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伝統と革新を胸に携えた秋田「新政酒造」の酒造りが面白い

革新的な酵母を生み出した歴史ある蔵に息づく若き決意

昨今の日本酒の世界で話題をさらい続けているのが、秋田市の酒蔵「新政」だ。江戸時代末期に誕生した老舗の蔵は、今、若き八代目の蔵元のもと、革新と伝統への回帰という2つを軸に本当に美味しい酒造りを模索している。その中心人物である八代目・佐藤祐輔さんに蔵を案内してもらった。

東京大学文学部卒業後、ジャーナリストを経て八代目蔵元を継いだ佐藤祐輔さん。実家の酒蔵に戻って8年、新政らしい日本酒を追求し続けている。

「今うちが取り組んでいるのは、トレーサビリティと無添加です」と佐藤さん。原料である酒米は秋田県産、しかもその8割を契約栽培にしている。そして酒造りの工程においては、純米、生酛造りといった日本古来の酒造りへの回帰を図る。現在の酒造りの主流は、酸味料を添加して雑菌を抑制する速醸と言われる酒母製法だが、生酛造りではそういった添加物を使わない。天然の乳酸菌など、自然の微生物の力を借りて酒造りを行うのだ。

酒米はすべて秋田県産で5種類の銘柄を使用。その80%が契約栽培だ。
削り方の技術も重要なため自家精米する。

「速醸ならば10日前後でできる酒造りが、生酛造りでは3~4週間余計にかかります。生酛を仕込む酒母室での工程だけで40日かかり、専任の担当者も3人は必要。それでも新政らしい酒造りには、生酛造りが一番合っていると思うのです」

そう話すのには理由がある。現在の日本酒造りに欠かせない酵母の原点である「きょうかい6号酵母」は、昭和5(1930)年、醸造研究者でもあった五代目佐藤卯兵衛の時代に、この新政の蔵で生酛造りのもろみから発見されたのだ。極低温で発酵するまったく新しい性質を持った酵母は全国に広まり、現在使用されている酵母すべてが、この6号酵母の遺伝子を受け継いでいる。酒造りを継ぐつもりはなかったという佐藤さんが、日本酒本来の美味しさに目覚めて現代的な醸造法に疑問を感じ、本物の日本酒造りに挑む礎になったのが、この歴史的な酵母の存在だった。

そして今、佐藤さんは実験的な「やまユ」シリーズや「新政NO6」シリーズ、貴醸酒シリーズなどを世に発信し続けている。私たちはその一杯を飲むたびに驚き感嘆することになるだろう。

創業時からある「吟醸蔵」と呼ばれる土蔵。ここで「6号酵母」が発見された。
新しく導入した木桶。現在作れるのは大阪の1社だけだ。
完成に近づいた生酛からは甘い香りがする。
気温の高い10、11月はビニール袋内で米をすり潰す。

新政酒造のおもな商品シリーズ

新政NO6 S-TYPE/R-TYPE

NO6シリーズは濾過を最小限に抑えた純米生原酒。Sタイプは掛米50%、Rタイプは60%でキレに違いがある。

瑠璃ラピス/エクリュ

秋田県産米を純米造りによって6号酵母で醸した1本。生酛造り。ブレンドせずに瓶詰めする個性的な純米酒。

亜麻猫(あまねこ)/陽乃鳥(ひのとり)

平安時代の古文書「延喜式」に製法に 基づく「貴醸酒」シリーズ。既存の酒を加えて仕込む贅沢で濃厚な旨口酒。

平成二十七年 新年純米しぼりたて生酒

年の瀬から新年にかけてしぼった酒を元旦に出荷する縁起のいい生酒。毎年ラベルが変わるのも楽しいプレミアムな1本。

伝統と革新。新政の酒造りの歴史

注目の新政酒造には今に続く歴史があった。八代続く蔵の歴史の中、困難や転機を繰り返しながら酒造りを続けてきた「新政」の道のりを、紐解いてみよう。

新政酒造は地酒として愛されてきたものの、全国的に評価されるような存在ではなかった。それを大きく変えたのが、五代目佐藤卯兵衛氏の存在だ。彼が目指したのが、北国ではできないと言われていた吟醸酒造り。様々な研究を重ね、品評会においても優秀な成績を収め始める。そうした流れもあり、醸造試験所の技師によって「新政酵母(きょうかい6号酵母)」が、世に出ることになったのだ。

