火起こし、焚き火づくりをマスターしよう!失敗しない焚き火の教科書
フィールドライフ 編集部
- 2020年07月28日
アウトドアですごすうえで醍醐味であり、欠かせない存在の“焚き火”。フィールドで失敗しないためにも学ぶ価値あり! 焚き火のキモとなる火起こし、そして焚き火づくりをマスターしよう。
「iLbf」堀之内さんと、焚き火マイスター猪野さんが焚き火の基礎を伝授!
(右)「ILbf」店主 堀之内健一朗さん
店名はアイラブボンファイヤーの頭文字から。埼玉県三郷市彦成4-4-17みさと団地南商店街104 TEL.048-951-4949 不定休、Pあり。
(左)焚き火マイスター 猪野正哉さん
焚き火の良さを伝えたく、たき火ヴィレッジ〈いの〉を千葉県内にオープンさせる。一般開放せず、イベントや撮影場所のみ解放。
もっと焚き火を身近な存在に
キャンプブームのなか、焚き火が注目され始めてきている。私にとっては良いことで、仕事も増え、このように原稿も書かせていただいている。
そのいっぽうで、私が子どものころは、いろんな場所で当たり前のように焚き火をし、生活の一部でもあったはずなのに、いったいいつから、焚き火が特別扱いされるようになったのか、疑問にも思ってしまう。いまでは焚き火専門店も登場し、さまざまな焚き火アイテムも生まれ、盛り上がっているのはたしかだ。
そこで今回は埼玉県三郷市にある「iLbf(イルビフ)」のオーナー堀之内健一朗さんにもご協力いただき、合同焚き火ハウツーを紹介する。アウトドアに限らず、ものごとを突き詰めていくほどこだわりが強くなる人は多く、有識者といっしょになることはあまりない。しかし『もっと焚き火を身近に』というシンプルな共通の想いから今回実現できた。
キャンプ初心者や女性にとって焚き火はハードルが高いと思われがち。あれこれ深く考えず「火で薪を燃やす」ぐらいの軽い気持ちでいてほしい。それでも不安な人は焚き火用に作られた道具に頼るのも良い。
堀之内さんのお店には、焚き火が簡単にできる魔法みたいなアイテムがたくさん並び、焚き火スペースもあるのでレクチャーも受けられ試すこともできる。道具に頼ることは恥ずかしくなく、邪道でもない。
なによりも焚き火の炎を楽しむことが最優先だ。ハウツーを忠実に守ったからといって100%成功するとは限らない(笑)が、少しでも参考になればと。失敗することによって考え、再チャレンジし続ければ、確実にスキルアップに繋がる。焚き火を愛する私たちでさえ、たくさん失敗をしてきたが、いまになっては笑い話。まずは、焚き火の前に座ってみてほしい。
Lesson1 焚き火の準備
焚き火はもちろん、なにごとも準備は大切だ。まして火を扱うとなると慎重になる必要がある。まずは、焚き火まわりのアイテムを把握し、ベストな環境作りから始めよう。
必要な道具
料理のように素材(薪)を活かすのは道具次第。その考え抜かれた道具をうまく使えば、もっとおいしい(!?)焚き火ができるはず。
1.グローブ
綿手袋よりもレザーグローブがおすすめ。レザーは燃えにくく、刃物や木のささくれから手を守ってくれる。欲をいえば、防火手袋も。
2.斧・ナイフ
市販されている薪は長かったり太かったりと、焚き付けのサイズに適したものが少ない。刃物で短くしたり、細かくする際に使用する。
3.焚き火台
焚き火専用、調理兼用など、用途を見極めて選ぼう。初心者には火付けが簡単なユニフレーム「UFファイアポット」がおすすめ。
4.焚き付け・着火剤
調理時など、スピーディーに火を起こしたいときには着火剤の使用が有効。杉の葉は、自然界の着火剤。市販のものもある。
5.火吹き棒
煙が発生しているときは不完全燃焼しているので、火吹き棒や手動のブロワーで空気を入れよう。息だとピンポイントで吹けない。
6.火ばさみ
一般的にいうトングのこと。「はさむ」以外に返しが付き、鍋の蓋を取るリフターとして使えるものもある。機能性が高いトングを選ぶと良い。
7.マッチ
着火剤が付いていたり、風や水にも強いマッチなどが発売されている。ライターより雰囲気が出て、またマッチ独特の匂いも◎。
★こんなアイテムも!
