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パワーメーターとシマノコネクトラボでヒルクライムの時間短縮 Vol.3|SHIMANO

クライマーたちの祭典「マウンテンサイクリングin乗鞍」まであと1カ月を切った。
筧 五郎さんも7月中旬に、『バイシクルクラブ』との共催で自身のローラー教室の受講生の皆さんと乗鞍合宿を行うなど大会に向けて動いている。
合宿の目的は乗鞍のチャンピオンクラスで優勝した経歴をもつ五郎さんと一緒に走り、乗鞍の走り方を学ぶこと。試走中の直接指導に加え、試走時の走行データをシマノコネクトラボを使って振り返りながら走り方に関するレクチャーも行った。

乗鞍合宿でコースを試走

2日間の乗鞍合宿に参加した受講生の多くは乗鞍初挑戦。初日は参加者全員がペースメーカーに1時間30分ペースで引いてもらいながら試走。2日目は1時間30分ペースのペースメーカーと受講生4人&五郎さんが先行スタートし、その15分後に1時間15分ペースで走るライダーが追いかける形式で行われた。

高地への順応に加え、乗鞍を初めて走る受講生は試走を通じてコースを知ることと1時間30分ペースでの走りを体験することが主な目的だ。

2日目の様子。先頭のペースメーカーが1時間30分ペースの一定パワーで走り、参加者はそれに付いていくことで1時間30分切りのペースを体感した

乗鞍(マウンテンサイクリングin乗鞍)ってどんなレース?

「マウンテンサイクリングin乗鞍」は、2023年で36回目となる日本のヒルクライムレースの草分け的存在。長野県松本市の乗鞍観光センター前から乗鞍エコーラインを上り、長野県・岐阜県境(鶴ヶ池付近)までの20.5km、標高差1,260mのコースで行われる。スタート地点ですでに標高が1,460mあり、フィニッシュ地点は日本の舗装路最高地点でもある2,720mと、日本のヒルクライムレースで最も高い場所まで上る。

コース途中にチェックポイントが2つあり、スタート直後の2kmほどは急勾配だが、第1チェックポイントの三本滝レストハウス(7km地点)までは比較的緩やかな勾配が続く。以降は比較的一定の勾配が続くが、第2チェックポイントの位ヶ原山荘(15km地点)手前に急勾配がある。第2チェックポイント以降フィニッシュ地点まで勾配は比較的緩くなるものの、標高2,500mを超えるため酸素が薄く、パフォーマンスが上がりにくい。

レースは全国から強豪クライマーが集うチャンピオンクラスと年齢別クラスに分かれて行われる。

歴代最高タイムは2019年大会で中村俊介さんが記録した54分41秒。ヒルクライマーの間では「乗鞍60分切り」がひとつのステータスになっている。

乗鞍のコースはスタート地点からすでに標高が高い。高地順応ができているかどうかも重要なポイントに
マウンテンサイクリングin乗鞍のコース(シマノコネクトラボにアップロードしたGPSデータから)

五郎’s コースの振り返りとアドバイス

パワーカーブのMMPをペースの目安に

「ヒルクライムでタイムを狙うなら、まずはスタートからフィニッシュまでパワーをなるべく上げ下げせず、フィニッシュ地点で余力が残らない『タレるかタレないかの限界ギリギリの一定のパワー』で走ることが重要です」と五郎さん。その目安となるのがパワーカーブと呼ばれるグラフだ。

自分がタレないギリギリのパワーというのはトレーニングを重ねるごとにだんだんつかめてくるもの。もし、そのパワーがわからなければ、自分の走行データから乗鞍の目標タイムのMMPを参考にして、後半余力があれば上げるとよい。たとえば、乗鞍で1時間30分が目標なら、90分のMMPを参考にする感じだ。

高地では酸素が薄くなってパワーが出にくくなる

乗鞍はスタート地点ですでに標高1,500m近くあり、平地より酸素が少ない。そこからさらにフィニッシュ地点の2,720mまで上り続けるので、平地に住んでいる人はいつもより酸素が薄い状態で走り続けることになる。そのため、酸欠状態で平地と同じパワーを発揮するのが苦しく、パフォーマンスはどうしても下がってしまう。コネクトラボで走行データを見ても、少しずつパワーが右下がりになるが、「これはある程度は仕方がない」と五郎さん。

「高地でパフォーマンスが大きく下がるのは、酸素が薄い高地に順応できていないから。高地順応するにはプロ選手もするような高地トレーニングが効果的です。乗鞍でいい記録を出したい人は乗鞍に通うのがいい。乗鞍で合宿すれば、拠点がすでに酸素が薄いところだし、試走で上まで上れば、少しずつ高地に順応してきます」

また、ヒルクライムの巡航時の目安となるFTP付近のパワーゾーンより高強度なL5(VO2max)やL6(AC)といったゾーンを乗鞍のような高所でこなしておくと、酸素の少ないところでパワーを出すことに慣れるのに効果的だ。

