【後編】熊野三山と和歌山の絶景を訪ねる2泊3日サイクリング|JRきのくに線サイクルトレインでゆく!
Bicycle Club編集部
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自転車は、好きなときに好きなところに行けて、寄り道も自在な自由さと気軽さが魅力。そこにサイクルトレインを加えれば、自転車だけでは無理な行動範囲も無理なくカバーできる。そこで今回は、JRきのくに線サイクルトレインと特急くろしおサイクルを使って、和歌山の絶景と世界遺産・熊野三山を訪ねる2泊3日のサイクリングを計画。2泊3日の荷物と撮影機材をバイクパッキングで持ち運び、全行程自転車と電車でひとり旅してきた。
後編では3日目の串本から太地へきのくに線サイクルトレインで移動し、太地から那智勝浦へ至る旅の模様をレポート。まとめとしてサイクルトレイン×自転車旅の可能性についても考察する。
3日目
3日目は、南紀を象徴する串本の景勝・橋杭岩を見て、JR太地駅の2駅先のJR古座駅からJRきのくに線サイクルトレインで太地を目指す。太地からはサイクリングで那智勝浦へ。那智山に登って那智の滝を拝む。
串本から太地までサイクルトレインで
橋杭岩は、串本から串本沖に浮かぶ大島に向かって大小40ほどの柱状の岩がそそり立つ景勝。潮の浸食によって作られた自然の芸術だ。地元の人の情報では朝がベストとのことなので、この時間に見に来たかったのだ。
橋杭岩を後にし、右手に鯛の形に見える鯛島を見ながらR42を北上。西向交差点を左折すると、ほどなくJR古座駅に到着。ホテルから7kmほどのサイクリングだったが、ウォーミングアップにちょうどいい。
JRきのくに線サイクルトレインは、各駅停車の普通列車に自転車をそのまま持ち込めるサービスで、特急くろしおサイクルのようにカバーをかぶせることも不要。車中で手すりに固定するためのゴムひも(タイヤの廃チューブでかまわない)を持参するだけでOKだ。電車に乗り込み、座席に座ってガタゴトと揺られるうちにJR太地駅に到着した。
太地名物の鯨のグルメを満喫
JR太地駅からは、ツール・ド・熊野の第3ステージ太地周回コースを1周し、太平洋岸自転車道で那智勝浦を目指す。ツール・ド・熊野の太地周回コースは、かなりアップダウンが激しい。特に漁港からKOMに向かう急な上りは、距離こそ600mほどだが平均勾配が8%以上あり、レースの勝負所にもなる。レースで走っていたときは絶景を楽しむどころではなかったが、サイクリングなら景色を楽しみながら走る余裕もある。KOMから少し先の平見台園地から太平洋を一望するのもおすすめだ。
太地を出発する前に、捕鯨の町である太地名物の鯨のグルメを味わっておきたい。手軽に食べられ、お値打ちなのは、道の駅たいじで食べられるくじらカツバーガー(ドリンクとセットで750円)。揚げたての鯨肉のカツに甘辛いタレとタルタルソースがかかっており、シャキシャキのキャベツとも相まって絶品。サイクリング途中に食べるのにちょうどいいボリュームだ。
おなかも満たされたところで、太地を出発。R42を中心に指定されているナショナルサイクルルートの太平洋岸自転車道沿いに那智勝浦を目指す。途中、R42と分かれる区間があり、基本的には走りやすいが、1カ所だけ階段になっている区間だけは自転車から降りて自転車を押しながらクリアする必要がある。ちなみにR42はかつての熊野古道・大辺路に並行するように走っていて、現代版の熊野参詣道と言えなくもない。
那智勝浦市街に入ると、まもなく左手に勝浦漁港が見えてくる。日本でマグロと言えば冷凍物がほとんどだが、勝浦漁港にはマグロが水揚げされるため、那智勝浦の飲食店では冷凍ではない生マグロを味わうことができる店も多い。漁港にはマグロのオブジェもあり、この町がマグロの町であることが分かる。今回は生マグロを賞味することはできなかったが、濃厚なうまみと身のもちもち感は冷凍でない生マグロだからこそ味わえるもの。ぜひ賞味いただきたい。
那智山でヒルクライム
今日の最大の山場は熊野那智大社のご神体・那智の滝を目指すヒルクライム。R42と交わる勝浦臨海交差点から那智の滝のある飛瀧神社までは距離およそ7.9km、標高差306mで、平均勾配は4%ほど。マイペースを守ればそれほどきつくないはずだ。
このヒルクライムは見どころ満載だ。那智の滝がその筆頭であるのは間違いないが、那智の滝への道中には、熊野古道随一の映えスポット・大門坂もある。ヒルクライムの途中、つづら折りの区間から石畳の道に簡単にアクセスできるポイントがあるので、ぜひ行ってみよう。
大門坂を過ぎ、つづら折りをさらに上ると、目の前に那智の滝を遠望するポイントがある。ここまで来たら那智の滝まではあと一息だ。
日本一の落差を誇る那智の滝は必見
那智の滝を間近で見るには、飛瀧神社の境内からがおすすめだ。飛瀧神社の入り口には神殿の屋根にある千木を模したサイクルラックもあるので、自転車を止めて参拝し、滝を拝みに行こう。
那智の滝は日本一の落差133mを誇る巨瀑で、熊野那智大社のご神体として古くからあがめられてきた。風向きによっては滝の直下ではない見晴らしポイントにも滝のしぶきが舞ってくることもあり、那智の滝の壮大さが感じられる。雄大な滝を目の前にすると、ここまで上ってきてよかったと思うこと間違いなし。いにしえから皇族や貴族、武士や庶民まで貴賤を問わず熊野を目指したのも、この神々しいまでの雄大な自然に魅せられたからではないか。
熊野三山にすべてお参りするには熊野那智大社に行かなくてはいけないような気がするし、那智山が那智の滝を中心とした神仏習合の聖地だったことを踏まえると、同大社に隣接する那智山青岸渡寺にもお参りした方がいいような気もする。だが、和歌山県の担当者によると、自転車の場合は、安全面から飛瀧神社と那智の滝にお参りすればよいとすすめているという。どうしても参拝したい場合は、飛瀧神社に自転車を止めてスニーカーなどの歩きやすい靴に履き替えて、参道を歩いてほしいとのこと。個人的には歩いて参道を登ってでも熊野那智大社や隣接する那智山青岸渡寺に参拝する価値はあると思う。
ライドのシメは那智勝浦の温泉で!
