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ワールドツアー開幕戦ダウンアンダーはウィリアムズV。新鋭の台頭も光る|ロードレースジャーナル

vol.70 丘陵ハンターのウィリアムズがキャリア最大のタイトル、デルトロやウェルスフォードも活躍

国内外のロードレース情報を専門的にお届けする連載「ロードレースジャーナル」。いよいよUCIワールドツアーが開幕。初戦のサントス・ツアー・ダウンアンダーは想像を超える大熱戦が展開された。南半球オーストラリアで迎えたシーズンインの様子と各チーム・選手の動向をチェックするには最適な6日間だった。

ウィランガ・ヒルが4年ぶりにコース採用

2024年シーズンのUCIワールドツアーもオーストラリアからスタート。サントス・ツアー・ダウンアンダーは新型コロナによる中止期間をはさんだものの、シーズン開幕戦として定着し、昨年から通常開催に戻っている。

復活開催だった昨年は短距離個人タイムトライアルを採用したが、今回はコロナ前のステージ設定に近い趣きに。前回は使われなかったウィランガ・ヒルは第5ステージで“復帰”。最終・第6ステージにはマウント・ロフティの登坂も控え、全6ステージの構成としては大会前半から中盤にかけてはスプリンター向け、後半は個人総合争いが本格化する、といった予想ができるものとなった。

© Santos Tour Down Under

1月16日の正式開幕に先立ち、同13日には前哨戦クリテリウムの「ダウンアンダー・クラシック」を実施。1時間強に設定されたレースで、“勝ち逃げ”が決まり、ジョナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアーズ、エクアドル)が優勝。同12~14日にはUCIウィメンズワールドツアーとして女子レースが行われ、サラ・ジガンテ(AGインシュランス・スーダル、オーストラリア)が個人総合優勝を果たしている。

パリ五輪トラック競技有力のウェルスフォードが“覚醒”

ステージレースが華やかに始まると、「これぞダウンアンダー!」と言わんばかりのハイスピードバトルが繰り広げられた。

144kmで争われた第1ステージは、途中で急坂区間がありながらもプロトンを崩すまでには至らない。スプリントに向けた主導権争いは、新デザインのジャージが映えるボーラ・ハンスグローエが奪う。勝負を任されたのは、移籍加入のサム・ウェルスフォード(オーストラリア)。

スプリント王国ボーラの新エース・ウェルスフォードは、先のクリテを欠場したカレブ・ユアン(ジェイコ・アルウラー、オーストラリア)や好調が伝えられていたビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ、エリトリア)らを振り切り一番にフィニッシュへ。今大会最初の勝者となったウェルスフォードの快進撃が、ここから始まった。

© Santos Tour Down Under

丘陵コースを走った第2ステージ(141.6km)は、個人総合を意識した攻撃戦に。終盤の上りで一部スプリンターが脱落する一方、オーストラリア王者のルーク・プラップ(ジェイコ・アルウラー)やナルバエスが一時的に前をうかがうが、抜け出すまでには至らない。

半数ほどに減ったメイン集団がそのままフィニッシュへ向かう形になると、スプリントに向けて各チームがトレインを編成する脇から白基調のUAEチームエミレーツのジャージが飛び出す。仕掛けたのはイサーク・デルトロ(メキシコ)。昨年のツール・ド・ラヴニールを制したプロ1年目の20歳が、猛追する集団を退けて逃げ切りに成功。初のワールドツアーレースでステージ優勝とリーダージャージを着る栄誉にあずかった。

© Santos Tour Down Under

新星デルトロがジャージを守った大会中盤戦

第3ステージ(145.3km)からは、再びスプリンターが主役。しばし逃げメンバーを先行させて、フィニッシュまで30kmを切ろうかというところでキャッチ。スプリントチームやリーダーチームのUAEチームエミレーツがレースをコントロールした。

そんな中、残り13km地点で数人が絡むクラッシュが発生。アスタナ・カザクスタン勢が複数巻き込まれたほか、総合を狙う1人だったプラップも避けきれず。特にプラップは負傷度合いが大きく、この日は走り終えたものの、翌日は出走を取りやめている。

これらをかわした選手たちによるスプリントは、2日ぶりにウェルスフォードのものに。ボーラのトレインは混戦をくぐり抜け、エースをしっかり発射。これでウェルスフォードはポイント賞の首位に立った。

© Santos Tour Down Under

続く第4ステージ(136.2km)でもウェルスフォードのスピードが冴えた。ボーラ、アンテルマルシェ、イネオス・グレナディアーズが代わる代わる先頭を奪い合い、最後の最後まで混戦状態となった最終局面。最終コーナーを抜ける頃には、崩れ気味だったボーラのトレインにギルマイが食い込み、ウェルスフォードは劣勢かと思われた。

しかし、勢いが違った。今年はツール・ド・フランスを総合系ライダーに譲り、自身はジロ・デ・イタリアを目指し、その後はトラック競技でパリ五輪のメダルに挑戦することを公表しているウェルスフォード。シーズンインから全開の男は、上り基調のスプリントもなんのその。自身の前に入っていたギルマイをかわすと、そのまま一番にフィニッシュラインを駆け抜けた。

