タデイ・ポガチャルが最高のシーズンイン 36km独走でクラシカ・ハエン・パライソ・インテリオール優勝
福光俊介
- 2023年02月14日
ツール・ド・フランスで2度の個人総合優勝を成し遂げているタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)が、現地2月13日にスペインで開催されたワンデーレース「クラシカ・ハエン・パライソ・インテリオール」(UCIヨーロッパツアー1.1)で2023年のシーズンイン。「スペイン版ストラーデビアンケ」とも言われる未舗装区間が含まれたレースで、フィニッシュまでの36kmを独走する圧巻の走り。ツール王座奪還に向けて、最高のスタートを切った。
未舗装区間で独走に持ち込む
大会は2回目と歴史が浅いながらも、スペイン南部・アンダルシア州の丘陵地帯をゆくハードなワンデーレースとして注目が高まっている。何より、途中8カ所待ち受ける未舗装区間(総距離42km)が大きなポイント。その難しさは、毎年3月にイタリアで開催されるストラーデビアンケに匹敵するとの評判も。
「ウベダとバエサのルネサンス様式の記念碑的建造物群」として世界遺産に登録される両都市を発着点とした178.9kmのレースには112選手が出場。早い段階で逃げグループが形成され、メイン集団はポガチャルを助けるべくUAEチームエミレーツがコントロール。好ペースで率いられた集団は、中間地点を過ぎる頃には50人ほどにまで減少した。
フィニッシュまで52kmを残した段階で、逃げグループからセルヒオ・サミティエル(モビスター チーム、スペイン)が単独でリードを開始。約2分差で続いていたメイン集団では、未舗装区間でポガチャル自ら牽引を始めると、そのまま他選手を引き離すことに成功。ひとりでサミティエルを追撃し、ほどなくして合流した。
決定打が生まれるには、そう時間はかからなかった。少しばかりの協調態勢を経て、ポガチャルがサミティエルからリードを得ると、いよいよ独走態勢へ。フィニッシュまで残りは36km。長いひとり旅となるのをいとわず、そのまま突き進んでいった。
後方ではイネオス・グレナディアーズ勢やアンテルマルシェ・サーカス・ワンティ勢が追走を図るものの、完全に“ゾーン”に入ったポガチャルとの差は開く一方。
ポガチャルは残り10kmを切ってからのバイクトラブルでストップを余儀なくされ、最大2分あったリードは一気に縮まったものの、十二分な貯金を生かしてバエサの街に設けられたフィニッシュラインへ。2023年シーズンの初戦で、圧巻の独走劇を演じてみせた。
ミラノ~サンレモ、フランドルなどに照準
会心の勝利に、「これ以上の結果は不可能。完璧なシーズンインになった」と喜んだポガチャル。今季は当初、連覇のかかっていたUAEツアーから走り始める予定だったが、1月に胃腸炎を患った影響でレーススケジュールを変更。このレースを皮切りに、同じアンダルシア州を舞台にするブエルタ・ア・アンダルシア(UCI2.Pro)を走り、春の重要レースへと向かうことを明らかにしていた。
この日のレース前には、「ミラノ~サンレモ、ロンド・ファン・フラーンデレン、リエージュ~バストーニュ~リエージュ、そしてツール・ド・フランスが目標」と自ら目指すところを明らかに。フランスのサイクルメディアでは、3月に入りストラーデビアンケを走ったのち、パリ~ニースに出場するとも報じられており、先々のレースへの期待度も高まってきた。
2位のベン・ターナー(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)をはさみ、3位にティム・ウェレンス(ベルギー)、4位にマルク・ヒルシ(スイス)とポガチャルのチームメートが上位進出。今年もUAEチームエミレーツの勢いがプロトンを大きく動かしそうだ。
SHARE
PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。