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人生初の300km超。編集サカモトのアンバウンドグラベル(レース編)|UNBOUND GRAVEL

砂利道を走るグラベルライドのレースとしては最も有名ともいえるレース「アンバウンドグラベル」。このアンバウンドグラベルはアメリカ・カンザス州エンポーリアという小さな町で開催され、世界各国から参加者が集まる。

このアンバウンドグラベルに自転車歴の浅い編集部サカモト(筆者)が2度目のチャレンジ。このレース編では2024年6月1日に開催された筆者のレース参戦記を紹介する。

事前準備編の記事はこちら
人生初の300km超。編集サカモトのアンバウンドグラベル(事前準備編)|UNBOUND GRAVEL

人生初の300km超。編集サカモトのアンバウンドグラベル(事前準備編)|UNBOUND GRAVEL

2024年08月22日

19時間30分弱で走った200マイル

まず結論から言えば、筆者は19時間30分弱で無事に完走。20時間30分の制限時間内に無事に帰ってくることができた。単純に荒野を走るためのレースにドラマはあるのだろうと思っていたが、さすがに19時間以上も走るとネタは予想以上のボリュームになってしまった。

UNBOUND GRAVEL 2024、200マイルのコース

スタート~第1チェックポイント(113km/325km地点)

朝のバタバタで撮影などが難しいと思っていた中、1時間後出発の100マイルを走るサイスポ江里口さんが私を見つけ撮影してくれました!

厳密にいえばスタート前から割とバタバタしていた。筆者は朝6時30分にスタートするのだが、その40分前の5時50分にプロクラスがスタートする。取材のため撮影しないわけにはいかないため会場へ向かった。焦って準備したくはないので余裕をもって30分前には到着。

さて撮影だ。「ん、カメラが無い」。こともあろうかプレスパスと一緒に宿にカメラを忘れていた。宿と会場の往復は急いで20分くらい。急遽もう1往復し準備を終えスタート地点に到着したのはプロクラススタートの1分ほど前、撮影自体はできたものの他の準備ができていない。6時にも女子プロクラススタートがあるためその撮影を終え、一度車に戻り今度は筆者自身の出走準備。

スタート地点にバイクと共に戻った時はスタート5分ほど前。ギリギリ過ぎて気持ちがあまり落ち着かなかったが無事に到着できたことに安堵だ。

男子プロクラスは会場到着時にスタートを切る直前。プレス専用の場所には間に合わず横から慌てて撮影した構図をご覧ください
女子プロクラスもスタート。その時間差は10分だが屋外の明るさは刻々と変わっている

スタートを切ってからはしばらくは集団で走行する。

参加人数がこの200マイルクラスだけで1039人もエントリーしているため、最初のエイドまでは何マイル進もうと前方にも後方にも人がいる状況だった。昨年はスタートして間もなくの位置で信じられないくらいの深い泥沼でバイクを降りて10km以上を歩くことになり、それにより集団も序盤にそれなりに崩壊していた。それを踏まえると今年のアンバウンドの何と走りやすいことか。アメリカ軍のジャージを着た人のトレインに入ったり、話しかけてくれたカナダ人と走ったり、適宜集団を移りながら割と余裕に最初の給水ポイント到着した。

こんなに大集団でグラベルを走る経験は貴重だ ©Aaron Davis

このアンバウンドはエイドでもあるチェックポイント(CP)が2カ所あるが、そこ以外に給水地点がスタート~第1CP~第2CPのそれぞれだいたい中間にくるくらいに設定されている。最初の給水ポイントに到着した時にはまだ水も十分あるし、脚の合う集団を逃すのももったいなかったのでみんなでスルーして走り続けた。

一つ心残りは、スタッフの女の子が濡れたタオルを走りながら受け取れるようにもっててくれたのを受け取れなかったこと。タオルを受け取って首にまいて走りたかった。いや、ちゃんと受け取りにはいった。しかし走りながら物資を受け取る経験がなかった私は見事にそのタオルを叩き落としてしまったた。何食わぬ顔でさも受け取ったかのような空気で集団に戻った。

みるみる気温があがっていく。日陰をつくる高い樹木もほぼない(この写真には若干写ってしまっている!)

