スーパー林道を越え自転車×サウナを楽しむ! サイクルアドベンチャーフェスin南アルプス
坂本 大希
- 2022年10月25日
山梨県の南アルプス市。北岳の裾野にあるこの地は豊かな自然に囲まれている。この自然との新たな楽しみを県や市が主導となって提供するイベントが「CYCLE ADVENTURE Fest. in Minami-Alps」だ。2023年以降にイベントとして正式に開催していきたいとのことで、その実証実験も兼ねて2022年10月16日に関係者を集めたプレイベントが開催された。実際にライター坂本が参加した模様をお伝えする。
北岳へとつながる普段は入れないエリアへ!
【CYCLE ADVENTURE Fest. in Minami-Alps】
今回のイベントは、林道を封鎖して行われる。普段から自家用車の乗り入れは禁止し、指定の登山客用バスだけが通る「県営南アルプス林道(通称:南アルプススーパー林道)」が舞台だ。普段は通行が規制されている道を開放してまで本イベントを実施する山梨県の自転車への取り組みには、本気度の高さを感じずにはいられない。非常に楽しみだ。
当日の開会式でも、山梨県の長崎幸太郎知事からの挨拶があった。
「ぜひ山梨の、普段他の人は見られない絶景やお食事をお楽しみいただきたい。スポーツを楽しむのだったら山梨に行こう。こう思ってもらえるような環境を作れるようこれからも頑張っていきたいと思うので、ぜひよろしくお願いいたします!」とのこと。
山梨の環境は素晴らしい。先日のグランフォンドピナレロ八ヶ岳に参加した際も感じた。それがゆえに、この山梨がますます自転車やアウトドアに注力してくれるのは非常に楽しみだ。
その第一弾としてのCYCLE ADVENTURE Fest. in Minami-Alpsがスタートする。
いざ北岳の玄関口・広河原へ向けライドスタート!
セレモニーの後は事前に振り分けられたグループに分かれて順次スタートしていく。主催スタッフの方に「最初の5kmだけ上りだから!」と言われているがどんなものだろう。
え? 激坂??
開会式が行われた駐車場を出ると、いや、駐車場を出る前からすぐに上りだということが見てわかる。そんな坂が最初から続く。このイベントは普段から自転車に乗る方のみを集めたいというイベントではない。実際に自治体の職員の方などが今回は多く参加している。この最初の坂で心が折れないことを祈るが……。
そんな心配は杞憂に終わった。本イベントではレンタルバイクも豊富にあり、eバイクの貸し出しが充実していた。正確に数えたわけではないが、半数以上がeバイクで走っていたのではないだろうか。結果として、むしろ坂の方がみな楽しそうに走っている。取材する身として彼らについて行かねばならないのが大変なほどに。
先まわりして撮影していると、風景を楽しみながら笑顔を向けてくれる参加者も多く、何とも和やかな雰囲気のイベントだ。また、参加バイクも多種多様であることは写真から伝わるだろう。この写真の参加者もピースをしているが、じつはつづら折りを上っている真っ最中だ。
標高が高いため、風景は文字どおり眼下に広がっている。日の当たる山の斜面がきれいだ。地元の方によると、あと数日で紅葉が始まるらしい。その時期にもまた来てみたいものだ。
忘れちゃいけないADVENTURE!
忘れてはいけないのは、このイベント名がCYCLE ADVENTURE Fest. in Minami-Alpsだということ。ここまでだと風景がきれいな林道だったのだが……。
峠を上り切ったあたりから現れる複数のトンネルで一気にアドベンチャー要素が強まってきた。やはりイベント名に偽りなし。このトンネルの中には電気がなく長いものもあり、イベントの案内でフロント・リアライトの装着について強く言及されていた意味が分かった。来年以降参加される方はぜひ光量が多めのライトを用意していただくといいだろう。
ルートのそばには滝も流れている。この日は晴れていたが、トンネルの中には水が染み出しポタポタと滴っているところも。地元の方たちが「これが南アルプスの天然水! 飲み放題!」と県外からきた参加者に宣伝をしていた。
目的に到着! のんびりとぜいたくなアウトドア体験!
最初の激坂区間やトンネルなどを通過し約20kmほど進むと、本日の目的地である広河原の渓流エリアに到着だ。つり橋の向こうが本日のアクティビティの会場である。自転車を停め、いざ会場へ。
今回は自転車以外での楽しみが豊富だと伺っていた。そのためこの会場での滞在時間は約3時間弱もある。その間に参加者たちは各自思い思いに過ごしていく。メイン会場ではDJの流す音楽の中、地元の食材を使った食事を楽しむことが可能だ。牛串やそば、シャインマスカットを使ったタルトまで勢ぞろい。全て非常においしくかつビュッフェ形式なので食べ放題。これはぜいたく!