ガーミンのスポーツウォッチで血中酸素濃度(SPO2)を計測。低地に比べてSPO2が下がっている

レースなら人に付いていってパワーを節約することも考えるべし

レースに向けて、目標タイムを出すのに必要なパワーを出し続けるトレーニングは重要だが、レース当日は「パワーをなるべくセーブして余力を残しながら走ることも考えて」と五郎さん。

「たとえば、三本滝手前の緩斜面はスピードが出ます。人の後ろについて走れると風をよけることができて低いパワーで走ることができます。そのぶん後半に向けて余力を残せるので、いいペースの人がいたらその人の後ろに付かせてもらうのもいいですよ」

五郎さんの乗鞍合宿2日目、試走後の振り返り。シマノコネクトラボに五郎さんの走行データをアップロードし、走り方について説明した
筧 五郎さん:愛知県名古屋市の56サイクル店長。『バイシクルクラブ』をはじめとする自転車専門誌・WEBのほか、NHK BS1「チャリダー★」にも出演。過去に乗鞍を含む国内の主要ヒルクライムレースのタイトルを総なめにした経歴を持ち、アラフィフとなった現在も乗鞍には特別な思いを持って挑み続けている

シマノコネクトラボの機能

ペーシングの参考にもなるパワーカーブ

シマノコネクトラボにログイン後、ダッシュボードから個別のワークアウトを選ぶとパワーカーブグラフが表示される(表示されない場合はページ上段の「追加」をクリックしてパワーカーブのグラフにチェックを入れると表示されるようになる)。

パワーカーブとは任意の期間(最近の1カ月や2023年など)に記録された時間あたりの平均最大パワー(グラフ上の赤や黄色、緑などの実線)に対して、今回のワークアウトでどのぐらいのパワーが発揮されたか(白の実線)を表すグラフ。グラフ右上の「表示」のボタンをクリックすると、パワーカーブのMMPのベスト値の期間を変更することができる。

このグラフではパワーゾーンの目安も表示されているが、競技時間が1時間以上のヒルクライムならZ4からZ3上限付近のパワーで走るのがタレずに全力を出せる目安といえる(写真の丸印の付近)。
これまでのパワーデータからレースの目標タイムでのMMPをターゲットにするのもよいが、できれば本番のコースで何度か試走した上でターゲットパワーを設定したほうがいい。

ライド中の変化が分かる時系列グラフ

個別のワークアウトの画面には、ライドデータが時間の経過に合わせてどのように変化したかを示す時系列グラフも表示できる。表示項目はグラフ左側の部分(写真ではパワー、標高、勾配、ケイデンスと記されているところ)をクリックすると変更することができ、最大4つのデータをグラフ上に同時に表示できる。

このグラフの任意のポイントでクリックしながらスライドすると、ラップを切ったときのようにその区間だけを選択することができる。選択した区間は、走った区間を示すマップ上でも青く表示され、どの地点でパフォーマンスに変化があったのかを知ることもできる。また、平均スピードや平均パワー、平均ケイデンスなどのデータも、選択した区間の平均値が表示されるので、より細かい走りの分析が可能だ。

時系列グラフでは、ライド中のさまざまなデータを時系列で表示できる便利な機能。区間を指定したい場合はグラフ上の任意のポイントをクリック&ドラッグして指定するか、写真の赤矢印で示した丸いスライダーを動かす
マップ画面では走ったコースを青で表示。マップや時系列グラフは連動しているので、「後半はどうだったかな?」などと特定のシーンの振り返りにも活用できる

シマノコネクトラボとは

シマノコネクトラボは、シマノが展開する走行データを収集・分析するサービス。サイクルコンピューターやスマートフォンアプリ(E-tubeライド)からデータをアップロードすると、パソコンで詳細なデータが確認できる。

シマノのパワーメーターではペダリングの際に加えた踏力の向きと大きさを表示するフォースベクトルという機能を備えているが、シマノコネクトラボはこの表示に対応する唯一のサービスだ。

もちろん、スピードやケイデンス、心拍データ、走行距離といった、フォースベクトル以外のさまざまなデータもアップロード可能。これらの走行データは時系列グラフで表示され、GPSで記録された走行ルートも地図上に表示される。走行データとルートデータを連動させることもできるため、走行データの特定の区間のみを抽出してライド後に走りを振り返ることも可能だ。

シマノのパワーメーターでパワーを測り、そのデータを対応するサイクルコンピューターや対応アプリをインストールしたスマートフォンに記録させ、記録された走行データをシマノコネクトラボにアップロードして解析する。パワーメーター、サイクルコンピューター、コネクトラボは三位一体となって、ペダリングを科学的に分析できる唯一無二のシステムを確立している。

ライドデータの解析画面。さまざまな情報をグラフや図で“見える化”する。なかでもフォースベクトルによるペダリングの見える化(写真赤枠)は唯一無二の機能だ

「チャリダー★」ロードレース男子部メンバーの実走データを分析

今回、五郎さんの乗鞍合宿には、ローラー教室の受講生でテレビ番組「チャリダー★」のロードレース男子部のメンバーの岸本伊織さんも参加した。

伊織さんはシマノのR9200シリーズのパワーメーターをいち早く愛用。今回は1時間30分を目指すグループを15分後スタートで追いかけ、体重の4倍の平均パワーを目安に1時間15分での完走を目指した。

