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絶好調メルリール、個人TTではUAE勢が席巻。大会前半戦レビュー|UAEツアー

2月19日から25日の会期で開催中のUAEツアー。ロードレースの最高峰、UCIワールドツアーの2024年第2戦として行われており、本記執筆段階で中盤戦へと入っている。全7ステージで争われている大会を、2回に分けてレビューしていきたい。まずは第1~4ステージまで。スプリントに始まり、個人総合争いに直結するタイムトライアルや山岳ステージも盛り上がっている。

シーズン序盤の中東レース最終戦

UAEツアーは、ジロ・デ・イタリアやミラノ~サンレモなどを開催するRCSスポルトの主催で、同国各地をめぐるステージレースとして行われている。2月に入り、中東各地でステージレースが実施されており、サウジアラビアではアルウラー・ツアーが1月30日~2月3日に、ツアー・オブ・オマーンが2月10~14日にそれぞれ行われた。また、ワンデーレースのマスカットクラシックは2月9日に開催されている。

25度を超えようかという、この時期の中東の気温はシーズン序盤の脚慣らしにはピッタリ。すでにヨーロッパ各地でもレースが行われているものの、寒さを避けてエンジンを温めたい選手たちは中東シリーズを連戦している印象だ。

そんなアラビアン・ロードの最後を飾るのが、UAEツアーである。同地域のレースとしては唯一のUCIワールドツアーに位置付けられ、今回はUCIワールドチームと同プロチーム合わせて20チームが参戦中。大会の歴史としては6回目と浅いものの、かつてはドバイ・ツアー、アブダビ・ツアーといったレースが同国では開かれており、これらを一極化したのがUAEツアーである。

メルリールがオープニングウィン、UAEは個人TT上位独占

中東レースといえば、どこまでも広がる砂漠地帯を行き、ときにプロトンで発生する横風による分断作戦が大きな特徴。また、平坦区間が多く採用され、スプリンターによる競演も見ものだ。

今年のUAEツアーも同様で、第1ステージからスピード感のあるレースが展開されている。

平坦コースを進んだ第1ステージ(141km)は、コラテック・ヴィーニファンティーニの2選手が長く先行。このうち、マーク・スチュワート(イギリス)が中間スプリントポイントでボーナスタイムとポイントを重ねて獲得。ただ、定石どおりというべきか、着実にペーシングをしていたメイン集団が逃げていた選手たちをつかまえ、やがてスプリント態勢に。

バーレーン・ヴィクトリアスやボーラ・ハンスグローエなどが主導権を争う中、最終局面で飛び出したのがフアン・モラノ(UAEチームエミレーツ)とフェルナンド・ガビリア(モビスター チーム)のコロンビアンスプリンター。早掛けに出た2人に対し、冷静に追ったのはティム・メルリール(スーダル・クイックステップ)。後方ではクラッシュが発生する中、この日一番の加速を見せたメルリールが一番にフィニッシュラインを通過。大会初日のリーダージャージ獲得となった。

第2ステージは12.1kmの個人タイムトライアル。個人総合争いにおける、第1関門ともいえる1日になった。

このステージを征服したのが、実質のホームチームであるUAEチームエミレーツ。前日のフィニッシュがクラッシュによる混乱だったこともあり、有力選手の多くが前半スタートになっていた。そのなかで、ブランドン・マクナルティ(アメリカ)が13分27秒の一番時計を記録。時速にして、53.977km/hだった。4秒差でチームメートのミッケル・ビョーグ(デンマーク)が続き、さらに2秒差の三番手にはジェイ・ヴァイン(オーストラリア)が。タイムトライアルを得意とする3人が実力どおりに走り、UAE勢の上位独占を実現。3人はそのまま個人総合でもトップ3を占めた。

オコーナーが山岳制覇

個人タイムトライアルによるタイム差を受けてスタートした第3ステージ(176km)。この大会の重要山岳の1つ、ジェベル・ジャイスの頂上を目指した。スタートから長く続いた平坦区間は、スチュワートが再び逃げて中間スプリントポイントを狙っていく。スプリント賞を確実なものにしようと、積極的な姿勢が光った。

かたや、メイン集団ではフィニッシュまで50kmを切ったところで数人が絡むクラッシュが発生。ここにアダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ、イギリス)が巻き込まれてしまった。再びバイクにまたがって集団へと戻ったものの、ジェベル・ジャイスの上りに入ったところでレースストップ。頭を打ち脳震盪の疑いがあるため大事をとって走るのをやめている。

