みんなが喜ぶキャンプサイトを作るためのポイント座談会
フィールドライフ 編集部
- 2020年07月27日
ポイントさえ押さえておけば、キャンプ歴が浅くてもみんなが喜ぶ(なおかつイケてる)サイトは実現可能。ファミリーサイト、グループサイト、少人数サイトのポイントをアウトドア業界で活躍中の3人が解説してくれた。
アドバイザー
アウトドアのなんでも屋 牛田浩一さん
幼いころからアウトドアに親しみ、アウトドア・キャンプ用品の輸入販売会社を経て、アウトドアのなんでも屋として独立。あらゆるギア&アクティビティを知り尽くす業界の重鎮的存在。16歳、14歳、13歳男児の父。
スタイリスト 近澤一雅さん
モノ系情報誌、アウトドア系雑誌の企画や特集を数多く担当。短パン&サンダル、ノーカラーシャツ&キャップが最近のユニフォーム。ロケ現場にグローブとバットを持参する虎党。9歳女児と5歳男児の父。
アウトドアプロデューサー 長谷部雅一さん
7,000m級の山から近所の森まであらゆる自然と関わりながら、プロジェクトの企画やコーディネート、幼稚園や保育園向けに自然体験のコンサルティングも行なう自然遊びのプロ。5歳女児の父。
ファーストテントはツールームがベスト
近:写真のようにテント&タープをカッコ良く張れたら完璧!
牛:テントとタープがひと続きになるように張るのがポイントだね。子どもたちが泥んこになって帰っても、タープの下でひと息つかせてから、テントの中へという流れができる。
長:なだれ込むようにテントに入られたら困るからね(笑)。タープの大きさは家族3人分のテーブル&チェアを置いてもまだ余裕があるくらいがいい気がします。
牛:ちなみになにを使ってる?
長:タープは「ヒルバーグのタープ20」。かなり大きい(笑)。テントはいまだに「ヌックタック」も愛用してます。最近は「ローカスギア」も多いかな。
牛:ヌックタック懐かしいね、我が家も使ってた!
近:テント小さめですね。
長:タープ下のスペースが広いから、テントは寝るだけのスペースと割り切ってるところありますね。キャンプの目的によってテントも変わるので、いつも小さいテントというわけでもないんですけど。最近のモデルだとどんなのがいいんですかね。
近:タープを上手く張れる自信がない場合はツールームタイプがいいよね。コールマンやノルディスクのトンネル型と呼ばれるモデルなら、テントの中に広めのリビングスペースが取れるから、悪天候でも快適だし。今回撮影したコールマンのトンネル2ルームハウスLDX+は遮光率が高くてビックリした。日光をしっかり遮ってくれるから涼しいし。人気出そうな予感。
ギアの高さは子どもに合わせる
近:テーブルとチェアはロースタイル派?ハイスタイル派?
長:これはもう子どもの大きさに合わせる、だよね。我が家は子どもが3歳になるくらいまでは地面にシートを敷いたお座敷スタイルでした。
近:手始めはやはりロースタイルがいいんでしょうね。
長:子どもが自分で立ったり座ったりできるのがポイントかなと。足が付かないハイチェアだと乗せ・下ろしをしてあげなくちゃいけないからこっちが落ち着かない(笑)。
牛:子どもはベンチもいいよね。自分はもうトラスコのボックスが定位置(笑)。
長:ベンチはウトウトしたらそのまま寝かせられるし。
近:座らないときはクーラーや荷物置き場にできしるね。
車が横付けできるオートキャンプ場が◎
近:テントの中はコット? それともマット?
長:我が家はマットです。子どもが小さいうちはテントの床全面にマットを敷き詰めてあげるのがおすすめです。
牛:我が家はテントをふたつ張ってました。ひとつは自分と長男用の小さめテントで、中はコット。もうひとつは奥さんと次男三男用にして、中はマットを敷き詰めてました。
近:テントがふたつあると子どもは喜びそうだね。
牛:長男次男が日替わりで入れ替わる(笑)。父親とふたりきりで寝る機会なんてそうないし、兄弟で「今日はオレたちだけで寝る!」ってこともあったな。
長:それ最高ですね! あと、子どもが小さいうちは車をそばに置いておけるオートキャンプがおすすめですね。夜中に子どもが泣きやまないときの避難場所としてあると安心。
近:安心といえば……、焚き火のまわりってなにか安全対策してる? 焚き火用のテーブルとか使ってる?
