠での彼はとても強かったので、全力で走られたら厳しいと感じていた。だから、あらゆる手を尽くさないと勝てないだろうと思っていた。個人総合2位も素晴らしい成績だけど、昨年すでに経験した順位だ。今回はどうしても勝ちたかった。そして成功につながった。これからは、パリまでこのジャージを守り抜きたい」

マイヨブラン タデイ・ポガチャル コメント

©A.S.O. / Charly Lopez

「何が起こったのか分からない。ガリビエまでは順調だった。ただ、ユンボ・ヴィスマの攻撃が強力で、最後の上りでは脚がなくなってしまった。本当に苦しかった。最高の日ではなかったけど、もう終わったこと。明日はもっと良い走りができると思う。パリまでレースを続けてすべてをささげたいし、悔いなくツールを終えたい。

ユンボ・ヴィスマはとても強かった。私たちがレースをコントロールするのは困難だったし、人数的にも厳しい状況にある。ファンアールトとラポルトが前に出たことで、彼らは戦術的なレースができていた。

でもまだ終わっていない。今日は約3分差をつけられたが、明日私がそれを実行するつもりだ。最後まで戦い抜くよ」

ツール・ド・フランス2022 第11ステージ結果

ステージ結果

1 ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク) 4:18’02”
2 ナイロ・キンタナ(アルケア・サムシック、コロンビア)+0’59”
3 ロマン・バルデ(チーム ディーエスエム、フランス)+1’10”
4 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+1’38”
5 ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)+2’04”
6 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+2’10”
7 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)+2’51”
8 アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・カザクスタン チーム、カザフスタン)+3’38”
9 ステフェン・クライスヴァイク(ユンボ・ヴィスマ、オランダ)+3’59”
10 ワレン・バルギル(チーム アルケア・サムシック、フランス)+4’16”

個人総合時間賞(マイヨジョーヌ)

1 ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク) 41:29’59”
2 ロマン・バルデ(チーム ディーエスエム、フランス)+2’16”
3 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)+2’22”
4 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+2’26”
5 ナイロ・キンタナ(アルケア・サムシック、コロンビア)+2’37”
6 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+3’06”
7 ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)+3’13”
8 アレクサンドル・ウラソフ(ボーラ・ハンスグローエ)+7’23”
9 アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・カザクスタン チーム、カザフスタン)+8’07”
10 エンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)+9’29”

ポイント賞(マイヨヴェール)

ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)

山岳賞(マイヨアポワ)

シモン・ゲシュケ(コフィディス、ドイツ)

ヤングライダー賞(マイヨブラン)

タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)

チーム総合時間賞

イネオス・グレナディアーズ 124:37’03”

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ツール・ド・フランス2022の出場チーム・選手リストとコースプレビュー

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2022年07月01日

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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