そこから第1CPでもあるアルマの街までは上りが多くなる。また、気温も上がってきた。カンザスはグレートプレーンズとして地理の授業でも習うように大平原だ。そのため、日本のように日陰で涼しいなんてことは一切ない。しまった。日差しの対策が重要であるため今年は日焼け止めをしっかりもってきた。ところが日焼け止めは宿のボストンバッグのなか、一度もカンザスの空気に触れることなくしっかりとジップロックに収まっている。失念していてごめん日焼け止め。

113km地点のアルマの街に到着すると、まずクルー・フォー・ハイヤー(Crew for Hire)のスタッフが誘導してくれた。クルー・フォー・ハイヤーとは、このレース中に参加者のエイドでのサポートや緊急時の対応などを担ってくれる有料のサービスだ。本来アンバウンドグラベルはサポートメンバーが必要だ。

CPでの補給や緊急時の回収など、本来はサポートメンバーにお願いする。しかし、私のように外国からの参加者などは特にそういった人を見つけられないことも多い。そんな参加者にために運営側が行っているのがこのサービスだ(ほかにも3feet cyclingという別企業が行っているサポートサービスもある)。彼らは地元のボランティアだが、とてもライダー達のサポートになれている。

筆者が到着するや否や3人で出迎えくれた。自転車の保持をしてくれる人、給水を行ってくれる人、その他の支援希望(補給食など)に対応する人と揃っており、要望を伝えると迅速に行ってくれる。このサポートは受けているこちらもとても気持ち良いものだ。安くはないサービス(200マイルの場合は85ドル)だが、一度は受けてみてもいいだろう。

老若男女、幅広い層のボランティアがテキパキと手伝ってくれる。写真をお願いしても快くOK。元気を貰えるスタッフたちだ

また、パナレーサーも今年はCPでブースを構え、日本人ライダー達の支援を無償で行ってくれた。タイヤや空気圧の調整はもちろん、補給食や予備チューブの用意もありとても安心だ。

私はというとまだ体力にも結構余裕があったため、自転車から降りずに水分の補給のみでこのエイドは出発した。まだまだ余裕だった。

第1CP~第2CP(240km/325km地点 )

着々と走り100マイルを通過。この時点で走行時間は7時間30分。

「あれ、思ったより結構速い。この調子なら16時間くらいで完走できるのでは?」と思ったのが一番の間違いだった。100マイル(=160km)地点で水は結構減っていたが、170km地点に給水ポイントがあることは調査済みだ。水を一気に飲み給水ポイントに向かって走った。

……ない。
給水ポイントがいけどもいけどもない。なぜだ。後から調べたら給水地点は180km地点だったことが分かった。なぜ10km早い地点だと思っていたのだろうか。この誤算で炎天下のもと水も飲めない時間が続いた。それに加えて給水地点手前数kmが今回のコース屈指の難所に挙げられていたリトル・エジプトというエリア。すごくガレているし、その上で急こう配。すでに水が飲めずフラついているなか本当にしんどかった。視界もなんかぼやけてきた気もするし、なんかチカチカしてる。幸い小さな川を渡る地点があったので、そこで水を浴びることで意識を保ちなんとか第2CPへ。この区間だけは今までの半分くらいのスピードだった気がする。

後で記事にするために、と水場を撮影するも画角が最悪。余裕の無さが伝われば幸いだ

このCPでもクルー・フォー・ハイヤーにて補助してもらい、コーラをもらい視界が復活。

さらにパナレーサーブースにて、パナレーサー社員で200マイルに参加している2人も休んでいた。そのうちのひとりはがっつりと夕飯としてのブリトーを食べていた。正気なのか?私は内臓のダメージが凄すぎて固形物を口にするのが厳しいくらいだった。預けていた冷えたミカンと氷水をもらい、時間をかけて休んだ。この休憩により一気に復活。最後の区間へと進む。

