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残雪の秘湯で滋味深い郷土鍋をいただく 鶴の湯別館 山の宿 お食事処「庵」

3県にまたがる十和田八幡平国立公園の南端にある『乳頭温泉郷』は、日本の原風景と称される秘湯のひとつ。7つの温泉の中で最も古い歴史を持つ鶴の湯は、黒湯、白湯、中の湯、滝の湯といった自噴泉が堪能できるだけでなく、ひと味違った田沢湖の郷土料理「山の芋鍋」がいただけるという。その味を確かめに秋田新幹線で北上した——。

趣深い旅館で出合った田沢湖名物“山の芋鍋”

乳頭温泉を貫く先達川沿いに佇む。
鶴の湯温泉の名物である白湯の混浴露天風呂は本館に。日本各地から人が訪れるだけでなく、海外メディアでも広く取り上げられている。立ち寄り湯600円。

田沢湖駅に降り立つとしんとした冷気が肌を刺し、辺りには粉雪が舞っている。今が4月という事実を忘れそうになりながら、小走りでバス停へ。目指す乳頭温泉郷に向けて走り出す。乳頭温泉郷は乳頭山麓に点在する七湯。その中で奥まったところに佇む「鶴の湯」は最も古い歴史を持ち、寛永年間に二代目秋田藩主・佐竹義隆公が湯治に訪れた記録が残されている。古くは「田沢の湯」という名前だったが、1708年頃にマタギ の勘助が湯治している鶴を発見 したことから「鶴の湯」と呼ばれるようになったという。その温泉は泉質・効能の異なる4つの源泉を持ち、いずれも日本の温泉の1パーセント以下である自噴泉という希少性が話題となり秘湯ブームの先駆けとなった。

本館から1.5km離れた山の宿は1994年に建てられた。見渡す限りの大自然が広がり、聞こえるのは清流の音だけという環境が、時を忘れさせてくれる。
本館の伝統的な茅葺屋根の『本陣』は、日本有数の予約が取れない部屋として名高い。

日本で最も深い湖、田沢湖畔を通り過ぎ、秋田駒ケ岳の山懐へ。原生林が深くなり、うねる山道を登っていくこと20分、鶴の湯別館『山の宿』に辿り着く。今回の目的は食事処『庵』で供されている名物の山の芋鍋だ。

山の芋鍋の発祥は新しく37年前。田沢湖界隈の板前たちが秋田名物のきりたんぽ鍋に代わる名物として開発したもので、この辺りで「山の芋」と呼ばれる伊勢芋をすりおろしたつみれを主役に、山菜やきのこ等の山の幸、肉とともに食べる郷土鍋として定着している。味付けはきりたんぽ鍋と同様に醤油が主流だが、「鶴の湯」では唯一自家製の味噌を使っているという。

枝豆を使い甘みと香りを際立たせた自家製味噌。

「醤油だとつみれを入れると濁ってしまい、美しくないんです」と話すのは、代表の佐藤和志氏。「秋田の定番は辛口の赤味噌ですが、うちでは一般的な味噌豆ではなく、枝豆から作った自家製味噌を味付けに使っているんです。今ちょうど仕込んでいますよ」

ブナやトチといった地元の雑木だけで建てた趣き深い平屋の『山の宿』に入り、厨房に案内していただいた。

「川魚を囲炉裏で焼く風景が夕餉の原点」

黒皮の山の芋は形状も独特。
山の芋は地元神代産を使用。

広い厨房に入ると料理長がすりおろした山の芋を練っている。肩の高さまで伸びる山の芋は、驚くことにつなぎを何も入れていないという。

「スープの熱でつみれがしっかり固まって、山の芋からいい出汁が出るんです」

その言葉に後ろ髪を引かれながらチェックインし、部屋で荷物をおろす。ひと息ついた後、食事処『庵』の個室に入ると、既に囲炉裏には炭がくべられ板間を感じさせないほど温かい。緋色の炭火の前で、立て焼きの岩魚が待っていたかのように迎えてくれた。

「座敷の部屋で川魚を囲炉裏で焼いて食べる。この風景に日本の夕餉の原点があるんです」と佐藤氏。

炭火の遠赤外線効果で中までしっかり火が通る。
取材時の山菜は、山蕗のうま煮、山うどの味噌和え、わらびの醤油漬け。これから初夏にかけて、ぼんなやねまがりたけ、しどけ等の山菜が増え、秋にはきのこも。

