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ポガチャル4年ぶり参戦! アルデンヌ初戦アムステル・ゴールドレース展望|ロードレースジャーナル

vol.57 ポガチャル参戦で勢力図に変化あるか!?
過去2年は写真判定の優勝争い、今年は誰がスッキリ決めるか

国内外のロードレース情報を専門的にお届けする連載「ロードレースジャーナル」。春のクラシック戦線は、オランダやベルギー南部・ワロン地方を舞台とするアルデンヌクラシックへと移る。その第1弾となるのが、4月16日にオランダで開催のアムステル・ゴールドレース。上れるスプリンターからパンチャー、スピードや独走力を有するクライマーまで、幅広い層にチャンスのあるレースだ。そして今回は、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)の参戦も決定。盛況間違いなしのレースをプレビューしよう。

名所カウベルグ登坂が1回減も終盤勝負のコースセッティングは変わらず

1966年創設のアムステル・ゴールドレースは、オランダの丘陵地帯・リンブルフ州を開催地とし、伝統的に急勾配やいくつものコーナーをめぐる田舎道が戦いの場となっている。

昨年はフランス大統領選挙にともなうパリ~ルーベの日程変更により、入れ替わって4月第2日曜に開催されたが、今年は従来の同第3日曜に復帰。マーストリヒトを出発し、ファルケンベルフにフィニッシュするルートもいつもどおりだ。

コースを詳しく見ていこう。全行程は253.6km。前回から、前半部のワンウェイルートが一部刷新され、それまで3回上っていた名物の上り・カウベルグは2回に減る。約80kmのワンウェイルート走行後は、ルートの異なる3つの周回へ。2回目のカウベルグを上るといったんフィニッシュ地点を通過して最後の小周回へ。距離にすると16km。展開としてはカウベルグ2回目で集団の絞り込みが発生し、小周回に入ってからの駆け引きも激化。フィニッシュ前7kmで上るベネレルベルグ(登坂距離800m、平均勾配4.5%、最大勾配7%)が、最終の登坂セクション。ここを終えたときに、どれだけの人数まで絞り込まれているだろうか。

数ある登坂セクションと、「1000のコーナー」とも称されるテクニカルなコースレイアウトが関係し、カウベルグやベメレルベルグ以外でも重要局面を迎えることがしばしば。早い段階でメイン集団が崩れることもありうる。大会ウェブサイトに掲載された獲得標高は3266mで、最高標高地点は325mだが、平坦区間がほとんどなく、短いながらも急坂を次々とこなしていく必要がある。プロトン内におけるチーム単位での主導権争いも年々激しくなっており、一層サバイバルな趣きになっている。

絶対的存在のポガチャル。牙城を崩せるとしたら誰か?

今大会には25チームが参戦。本記執筆時点で判明している範囲で、参加予定の注目選手を挙げていこう。

注目度ナンバーワンは、もちろんポガチャルだ。2019年以来となる、2度目のアムステル参戦。前回出場時はリタイアしているが、今回はトラブルさえなければ優勝争いに加わることだろう。

ロンド・ファン・フラーンデレンでの鮮烈な勝ちっぷりを見せたタデイ・ポガチャル。4年ぶりのアムステル参戦でその走りが期待される © Flanders Classics

何より、4月2日のロンド・ファン・フラーンデレンで見せた強さが鮮烈だった。オウデ・クワレモントでライバルを振り切ったアタックは、急坂が連続するアムステルでの戦い方にもリンクしてきそうだ。もはや、仕掛けるならどこか、そして彼に付いていけるのは誰なのか、焦点はそのあたりになってくる。

フランドルでポガチャルの最大のライバルとなったマチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク、オランダ)、ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)はともに今大会は欠場。優勝経験を有するが、北のクラシックを終えて休養期間に入っている。

それゆえ、ついポガチャル一択で見てしまいそうだが、決してそういうわけでもない。前回覇者で、過去2回勝っているミハウ・クフィアトコフスキ(イネオス・グレナディアーズ、ポーランド)は、今季ここまで目立っていないが、得意レースへしっかり合わせてくるだろう。前回同様、トーマス・ピドコック(イギリス)もリーダー格としてメンバー入り。2年前はワウトとの激戦の末に2位(後述)。そのときの悔しさを晴らすことができるか。

