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“イェーツ兄弟対決”はアダムに軍配でマイヨ・ジョーヌ。ポガチャルも3位でUAE躍動|ツール・ド・フランス

世界最大のサイクルロードレース、ツール・ド・フランスが7月1日にレースを開始。開幕地スペイン・ビルバオを発着とする182kmの第1ステージは、終盤に抜け出したアダム・イェーツ(UAEエミレーツ、イギリス)とサイモン・イェーツ(チーム ジェイコ・アルウラー、イギリス)の「イェーツ兄弟」が優勝争い。最後はアダムが上りでサイモンを突き放して、今大会最初のステージ優勝者に。マイヨ・ジョーヌに袖を通している。UAEチームエミレーツはタデイ・ポガチャル(スロベニア)も3位となり、4秒のボーナスタイムを獲得している。

ポガチャルのゴーサインでアダムが逃げを試みる

第110回ツールの開幕は、スペイン・バスク自治州のビルバオ。同地がグランデパール(開幕地)になることは初めてで、バスク自治州まで視野を広げると1992年のサン・セバスティアンまでさかのぼる。自転車どころバスクでは3日間レースが展開され、その後本来の舞台であるフランスへと移っていく。

©️ A.S.O./Charly Lopez

6月29日にビルバオ・グッゲンハイム美術館でチームプレゼンテーションが行われ、出場22チーム・全176選手が大観衆の前で顔見せ。強い雨にたたられる時間帯があったものの、華やかにツールの幕開けを演出し、レースのスタートにつなげている。

©️ A.S.O./Pauline Ballet

迎える第1ステージは、ビルバオを発着する182km。サッカー・リーガエスパニョーラの名門、アスレティック・ビルバオのホームスタジアムである「エスタディオ・サン・マメス」の前をスタートし、ビスケー湾沿いやバスクの象徴的都市であるゲルニカを通過。2級から4級まで5つのカテゴリー山岳が設けられるコースは、主催者によれば「史上最難関の第1ステージ」。後半に集中する3つの上り、4級コル・ド・モルガ(登坂距離4km、平均勾配4.1%)、2級コート・ド・ビベロ(4.2km、7.3%)、3級コート・ド・ピケ(2km、10%、最大勾配15.6%)は集団の人数を絞り込むのに有効な区間とみられている。獲得標高は3300m。なお、当初予定されていたピケ頂上のボーナスタイムは不採用となっている。

©️ A.S.O./Pauline Ballet

大観衆が沿道を埋め尽くす中、現地時間12時30分にレースはスタート。パレード区間を経てリアルスタートが切られると、パスカル・エインコールン(ロット・デスティニー、オランダ)、リリアン・カルメジャーヌ(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ、フランス)、シモン・グリエルミ(チーム アルケア・サムシック、フランス)、ヨナス・グレゴー(ウノエックス・プロサイクリングチーム、デンマーク)、ヴァランタン・フェロン(トタルエナジーズ、フランス)の5人が飛び出した。

©️ A.S.O./Pauline Ballet

13.8km地点に設けられた今大会最初のカテゴリー山岳、3級の上りはグレゴーが1位通過。それからも5人はレースを先導するが、メイン集団も好ペースを刻んでおり、タイム差は1分30秒前後で推移。67.8km地点に置かれた2つ目の3級山岳、88.2km地点の中間スプリントポイントはともにエインコールンが1位で通過。

少しおいてメイン集団も中間スプリントポイントに到達し、ここはマッズ・ピーダスン(リドル・トレック、デンマーク)が先着し、全体の6位通過。メイン集団のペースはさらに上昇し、スーダル・クイックステップやユンボ・ヴィスマのコントロールが本格化していった。

75km地点でレースは振り出しに

©️ A.S.O./Pauline Ballet

フィニッシュまで75kmを切って、タイム差は25秒まで縮小。この状況を嫌ったグリエルミやグレゴーがアタックしたが決まらず。結局、そこから25kmほど進んだところで集団が逃げ5人をキャッチし、早めのふりだしとなった。

直後に上り始めたコル・ド・モルガでは、マーク・カヴェンディッシュ(アスタナ・カザクスタン チーム、イギリス)やファビオ・ヤコブセン(スーダル・クイックステップ、オランダ)ら一部スプリンターが後方へ。彼らの集団復帰の芽を摘むかのごとく、ユンボ・ヴィスマのペーシングは勢いを増す。さらには、UAEチームエミレーツもアシストを前に送り出してスピードアップに加勢。続いて上った2級のコート・ド・ビベロでは、ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト、アメリカ)とゲオルク・ツィマーマン(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ、ドイツ)がトップ通過を競い、パウレスが先着。フィニッシュさえできれば山岳賞で首位になることが決まった。

©️ A.S.O./Pauline Ballet

緊張が走ったのは、頂上通過のダウンヒル。個人総合優勝候補に挙げられていたリチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト、エクアドル)とエンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)がコーナーで落車。カラパスはヒザを負傷し再出走まで時間を要し、マスにいたってはレース復帰がかなわずリタイア。今大会の戦いが注目されたビッグネーム2人に思わぬアクシデントが降りかかった。

集団は彼らの前線復帰を待つことはなく、フィニッシュへ向けて急ぐ。そして最後の登坂区間コート・ド・ピケ。ユンボ・ヴィスマやUAEチームエミレーツなどが前を固める中、フェリックス・グロスチャートナー(UAEチームエミレーツ、オーストリア)が単独で先行を開始。頂上を前に集団へ戻ることとなるが、この動きをきっかけにマチュー・ビュルゴドー(トタルエナジーズ、フランス)がカウンターアタック。アダム・イェーツが前に出てビュルゴドーを引き戻すと同時に、集団が割れて、ポガチャルや前回覇者のヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)、ヴィクトル・ラフェ(コフィディス、フランス)が続いた。