食前酒のさくら甘酒の優しい味わいで落ち着き、山蕗、わらび、山うどの小鉢や珍しいいぶり人参、自家製の胡瓜からし漬を食べた後、岩魚を一口。パリパリとした食感の後、山椒塩の香りが鼻に抜ける。川魚特有の臭みは一切ない。ふっくらと焼かれた身はやわらかく、淡白ながらも噛むほどに独特の旨味があふれる。小骨まで食べられる上、背骨周りまでせせりたくなるほどの鮮度は、育った先達川の清冽さを物語っていた。

郷土料理の醍醐味を心ゆくまで堪能する

炭火焼きの香ばしい匂いが漂う。この日の野菜はアスパラ、さつま芋、舞茸、椎茸。
虹鱒の柚子昆布締めは爽やかな香り。
白岩地域の小麦で作った中華麺(左)は冷たい蕎麦つゆをかけて食べる。揚物(右)は山菜飛竜頭。

続いて供されたのは、炭火で焼く炙り物。鹿角市の大自然で育てられた八幡平ポークのさっぱりしたフィレ肉、鶏肉と山芋で仕立てた自家製の山芋味噌つくね、「畑のキャビア」と称される箒の実と忍ばせたチーズがコクを加えたとんぶり真丈など地のものがふんだんに。野菜は独自にアレンジした塩魚汁たれを付けて焼くと、さっぱりした塩気が力強い素材の旨味を引き出される。

さらに刺身は虹鱒の柚子胡椒締め、そぼろあんで食べさせる山菜飛竜頭と続いた後、真鍮製の自在鉤に山の芋鍋が吊るされた。鉄鍋の中には、山の芋のつみれのほか、きのこやネギ、つきこんにゃく、ごぼう、豚バラ肉等がぐつぐつと煮立てられ、色鮮やかなせりが彩りを加えている。肉は敢えて秋田名産の比内地鶏ではなく、味噌味のスープと最も相性の良い豚バラ肉にこだわったという。

山の芋鍋は優しい味わいだが、満足度も高い。立ち寄りでも食せる。小鉢3品、漬物、ご飯付きの「山の芋鍋定食(1,550円、岩魚の塩焼き付きは2,060円)」。これを目当てに訪れるリピーターも多いとか。
大仙市で320余年続く老舗酒蔵『秀よし』の「純米大吟醸(3,600円)」 や米焼酎「樹輪(2,160円)」も味わえる。

まずはスープを飲む。自家製味噌に胡麻油等でコクを加えた味わいは、自然と目を細めてしまうほど滋味深い。山の芋だけでなく肉や野菜の出汁と相まって、より奥行きのある旨味が凝縮されている。身体が喜ぶのを実感しながら主役である山の芋を口に運ぶ。独特のもっちりとした食感。自然のままの素朴な味だが、他に類をみない。それがまさに土地ならではの郷土料理を楽しむ醍醐味だろう。

「ここにしかないものを召し上がっていただいて、秋田らしさを体感してもらいたいんです」

艶やかに炊かれたあきたこまちのご飯と白岩小麦で仕立てた自家製麺、そして夕餉を締めくくるあきたこまち糠アイスを堪能しながら、佐藤氏の言葉を思い出す。

『山の宿』支配人の三河裕一氏(右)と料理長。「四季で変わる風景も楽しめます」
甘味はあきたこまちの糠で仕立てたアイスとフルーツ。

秘湯で食す山の芋鍋は、現代人に必要な最小限の設備を取り入れながらも、時をかけて守られている乳頭温泉郷の美しい原風景と実直な秋田人の人柄が滲み出ていた。

※写真の料理はすべて「山の宿」宿泊客用の夕食メニュー。

 

鶴の湯別館 山の宿 お食事処「庵」 (つるのゆべっかん やまのやどおしょくじどころいおり)
住所/秋田県仙北市田沢湖田沢字湯ノ岱1
TEL/0187-46-2100
営業/11:00〜14:00
休み/なし
http://www.tsurunoyu.com/FONDMENT/y-annai.html

出典

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buono 編集部

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使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。

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