28歳の誕生日だったこの日に今大会3勝目を挙げ、文句なしのナンバーワンスプリンターを証明。最後の2日間は上位戦線から離れたものの、平坦ステージでの走りで群を抜き、最終的にポイント賞を確定させた。

© Santos Tour Down Under

また、ここまでのリーダージャージはデルトロがキープ。最後の2日間に大会タイトルを賭けることとなった。

 

21歳オンリーがウィランガ征服、レース巧者ウィリアムズがリーダージャージ

最後の2日間で、覇権争いのすべてが決する。第5ステージ(129.3km)は名物のウィランガ・ヒルを2回上って、頂上にフィニッシュする。登坂距離3.6km、平均勾配7.1%、最大で14%の急坂は、これまで数多くの名勝負を生んできた。

やはり勝負は、フィニッシュへつながる2回目のウィランガ・ヒルとなる。逃げをすべてキャッチして上りに入ると、クリス・ハーパー(ジェイコ・アルウラー、オーストラリア)やチームメートのサイモン・イェーツ(イギリス)、ジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ、フランス)らが前線へ。ハーパーがたびたび仕掛けて、それを他の選手たちが追う構図が続いた。

© Santos Tour Down Under

ハーパーのアシストを受けたイェーツがアタックすると、ナルバエスやアラフィリップらが反応。しかし、上りに入って終始好位置を押さえていた21歳のオスカー・オンリー(チーム DSMフィルメニッヒ・ポストNL、イギリス)が先頭へ。スティーヴン・ウィリアムズ(イスラエル・プレミアテック、イギリス)やナルバエスの追い込みをかわして、プロ初勝利を挙げた。

ステージ上位の選手たちにタイム差が発生し、このステージを終えてリーダージャージはウィリアムズへ。ステージ勝利のオンリーは個人総合で2位、ナルバエスが3位につけ、ここまで健闘しているデルトロは4位となった。

© Santos Tour Down Under

僅差の総合争いで迎えた最終日。128.2kmの第6ステージは、マウント・ロフティ(1.3km、7.3%、13.3%)を3回上る。レースは7人の逃げで進行し、個人総合で上位に選手を送り込んでいるUAEチームエミレーツなどもアシストを前へ送り出した。

いよいよフィニッシュへ続く3回目のマウント・ロフティ。イネオス・グレナディアーズのペーシングで逃げをすべてつかまえると、逆転を狙うデルトロが急勾配を利用してアタック。これに反応したローレンス・ピシー(グルパマ・エフデジ、ニュージーランド)がそのまま抜け出し、その後ろでデルトロ、ナルバエス、ウィリアムズがパックに。そこへバルト・レメン(チーム ヴィスマ・リースアバイク、オランダ)が合流。4人のうちデルトロが主に前を追い、フィニッシュ前約200mでピシーをキャッチ。

リーダージャージのキープのためライバルのチェックに徹していたウィリアムズだったが、ピシーをつかまえたのを機にスプリント態勢に。自身と同様にスピードにも自信をもつナルバエスやデルトロを追撃をいなし、リーダージャージみずからステージ優勝。自身の勝利で大会タイトルを確定させた。

© Sprintcycling

ブレイクが期待される選手たちが躍動

昨年のUCIチームランキング上位入りにより、同プロチームながらワールドツアー全戦への出場確約を得ているイスラエル・プレミアテック。昨年後半から好調を維持し、リーダー格にステップアップした27歳のウィリアムズが殊勲の大会制覇を果たした。チームは当初コービン・ストロング(ニュージーランド)がリーダーだったが、体調不良で第5ステージ途中でリタイア。戦術変更を強いられていた中で、代役が最高の仕事を演じたのだった。

今大会を指揮したスポーツディレクターのサム・ビューリー氏は「スティーヴィー(ウィリアムズの愛称)はチームの将来を担う選手」と評価。ウィリアムズは今季の目標にアルデンヌクラシックとグランツールのメンバー入りを掲げており、この勝利によってビッグレースでも重責を担うことになりそうだ。

© Santos Tour Down Under

前日勝利のオンリーが遅れたことで、個人総合2位にはナルバエス、同3位にはデルトロがランクイン。デルトロはヤングライダー賞にも輝き、スター軍団UAEチームエミレーツの新エース候補に一躍名乗りを上げた。

今季ブレイクが期待される選手たちが躍動した開幕戦。今後も次々と注目選手がシーズンインを迎え、グランツールやパリ五輪などを視野に活動していく。本コーナーでは引き続き、トップ選手やチームの動向を押さえていくのでご期待あれ。

ツアー・ダウンアンダー2024 最終結果

個人総合時間賞

1 スティーヴン・ウィリアムズ(イスラエル・プレミアテック、イギリス) 19:13’34”
2 ジョナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアーズ、エクアドル)+0’09”
3 イサーク・デルトロ(UAEチームエミレーツ、メキシコ)+0’11”

ポイント賞

サム・ウェルスフォード(ボーラ・ハンスグローエ、オーストラリア)

山岳賞

ルーク・バーンズ(オーストラリアナショナルチーム)

ヤングライダー賞

イサーク・デルトロ(UAEチームエミレーツ、メキシコ)

チーム総合時間賞

デカトロン・AG2Rラモンディアール 57:44’14”

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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