21.1kmに及ぶ長い上りで仕掛けたのは、エイネルアウグスト・ルビオ(モビスター チーム、コロンビア)。昨年は同じ上りで一番登頂を果たし、今回はその再現を狙って残り12kmで動いたものの失敗。リーダーチームのUAEチームエミレーツがコントロールする集団が、クライマーたちのアタックを許さない。そうして決定打が生まれないまま、最後の1kmを迎えた。

フラムルージュを通過しようかというタイミングで、大きな動きが起きる。ヴァランタン・パレパントル(デカトロンAG2Rラモンディアル、フランス)のアクションに呼応し、チームメートのベン・オコーナー(オーストラリア)が腰を上げる。パレパントルが発射台となってオコーナーを加速させると、集団との差は一気に拡大。その集団では、ヴァインが追走。

しかし、ジロ・デ・イタリアやツール・ド・フランスで山岳ステージを勝っているオコーナーに一日の長があった。最後までペースが落ちることはなく、ヴァインや集団の追撃をかわした。

オコーナーは、この勝利で個人総合2位まで浮上。11秒差でリードするのはヴァインに。マクナルティに代わり、チーム内移動でリーダージャージに袖を通した。

大会の中日、第4ステージ(168km)は大都市ドバイを走行。みたびスチュワートが逃げ、スプリント賞の座を固めていく。ただ、平坦路に戻ったプロトンは、スプリントチームを中心にペースをコントロールし、フィニッシュまで50km以上を残してレースはふりだしに戻った。

結局、最終盤まで一団のまま進行。スーダル・クイックステップやボーラ・ハンスグローエ、DSMフィルメニッヒ・ポストNLなどが主導権争いに加わって、フィニッシュへと向かっていく。残り3kmを切って発生したクラッシュには、スプリンターの1人であるパスカル・アッカーマン(イスラエル・プレミアテック、ドイツ)が巻き込まれてしまった。

混戦状態となり、多くのチームがトレインを崩壊させてしまう中、アルペシン・ドゥクーニンクが盤石の態勢を整える。好調のカーデン・グローブス(オーストラリア)で勝負する構えだ。ただ、フィニッシュを目前に先に仕掛けたのはオラフ・コーイ(ヴィスマ・リースアバイク、オランダ)。

ただ、この日もメルリールのスピードが冴えわたった。リードアウトを失い、ほぼ単騎で前に上がっていながら、マークすべき選手を見失うことなく勝負のときを待った。スピード、勝負強さともに群を抜く走りで、大会2勝目を挙げた。

リーダージャージはヴァイン

第4ステージまでを終えて、ヴァインの個人総合トップは変わらず。11秒差でオコーナー、さらに2秒差でヴァインのチームメートであるマクナルティが続いている。

大会後半は、第5・第6ステージでスプリントが予想され、最終の第7ステージで名峰ジェベル・ハフィートへ。フィニッシュまでの10kmは8~9%の急斜面が続き、残り3kmで最大勾配11%に到達。それでいて、最後の1kmを切ったところから下り基調で、スピードが乗ったフィニッシュになるのが特徴でもある。

後半3ステージの模様は、改めてレビューします。

UAEツアー2024 途中経過(第4ステージ終了時)

個人総合時間賞

1 ジェイ・ヴァイン(UAEチームエミレーツ、オーストラリア) 11:41’31”
2 ベン・オコーナー(デカトロンAG2Rラモンディアル、オーストラリア)+0’11”
3 ブランドン・マクナルティ(UAEチームエミレーツ、アメリカ)+0’13”
4 イラン・ファンウィルデル(スーダル・クイックステップ、ベルギー)+0’21”
5 ペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス、スペイン)+0’22”
6 マックス・プール(DSMフィルメニッヒ・ポストNL)+0’31”
7 トビアス・フォス(イネオス・グレナディアーズ、ノルウェー)+0’33”
8 サイモン・カー(EFエデュケーション・イージーポスト、イギリス)+0’36”
9 ミッケル・ビョーグ(UAEチームエミレーツ、デンマーク)+0’37”
10 アッティラ・ヴァルテル(ヴィスマ・リースアバイク、ハンガリー)+0’39”

ポイント賞

マーク・スチュワート(コラテック・ヴィーニファンティーニ、イギリス)

中間スプリント賞

マーク・スチュワート(コラテック・ヴィーニファンティーニ、イギリス)

ヤングライダー賞(マイヨ・ブラン)

イラン・ファンウィルデル(スーダル・クイックステップ、ベルギー)

チーム総合時間賞

UAEチームエミレーツ 35:05’29”

UAEツアー 公式ウェブサイト
https://www.theuaetour.com

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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