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パウレスのラスト14km独走劇。3年ぶりに世界基準の戦いが返ってきた|ジャパンカップ サイクルロードレース詳報

名物・古賀志林道の上りでアタックがかかっては、下りでふりだしに。そんな展開に終止符を打ったのは、残り14kmでのニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト、アメリカ)のアタックだった。追走をかわして、3年ぶり開催となったジャパンカップ サイクルロードレースのタイトルを獲得。しかも、最後はチームメートとの抜群の連携もあり、ワン・ツーフィニッシュを達成。日本のレースシーンに返ってきた世界基準の戦いは、新型コロナ前よりレベル・クオリティとも格段に高まったものになった。

ツール・ド・フランスなどに次ぐ第2階層「UCIプロツアー」のレース

29回目となったジャパンカップ サイクルロードレース。ここ2年は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、海外チームの招聘ができず、レースそのものの開催ができなかった。迎えた今年、アフターコロナの機運の高まりは、ロードレース界のムードを押し上げる最大の要素となった。これに呼応するかのように、大会の復活が実現。リスタートとなる今回は、「Japan Cup is Back!」を合言葉に、新型コロナ前と同様に最高峰のチーム群であるUCIワールドチームから、同コンチネンタルチームまで、幅広いチーム層が名を連ねることとなった。

UCI(国際自転車競技連合)によるジャパンカップのレースカテゴリーは、第2階層にあたる「UCIプロシリーズ」。ツール・ド・フランスなどに代表される世界的なレースがその上の「UCIワールドツアー」にあたり、実質それらに次ぐバリューのレースとなる。アジア圏で開催されるワンデーレースとしては唯一であることから、この大会は「アジア最大級のワンデーレース」と称されることも多い。世界からの目が、日本……そして開催地・宇都宮に注がれる。

出場チームや選手たちが参加する、大会関連イベントは1014日から始まり、続く15日には宇都宮の市街地コースを使った「ジャパンカップクリテリウム」を実施。3年ぶりに返ってきた中心街でのハイスピードバトルに心を奪われたわれわれだが、舞台を宇都宮市森林公園に移したロードレースでも、さらに引き込まれることとなる。

1周目からワールドチーム勢がハイペースの展開を作り出す

大会メインのロードレースは、10.3kmのコースを14周回・144.2kmで争われた。最大のポイントは、スタート・フィニッシュ地点を通過した直後から始まる古賀志林道の上り。標高差185mを駆け上がる登坂区間は、どの年も勝負どころとして存在感を示してきた。頂上通過後は、テクニカルなダウンヒルや少しばかりの平坦区間を経て、周回後半の細かなアップダウンへ。レースを通じての獲得標高は2590mに達する。

スタートラインに並んだのは、国内外から集まった17チーム・93人の選手。復活開催を祝うかのごとく、76000人のファンが沿道を埋め尽くすとともに、選手たちの出発を見届けた。

華やかにスタートが切られたレースは、その直後から驚きのシチュエーションとなる。1回目の古賀志林道から、トレック・セガフレードが奇襲攻撃。すぐに4人が先頭グループを形成し、そこにバーレーン・ヴィクトリアスなどワールドチーム勢が乗り込む状況が生まれる。日本勢では武山晃輔(チーム右京)がただひとり合流。いきなり決まった先頭グループは、2周目まで形成を維持して飛ばし続けた。

この状況を嫌ったのがコフィディス。3周おきにやってくる山岳賞の1回目となる周回に入り、古賀志林道の上りで猛然とペースアップ。これでメイン集団が崩れ、前方に残った選手たちがパラパラと先頭グループに合流。さらに、下りでも選手たちが追いつき、この周回の後半には24人に膨らむ。これが第1グループとなり、数十秒差で同規模の第2グループが続く流れとなる。

それからも単発でアタックがかかり、しばし先行する選手が出たものの、展開を大きく動かすところまではいかない。一方で、第2グループが2回目の山岳賞周回である6周目の古賀志林道で加速。頂上からの下りを終える頃には先頭に合流。この段階で50人以上がひとまとまりとなり、実質のメイン集団に。この直後に、堀 孝明(宇都宮ブリッツェン)とディラン・ホプキンス(リュブリャナ・グスト・サンティック、オーストラリア)が抜け出し、メイン集団は岡篤志らEFエデュケーション・イージーポストが中心となってコントロールを本格化させた。

ただ、この2人も完全にリードを得るところまではいかない。上りで堀を振り切って独走を始めたホプキンスだったが、約2周先行したのち集団へと引き戻される。代わって先頭に立ったのは、地元・宇都宮ブリッツェンを長きにわたり引っ張ってきた増田成幸。今大会の上位候補にも名が挙がった宇都宮のヒーローは、3回目の山岳賞周回である9周目の古賀志林道でアタックし、そのまま山岳ポイントを一番通過。沿道の歓声に応えながらの山岳賞獲得で、それから約1周回は独走。10周目の途中で集団へと戻っている。