顔から余裕だ消えながらもミカンをなんとか食べる。スタート時との表情の違いをお楽しみください ©Yuki Mikami(Panaracer)

第2CP~ゴール(345km/325km地点)

いやいや、見出しの距離の分数の分子おかしくない?
分数なのに「1」を超過しちゃってるじゃんという目ざとい読者の方。安心してください。あってます。

カンザスの日は長い。しかし、19時間も走っていればさすがにどこかで夕暮れは迎える

第2CPを出るタイミングがパナレーサーの2人と一緒だったため、3人で出発。ここまで240kmは日本語あまり使わなかったけど、やっぱり国を同じにする人と走る安心感はあると感じていた矢先、ガーミンからアラートが。充電が残り10%を切っている。フル充電してからこうなるまで想定より早い。しかし大丈夫。こうなることは想定済みで、ライトなどの万が一にも備えてモバイルバッテリーをもってきている。パナレーサーの2人にはすぐ追いつくと言って先に行ってもらいフレームバッグからモバイルバッテリーとケーブルを伸ばす。

「……??」。

ガーミンの充電の接続端子にあうケーブルを忘れている。

まじかよ。

あるはずのないケーブルをフレームバッグをあさり探し続ける始末。結果としてそれなりに止まってしまった。無いものはしょうがない。すぐにパナレーサーの2人に追いついてこちらのガーミンのバッテリーが切れても道に迷わないように一緒に走ろうと切り替える。

絶好のタイミングで丁度良い速さの集団が!

丁度いいタイミングで通過する集団を発見。6人ほどでローテーションを快調に回していく。そして一気に日が落ちた。ライトを点灯し進んでいく。ペースも順調で、気付くと数人がちぎれ、自分とアメリカ人の2人だけでローテーションを回していたが、それでもペースは落ちない。

そんな中でとうとうガーミンバッテリー切れ。1人の時じゃなくて本当に良かった。

「ちょっとこっちのガーミンのバッテリー切れたのでルートが分からないので道はお願いします!」という問いに「Oh!OK!」という返事、そんなやり取りを挟み、真っ暗闇の道を突き進んだ。前も後ろも真っ暗な中を進む。

……真っ暗?。この場所は街灯なんて概念は郊外に無い。しかし、遮蔽物も無いため結構な距離が離れていても自転車のライトは見えることが多い。さっき千切ってきた集団のライトが後ろに全く見えないのはおかしい。コースは直線なのに。

坂本「ちょっと道間違ってない?ライト周りにないんだけど?」
米国人「大丈夫!俺のガーミンがこっちって言ってるぜ!」
坂本「ならOK!」

~10分程経過~

坂本「やっぱ間違ってる……?」
米国人「ちょっと待ってくれ調べる……Oh、俺のガーミンf●●k!」
坂本「いや、こっちも任せっきりでごめん!スマホで調べて復帰する道をさがそう!……この舗装路を行けば道を間違ったポイントまで戻れる!」

このような流れでかれこれ20km走り元居た地点まで戻ることができた。

米国人「本当にsorry……。なんて俺はおろかなんだ……。」
米国人「いや、でもエクストラアンバウンドを楽しめてるからハッピーだな!」
米国人「なんで俺は道を間違えたんだ……」

舗装路を走りコース復帰を目指していると、運営の車がたまたま通過。「アンバウンドのライダーだよね??」とドライバー。コース復帰まで案内してくれた

彼の面白いほどの感情の起伏を至近で感じながら道に復帰した。パナレーサーの2人に追いつけないのは明白。それでも道中にまだライダー達は大勢いる。彼らとともになんとしても走って街まで戻ろう!絶対に完走はするぞ。

幸いそこまで複雑な道でもないためナビゲーションが生きていなくてもライドに集中できる。

次の障害は睡魔だった。

夜まで走るような経験がなかったことが祟ったか。走っていたと思ったら気付くと夢の中のような状態が急に発生し始めた。その度に首を振ったり、大声で独り言をいったり、吠えたりとなんとか寝ないように踏ん張る。こんなに体を酷使してる最中なのに眠くなるのか。エンデュランススポーツって難しいと感心。最も危なかったのは、気付いたらバイクがほぼ止まっていてすでに倒れかけていたときだ。なんとかペダルから足を外して踏ん張り転倒は回避できたが、ここで睡眠落車していたらどうなっていただろう。