牛:囲いはしたことないなぁ。
長:言って聞かせてわからないような年齢なら、そもそも目を離すことがないので、我が家もガードとかはとくにしなかったです。ガイラインもそれほど神経質にはならなかったかな。
近:ガイラインは大人のほうが危ないよね。子どもは引っ掛かってもケロッとしてる。大人のほうが転び方や引っかかり方がヒドイ(笑)。
牛:いまはLEDライトが内臓されたペグとか光るガイラインとかあるんだけど、サイト全体をまかなおうと思ったら大変。結局リフレクティブガイラインが最強という説(笑)。
近・長:それね!
長:最近は便利なギアもたくさん出てるけど、子どもに対しては「〜させない」ではなく、危ないことを自発的に学べる場になるようにしてあげたいですね。
ビギナーにとっては単独より難しい……
牛:次はグループですが……。
近:グループね……。いちばんコワいのが全員ビギナーのグループキャンプ。みんなワタワタしてなにも進まない(笑)。でも初めての人ほどグループで行きたがる傾向が……。
牛:経験者の集まりのグループが理想だけど、ビギナーでも仕切れる人がいて、全員に役割分担をしてあげればなんとかなりますね。
長:ルールをキャンプ歴とレベルに合わせて徹底的に決めるしかないですよね。
牛:慣れてない人ほどなんでも細かく決めておいたほうがいいです。持ち物リストはもちろん、だれがなにをやるのかまで。
長:リビングさえ作ってしまえばグループキャンプはできるんですよ、寝るところが別なだけで。バンガローで寝てもキャンプですからね。
近:寝室用テントをほどよい距離感で張って、どこからも集まりやすい形を真ん中に作ってしまったらいいね。あとは大きなタープをひとつ、だれかが用意すれば成り立つ。
長:大きなタープがなければほどほどのタープをふたつ繋げてもいけますよ。チェアとテーブルは自分たちの分はちゃんと持ってくる。
牛:共用部分は火器類とクーラーボックス、灯り、キッチンテーブルがあると便利ですね。
大きなタープの下にテーブルは持ち寄りで
長:グループだとそれぞれの寝床がある、テーブルとチェアも持ってくる、共有するのはみんなで集まるためのタープくらい? ほかには?
牛:ファニチャーの高さの違いはどうすればいいですかね。
近:テーブルもローがあったりハイがあったり、デコボコしてる感じが逆に〝映え〟ますよ。フラットよりサイト内に動きが出るし、テーブルも持ち寄るとなんとなく高さが揃ったりするんだよね。高さ調整できるモデルも多いし。そもそもいまどきのリビングテーブルはほとんど同じ高さなんですよね。3つくっつけるとなかなかの大きさになりますよ。なんで、そこまで神経質になることもなく。
長:子どもがいると事情はちょと変わりますが、大人だけだとなんとなく揃いますしね。
牛:タープさえどうするか共有しておけばレイアウトはなんとかなりそうですね。
近:最近はタープよりもシェルターを使っている人のほうが多いかもしれない。
牛:オガワのリビングシェルターを宴会幕として使っている人もいますね。山小屋みたいな形をしていて、中が広いのはもちろん、ほかのテントやシェルターを接続したりできて、拡張性の高さはかなりのもの。去年リリースされたアポロンなんてインナーテントをはずせば軽自動車が入るくらいの巨大さ(笑)。
長:その下にテントを張るカンガルースタイルができますね。
牛:コールマンのテントやシェルターもリビング用として活用できるものが多いかな。コールマンは基本的にオールインワンなので、インナーが必ず付いています。オガワはインナーがおプションになっているモデルがあるので宴会幕に向いてるかも。グループキャンプのときはシェルターとして使うから、別途寝室用のテントも持参、家族だけで行くときはオガワのシェルターにインナーテントをプラスしてそれひとつだけ持って行くという使い方ができる。
近:ローテーブル、ローチェア派の人がいたら、焚き火専用、大人のスペースにしたらいいかもしれない。
長:焚き火テーブルほしいですね〜。ずっとそこでダラダラしていたい!
キッチン装備が充実するのがメリット
近:牛田さんはイベント経験豊富だから慣れてると思いますが、大勢の場合、調理場の分担ってどんな感じにしてましたか?