「去年、乗鞍を走ったときは1時間6分台でした。1時間15分で走るのはラクだろうと思ったのですが、思いのほかきつかったですね。結果として体重の4倍の平均出力は出なかったですし、1時間15分の目標タイムも20秒ほどオーバーしてしまいました。十分高地順応できていなかったか、ウォーミングアップが足りなかったのかもしれません。ただ、今回乗鞍を走ったことで、試走前より高地には順応できたような気がします」

岸本伊織さん:JBCFマスターズクラスでもポイントレース争い上位に食い込む強豪レーサーで、昨年の乗鞍ヒルクライムでは1時間6分48秒の好記録をマーク
シマノのフォースベクトル対応クランク型パワーメーターは、デュラエースR9200シリーズとアルテグラR8100シリーズでラインアップされている

「パワーは一定に近いが、ペダリングの内容が変わっている」(福田さん)

今回の乗鞍での伊織さんのデータをシマノパワーメーターアナリストの福田昌弘さんに分析してもらい、解説していただいた。

「伊織さんのパワーデータを見ると、フィニッシュまで比較的一定のパワーを保って走れているのがわかります。ただ、ケイデンスとトルクを見ると、後半は少しケイデンスが下がって、それを補うように高いトルクを加えて走っているので、ペダリング効率が上がっています」

一定のパワーで走れている点は好ましく、「ペダリングの内容が変わったところを改善すると、さらにより良くなるでしょう」と福田さん。

「自身で振り返ってみて、もし後半の高いトルクで走るペダリングのほうが安定していたのなら、最初からそのペダリングで走ることを目指すといいと思います。反対に、前半の比較的高いケイデンスを保つペダリングのほうがパワーを出しやすいと感じていたのであれば、それを維持できるようにしたいですね」

また、心拍数の変動を見ると、前半突っ込みすぎたか中弛みしてしまった感じもあるという。

「乗鞍は標高が高いので後半に入るとパワーが落ちやすいですが、データではそうした傾向が見られません。比較的、うまく順応できているといえそうです。前日に試走して高地を走っていたそうなので、その効果があったのかもしれません」

「一定のペダリングを長時間続けるためのドリルを」(福田さん)

伊織さんのペダリングが前半と後半で変わった問題点を改善するためのドリルとしては、SFRと一定のケイデンスで走る練習がおすすめだ。

「SFRは過去にも紹介しましたが、ゆるい上りでケイデンス50ぐらいを目安に、しっかりトルクをかけることを重視して行います。アウター×ローでスタートして、1回ごとにギヤを1枚重くして、自分が50回転で回せるギリギリの重さで最初から最後まで同じ動きを維持してください。2~3分を3本が目安です」

一定のケイデンスで走る練習は、実走でもインドアトレーナーでもOK。
「同じギヤ、同じトルクでケイデンスを一定で走れば同じパワーが出るはずなので、パワーは見なくていいです。ペダリングの内容に変化があるとトルクが変わってしまい、体への負担が大きくなるので、一定のペダリングを続けて、それを防ぐのが狙いです。
伊織さんの場合は、85、90、95rpmあたりでの10分走とかやるといいですね。
メトロノームアプリなどを使ってペダリングのリズムを管理し、ケイデンスを保つのもアリですね」

伊織さんの乗鞍試走時のパワー(水色)、トルクL(赤)、ケイデンス(紫)、ペダリング効率(黄色)を示した時系列グラフ。パワーは比較的一定で後半もあまりパフォーマンスが下がっていない。ただ、後半はケイデンスが下がり、トルクが高くなっていることからペダリングの仕方が途中で変わってしまったことが読み取れる
伊織さんの乗鞍試走時のパワーと高度、心拍数を示した時系列グラフ。心拍数が中ほどでいったん落ち込んでいるが、後半にかけて持ち直しているため、「序盤に突っ込みすぎたか中だるみしてしまったことがうかがえる」と福田さん

平滑化すると全体の傾向がつかみやすい

今回はデータが長時間にわたるので、全体の傾向を把握するためにグラフを120秒に平滑化している。時系列グラフの平滑化は、時系列グラフの上部にある「平滑化」と書かれたスライドバーで設定可能。1秒から180秒までの間で任意の値に調整でき、平滑化の時間を短くするほどデータのフレを細かく反映したギザギザの多いグラフになり、長くするとグラフの細かいフレが慣らされて全体の大まかな傾向がつかみやすくなる。

福田さんによると、まずは平滑化したグラフで大まかな傾向をつかみ、気になるポイントがあったらその範囲をピックアップしてみるようにするのがおすすめとのこと。

教えてくれた人:福田昌弘さん

サイクリストのコーチングを行なうハムスタースピン代表。関西医科大学大学院医学研究科博士課程でベダリングの研究を続けている。シマノパワーメーターアナリストの肩書をもつシマノコネクトラボのスペシャリスト。

 

「シマノコネクトラボ」の
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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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