©️ A.S.O./Pauline Ballet

ポガチャルとヴィンゲゴーが牽制気味になるのをよそに、ラフェがペースアップを図ったが、下りで総合系ライダーが続々と合流。その間隙を縫って、サイモン・イェーツが抜け出しを試みると、アダム・イェーツが反応。イェーツ兄弟が精鋭グループから15秒ほどのリードを得て、残りは9kmとなった。

2人が逃げる間、集団にはさらに選手が戻って、ヴィンゲゴーら4人が入ったユンボ・ヴィスマがペーシング。イェーツ兄弟との約15秒差は変化することなく、そのまま最終局面へ。

最後の1kmはフィニッシュラインに向かっての上り。残り600mから勾配が7%となるが、この区間でサイモンが力尽きる。依然力強いペダリングを続けるアダムは徐々に差を広げて、そのままフィニッシュへ。今大会最初のステージ優勝者となった。

© A.S.O. / Pauline Ballet

アダムはこれがツール初勝利。UAEチームエミレーツ入り1年目の今年は、ポガチャルとの「共同リーダー」として大会に臨んでいるが、早速結果を残してみせた。2020年大会で4日間マイヨ・ジョーヌを着用しているが、今大会ではどこまで着用を続けるか。レース後には「あくまで私はタデイ(ポガチャル)のサポートライダー」であることを強調したが、今後の戦い方が見ものである。

©️ A.S.O./Pauline Ballet

兄弟での好勝負を演じたサイモンは4秒差で2位。12秒差でメイン集団がフィニッシュに到達し、スプリントで先着したのはポガチャル。ステージ3位の4秒ボーナスを取ると同時に、チームメートのアダムの勝利を喜びながらのレース完了となった。12人がこのグループで走り終え、ティボー・ピノ(グルパマ・エフデジ、フランス)やダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)、ジャイ・ヒンドレー(ボーラ・ハンスグローエ、オーストラリア)、マティアス・スケルモース(リドル・トレック、デンマーク)、ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス、スペイン)、そしてヴィンゲゴーといった総合系ライダーが入っている。

翌2日の第2ステージは、ビトリア・ガスティスからサン・セバスティアンまでの208.9km。スタートから約40kmで中間スプリントポイントを通過し、それからは第1ステージ同様に丘陵地帯を進む。フィニッシュ前16.5kmで2級山岳ハイスキベル(登坂距離8.1km、平均勾配5.3%)を上るが、現地では「上れるスプリンターなら最後まで残れるのでは?」といった見方もある。どのようにレースが進んでいくか、目が離せない。

©️ A.S.O./Pauline Ballet

なお、このステージで落車負傷したカラパスはレース後の診断で膝蓋骨骨折が認められ、第2ステージの出走を取りやめることを発表。マスも肩甲骨を骨折したことをチームが明らかにしている。

ステージ優勝、個人総合時間賞 アダム・イェーツ コメント

©️ A.S.O./Pauline Ballet

「言葉にならないくらいうれしい。予定ではタデイ(ポガチャル)のために上りのペースを作って、彼にアタックしてもらうはずだった。ただ、彼らが下りでペースを緩めたので、結果的に私は先頭に戻る形になった。アタックを試みたらサイモンが続いたが、チームから無線でそのまま行くよう指示されたので、逃げ続けることになった。サイモンとはとても仲が良いし、2人でこんな経験ができるなんて本当に幸せ。今日の彼はとても強くて、何度も振り落とされそうだった。もう少し手加減してくれても良かったのにね(笑)。

3年ぶりにマイヨ・ジョーヌを着用するが、冷静に走りたい。あくまでチームのエースはタデイだし、私は彼をサポートする立場。彼は今日の走りで改めて世界ナンバーワンのライダーであることを証明したし、これから3週間さらに良い走りをしてくれるはず。私も彼のために素晴らしい仕事ができると確信している」

ツール・ド・フランス2023 第1ステージ結果

ステージ結果

1 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ、イギリス) 4:22’49”
2 サイモン・イェーツ(チーム ジェイコ・アルウラー、イギリス)+0’04”
3 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)+0’12”
4 ティボー・ピノ(グルパマ・エフデジ、フランス)ST
5 マイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック、カナダ)
6 ヴィクトル・ラフェ(コフィディス、フランス)
7 ジャイ・ヒンドレー(ボーラ・ハンスグローエ、オーストラリア)
8 マティアス・スケルモース(リドル・トレック、デンマーク)
9 ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)
10 ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)

個人総合時間賞(マイヨ・ジョーヌ)

1 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ、イギリス) 4:22’39”
2 サイモン・イェーツ(チーム ジェイコ・アルウラー、イギリス)+0’08”
3 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)+0’18”
4 ティボー・ピノ(グルパマ・エフデジ、フランス)+0’22”
5 マイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック、カナダ)ST
6 ヴィクトル・ラフェ(コフィディス、フランス)
7 ジャイ・ヒンドレー(ボーラ・ハンスグローエ、オーストラリア)
8 マティアス・スケルモース(リドル・トレック、デンマーク)
9 ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)
10 ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)

ポイント賞(マイヨ・ヴェール)

アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ、イギリス)

山岳賞(マイヨ・アポワ)

ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト、アメリカ)

ヤングライダー賞(マイヨ・ブラン)

タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)

チーム総合時間賞

ユンボ・ヴィスマ 13:09’03

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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