さらに、参加者たちは各自3つの中から選んだアクティビティーに参加する。テントサウナ・トレイルガイド・ヨガから選ぶのだが、筆者はテントサウナを体験してきた。
素晴らしい風景の中、最高のテントサウナが待っていた
つり橋から臨む景色。渓流があり山がありテントがあり。このテント、よく見ると煙突らしきものが……。そう、テントサウナの会場はなんとここ。この大自然に急に現れた異質なサウナ。控えめに言っても最高だった。
水着に着替えいざ。中は4人ほど入るサイズで、中央にストーブが置かれている。そこで熱せられている石に備え付けのハーブ水をかけることで、ロウリュとアロマの効果を同時に楽しむこともできる本格的なサウナだ。
水に浸してあるこのハーブは今朝地元で摘まれたものとのこと。また、サウナと言えば水風呂だが、こちらの水は写真奥に流れている川から直接プール内に引き込んでいる。水がきれいすぎる。そして、冷たすぎた。地元の消防士の方とも一緒にサウナに入ったが、彼も含め何人かは奥の川そのものに浸かり体を冷やしていた。普段の生活では考えられないギャップを楽しめた。
ヒーリングトレイルは、ガイドと付近の森の中を散策しながら、森林浴の効用などを教えてくれる。ぜひ次回はこちらやヨガの方にも参加してみたいところ。
復路は下り基調! 速度にはご注意を!
来た道を通って帰るのだが、往路が上り基調のため当然のごとく帰りは下りになる。特に最後は5km程の斜面を下ることになる。非常に気持ち良い下りだが、速度や他の参加者との距離を十分に意識して下る必要があるため常に集中は怠れない。また、標高も高いため気温も低めだ。下っていると体温も落ちてくる。帰りは特にウィンドブレーカー等を用意した方がいいだろう。
最後にはお土産が! バウムクーヘンやバスタオルなどが参加者全員に配られた。総じて非常に楽しいライドイベントだ。アクティビティも選べるため、複数年参加して制覇したいものだ。
レンタルeバイクもメリダやミヤタ、ヤマハなど各社そろっている。この写真の車体以外にもMTBタイプのものもあり、興味のある機種をレンタルして乗車体験してみるのも楽しいかもしれない。
「ただのヒルクライムにはしたくなかった」
本イベントを企画したやまなしスポーツエンジンの内藤裕志さんに話を聞いた。
「山梨県に既にある観光資源に目を向けると、素晴らしい風景や自然がある。これらにいかに新たな付加価値をもたせて提供できるかを考えました。ただのヒルクライムにはしたくなかったですね。普通の自転車で上る人もいればeバイクで参加する人もいる。将来的には別で目的地までのバスもだして、自転車では難しいお子さま方なども一緒にこの空間を楽しめるイベントにしたいと思っています」とのこと。
今までの自転車イベントは競技趣向だったりどうしても「ライド」という側面に重点が置かれていたが、本イベントはライド以外にサウナや食事など楽しみ方を多く用意している。自転車の楽しみ方が多様化している現代に対して、山梨県の準備は万端のようだ。
キャノンデール・トップストーンで走った坂本、その振動吸収性に感動
今回はキャノンデール・トップストーンカーボン3Lに乗ってみた。普段乗っているクロモリフレームは振動吸収性が良いと思って乗っていたがなめていた。さすがグラベルバイク。トップストーンはキングピンサスペンション付きなので衝撃吸収性が段違いだった。リアの振動吸収性が高いからなのか、段差からの突き上げが激減。今回の林道は舗装こそほぼされていたが、凹凸はかなりあった……はずなのだがあまり凹凸の記憶がないくらいだ。
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PROFILE
坂本 大希
元海上自衛官の経験を持つライター。1年間のドイツ自転車旅行をきっかけに自転車が好きになる。2022年秋ごろよりグラベルイベントに多数参加。2023年のUnbound Gravelで100マイル完走。グラベルジャーナリストになるべく知見を深めるため取材に勤しんでいる。
元海上自衛官の経験を持つライター。1年間のドイツ自転車旅行をきっかけに自転車が好きになる。2022年秋ごろよりグラベルイベントに多数参加。2023年のUnbound Gravelで100マイル完走。グラベルジャーナリストになるべく知見を深めるため取材に勤しんでいる。