焚き火に投入するだけで炎がレインボーに変化して約30分間、幻想的に燃え続ける。一度、試してしまうとクセになる製品。
★焚き火にベストな衣類
ナイロン素材は避けたいが、基本、どんな格好でも。火の粉で穴を開けたくない人はデニムや厚手のコットン、難燃素材などのウエアがおすすめ。
Lesson2 焚き火の実践
まだまだ焚き火は初心者にとってハードルが高いと思われがちなので「結果、燃えれば良い」ぐらいの気持ちでいよう。ちょっとした知識を覚えておくだけでもスキルアップ。
薪の種類
薪は焚き火の主役。焚き付けには針葉樹(杉など)を使い、メインには広葉樹を使おう。薪の特性を見極めることもポイント。
カシ
火つきが悪く硬いが、一度、着火すると長く火持ちは抜群だ。堀之内さん、イチオシの薪。
シデ
火つきと火持ちのバランスが良い。熾火になったら、炭火料理の熱源としてもオススメ。
サクラ
香りも良く、燻製料理に適している。火持ちはそれほどだが、着火は◎。猪野さん、オススメの薪。
ナラ
キャンプ場などでも売られ、手に入りやすい、一般的な薪。火つきは悪いので細かくすること。
クリ
ハゼる音を楽しめる。湿っていると火の粉が飛びやすいので注意。あまり市販されておらず、貴重。
エノキ
青白い炎が特徴的。硬いので薪割りには一苦労する。火もちは悪いので別の薪も用意しておきたい。
クヌギ
ザ・焚き火にオススメ。火つきこそ悪いが、イメージどおりにパチパチと音をたて長く燃える。
ケヤキ
密度が高い割に燃えやすく、長持ちする。そのかわり薪割りは大変。焚き火鑑賞用に、うってつけ。
薪の割り方
焚き付けや焚き火台に合ったサイズにカットしよう。薪の硬さ、太さによって薪割り方法も変わってくる。グローブ着用は絶対だ。
割り台を用いて
キンドリングクラッカーという方法。初心者にオススメ。割り台のほうに刃が付いているので安全で、ハンマーで叩くだけ。
ナイフを用いて
細くなると斧や鉈では難しいので、ナイフの根元をあて、薪をハンマー代わりにするバトニングという方法も有効だ。グローブ必須。
斧を用いて
ワイルドにいくなら斧。薪の太いほうを上にすることで割りやすくなる。薪に節目があると割りづらいので、確認を。
細かくした薪をすべて焚き付け用に使わず、残しておく。火が弱くなったときに足せるように余分に割っておくこと。割り箸も有効だ。
薪組の種類とやり方
焚き火台の火床や目的によって組み方はさまざま。まず大事なのは安定させて薪を組むこと。風向きを見て空気の通り道を確保する。
調理用
並列型ともいわれ、枕木を横に這わせ放射状に薪を組んでいく。炎が一点に集まり、温度調整がしやすく調理に向いている。薪が長持ちする利点も。
井桁
交互に薪を組み、中央に小枝などの焚き付けを入れる。キャンプファイヤーのように勢い良く豪快に燃えるが、そのぶん消費量は多くなる。
ティピー型
テントのティピーように薪を立てて組む。燃焼効率が良く、炎の見え方もキレイ。燃えてくると崩れるので、火の粉が飛ぶ恐れもある。
火付けの手順
着火とともに非日常な時間が始まる。薪割り、組み方さえきっちり準備しておけば、火起こしは成功といっても過言ではない!
火つけの順番
マッチやライターで着火剤に火を点け、細かくした薪や枝から順々に太い薪に火が燃え移るのが理想。決して省略しないように。
1 着火剤をいちばん下に
小分けされているパラフィンの着火剤が使い勝手が良い。ない場合は、よく燃える杉の葉、白樺の皮を代用しよう。麻ひもをほぐして着火剤にも使える。
2 焚き付けを入れる
細かくした薪はもちろん、薪割り時に出た切り屑も入れよう。落ちている乾いた小枝も使える。湿っていたらナイフで乾いているところまで皮を剥いて投入する。
3 細木で薪組する
太い薪を組む前に細木でも同様に組んでおくと効率良く燃える。スペースができる中央に、さらに焚き付けになる枝などを縦に差し込んで埋めていく。
4 焚き付けに点火する
ノズルの長いライターかマッチで点火。ピンポイントで着火剤に火を点けたいので着火口を決めておく。風上側に着火口を向けておくと、空気の力も取り込める。
5 火が大きくなるまで待つ
火が点くといじってしまいがちだが、着火剤の力を信じてグッと我慢することも大切。炎が安定するまでは、決して触らないこと。
6 安定したら薪を足していく
初めの段階で太い薪を組んでおいても良い。なかには焚き付けだけが燃え終わってしまうこともあるので、焚き付けが十分細木に燃え移ってから、太い薪を入れる。
コツとポイント
炎が弱まるなど、火つけの際に困っても、コツとポイントさえ覚えておけば炎は復活可能。もう着火剤をバンバン入れなくても大丈夫。
火吹き棒を使う
煙が出ている状態は、不完全燃焼している証拠。燃焼するための空気が足りてないので火吹き棒で空気を入れる。
細木を有効活用する
太い薪に燃え移るまで時間を要す。細木などを足すことで火力が上がり、助けとなる。つねに常備しよう。
立てかけて薪を乾かす
湿気や濡れによって燃えにくい場合は、燃やす前に焚き火の熱で乾かすと良い。湿気が多い地面に直置きはNG。
あと片付けの仕方
キャンプ場によっては、燃え残った炭や薪を引き取ってくれるところもあるが、自己責任として片付けまで完結できるように。
火消し壺を使う
専用の火消し壺も発売されているが、ステンレス製で蓋がついているものでも代用できる。BBQでも同じこと。
ルールとマナー
あえていうことではないが、一般常識が通用する大人なら問題ないはず。破れば、おのずと肩身が狭くなっていくだけだ。
残った炭は持ち帰ろう
誤解があるようだが、炭は自然に還らない。環境破壊のもととなる。見た目も美しくないので、自己完結できる範囲で楽しむこと。
新聞紙や段ボールは使わない
よく焚き付けに使われるが、火が点いたまま飛んでしまうと、テントなどに穴をあけるので、なるべく避けたい。落ち葉も同様。
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文◎猪野正哉 Text by Masaya Ino
写真◎アラタジュン Photo by Jun Arata
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PROFILE
フィールドライフ 編集部
2003年創刊のアウトドアフリーマガジン。アウトドアアクティビティを始めたいと思っている初心者層から、その魅力を知り尽くしたコア層まで、 あらゆるフィールドでの遊び方を紹介。
2003年創刊のアウトドアフリーマガジン。アウトドアアクティビティを始めたいと思っている初心者層から、その魅力を知り尽くしたコア層まで、 あらゆるフィールドでの遊び方を紹介。