そういった歴史ある蔵を継いだという意識が、当代の佐藤氏の胸のうちにもある。蔵内部の温度管理など、現代だからこそ可能な技術によって生酛という伝統的手法に回帰する。そこに、新政ならではの特徴を持つ旨い酒が誕生するのだ。
「毎年、こうしてみてはどうだろう、と試行は続けています。今挑戦しているのは、この蔵に住んでいる天然酵母だけを使って酒を造ることですね」と佐藤氏。先祖が見つけた酵母に次ぐ、新たな新政の味わいの源が生まれようとしている。

1852年 初代 佐藤卯兵衛が創業

幕末の動乱期に初代 佐藤卯兵衛が創業(嘉永5年)。その名から「うへえの酒」、また屋号をとり「やまうの酒」と呼ばれ地元で親しまれた。明治に入り、政府から施策の大綱とした「新政厚徳(しんせいこうとく)」と いう名称をいただく。意味は「厚き徳をもって新しい政(まつりごと)をなす」。

大正時代 「新政」誕生

経営的な成功を収めた四代目 佐藤佐吉の時代に、秋田市長であった井上廣居の進言により、酒銘と読み方を「新政厚徳(しんせいこうとく)」から「新政(あらまさ)」に変更。

大正〜昭和初期 「きょうかい6号酵母」発見

佐吉の息子である五代目 卯三郎は 大阪高等工業学校(現・大阪大学工学部)で醸造を学び、帰郷後は醸造指揮者として各地から先進技術者を招き、酒質向上を目指し研究に奮闘努力した。昭和5年には蔵のもろみから優良酵母が採取され「きょうかい6号酵母」として発売。全国新酒鑑評会で好成績を収め、昭和15、16年には全国首席を獲得。

若き日の五代目。

戦後 大規模な火事に見舞われる

五代目 卯兵衛は戦後の混乱の中、結核のため惜しまれながらも52歳で逝去。その後の大火災により廃業寸前にまで追い込まれたものの、六代、 七代が実直に経営を続け、 現代に至る。

蔵元、蔵人の共同で酒造りに取り組んだ。

2007年 現社長 佐藤祐輔氏が入社

平成19年酒造年度より、七代卯兵衛の息子である佐藤祐輔氏(現社長)が帰郷し、醸造に携わる。

2008年 醸造より冬期の一括製造を廃止

従来の冬期のみの一括製造をやめ、夏期を除いて醸造が可能な平均年齢30代前半の社員醸造に移行。仕込みサイズを小さく、醸造期間を長くとることにより、細やかな酒造りが可能になった。佐藤祐輔氏主導の実験的な酒が造られ始める。

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2009年 使用酵母を「6号酵母」に限定

秋田県の自然と先祖である四代目 卯兵衛の功績に最大限の敬意を表し、使用酵母を「6号酵母」に限定。新しい「新政」の酒が展開し、注目を浴びるようになる。

2010年 「NEXT 5」結成

醸造からはトレーサビリティの徹底と個性化、地域貢献を目的に原料米を秋田県産米に限定。佐藤氏の活動として県内の蔵元5名により「NEXT 5」が結成され、共同醸造が行われる。以降、毎年共同醸造のほかイベントも開催。

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2012年 佐藤祐輔氏が代表取締役に就任

社長就任とともに、独自の製法の山廃酛(生酛系酒母の一種)に製法を統一し、いち早く速醸酒母を廃止。 翌年、全商品を純米造りの体制に移行が終了。こうして、醸造用のアルコールや酸類など、ラベル記載義務がない副原料の完全撤廃も達成した。

2014年 「生酛」へと酒母製法を限定

「6号酵母」を使った純米酒がついに金賞受賞!

前年より醸造長として古関弘を抜擢する。シーズン後半には、より伝統的な生酛に酒母製法を変更。「生酛純米蔵」としての道を歩み始める。第103回全国新酒鑑評会にて、「6号酵母」を使った純米酒が金賞受賞。華やかな吟醸酒が覇を競う中での快挙となった。

2015年 未来は「培養酵母」ではなく、「天然酵母」を目指す

現在使用している「6号酵母」は管理、培養されたもので蔵に住み着いているものではない。蔵に住む天然酵母を使った醸造に挑戦していくのが、今後の目標。

 

DATA
新政酒造(あらまさしゅぞう)
住所/秋田県秋田市大町6-2-35
TEL/018-823-6407
交通/JR秋田駅から秋田中央交通バス交通公社前下車、徒歩10分
http://www.aramasa.jp/

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buono 編集部

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使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。

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