牛:もう、分担を勝手に決めてしまっていました。その人にできるかどうかなんてわからないんですけど、担当を割り当てられなかった人って、ただのほほんと終わってなににも残らないんですよね。だから本当はできることを積極的に申告してもらいたい。こっちだって遊びたいしね。道具はいくらでも貸してあげるから。
長:なにも技術がなければ洗い物担当だっていいんですよ。
牛:調理場は人数によりますけどね。火器がふたつ、大鍋もひとつほしいですね。クーラーボックスも全家族分並べて、食材ごとに入れ替えてしまう。そこから自由に出し入れできるようにしておくとスムーズです。
近:クーラーボックスは1家族で何個も持って行けないから、そこはグループの利点だよね。
長:決めるのが面倒なら、自己完結型にして、料理も別々、食べるときにリビングに持ち寄りにしてもいいですよね。
「連れて行って」ではなく「いっしょに行こう」
長:経験豊富の人たちに混じるのは道具も所作も刺激的なんですけど、自分がなにもできないとやることがまったくなくなってしまって、結果気まずい思いをすることのほうが多いです。自分の手を動かさないとおもしろくないんですよね。まず自分たちのことは自分の手でできるようになってから、誘ったり誘われたりがおすすめですね。
牛:まずはファミリーで経験を積んでからだね。
長:「この間どこどこのキャンプ場に行って〜」という話から「じゃー今度いっしょに!」が自然な流れなんですよ。
近:「連れてってくださいよ〜」ほど無責任な発言はない(笑)。
牛:キャンプ歴の長さで頼られることもあるんだけど、子どもたちがいる場合、キャンプテクニックより子どもと遊ぶことが上手なほうが重宝されがちってこともある(笑)。
長:グループではあるんだけど、それぞれがどこまで自由にすごせるのかが大事ですかね〜。
牛:親戚や仲の良いグループだったら、昼間のアクティビティは別々なんてことはよくあります。夜の食事だけいっしょにワイワイ楽しむスタイル。気を使わないのでラクです。
近:ずっといっしょだと「なにかしなくちゃ」って思わされるもんね。と、いまは3組以上の合流は禁止、なんていうキャンプ場もあるのでお気をつけて。
長:そういうトラブルを起こさないためにも単独でのキャンプスキルって大事ですね。
アクティビティのギアをメインにもってくる
近:ふたりきりの場合はタープの下にテントを張る〝ミニマルスタイル〟がいいですね。
牛:山登りや釣りを目的にしたキャンプならこれくらいで十分だよね。
近:でも普通の人はアクティビティ目的でキャンプというより、キャンプが目的になってるから、またちょっと違うかも。
長:なにかひとつ目的を作ってそれを主役に据えてレイアウト&実行するといいですよ。この場合は焚き火。親子ならハンドアックスで薪割りをやってみるとか。あとガソリンランタンの使い方やナイフの使い方を教える絶好の機会でもありますね。
牛:ふたりですごす時間が多くなるようにしなくちゃいけないから、設営とか準備に時間がかかりすぎるのはもってのほか。
近:カッコいいとこ見せたいんだけど、子どものほうが覚えるのが早いこともある。説明書の理解度も早いし(笑)。
長:そこは「そうそう。そうなんだよ」でごまかせばOK(笑)。
コミュニケーションがとりやすいレイアウト
長:ふたりきりだと正面で向かい合って座るより、並びとか斜めの関係、テーブルに対してL字になるように座るほうがコミュニケーションが取りやすいんですよ。多くの人が苦手としている会社の面接って正面じゃないですか。緊張しないはずがないし、話が弾まない。
近:じゃあ、チェアはテーブルに対してL字型にレイアウトするのがいいですね。視線の先に焚き火がくるようにして。
牛:ふたりきりだと逃げ場がないから心理戦みたいになるけど、自然にコミュニケーションが取れるレイアウトっていいね。
近:飲み会にも使えるテクニックだな(笑)。
なにを持って行ったらいいのか問題
牛:装備をどれだけ削れるかもポイントかなぁ。
長:道具は多いほうが便利だとは思うんですけど、間口120〜130㎝のテント、タープ、シングルバーナー、ちょっと大きめのクッカー、チェア、テーブル、焚き火台ですかね。火器類は最小限に、灯りもLEDランタンで十分かな。
近:タープは3×3mくらいのヘキサタイプ。小さなリビングでコンパクトにすごす感じで。となると全体も自然とロースタイルになるよね。テントは荷物のことも考えて3人用がベストかな。
長:あと焚き火で炙る用の長い串! まな板と包丁は子どもの分も持って行きます。
近:このレイアウトは静かなキャンプ場がイメージだなぁ。
牛:話それるけど、キャンプ場を予約してから行くってこと、ほとんどないよね。
長:ウチもいままではそれで平日に行ったりしてたけど、子どもが小学生になったらこれからどうしようかな……。
近:まぁ、初めて行くなら予約するのが確実ですね(笑)。
牛:区画サイトだと大きさがまちまちなので、車が入るかどうかが事前にチェックしておきたいですね。
近:スペースもテントの床面積の1・5倍はほしいかな。ガイラインがはみ出したりするんで。
