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第1ステージから強風で波乱! メルリールがミリ差で勝利、レムコが早くも総合優位に|UAEツアー

ロードレース・UCIワールドツアーの2023年第3戦にあたる、UAEツアーが現地2月20日に開幕。平坦ルートを進んだ第1ステージは、序盤から波乱の連続。残り29kmで抜け出した12人がそのままフィニッシュまで突き進み、最後はティム・メルリール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)とカレブ・ユアン(ロット・デスティニー、オーストラリア)の優勝争い。目視できないほどの差で、長時間の写真判定の結果メルリールのステージ優勝が決まった。個人総合優勝候補たちも明暗が分かれ、メルリールと同タイムで走り終えた世界王者のレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)が優位な状況を作り出している。

リアルスタート早々にエシェロン形成

UAEツアーは、かつて同国(アラブ首長国連邦)で開催されていたドバイツアーとアブダビツアーを統合し、2019年から開催されている。中東では唯一のUCIワールドツアーレースで、シーズン序盤の重要レースにも位置付けられている。今年は全7ステージ・1028.2kmで争われ、その間には2つの山岳ステージと4つの平坦ステージ、そしてチームTTステージが控えている。

とりわけ、トップスプリンターが集結し激戦となる平坦ステージが見もので、今大会もメルリールやユアンのほか、マーク・カヴェンディッシュ(アスタナ・カザクスタンチーム、イギリス)、サム・ベネット(ボーラ・ハンスグローエ、アイルランド)ら猛者たちが乗り込む。もちろん個人総合も見逃せない。今回はエヴェネプールのほか、ホームチームとして臨むUAEチームエミレーツは前回まで2回勝っているタデイ・ポガチャル(スロベニア)に代わってアダム・イェーツ(イギリス)がリーダーを務める。

© LaPresse

大会の開幕を飾る第1ステージは、151kmの平坦路。全体的に下り基調で、ハイペースで進行するものとみられた。

その予想は外れていなかったものの、さらに大きな要素となったのが風。中東レース特有のプロトンの動きを左右させる強風は、リアルスタート直後から展開を揺らしていく。10kmほど進んだ頃にはいくつにも集団が分断され、落車も頻発。セップ・クス(ユンボ・ヴィスマ、アメリカ)らが遅れた一方で、25人で形成された先頭グループにはエヴェネプールやベネットらが入った。そのまま1回目の中間スプリントポイントを通過し、ニキアス・アルント(バーレーン・ヴィクトリアス、ドイツ)が一番手となっている。

© LaPresse

フィニッシュまで残り100kmとなったあたりから、UAEチームエミレーツが第2グループのペーシングを開始。先行する25人にイェーツを送り込めなかったこともあり、前線合流して流れを引き戻す公算だ。先頭グループでは2回目の中間スプリントポイントへと到達し、ルーク・プラップ(イネオス・グレナディアーズ、オーストラリア)が一番に通過。この頃には第2グループのペースが上回っており、しばらくして前のメンバーにジョイン。残り50kmで先頭は57人となった。

©️ Sprint Cycling Agency

それからはスーダル・クイックステップやUAEチームエミレーツが主に集団のペースを作っていくが、後方を走っていた選手たちも先頭を目指してペースアップ。あっという間にその差が縮まると、UAEチームエミレーツは後ろに取り残されていたアシスト陣の合流を待つ姿勢へ。急ぐ後ろとは逆に、先頭のペースは緩んでいく。

この隙を生かして動いたのがスーダル・クイックステップだった。残り29km、集団前方に構えていた同チームのメンバーが急激にスピードアップ。これで中切れを誘うと、大急ぎで最前線へ乗り込んだ12人で一気のローテーション。地脚に長ける選手たちがそろったことで、後ろに対して確実にリードを奪っていった。

© LaPresse

写真判定でも勝者決まらぬ大激戦、レムコとビルバオは一気に総合優位に

先頭の12人
レムコ・エヴェネプール、ティム・メルリール、ベルト・ファンレルベルフ(以上スーダル・クイックステップ)
マーク・カヴェンディッシュ、ケース・ボル(以上、アスタナ・カザクスタンチーム)
ペリョ・ビルバオ、ニキアス・アルント、フィル・バウハウス(以上、バーレーン・ヴィクトリアス)
オラフ・コーイ(ユンボ・ヴィスマ)
カレブ・ユアン、ジャラッド・ドリズナーズ(以上、ロット・デスティニー)