残り少しのところで後悔はしたくない。この転倒間際の経験で一気に目覚めゴールまで走った。暗闇が続く中、遠くには一か所明るい街がある。天空に向かって伸びる緑色の光線から、会場はさながらフェス会場のように演出されているのだろうと想像がついた。

深夜のフィニッシュ! 翌日の新聞もアンバウンドグラベルに染まる

舗装路が増え、建物が見え、街中へ。エンポーリアのメインストリートに戻った時には深夜1時を超えていた。それでもまだ応援してくれている人も少しいる。あまりふざける余裕もないし、そんなキャラでもない。それでもこの瞬間はまた味わえるか分からない。急ぐことなく、顔を上げ周りを見ながら、終わることにもったいなさすら感じてじっくりゴールした。総走行距離が道を間違えているので345kmから350kmほどだ(あの後も2回ほど迷いました)。充実感がすごかった。

ゴール後、フィニッシャーフォトスポットで仕事の完了証明写真を撮影。すぐに編集部に送られた ©Yuki Mikami(Panaracer)

ゴール後にもパナレーサーのスタッフたちが待っていてくれていた。写真も撮ってくれるし、宿まで帰る気力もない自分をパナレーサーの拠点の家(このころにはパナレーサーハウスだったり、通称パ○ホームとも呼ばれ参加した日本人に親しまれていた)で休ませてくれたりと、このサポートには大変に感謝だ。

深夜のゴールに関わらず地元の番組から取材を求められたので日本のメディアとして責任を持って対応した。手前は通訳として助けてくれたパナレーサーの岡田さん。助かりました! ©Yuki Mikami(Panaracer)

後日談

昨年はゴールした翌日の朝6時の便で帰国だったため、100マイル走った後に睡眠もそこそこに帰路についたがとてもきつかった。そのため今年は帰国までの間に1日設けてゆっくりと回復できた。現地の新聞は一面がアンバウンドグラベルで飾られていた。注目ぶりがうかがえる。天気も良かったので撮影も行い空港へ移動。空港近くで一泊し帰国した。

ホテルのロビーで発見した地元新聞。アンバウンドグラベルの地域への根付き方がすごい

昨年のことを思い出すと、個人的にはだいぶ成長したのかなと思っている。自転車のイベントに多く参加し、見分を広めた。自転車も購入し、少しずつ自分で考えて走ることができるようになってきた。昨年の200マイルは到底完走できなかっただろう。しかし、制限時間内で走りきれた。また一つ自信が付いた。バイシクルクラブのライターとしてまだまだ経験が浅いのは変わらないだろう。それでも、積み重ねた経験が少しずつ自分の書くものに滲み出てきている気もする。よりいい情報や想いを、より伝わるテキストで伝えられるよう、まだまだ多くの経験をしていこう。

200マイル走行後。深夜1時を過ぎていてもスタッフの人たちが歓迎してくれて嬉しい。左のスタッフが持っているグラスをよく見たら、350マイルの賞品はジョッキグラスじゃないか……欲しい。 ©Yuki Mikami(Panaracer)

 

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PROFILE

坂本 大希

坂本 大希

元海上自衛官の経験を持つライター。1年間のドイツ自転車旅行をきっかけに自転車が好きになる。2022年秋ごろよりグラベルイベントに多数参加。2023年のUnbound Gravelで100マイル完走。グラベルジャーナリストになるべく知見を深めるため取材に勤しんでいる。

坂本 大希の記事一覧

元海上自衛官の経験を持つライター。1年間のドイツ自転車旅行をきっかけに自転車が好きになる。2022年秋ごろよりグラベルイベントに多数参加。2023年のUnbound Gravelで100マイル完走。グラベルジャーナリストになるべく知見を深めるため取材に勤しんでいる。

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