EF勢がパーフェクトなワン・ツーフィニッシュ

レースが本格的に動き出したのは11周目。やはり古賀志林道の上りで、ティム・ウェレンス(ロット・スーダル、ベルギー)がアタック。UCIワールドチーム残留をかけるベルギーチームのリーダーみずから仕掛けて、集団を崩しにかかる。この周回から、古賀志林道できまってアタックがかかり、後方に取り残されかけた選手たちが下りや平坦区間を通じて前線再合流となる流れが繰り返される。また、この周回の後半にはパウレスとシモン・ゲシュケ(コフィディス、ドイツ)が先行開始。次の12周目が山岳賞周回だったこともあり、精鋭メンバーが2人に合流するが、最終盤へ向けて緊張感が高まっていく。

決定的な瞬間は13周目にやってきた。まず、古賀志林道でパウレスがアタック。集団を散り散りにすると、下りを終えて先頭に残ったのは8人。その後ろには、日本人選手として唯一残っている新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)らのパックが懸命に追う。新城たちが前のメンバーに合流しようかというタイミングで、パウレスが再びアタック。平坦基調のポイントでの意表を突いた動きと合わせて、チームメートのアンドレア・ピッコロ(イタリア)が集団に残って抑え役を務める。

12秒のリードで最終周回の鐘を聞いたパウレスは、勢いが衰えることなく古賀志林道の上りもクリア。その後ろでは、ベンジャミン・ダイボール(チーム右京、オーストラリア)やヘルマン・ペルンスタイナー(バーレーン・ヴィクトリアス、オーストリア)が追走を狙ってアタックするが、それらをピッコロがすべてチェック。

パウレスの独走勝利が現実味を帯びる中、追走グループではピッコロまでもがアタック。ダイボールとペルンスタイナーを振り切ると、ワン・ツーフィニッシュを目指してEF勢が力強いペダリング。

最高の連携から完全なる勝ちパターンに持ち込んだパウレスとピッコロ。まずはパウレスが宇都宮市森林公園に響き渡る大歓声を独り占めしてフィニッシュへ。その12秒後、ピッコロも上位独占をアピールしながら歓喜の瞬間を迎えた。

ワンデーからグランツールまでトップレベルのパウレス

鮮やかに逃げ切ったパウレスは、トッププロとしては5年目の26歳。この数年でブレイクして、昨年はクラシカ・サン・セバスティアンで優勝。ロード世界選手権でも5位に入っている。今季はツール・ド・スイスで個人総合4位となると、ツール・ド・フランスでは個人総合12位。一時は2位につけるなど、上位戦線を走り続けた。ステージレースだけでなくワンデーレースにも強く。前述のサン・セバスティアン以外にも、リエージュ~バストーニュ~リエージュで今年は8位。そして、ジャパンカップを戴冠した。

長かったシーズンを最高の形で締めくくり、このレース後は日本各地を旅行するとか。今大会には夫人も同行し、優勝の瞬間を感激の面持ちで迎えていた。

上位争いは、2位のピッコロに続いて、猛追したダイボールが3位。日本人トップとなった新城は、同時にアジア最高位としてポディウムで表彰された。

序盤から驚異のハイペースで進行したレースは、最終的に41人が完走。半数以上の52選手が途中でレースを去る形になった。

ジャパンカップ サイクルロードレース優勝 ニールソン・パウレス コメント

 

「道のりこそ長かったものの、日本に来ることができ、さらには素晴らしいレースで勝利し本当にうれしい。早い段階でトレック・セガフレードが仕掛けたのにはとても驚かされた。ただ、チームメートが前方でチェックに動いてくれていたので、焦ることはまったくなかった。個人的にはクリテリウムでコンディションの良さを感じていたので、それを生かそうと早めに仕掛けたことが今回の結果につながったのだと思う。それに、2位にはアンドレア(ピッコロ)が続いたので、これ以上ない成果になった」

ジャパンカップ サイクルロードレース(144.2km)結果

1 ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト、アメリカ) 3:37’49”
2 アンドレア・ピッコロ(EFエデュケーション・イージーポスト、イタリア)+0’12”
3 ベンジャミン・ダイボール(チーム右京、オーストラリア)+0’13”
4 ヘルマン・ペルンスタイナー(バーレーン・ヴィクトリアス、オーストリア)
5 マキシム・ファンヒルス(ロット・スーダル、ベルギー)+0’17”
6 ギヨーム・マルタン(コフィディス、フランス)
7 ジューリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード、イタリア)+0’32”
8 トマ・ルバ(キナンレーシングチーム、フランス)+0’34”
9 ティム・ウェレンス(ロット・スーダル、ベルギー)+1’32”
10 ゴツォン・マルティン(エウスカルテル・エウスカディ、スペイン)ST

 

その他各賞は速報記事を参照

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2022年10月16日

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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