やってみたいと思った気持ちを大事にしよう
牛:自分たちの親の世代のときにオートキャンプブームがあって、いろいろ連れて行ってくれたから、いまの自分に繋がっているところもあります。その一方で、ファミコンブームもきてたから、インドア派に傾いた子たちもいるんですよ。だから子どものころにキャンプしたことがないという人も多い。なんの経験もないけど、自分に子どもが産まれたことがきっかけで始めたというのが、いまのファミリーキャンプの主流なんだよね。
長:いまどきは小学校受験のためにキャンプをする家庭もあるくらいだからね〜。
牛:お父さんのキャンプスキルがどうかはさておき、子どもに体験させてあげたいと思う気持ちは大事にしてほしい。その思いってなにかしらの形で子どもに伝わるし、そうやって趣味としてのアウトドアが続いていったらいいなと。
近:知り合いでもキャンプを始める人が増えてきてるんだけど、「こういうキャンプ場に行ってみたい!」と言ってるのは奥さんというパターンが多いね。
長:知人に聞いた憧れの場所、ウワサの場所に行ってみたい、って感じだよね。キャンプ場の設備を気にしてばかりより、ロケーションに心動かされるのはいい傾向ですよね。
牛:ギアやスタイルに関してはお父さんが前のめりになりがちですが、そこは大目に見てあげてほしいし、ちょっと褒めてあげてほしい。父親の自己満なんですよ。恩着せがましくご飯とか「どうだ〜!」って作りまくるんだけど、いちばんおいしかったと言われるのは最終日の朝に適当に作ったぶっかけうどんだったりするんで……。
近:それ、家でも食べられるじゃん、みたいな結末(笑)。でも思い出として刻まれてはいるから成功だね!
キーワードをおさらい
座談会のなかでは詳しく説明できななった、覚えておきたいキーワードを解説。
【ツールームテント】
寝室とリビングスペースがひと続きになっているテント。タープ不要で快適にキャンプを楽しめる。締め切って雨風をよけたり、フルオープンにすれば開放感抜群。隣同士が近くなるキャンプインフェスなどではとくに有効。
【トンネル型テント】
ツールームテントの別名。見た目がトンネルのように見えることから呼ばれている。ノルディスクのレイサ、コールマンのツールームテント、スノーピークのエントリーツールームエルフィールドが代表的なテント。
【区画サイト】
1組分のスペースが決められており、ロープなどで区切られているサイト。場所を選べる場合が多い。最近ではファミリー専用、ペット同伴専用など同じ条件の人同士が近くになるよう配慮されているキャンプ場もある。
【フリーサイト】
区画が決められておらず、スペースを自由に使えるサイト。大きいテントやタープを気兼ねなく張れて、焚き火やキッチンのスペースも十分に取ることができる。グループキャンプにおすすめ。
【オートキャンプ】
テントのそばに車を停められるキャンプ。キャンプ場によっては決められた場所に車を停めて、キャンプサイトまで荷物を運ばなければならない場合もあるので、小さい子どものがいる場合や荷物が多い場合は要確認。
【ヌックタック/ローカスギア】
ヌックタックは「デイナデザイン」というブランドのワンポールテント。ローカスギアは日本のブランドで「クフ」などのワンポールテントが有名。どちらも張った姿が美しく、軽量なのが特徴。
【ロースタイル】
テーブルやチェアの高さが低い、ここ数年主流のスタイル。テーブルの高さは30〜40cmくらいでいろいろなメーカーからリリースされている。子どもでも足が地面に付く高さなので、大人も子どももストレスフリー。
【カンガルースタイル】
大きなタープ、またはシェルターの下に小型テントを張るスタイル。大きなフライシートにインナーテントが入っているのに似た状態で、テントの中が暖かく、レイアウトの自由度が高いというメリットがある。
【L字型、横並び、対面の法則】
90度のL字型の着席は初対面でもリラックスできるもっとも自然な位置取りで、カウンセリングにも応用されている。正面に座った人とは対立しやすく、隣に並んで座った人とは同意見になりやすい(スティンザー効果)。
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文◎小田巻美穂子 Text by Mihoko Odamaki
写真◎中野幸英、アラタジュン、宮田幸司 Photo by Yukihide Nakano, Jun Arata, Koji Miyata
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PROFILE
フィールドライフ 編集部
2003年創刊のアウトドアフリーマガジン。アウトドアアクティビティを始めたいと思っている初心者層から、その魅力を知り尽くしたコア層まで、 あらゆるフィールドでの遊び方を紹介。
2003年創刊のアウトドアフリーマガジン。アウトドアアクティビティを始めたいと思っている初心者層から、その魅力を知り尽くしたコア層まで、 あらゆるフィールドでの遊び方を紹介。