那智山へのお参りヒルクライムを終えたら、今回の自転車旅もいよいよ残りわずか。飛瀧神社から那智勝浦市街へダウンヒルだ。登るのはあんなに大変だったのに、下るのはあっという間。スピードが出て気持ちいいが、マイカーや大型バスの交通量も多いので、スピードの出し過ぎには気をつけよう。
フィニッシュはJR紀伊勝浦駅。帰りの列車まで少し時間があるので、那智勝浦の漁港にある足湯で疲れを癒してから帰ろう。時間に余裕があれば、那智勝浦には日帰り入浴可能な温泉浴場もたくさんあるので、汗を流してさっぱりしてから帰途につくのもおすすめだ。
あとは輪行して帰るだけ、なのだが、サイクルトレインに慣れてしまうと、輪行して電車に乗るのが面倒くさく感じてしまう。JRきのくに線のサイクルトレインのようなサイクリストフレンドリーな路線が全国に広がればいいのに――と願ってやまない。
3日目のルート
▼串本~橋杭岩~古座(7.1km/獲得標高59m)
▼太地~太平洋岸自転車道~那智山~那智勝浦(37.5km/獲得標高875m)
JRきのくに線サイクルトレイン
自転車をばらさず駅構内へ。予約不要でそのまま電車に乗れる!
JRきのくに線サイクルトレインは、JRきのくに線の御坊~新宮駅間を走る普通列車に自転車をそのまま持ち込めるサービス。月曜~土曜の朝の混雑列車6本を除き、基本的にすべての列車で利用できる(学校の長期休暇期間はすべての列車で利用可能)。自転車の持ち込みに追加料金はかからず、運賃だけで乗車できる。予約も不要だ。輪行袋などに収納する必要もなく、車中で手すりなどに固定するゴムひもなどを用意するだけでいいので手軽に利用できるのが魅力だ。各駅停車なので特急より移動時間はかかるが、うまく活用すればおいしいところだけサイクリングするのに役立つ。
JRきのくに線サイクルトレイン 概要
利用可能列車:御坊~新宮駅間を走行する普通列車(月曜から土曜の朝通学混雑列車6本を除く)
※学校の長期休暇期間は終日利用可
・春休み:2023年3月27日(月)~4月7日(金)
・夏休み:2023年7月21日(金)~8月31日(木)
・冬休み:未定
乗降可能駅:御坊~新宮間の全駅
期間:通年(臨時運休時を除く)
料金:運賃のみ
予約:不要
問い合わせ:JR西日本お客様センター 0570-00-2486
【まとめ】サイクルトレインは、旅を濃密にし、旅の可能性を広げる
今回2泊3日で新宮スタートで本宮、中辺路、白浜、串本、那智勝浦と和歌山県南部を反時計回りに一周するコースを走った。テーマも盛りだくさんだった。
- 熊野古道と熊野三山を巡る
- 南紀地方の景勝を訪ねる
- ツール・ド・熊野のコースを追体験する
- サイクリストに優しい温泉宿に泊まる
- 地元のグルメを堪能する
サイクルトレインを活用したからこそ2泊3日にこれだけのテーマを盛り込むことができたと感じている。言い換えれば、サイクルトレインを活用しなければ、2泊3日ではただ走るだけになり、観光どころではなかったはずだ。相当健脚でなければ2泊3日で走ることさえ難しいかもしれない。
サイクルトレインを利用するメリット
サイクルトレインと自転車を組み合わせることは、以下のようなさまざまなメリットがある。
- 輪行袋に詰めたり自転車を組み立てたりする必要がないので、その分時間に余裕が生まれる
- 鉄道を使うことで自転車での走行区間を減らして体力を温存できる
- 鉄道のスピードを生かすことで、より遠くに行ける
- 駅からすぐに自転車に乗って移動できるので、旅先での自由度と機動性が向上する
- サイクリングを基準にすると、鉄道での移動時間は鉄道旅というプラスの楽しみになる
- 鉄道旅を基準にすると、鉄道を降りてからの移動がサイクリングという楽しみやフィットネスになる
自転車のメリットと鉄道のメリットのいいところを味わうことができる。だから、自転車だけでも、鉄道だけでも行けなかったところに行ける可能性を秘めている。サイクルトレインと自転車を組み合わせることで、同じ時間をかけるなら旅はより濃密なものになり、より遠くまで旅行することも可能になるだろう。
ライダープロフィール
浅野真則(あさの・まさのり):仕事でもプライベートでも自転車に乗りまくる自転車ジャーナリスト。レースもロングライドも好き。小学生のころ鉄道好きだった時期があり、熊野古道のガイドブック制作に携わったこともある。今回、新旧の好きを詰め込んだ和歌山サイクルトレイン旅を企画。
- BRAND :
- Bicycle Club
- CREDIT :
- 編集:Bicycleclub 文・写真:浅野真則
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PROFILE
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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。
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