前回の表彰台3選手ともに今年も参戦。左から2位ブノワ・コスヌフロワ、1位ミハウ・クフィアトコフスキ、3位ティシュ・ベノート ©︎ Getty Images

今季好調のニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト、アメリカ)も優勝候補に挙がる。すでに今季は2勝し、北のクラシックでもたびたびの上位進出。フランドルでは逃げ残ってポガチャルらとの争いに加わり、最終的に5位。タフな展開にも対応できる。昨年のジャパンカップサイクルロードレースを勝ったことでも、その強さは実証されている。そのときに抜群のコンビネーションを発揮したアンドレア・ピッコロ(イタリア)や、ビッグネームのリチャル・カラパス(エクアドル)もメンバー入り予定。レースの主導権を握れるだけの戦力を整えている。

ニールソン・パウレスは昨年のジャパンカップ制覇から一気にワールドクラスのライダーに。アムステルの優勝候補に名が挙がっている Photo: Syunsuke FUKUMITSU

チーム力ではボーラ・ハンスグローエも充実。4月上旬のイツリア・バスクカントリーでステージ1勝しているセルヒオ・イギータ(コロンビア)に、2年前に3位に入ったマキシミリアン・シャフマン(ドイツ)も控える。そこに、バスクで1勝しリーダージャージも着用したイーデ・スヘリング(オランダ)も加わり、厚みを増している。

イツリア・バスクカントリーで好走したセルヒオ・イギータも有力 ©︎ Sprintcycling

マチューが外れるアルペシン・ドゥクーニンクはクインテン・ヘルマンス(ベルギー)、同様にワウトを欠くユンボ・ヴィスマは前回3位のティシュ・ベノート(ベルギー)が軸に。フランドルでの落車をきっかけに戦線を離れているジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ、フランス)に代わるのは、レミ・カヴァニャ(フランス)あたり。

地元レースに意気込むバウケ・モレマ(トレック・セガフレード、オランダ)や、パリ~ニースではポガチャルと好勝負を演じたダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)、こちらも4年ぶり出走のロマン・バルデ(チーム ディーエスエム、フランス)、テクニカルなコースを得意にするマテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス、スロベニア)らも、虎視眈々と上位をうかがう。

ちなみに、4月12日にはアルデンヌ前哨戦として名高いブラバンツ・ペイル(UCI1.Pro)が行われ、ドリアン・ゴドン(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム)が優勝。3位にはチームメートのブノワ・コスヌフロワ(フランス)が続き、チームとして最高の仕上がりを見せている。

アルデンヌ前哨戦のプラバンツ・ペイルはドリアン・ゴドンが優勝した © Flanders Classics

写真判定機器を最新鋭のものに

主催者は2023年大会に向けて、フィニッシュ地点で用いられる写真判定機器を新たなものにすることを明かした。

これは過去2大会で発生したフォトフィニッシュ事案に由来しており、リザルトの信憑性を高めるための措置だとしている。

2021年大会では、優勝を争ったワウトとピドコックがほぼ同着状態でフィニッシュラインを通過。一度はピドコックの先着が告げられながら、しばらくしてワウトの勝利であることが発表された。また、昨年も同様のシチュエーションでコスヌフロワが勝者として発表された後、それが覆ってクフィアトコフスキの優勝が決まっていた。

僅差の優勝争いが続いているアムステル・ゴールドレース。写真判定の精度を高めるため新たな機材を導入する。写真は2022年大会 ©︎ Getty Images

いまだに議論されることのある両大会の事案を受けて、今年からは高精度カメラと周辺機器を導入。フィニッシュ時に撮影される画像がより鮮明になることが期待されている。

同時に、結果が確定するまで正式リザルトの発表を行わないことに努めるとも。フィニッシュ直後の混乱を減らし、誰もが納得できるレースにすることを主催者は誓っている。

前回は一度優勝と告げられたブノワ・コスヌフロワ(左)が後に2位と順位が覆り混乱をきたした ©︎ Getty Images

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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