フィニッシュまで10kmを残した時点で、集団に対してタイム差は1分。12人を追う実質のメイン集団では、残り9kmでさらに後ろを走っていた選手たちが何とか合流。ただ、組織的に前を追撃できるムードになく、俄然先頭メンバーが優位。フィニッシュが近づくにつれてローテーションから外れる選手が増えるものの、先々の個人総合争いを意識するエヴェネプールやビルバオが引き続け、やがて逃げ切りは決定的になる。

© LaPresse

迎えた最終局面。スプリンターによるポジション争いが激しくなる中、最後の右コーナーを前にファンレルベルフがメルリールを引き上げながら先頭へ上がる。その勢いのままメルリールはスプリントを開始すると、すかさずユアンが反応。カヴェンディッシュとコーイはわずかに対応が遅れた。

ステージ優勝争いはメルリールとユアンのどちらかに。両者並んだ状態でハンドルを投げてフィニッシュラインを通過すると、ユアンが勝利を確信。しかし、写真判定では両選手の差がはっきり出ず、審議に長い時間を要することとなった。

© LaPresse

おおよそ15分して、メルリールのステージ優勝が確定。今大会最初のリーダージャージ着用も決まった。ユアンが2位、カヴェンディッシュが3位で続き、総合系ライダーではエヴェネプールとビルバオがメルリールと同タイムフィニッシュ。最終的に、メイン集団は51秒差で終えた。

これらの結果から、首位メルリールから総合タイム差8秒で続くエヴェネプールとビルバオが個人総合争いで有利な態勢に。メイン集団で終えたライバルたちとは50秒以上の開きが生まれている。

波乱の大会初日を終えて、翌21日に行われる第2ステージは17.3kmのチームタイムトライアル。カリファ港内を走る完全フラットなコースで、鋭角コーナーとヘアピンコーナーをいかにクリアするかがポイント。チーム力が問われるステージだけに、この先の個人総合争いにも大きく影響することは間違いない。

ステージ優勝、個人総合首位 ティム・メルリール コメント

© LaPresse

難しいステージだったが、自信があったしチームも信じてくれていた。フィニッシュ前でベルト(ファンレルベルフ)が素晴らしい働きをしてくれて、うまくポジショニングができた。スプリントも良い感触だったが、カレブ(ユアン)の強さにやられそうだった。どちらが勝ったか多くの時間を要したが、今日のレースはそれだけの価値があったし、結果的にステージ優勝できたのでとてもうれしい。

UAEツアー2023 第1ステージ結果

ステージ結果

1 ティム・メルリール(スーダル・クイックステップ、ベルギー) 3:17’35”
2 カレブ・ユアン(ロット・デスティニー、オーストラリア)+0’00”
3 マーク・カヴェンディッシュ(アスタナ・カザクスタンチーム、イギリス)
4 オラフ・コーイ(ユンボ・ヴィスマ、オランダ)
5 ニキアス・アルント(バーレーン・ヴィクトリアス、ドイツ)
6 フィル・バウハウス(バーレーン・ヴィクトリアス、ドイツ)
7 ルーク・プラップ(イネオス・グレナディアーズ、オーストラリア)
8 レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)
9 ペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス、スペイン)
10 ケース・ボル(アスタナ・カザクスタンチーム、オランダ)

個人総合時間賞

1 ティム・メルリール(スーダル・クイックステップ、ベルギー) 3:17’25”
2 カレブ・ユアン(ロット・デスティニー、オーストラリア)+0’04”
3 ルーク・プラップ(イネオス・グレナディアーズ、オーストラリア)+0’05”
4 マーク・カヴェンディッシュ(アスタナ・カザクスタンチーム、イギリス)+0’06”
5 ニキアス・アルント(バーレーン・ヴィクトリアス、ドイツ)+0’07”
6 レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)+0’08”
7 ペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス、スペイン)
8 オラフ・コーイ(ユンボ・ヴィスマ、オランダ)+0’10”
9 フィル・バウハウス(バーレーン・ヴィクトリアス、ドイツ)
10 ケース・ボル(アスタナ・カザクスタンチーム、オランダ)

ポイント賞

ティム・メルリール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)

ヤングライダー賞

ルーク・プラップ(イネオス・グレナディアーズ、オーストラリア)

中間スプリント賞

ルーク・プラップ(イネオス・グレナディアーズ、オーストラリア)

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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